破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
Xデー当日の朝。画面にずらりと並ぶ、世界各国の首脳や王族たちのその張り詰めた顔を並べたモニター会議の様子を眺めながら、カガリは内心で深い、深いため息を漏らしていた。
本来であれば、この場は醜い責任の擦り付け合いと、罵声の嵐に包まれていたはずだった。ユーラシア連邦がファウンデーションに対して核攻撃を行ったとされる一件への報復。
そして、修復された大量破壊兵器レクイエムによって、ユーラシアのアドゥカーフ社を焼き払ったファウンデーションと同調し、レクイエムを修復した上で反乱軍を出してしまったプラントへの、果てしない責任追及。
それらの混乱に乗じ、レクイエムという大量破壊兵器を使い、世界に『デスティニープラン』の強制という最悪の恫喝を行っているのが、今のファウンデーションであるはずであったのだ。
「ファウンデーション本国は、今どうなっている?」
「我がユーラシア連邦としては、現時点で自発的に何かを行う様子はない。こちらも、オーブのセイラン副総裁に提供されたデータ通りに彼らを泳がせているが、今のところは確かにおとなしいな」
だというのに、目の前にいる首脳陣は驚くほど落ち着き払っていた。
モニターの向こうでは、東アジア共和国の首相が、静かなトーンで質問を投げかけ、ユーラシアの代表が重々しく頷く。そう、この奇妙なほどの静けさと落ち着きは――その全て、ユウナ達の功績であったのだ。
彼が事前に徹底した盗聴対策として、この極秘の『ファウンデーション対策会議』の回線を、サハク家が保有するアメノミハシラを経由したものに一本化したこと。
そして、ファウンデーションがユーラシアの将兵を裏で襲撃しておきながら、「ユーラシアが自国に核攻撃を行った」という捏造映像を流したという、あまりにも悪質なマッチポンプの証拠を各国に突きつけたことで、これにより防諜を完璧に行いつつ、ユーラシアの責任追及を完全に躱すことに成功したのだ。
とはいえ、大量破壊兵器レクイエムの修復を許してしまったプラントへの責任追及は、本来であれば激しく行われるはずであった。
本来であれば、政府首脳部も含めたプラント首都アプリリウス市の占領を行うはずであったクーデター軍は、事前に警戒を強めていたジュール隊、バルドフェルド隊を中心にした奮戦により、占領作戦に失敗。
その挙句、追い詰められた反乱軍は逃亡のために通信妨害装置『NJダズラー』を使用し、その結果としてライフラインの寸断を引き起こし、数百人以上の民間人犠牲者を出すという最悪の惨劇を引き起こしてしまったのだ。
この身勝手な暴挙にプラント側は激怒。彼らは一度目の会議には参加しなかったが、この二度目の会議が始まる直前、全世界に向けて凄まじい怒りと決意に満ちた声明を放送していた。
『――今日、このアプリリウスで起きた惨劇を、私は断じて忘れない。志を共にすべき同胞に牙を剥き、あまつさえ罪なき市民のライフラインを破壊して逃走した者たち……彼らを、私はもはやザフトの将兵とも、プラントの同胞とも認めない! 彼らは祖国を愛する戦士などではない。ただ破壊を撒き散らし、恐怖で人々を支配しようとする、卑劣極まるテロリストである! 自由と平穏を望む全ての市民に対する反逆者として、我々プラント政府は、彼らを一人残らず追い詰め、法の名の下に裁くことをここに宣言する!』
この苛烈極まる演説を全世界に叩きつけた上で会議に参加するやいなや、プラントの代表としてラメント議長は、自国からテロリストを出してしまった事への責任追及をされるより前に、即座に深く頭を下げて謝罪。
そして、世界平和監視機構コンパス、及びオーブ軍、ザフト軍は全力をあげて彼らを排除すると、国際社会の場で堂々と言い切ったのだ。
ここで自軍をあえて「正規軍」とさえ言わなかったのは、相手を反乱軍という名称で呼ぶことすら拒絶し、ただの「テロリスト」として徹底的に殲滅及び、捕縛して裁判にかける対象として扱っていることにほかならなかった。
この予想を遥かに超えたプラントの強硬姿勢と迅速な謝罪、そして一致団結した連携の提示に、モニター越しに映る各国の首脳陣は、もはやプラントを一方的に責め立てる言葉を失ってしまう。
本来の歴史――劇場版のシナリオ通りであれば、この場で大西洋連邦は、失態を犯したプラント、及びユーラシア連邦を声高に非難し、会議の主導権を握ろうとしたはずであった。
しかし、モニターの向こうに参加しているフォスター大統領は、険しい表情のまま無言で各国のやり取りを見守り、時折り最低限の言葉を挟む程度に留めている。かつて世界を主導した大国のトップが、これほどまでに大人しいのには明確な理由がある。
この世界においては、史実以上に大西洋連邦の権威が失墜していたのだ。自国から大量のテロリスト、及び数多くのモビルスーツなどの軍事機体を国外に流出させてしまった責任を、これでもかとばかりに国際社会から糾弾されていた。各国からの信頼を大幅に損ねている現状、彼らは発言の一つ一つを極めて慎重にせざるを得ない状況に追い込まれていた。
そして、大西洋連邦の政治的な発言権の低下は、そのまま軍事行動の慎重さにも直結していた。史実の展開であれば、本来は月面のコペルニクス基地にて大西洋連邦を中心とした駐留艦隊が、独自にレクイエムへと攻撃を仕掛けようとするはずだった。そして、その焦りによる拙速な行動が仇となり、修復されたレクイエムによって艦隊ごと焼き払われて壊滅する運命を辿る。
だが、この世界においては違った。
あらかじめオーブが『今はファウンデーションを刺激すべきではない。レクイエムを撃たせる口実を与えるな』と、ユーラシアや東アジアといった周辺諸国へ強く警告を行っていたのだ。その警告はユーラシアや東アジアの首脳陣を通じて大西洋連邦にも伝わり、孤立を恐れる彼らもまた、独断での攻撃を断念せざるを得なかった。
結果として、コペルニクスの駐留艦隊は消滅の運命を免れ、戦力をそっくりそのまま温存することに成功している。
そう、「今」までは、だ。
デスティニープランを円滑に進めるため、そして史実と違いプラントでのクーデターに失敗し、首都アプリリウスを落とすことができず、クーデターを起こしたジャガンナート達は反乱軍どころかただの「賊軍」にまで完全に落ちぶれてしまったことで、オルフェたちは極めて慎重にならざるを得なかったのだ。
女王アウラは、自らの権威とプランの絶対性を示すため、レクイエムでコペルニクスを焼き払うべきだと強硬に主張していた。だが、実務を担うオルフェやイングリット、そしてジャガンナートらは、まずはプラントを中心としたコロニー群の完全な制圧を優先すべきだと提案。結束を誇ると思われていたファウンデーション陣営の内部に、ここにきて深刻な不協和音が生じはじめていた。
そして結果的に、その身内での方針のズレこそが、オーブが主導する侵攻計画の準備を整えるための貴重な時間を与えることになった。
彼らがプラント制圧を優先しようとしたのには、それぞれの切実な理由があった。
イングリットやオルフェにとって、キラ・ヤマトたちコンパスの主力部隊を核の炎で焼き払った(と思い込んでいる)今、真に恐れるべき戦力は、自分たちの同胞であるリューを殺害したカナード・パルス。そして、あらゆる謀略で自分たちの先手を取り続けてきた怨敵、ユウナ・ロマ・セイランの二人である。
ユウナの恩人と言えるオーブのトダカ海将を人質として拘束している以上、まずは宇宙の制圧を完璧に行い、地盤と優位性を固めるべきであると彼らは考えていたのだ。勿論オーブにはあのラクス・クラインが保護されている可能性があったのもオルフェが慎重になる理由の一つである。
一方で、ザフト反乱軍の首領であるジャガンナートにとっては、一刻の猶予もなかった。
首都の占領に失敗し、自分たちがテロリストの汚名を着せられた以上、早急にプラント本国を制圧して実効支配を完了させなければ、自分たちの部隊に深刻なモラルハザード(士気の崩壊)が発生し、反乱軍が瓦解することは火を見るより明らかだったからである。
事実、現在の反乱軍が未だ瓦解していないのは、今更プラントに帰還したところで、怒り狂った国民に石を投げられた挙げ句に粛清される未来が目に見えているからに過ぎなかったからだ。国民の支持を完全に失った彼らは強引にでもプラントを制圧し、情報統制とプラントのコーディネイター達への利益を示さなければ犬死にするだけであると理解していた。
反乱軍を率いるジャガンナートは、自分たちをここまでの状況に追い込んだジュール隊やオーブへの怒りに震えつつも、オルフェたちの『説得』を受け入れ、不満の募る兵士たちを何とか大人しくさせていた。しかし彼とて、目に見える確かな結果を早急に欲している。
そのためプラントの直接占領を強く提案したが、オルフェたちはプラント以外のコロニーも含め、外堀から少しずつ制圧していくことを望むなど、両者の戦略的方針には少なからずヒビが入り始めていた。
そんなファウンデーション側の足並みの乱れを尻目に、防諜回線で繋がれたモニター会議では、カガリ達によって次の段階たる作戦案が提示される。
それは、オーブ軍がユーラシア連邦と共に行うとされる、対レクイエム攻略作戦の全貌であった。
画面に表示された作戦概要。そこには、通常であればおよそ軍の正規の作戦として成立するとは思えない、狂気すら孕んだあまりにも無謀で苛烈な攻略手順が記されていた。
そのタイムテーブルと戦術の全貌を理解した瞬間、モニターの向こうの各国首脳部たちの顔から血の気が引いていく。
「正気か……!? 貴国らは、本当に正気なのか!?」
誰からともなく上がったその悲鳴のような問い詰めは、その場にいた全ての首脳陣の戦慄を代弁するものであった。
「『正気』か、と。そのようなものは、レクイエムが修復された時点で捨て去っている」
カガリは動じることなく、画面の向こうの首脳たちを見据え、ユーラシアに代わって淡々と、しかし確固たる意志を込めて説明を続けた。
「最も確実に、着実にレクイエムを攻略するためには、これ以外の選択肢はない。敵の裏をかき、その牙を根本から叩き潰す。そのためには綺麗事など言っていられないのだ」
その言葉を引き継ぐように、ユーラシア連邦の首相が重々しく口を開いた。
「我々はファウンデーションの卑劣な謀略により、多くの国民の命を奪われた。国家としての威信も、平和への歩みも、彼らによって踏みにじられたのだ。もはや、遺憾の意を示すだけの段階は疾うに過ぎている。我々は国際社会に、我々の『本気』を見せる必要がある」
ユーラシアの首相の、怨念すら孕んだ決意の言葉に、他の首脳陣も息を呑んだ。もはやこれは単なる防衛戦ではない。報復と、生き残りをかけた総力戦なのだと、誰もが理解した。
「……分かりました。東アジア共和国は、その作戦を支持します。我々も即座に指定宙域へ部隊を移動させ、待機させましょう」
東アジア共和国の代表が、静かに、しかし力強く賛同の意を示した。
各国の足並みが揃っていく中、これまで苦虫を噛み潰したような表情で沈黙を守っていた大西洋連邦のフォスター大統領も、深く息を吐き出した。自国の失態による発言権の低下を痛感しながらも、レクイエムという脅威を排除するためには、これに懸けるしかない。
「……大西洋連邦も、異論はありません。作戦に協力しましょう」
最後に、プラントのラメント議長が静かに微笑む。彼自身もこの計画には思うところがある筈だ、しかし、クーデターを起こしたテロリスト達を止める為にはと彼は内心の不快感を隠しつつも、画面の向こうで深く頷く。
「ユーラシア、そしてオーブの方々には、そうするだけの正当な権利があります。我々プラント政府は、あなた方の決断を全面的に支持しましょう」
こうして、世界を揺るがす未曾有の超法規的攻略作戦は、各国の全会一致をもって静かに、しかし決定的に承認されたのだった。
モニターの灯りが消え、重苦しい静寂が戻った会議室。カガリの秘書を務めるトーヤが、眉をひそめて不満げな表情を隠そうともせずに歩み寄ってきた。
「カガリ姉さま……」
「……トーヤは、やはり反対か?」
カガリが静かに問いかけると、トーヤは真っ直ぐに彼女を見つめ、迷うことなく頷いた。その瞳には、オーブの掲げる平和の理念とはかけ離れた、あまりにも苛烈な作戦への強い拒否感が滲んでいた。
カガリはそんな彼の純粋な反応に、どこか自嘲気味な笑みを浮かべた。
「正直に言えば、私とて心情的には反対の立場を取りたくはあるさ。だが……綺麗事だけでは政治はな……」
ふっと視線を外へ向け、遠い目をするカガリ。ユウナによる今回の攻勢計画は、以前までのオーブであれば確実に採用することはなかっただろう。
かつてのカガリであれば、提案された瞬間に激怒し、即座に跳ね除けていたはずの代物だ。しかし、今の彼女には、ユウナの言葉の裏にある確固たる真理が理解できていた。
ここで覚悟を示しておかなければ、世界はさらに荒れる。恐怖と疑心暗鬼の連鎖に呑み込まれ、取り返しのつかない泥沼に沈んでいくだけだ。それに、どれほど苛烈な手段であろうとも、敵の侵攻を叩き潰して平和を守るという一点において、オーブの理念を逸脱しているわけではない。
「トーヤ、お前がユウナのことを嫌っているのは分かっているさ」
カガリの言葉に、トーヤは慌てて首を振った。
「嫌ってなどいません! ……ただ、あの人は一時期、カガリ姉様を差し置いてオーブの独裁者として君臨していました。それに、一度はすべての財産も権威も返還したというのに、まるでカガリ姉様よりも偉そうに、影の支配者のように振る舞っているのが……その、納得いかないんです」
不満げに、しかし正直に胸の内を吐露するトーヤ。カガリはそんな彼の様子に、ふっと表情を和らげて苦笑した。
「なら、それを今度ユウナの目の前で言ってやれ。あいつならきっと大喜びして、お前を熱烈に激励し始めると思うぞ」
「……えぇ?」
予想外の言葉に、トーヤは毒気を抜かれたように呆気に取られた声を漏らした。
だが、カガリの目から見ても、現在のユウナには権力欲や物欲といったものがほとんど見受けられなかったのだ。むしろ、彼が握っている情報の価値や、現在の国際社会における立ち位置を考えれば、清廉と言えるほどに、彼は自分への見返りを一切求めようとしない。
むしろ、当の本人にしてみれば、さっさと隠居してのんびり暮らしたいと本気で願っているのを、自分たちが無理を言ってこんな世界の泥沼に巻き込んでいるのだ。カガリはそのことを痛いほどに理解していた。
だが、国防の面においても、今のオーブはユウナ無しではもはや回らなくなっている。彼が主導した新兵器のテクノロジーはオーブ軍全体で共有されており、そのおかげで今の防衛力は保たれている。
さらに、ユーラシア、東アジア、そしてプラントに彼が個人的に築き上げた強力なパイプ。外交の局面においても、彼の的確な助言やその独自のパイプを使わざるを得ないのが現状だった。
今回の攻勢計画に、本来はコンパスの参加国ではないユーラシアや東アジアが足並みを揃えて参戦を決めたのも、間違いなく彼のパイプのおかげだ。もし彼がいなければ、今頃あの会議は醜い責任の擦り付け合いの場と化し、最悪の場合はコンパスからの脱退国が出ていてもおかしくなかっただろう。
「あまりにも、あまりにも……この国は、ユウナに依存し過ぎているんだ」
カガリは、どこか痛々しさを孕んだ声音で、厳しい現実をトーヤに吐露した。
そうなったのは、自分自身の未熟さに最大の原因がある。前大戦の頃、自分は感情と理想ばかりを追い求め、山積する政治的課題や国内外からの圧力をすべてユウナに押し付けてしまっていたのだ。
どちらかと言えばユウナは、下手にカガリを追い詰めると原作のようにキラ達と共に出奔して敵になりかねないからと注意を払っていただけであるのだが、カガリからすればそう見えていた。
彼は世間から独裁者と呼ばれていたが、実態は独裁をせざるを得ないほどに、当時のオーブには売国奴のような国賊が蔓延り、死の商人ロゴスの魔の手が深く伸びきっていた。そんな絶望的な状況下で、彼は一人で矢面に立ち、泥を被りながら国難を乗り越えてみせたのだ。
その結果、国内外における彼の評価は、本人が思っている以上に跳ね上がっている。しかし、それは同時に、極めて危険な刃を彼に突きつけることにもなった。
「今のオーブ、お父様を失った後のオーブは、実質的にユウナが一人で再構築したものだ。だからこそ、ユウナさえいなくなればオーブはどうとでもなると、敵対勢力からは思われているんだ」
カガリはそのことをトーヤに静かに説明し、言葉を続けた。ユウナ自身もそのことを痛烈に理解しているからこそ、彼は病的なまでに暗殺やハニートラップを恐れているのだ、と。
今や彼の食事は毒殺を警戒してすべて自作。コンパス内で隊員たちのために娯楽を増やして自分への注目を逸らしつつも、本人はモルゲンレーテの地下施設とミレニアムの往復を繰り返すだけの、徹底した引きこもり生活を送っている。
「とりわけ、女性に関しての警戒心は凄まじいぞ。持ち込まれる縁談を片っ端から握り潰すのは当然として、一度も話したことのない女性に対する振る舞いといったら凄いものがある。例えばモルゲンレーテで、ただの一般事務員の女性が良かれと思って差し入れのコーヒーを渡そうとしただけで、あいつは顔を引き攣らせて、即座に私に連絡を寄越したんだ。『今すぐ先ほどコーヒーを渡してきた女性の身辺調査を行ってくれ』とな。悪意のないただの善意すら、今のあいつにとっては命を狙うハニートラップに見えてしまう程に警戒せざるを得ないんだ」
そこまで言って、カガリはふっと表情を曇らせ、どこか遠い目をする。
その時期のユウナは既にフリーダム強奪未遂事件の後デュランダルと協議を終えており、食事に至るまで警戒を更に強めていたのは当然ではあるのだが、カガリにとっては仕事のやり過ぎによって、人の善意すら猜疑心で罠に見えてしまう程に追い詰められていると感じているのだ。
「このファウンデーションとの戦いを終わらせた後は、無理にでも彼を一年は休ませてやりたいと思っている。……だが、戦後の混乱や、それに伴って確実に高まるであろう反コーディネイター思想の再燃を考えれば、私はまたユウナに、さらなる無茶振りを命じざるを得ないだろう。そしてあいつは口では嫌がり、盛大に文句を言いながらも……きっと、それを受け入れてしまうはずなんだ……」
カガリは自嘲気味に微笑んだ。自分たちが生き残るために、どれほどユウナという一人の男の能力に泥を被せ、搾取し続けているのか。その残酷な自覚が、彼女の胸を締め付ける。
カガリは真剣な眼差しをトーヤに向け、警告と、そして懇願を込めて言葉を紡いだ。
「トーヤ。ユウナは結果を出すために、時に残酷な苛烈な一面を見せるし、態度としては傲慢に見えてお前がそれを恐れ、反発したくなる気持ちも分かる。だが、あいつはその苛烈さの裏で、誰よりも傷つきながら、このオーブを、そして私たちを守ろうとしてくれているんだ」
もしこの場にユウナ本人が居合わせたら、ブンブンと首を横に振りながら「俺そこまで愛国者でもねえよ!?」と全力で叫んでいたはずである。
彼からすれば、ただ自分が生き残り、後に快適な隠居生活を送るために全力を尽くしているだけなのだが、結果としてそれが国を救い、世界を動かす大計となってしまっているのだから、カガリの目にはそう映るのも仕方のないことであった。
「難しいかもしれないが、あいつを偏見の目で見ることだけはやめてほしい」
カガリの切実な願いに、トーヤはまだ少し納得がいかないような警戒の光を瞳に残しつつも、静かに頷いた。
「……カガリ姉様がそこまで仰るなら、僕も少し、見方を変えてみます」
姉の真剣な表情に押され、渋々ながらも歩み寄る姿勢を見せたトーヤ。オーブの次世代を担う若葉は少しずつ育ちつつあるのであった。
なおその裏で、当のユウナは着々と出撃の準備を整えつつも、どこか足取りが軽く、巨大MAに乗る事を全力で嫌がりつつも何処か浮かれた様子というか、テンションが少し高かった。
そのあからさまに緩んだ空気は、同じ格納庫にいや、キラやハイネといった鋭い男たちからすれば、一瞬で察せられる種類のものである。
(……あっ副総裁の奴…絶対に女性と何かあったな)
戦場に向かう前だというのに、妙に艶っぽいオーラを纏っているユウナを見て、ハイネ達は言葉を交わすまでもなく全く同じ確信を抱いていた。普段の病的なまでの警戒心やピリピリとした緊張感はどこへやら、
今のユウナは明らかに「事の後」の満足感に浸っている。そんな二人の冷ややかな、しかし確信に満ちた視線に気づいているのかいないのか、ユウナはそのまま、傍らのババへの文句を垂れつつも艦に乗り込むのであった。
・トーヤの非難
そもそもロゴスとの繋がりの疑惑のあと即座に引退+財産没収のコンボをしておいて政府中枢に関わりつつ我が家の顔でカガリに無礼にタメ口であれこれ言い出すのはおかしくない?そこは責任取って引退して牢獄ルートか大人しくすべきじゃない?と思ってるトーヤ君ですが、それを聞いた場合ユウナは気持ち悪いほどの笑みを浮かべてトーヤ君の言ってることは全面的に正しいと認めて権限縮小と休暇の増加と、なんなら二度と最前線でMSにぶち込まれないようにと動いていたでしょう。ある意味幼いゆえにフィルターなしでユウナを見てくれますのでユウナも大喜びですよ。
・原作との相違
原作ではレクイエムでユーラシアのモスクワが焼かれたあと多国籍連合軍、主に大西洋連邦あたりが主導となって奪還部隊を編成するも失敗して壊滅しますが、今作ではユウナ達がファウンデーションを今は刺激するなと計画した結果、戦力の消耗を抑えられることに。ただしそれはファウンデーション側も同じであり、彼らに時間を与えてしまい再編成の時間を恵んでしまう事に。これにより敵陣営は史実より修復したドレイク級や民間艦艇などを使い戦力を補うでしょうが、オルフェが旗艦ではなくまだアルテミスで指揮を取る事に繋がるのでした。
ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?
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原作通り。
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平和の為に覚悟を決める。