破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
ユウナのわざとらしい笑い声は、今や全世界の通信網を嘲笑の渦に巻き込んでいく。ファウンデーションは世間一般では閉じた国であり、アウラの名前は勿論知られてはいない。
だが、世界ではこの瞬間ユウナによってアウラのイメージが固定されていく。若作りしてイケメンコーディネイターを侍らせた俗物というイメージが。
「さて、画面の向こうの皆様。このデスティニープランというものが、本当に『誰もが適所につく』という理想を掲げていると言うのなら……この女王陛下には、女王としての適性は、果たしてあるのでしょうかねぇ? ……男日照りで美男子を量産し、若作りをして権力の座に居座り、レクイエムで全世界を恐喝する。……これこそが、デスティニープランの掲げるアルカディアなのでしょうか? 皆様は、どう思われます?」
ユウナは、画面のアウラの写真を指差しながらニンマリと笑みを浮かべて見せる。全世界への問いかけ同時に放たれた醜聞はコーディネイターもナチュラルも問わず、じわじわと広がっていく。
アウラは先ほどまでの幼くも尊大な女王の面影はどこへやら、今の彼女は顔中の血管を浮き出させ、怒りと屈辱で真っ赤に染まった形相で、狂ったようにモニターを指差している。
「母上、落ち着きください! このような低俗な相手の挑発に乗っては……!」
シュラが必死に制止を試みるが、アウラはもはや耳を貸さない。彼女にとって、自身が人生のすべてを注ぎ込み、英知をもって作り上げた最高傑作であるアコードたち。
それをあろうことか「男日照りを解消するためのラブドール」同然に貶められたことは、自身の魂を汚される以上の耐え難い侮辱である。
我が子への愛情ではなく、そこで最高傑作の否定という事実に激怒しているのがアウラという女性を表していると言えるだろう。
そしてシュラというバトルジャンキーが焦って思わず制止せざるを得ないという状況が、どれ程までの異常事態であるのか悠然と示している。
「黙れ!オーブにラクスがいるのなら、今はまだレクイエムで地を焼くわけにはいかぬ! ならばせめて、あのふざけた男を、あの穢らわしい口を叩くユウナ・ロマ・セイランを今すぐ殺せえええええ!!」
これが、自分たちの創造主なのか。自分たちアコードを「完璧な存在」として定義した神の姿なのか。
あまりにも感情的で、あまりにも直情的。その醜態は、彼らが蔑んできた「旧人類」そのものではないか。
だが、オルフェはその思考を即座に脳の隅へ押しやった。アコードにとって母の言葉は絶対であり、彼女を否定することは自分たちの存在意義を否定することに等しい。親と子である以上親に尽くすのが子の役目であり、自身の役割を果たす事が彼らの存在意義なのだから。
これは挑発だ。ミレニアムを敢えてこちらに狙わせるための、ユウナの卑劣な罠である。それは痛いほど理解できている。……しかし、これほどまでに全土へ向けて恥を晒され、その根源を放置しておくことは、ファウンデーションの威信を、アコードの矜持を根底から腐らせる。
「……総員、第一種戦闘配備。目標はコンパスの戦艦ミレニアム、およびユウナ・ロマ・セイラン」
オルフェは、震えるアウラの肩を支えるように立ちながら、その瞳に暗い火を灯して命令を下した。ここに至っては撃つしかないあるまい。現在計画の遂行にあたって最も邪魔な戦力であるバシレウスとミレニアム。その片方が出てきている以上打倒しない選択肢はない。
トダカへの尋問により、バシレウスはその巨体故に短期間しかミラージュコロイドは使用できないと言う情報は会得している。故にまずはミレニアムを撃破した上でオーブを焼き払い、最後にバシレウスさえ捕捉すれば、最早コンパスはおしまいなのだから。
「一撃で仕留めろ。レクイエム、発射準備! 照準……ミレニアム!!」
オルフェは、癇癪を起こして今も扇子でモニターを叩き続けているアウラの醜態を、敢えて無意識に視界から外した。
神として崇めるべき創造主が、たった一人の男の挑発で、ただの無様な老女に成り下がった瞬間を直視すれば、自分の中のアコードとしての矜持が崩壊すると本能が告げていたからだ。
「……必ず当てろ。あのような下劣な男に、二度と口を利かせるな」
冷酷な命令と共に、巨大な質量を持つレクイエムの照準が、オーブ近海で大気圏突破の白煙を上げ始めているミレニアムへと固定された。宇宙から降り注ぐ死の光が、収束を開始する。
一方、全世界へ向けて不敵な笑みを振りまき続けているユウナ・ロマ・セイランの内心は、阿鼻叫喚の地獄絵図であった。
(おい嘘だろ! あのクソババァ、実年齢を煽っただけでレクイエムをこっちに向けやがったぞ! 本気かよ! 返せよ! 俺が寝る間も惜しんで三時間もかけて練り上げた、珠玉の煽りフレーズ集を返せよクソが!)
ミレニアム内部に特設された中継スタジオ。カメラが回っている間は、いかに相手をイラつかせるか、いかに「汚ねぇドラえもん」として君臨するかに全力を注いでいるが、背中の冷や汗は滝のように流れている。
そもそも、この「ファウンデーションに対する、全方位挑発任務」を押し付けられた際、コンパスの面々は事も無げにこう言ったのだ。
『万が一本当に着弾しそうになったとしても、操舵士であるノイマン大尉なら絶対避けますから。大丈夫です!!』
(いやいやいや正気かよ!? ノイマンなら避けるって、それ作戦じゃなくてただの丸投げだろうが! ?ガンダムシリーズ屈指の操舵手+回避術? 知るかそんなもん! こっちは一発でも掠ったら分子レベルで蒸発するんだぞ!?)
国家の存亡を懸けた最終決戦において、「ノイマンがんばえー!」などという、あまりにも語彙力が欠如した、しかし信頼だけは無駄に重い精神論じみた作戦を本気で遂行しようとしているコンパスの面々に、ユウナは猛烈な眩暈を覚える。
だが、これが現在取り得る中で最も合理的な判断であることも、ユウナは痛いほど理解していた。
現在、カガリ達オーブ閣僚は通信の裏で全力を挙げてオーブ国民の避難誘導を進めている。驚異的なスピードで進む避難だが、それでもレクイエムの一撃を受ければ国そのものが地図から消える。
コノエ艦長らと協議した「対レクイエム計画」の肝は、レクイエムの照準をオーブ本国からミレニアムという、回避能力に長けた「単一の点」へと無理やり引き剥がすことにあった。
そのための、命懸けのヘイト買い。そのための、全力の罵詈雑言。慣れない頭を捻ってひねり出した「ババァ」という最低最悪の悪口は、見事に、そして最悪の形で功を奏してしまったのだ。
一方、当のノイマン大尉は、作戦概要を聞いていた際、ミレニアムのブリッジにある操舵席で、「えっ……」と、小さく、それでいて心底困惑した声を漏らしていたという。
数多の激戦を潜り抜け、アークエンジェルを沈没の危機から幾度となく救ってきた彼であっても、流石に今回の無茶振りは度を超している。
「避けてください」ではない。
「全世界を巻き込んだ史上最悪のヘイトスピーチで、発狂した独裁者が放つ最大出力のレクイエムを、真正面から引き受けて全部かわせ」という、もはや嫌がらせやパワハラに近い命令なのだ。
「……ノイマン大尉、やれますね?いや、やってくださいよ!!本当に!!」
横からアーサー副長の、縋るような、それでいて「貴方なら当然やるでしょう」という無言の圧力を孕んだ、泣きそうな視線が突き刺さる。ノイマンは、冷や汗が流れるのを自覚しながらも、震える手で操舵レバーを握り直し。ただ「善処します」と呟くほかなかったという。
だが、後に語り継がれる結果論から言えば、この世界において、あのアークエンジェルから続く「ノイマンがんばえー!」「なんとかなれー!」と全乗組員が祈るような、神業回避が行われることはなかったのだ。
レクイエムの極太の光がミレニアムを貫こうと収束し、世界中の人々が絶望に目を逸らそうとしたその時。ユウナは、中継の締めくくりに入っていた。
「……さて、それでは皆様。あまり長居してもババァ……おっと失礼、アウラ陛下の血圧が上がって、そのままポックリ逝かれても寝覚めが悪いですからね。我々ミレニアム一行は、これからその幼稚なオモチャ……レクイエムを直接、ブチ壊しに殴り込みに行くとしましょうか!」
ユウナがカメラに向かって、いっそ清々しいまでのクズスマイルで手を振ろうとした、その時だった。
画面の外から、一人のスタッフ――作業服に身を包んだ、どことなく浮世離れした雰囲気の青年(キラ)が、わざとらしく小走りで駆け寄り、ユウナに一枚の紙を手渡す。
勿論それを見たオルフェはキラ・ヤマトが生きている!?と驚いて……はいなかった。
正確にはそれどころの騒ぎではない、最悪の状況を収めるために必死になって鎮圧に取り組んでおり、最早キラ達が生きているという状況すらも霞むほどの最悪の時間を過ごしていたのだから。
「おやぁ……? なんですか、本番中に。あー、はいはい。……えっ? ほう、これはこれは……」
渡された紙を一瞥したユウナの眉が、これ以上ないほどに愉悦で吊り上がる。彼は再びカメラを覗き込むと、心底哀れむような目で見つめてみせる。
内心では「勝ったな」と勝利を確信しつつ、今頃ファウンデーションや反乱軍は未曾有の大混乱に陥っているであろう事実に思わず笑みを堪えるのに必死となりつつも、おどけた様に彼は全世界の時を一瞬で止めてしまった。
「いやぁー、お恥ずかしい! たった今、入ったニュースによりますと……。お前たちが唯一の拠り所にしていたその『レクイエム』、どうやら先程崩壊してしまったようですよぉ?」
レクイエムの崩壊。全世界にデスティニープランを通達したアコード達の切り札であり、ザフト反乱軍にとっては最後の希望と言えるそれが今この瞬間、あっさり崩壊したという衝撃の事実。
「いやー、傑作だ! 一応切り札ですよね? まったく別の所に着弾してしまったようでノーコンとしか言いようがありませんねぇ……世界を脅すための、たった一つの虎の子のオモチャ。それがこんなにあっさり壊れちゃうなんて! メンテナンス不足ですか? それとも、作り手が無能だったからでしょうかねぇ? ゲラゲラゲラ!!」
ユウナの嘲笑が、引き攣った笑い声が、静まり返った地球圏に響き渡る。世界は救われた、こんなふざけた放送の裏で行われた作戦により、その野望は打ち砕かれたのだ。
後は残敵を掃討し、トダカを奪還するのみ。内心ではあの巨大な金ピカMAに乗る事への忌避感に罵詈雑言をぶちまけたかったユウナであったが、これが終われば、ミーアに慰めてもらうという新たな目標を胸にひめ、最後に放送を締めくくる。
「それでは皆様、ご機嫌よう! 我々オーブとコンパス、そしてプラントや連合各国の皆様と共に、これからゴミ掃除を始めます故に……ああ、そうだ。番組の最後に、全世界の皆様へ、とある『とっておきの映像』を公開します。ファウンデーションがいかにして、この世界を騙そうとしていたか……。是非、最後までお楽しみくださいませ! それでは、バイバイッ!」
ユウナが軽薄に指を鳴らした瞬間、全世界をジャックしていた中継が、ノイズと共に切断される。後に残ったのは沈黙と困惑。何よりもそして地球とコロニーに住むすべての人々の命が救われたという安堵が世界を包み込んでいく。
そして、世界中にファウンデーションのマッチポンプが疑われる映像、画像が次々とネットの海に上げられていく。ムラサメ隊が決死となって集めた情報が全世界にばら撒かれていく。
そう、世界は救われたのだ。この後に始まる戦闘は後日談であり、人類が新たな明日を歩むのためのエピローグであるのだから。
・ノイマンがんばえー!
結果的にノイマンが働く必要は無くなって出番が一つ消え去ってしまう。正直に言えばお話を進めるに連れて、原作の名場面を次々と崩壊してしまうのはファンとしても申し訳なく思います。とはいえ原作と違いデュランダルが生存し、早期にアコードの情報を得た上でじっくりと仕込みを進めていたり。史実よりも予算やパイロットなどが優越しているからこそ全く違うエピソードも生まれる訳で……取り敢えずノイマンファンの皆様には申し訳ございません。
・アウラ
アウラに関しては小説版を見る限り、元々アコードを生み出す野心などは持っていたものの。身体が縮んでしまい精神的にも不安定になっていたものの、基本的に劇場版本編でも今作でもそこまで無能ムーブは実はいなかったり。ミレニアムを私利私欲で打てと命令しようにも、こちらのレクイエムを打倒する最大戦力であり、オーブはいつでも打てるのであればさっさと潰せばいいのは確か。今作であえて一つ失態を上げるのであれば、ラクスとミーアの違いに気付かなかった事くらいでしょうがそれも、ラクスとミーアのおっぱいの大きさ程度しかぱっと見判別出来ませんし普通わかるはずありませんから(オルフェに関していえば原作からしてラクスと会う前にツガイとなる女性だからと好意的に思っており、仲良くなるために情報を集めていたそうな)
・レクイエム崩壊
その内容は後日。もう、この時点で実はほぼ勝敗は決まっているので消化試合といっても過言ではありません。
結果的にはユウナやカガリも口にしていましたが、アウラの言う通り無差別にレクイエムで各軍事拠点を焼き払ったり制圧する木星帝国スタイルを行えば確実にファウンデーションはこの盤面でも余裕で勝てました。
しかし、ファウンデーションは戦後の統治も考えており、オルフェははっきり言ってアズラエルやジブリール、パトリックやデュランダルのような指導者と比べると「理性的」過ぎており、原作も含めて全世界に5日もの猶予期間を与えており、その辺りが敗因に繋がったのでしょう。
正直な話、レクイエムで全世界の軍事拠点やオーブを虱潰しに焼き払い、反抗する意志すら奪う徹底的な統治のための粛清を行えないのがある意味オルフェの敗因。即ち頭C.E.となって統治の為の大虐殺を最初に行えない「まとも」さが今回の結果につながるのでした。
ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?
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原作通り。
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平和の為に覚悟を決める。