破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

137 / 159
第六十二話 君(金ピカデストロイ)の名は

 

 

 

 結果として俺達はレクイエムを無力化することに成功し、ミレニアムは何の妨害を受けることもなく、滑るように重力圏を振り切って宇宙へと躍り出た。だが、俺の気分はちっとも晴れない。

 

 

 いや、多分コックピット内部にいたせいでノイマンの技巧をよく感じられなかったのもあるかも知れないが…ミレニアムの艦底にこの金ピカをくっつけて無理やり増設したブースターで大気圏突破するなんてなんつーことしてるんだ…!!

 

 

 

 目の前に広がるのは無機質なコックピット内壁と、チカチカと明滅する無数の計器類だけだ。座り心地の悪いシートに身を沈め、俺は漏れ出そうになる情けない悲鳴を必死に飲み込んでいた。

 

 

「嫌だなぁ……! 出撃したくねぇなぁ……!やっぱさぁ!?なんで俺がこんな歩く火薬庫みたいなデカブツに乗ってんだよ…!?我副総裁ぞ?我エライ人ぞ?」

 

 

「ですがカガリ様の方が権威は」

 

 

「うっせぇぞババ!」

 

 

 俺の背後、本来なら予備のスペースであるはずの場所に強引に増設されたコックピットブロックからは、ババの熱すぎる声が返ってくる。このデストロイという化け物じみた巨大モビルアーマーにおいて、俺がやるべき仕事は実質的に座っているだけだ。

 

 

 すべての火器管制、機体の姿勢制御、さらには索敵から電子戦に至るまで、背後のババが一人で完璧にこなしている。悔しいが、奴のMA適性はもはや卓越という言葉すら生ぬるい領域に達していた。

 

 

 聞けば奴はこれまで、連合から供与、あるいは接収したユークリッド、ザムザザー、ゲルスゲー、果ては水中の怪物リヴァイアサンに至るまで、ありとあらゆる大型MAを乗り回してきたという。

 

 

 オーブ軍広しといえど、これほどまでに巨大兵器に精通し、手足のように操る男は他にいないだろう。間違いなく「オーブ最強のMA乗り」なのだが、その才能のすべてが今、俺の背後で無駄に発揮されている事実に頭が痛くなる。

 

 

 というか、最強なら一人で乗ればいいだろうに!?なんで毎回わざわざ俺の背後にコックピットを増設してまで、二人羽織みたいな真似をさせるんだ!?

 

 

 せめて!!こんなクソデカいバカ機体ならさぁ!!居住スペースの一つや二つ、別区画に分けるくらいの余裕はあったはずだろ!?

 

 

 それなのに、今の俺は背中越しに忠義を全身にキメて興奮状態にある男の熱気をダイレクトに後頭部に浴び続けている!どうせ浴びるならミーアの方が良かったわ!何が悲しくて男臭いやつとコックピットに鮨詰めにされてるんだよ…!

 

 

 

 俺の背後、増設されたコックピットに鎮座するババからは、暑苦しい熱気と、それ以上にタチの悪い「忠義」という名のプレッシャーが漂ってきている。忠義って何だよ。本当に何なんだよ!!

 

 

 デストロイという、本来なら一人で戦場を更地にできるはずのバカげた巨体において、わざわざ俺をサブシートに座らせる意味があるのか?

 

 

「安心してくださいユウナ様! このババ、我が身を盾にしてでも、必ずやユウナ様に勝利と、煌々と輝く戦果を差し上げてみせますぞ!!」

 

 

「……だから、捧げんでいいって言ってるだろ! 俺の願いは安全圏への早期退却なんだよ!!」

 

 

 叫んだところで無駄だった。この時点でもうババは「忠義で脳を焼かれて人の話を聞かないモード」に完全移行している。絶好調な時の奴は、オーブのどの将軍よりも話が通じない。頭を抱えたくても、この狭い空間と背後からの熱気がそれを許してくれない。

 

 

 

 

 ため息を吐きながら現実逃避気味に、月面で繰り広げられた世紀の大作戦を振り返る。それにしても、と俺はミレニアムの進む先を見据えて、カガリたちが提案したあの狂気じみた作戦を思いだしていた。

 

 

 ミラージュコロイドステルスを搭載したコンテナを予め打ち上げて、アカツキで発射寸前のレクイエムの正面から対拠点用装備であるゼウスシルエットを叩き込んで中継リングを破壊、その後「気合いで」レクイエムを耐えて周辺に破壊の奔流を撒き散らした後即座に離脱――。

 

 

 最初にハインラインやエリカさんからその概要を聞かされた時は、自分の耳を疑ったね。

 

 

「死ぬわ!! そんなことしたらムウさんが確実に蒸発するわ!?」

 

 

 

気合いって何だよ!?あの人何回不可能を可能にさせられてんだよ!少しは休ませてやれや!?ラミアス艦長と籍も入れてないのに、そろそろラミアス艦長が胃痛でぶっ倒れるぞ!?

 

 

 そう叫んだ俺に、あの技術屋どもは涼しい顔で「ヤタノカガミであればレクイエムの直撃すら反射可能です。シミュレーション上は」なんて抜かしやがったんだ。結果として、あの黄金の装甲がマジでやってのけたのをモニター越しに見て、俺も認めざるを得なかったよ。

 

 

 あれやべぇよ、陽電子砲どころか貫通力に特化したドッズライフルですら、ちゃんと避弾経始などを計算して防御すれば弾けて致命傷には至らないってなんつー装備だ。

 

 

 

 とは言え、決まってしまった以上は仕方なく、この作戦には俺の意見もたっぷりねじ込ませてもらった。

 

 

 

 カガリ達の意見では中継ステーションを破壊しても、レクイエムの第一射は確実に地球に放たれるという話だった。それを俺がひたすら罵詈雑言を口にしてミレニアムにヘイトを集めてから、オーブ本国ではなく海上にレクイエムを誘導するのが当初の作戦であった。

 

 

しかし、ミレニアムがレクイエムを避けるのは完全にノイマンさん頼みだ。ノイマンの操舵技術は信頼してるが、それにしても怖過ぎる。ガンダムシリーズ屈指の操舵技術の持ち主とは言え一歩間違えれば俺たち全員が光の塵になっておしまいだぞ?

 

 

 そこで俺は、ミレニアムにヘイトを向けさせた後、中継リングを破壊するタイミングを早めて、そもそも攻撃を成功させない様にと前倒しさせたんだ。

 

 

 その上で、レクイエムが改造によって連射可能である可能性も示唆しつつ、俺は一つの提案を行った。それが、ユーラシアと東アジアからマルチランチャーパック……つまり核攻撃の為の専用パックを借り受け、ミラージュコロイドコンテナに更に複数のアカツキと共にウィンダムを配備する伏兵作戦だ。

 

 

 ムウが正面からレクイエムを受け止めて必死に耐えているその最中に、ヒルダたちのアカツキがウィンダム防衛の為の盾となって展開し、その後、無防備な発射口に直接核攻撃を叩き込んで完全に無力化する。

 

 

 あくまでムウさんのアカツキ一機だけなら、リングを破壊した瞬間に離脱する必要があるからどうしても手数が足りないんだ。それを強引に増やすための核だ。

 

 

 レクイエムは馬鹿みたいに頑丈な造りだから、正直なところ内部から核で爆発させたとしても完全に消滅させるのは難しいかもしれない。だが、それでも内部から焼き払えば数日は確実に無力化できるはずだと俺は踏んだが……結果としてそれは大正解。実際には核の集中投下に加えてEMPによる汚染も含めれば最早、早期の修復はまず間違いなく不可能だ。

 

 

 

 後は数日以内、というかこの機体に積まれた「Bデバイス」の寿命である五時間以内に、すべての決着をつければいい。それだけの無茶が出来る程度には、この「金ピカ」がどれほどデタラメな機体か理解しているつもりだ。なんだよ二倍って…!

 

 

 

 今頃、他の連中も各機のコックピットで待機しているはずだ。良くも悪くも、この戦いを短期決戦で終わらせるためには、この悪目立ちする金色の巨体が嫌でも必須になる。

 

 

 作戦は単純にして最悪だ。前面にこのデストロイを押し出してミレニアムの巨大な盾となり、敵の攻撃をすべてヤタノカガミとVPS装甲で受け止めつつ、背負った大火力で敵陣を焼き払う。

 

 護衛にはハイネのデスティニーを付け、後先考えずに戦場を暴れ回る……それが今回の俺のスタートラインであると同時に、俺の命がもっとも危うくなる瞬間だ。

 

 

 

「……帰りてぇ」

 

 

 

「了解ですユウナ様!!ユウナ様の言う通り、目の前の賊軍を全て殲滅してみせます!!」

 

 

「何をどう解釈したら帰りてぇの一言がそんな物騒な発言になるんだよ!?」

 

 

 ドヤ顔してるであろうババの視線を受けながらぜっっったいに振り向くものかと持ち込んだタブレットを注視する。ファウンデーション軍の主力は、ザムザザーを筆頭とするアドゥカーフ製MAや、無人機のジンが中心だ。そいつら相手なら、このデストロイなら何の問題もない。

 

 

 だが、問題はザフト反乱軍とアコードたちだ。奴らは質が違う。連中はジャガンナートの主導のもと備えてたらしく、ドッズライフルを高確率で装備している。いくらヤタノカガミがビームを弾くと言っても、あの貫通力に特化したドッズライフル相手では、当たり所が悪ければ装甲を抜かれかねない。

 

 

 その上、アコードたちの技量は異常だ。奴らが接近戦を仕掛けてきたら、俺とババは、かつて原作のミネルバ隊が次々と細切れにしていったあのデストロイたちと同じ末路を辿ることになる。

 

 

 

 そもそもデストロイという機体は、その巨体ゆえに近接戦に致命的な弱点を抱えている。もちろん、弾幕の雨あられどころか、弾幕の流星群と呼べるほどの圧倒的な火線を全方位に展開することは可能だ。

 

 

 だが、相手はあのアコードクラスのパイロットたちだ。いくらこちらがBデバイス3点セットで読心を封じていたとしても、奴らがその単純な技量だけで火網を潜り抜け、最短距離でこのコックピットを狙ってくれば、その瞬間にゲームオーバーだ。

 

 

 そのためにハイネがデスティニーで常に護衛に付いてくれることになっているし、キラ、シン、アスランの三人組も、俺が落ちれば作戦が瓦解することを理解して気にかけてくれるという。……だが、それだけ作戦の要である機体に乗せられているという事実が、余計に俺の胃をキリキリと締め付ける。

 

 

 正直、今すぐハッチを開けて飛び出してしまいたい。だが、あのラクスですらキラとの複座を拒まずに最前線に出ているんだ。そんな空気の中で、オーブの副総裁である俺だけが「怖いから降ります」なんて逃げられるわけねぇんだよ……!! やばい、本気で吐きそうだ。

 

 

 それにミーアに約束してる以上周囲に弱音を吐けないのもキツい。ババはだって?コイツはもう斜め上の解釈するから別にいいよもう…。

 

 

 

 俺は込み上げてくる酸っぱいものを必死に飲み込み、溜息を吐きながら背後のババに、せめてもの注文をぶつけるしかなかった。

 

 

 

「いいかババ! 絶対に敵を近寄らせるなよ! 懐に入られたら、俺たちはただのデカい標的でしかないんだからな! 遠距離からアウトレンジでチマチマ焼くんだ、分かったか!?」

 

 

 

「成程! さすがはユウナ様! つまり、我らが最も目立つ標的であり続けることで敵のヘイトを一点に買い、友軍の進路を切り拓く盾となれ、というお言葉ですね! 己を顧みず他を生かすその高潔な志、このババ、魂に刻みましたぞ!!」

 

 

「ちげぇよ!! 話を聞けよ!! どこをどう解釈したらそうなるんだよ!!」

 

 

 

 だが、返ってきたのは、俺の意図を斜め上に突き抜けて解釈した、ババの異様に澄んだ声だった。もはや突っ込む気力すら失せ、俺は深くシートに沈み込む。

 

 

 考えるのはもうやめだ。あと数分もすれば、この金ピカの巨体も作戦区画……つまり、敵の射程圏内に突っ込むことになる。俺の、あるいはババの指先一つで、モニターの向こう側にいる生身の人間たちの命がゴミのように奪われる。

 

 

 そして、俺自身もまた奪う側に回るんだ。操縦のすべてをババに任せているとはいえ、この席に座っている以上、俺が殺しているのと同義。なら、せめてメンタルがイカれないように何かに意識を集中させるしかない。

 

 

 

「おいババ、ちょっといいか?」

 

 

 

 不意に湧き上がった疑問を、俺は後ろを振り返らず通信越しにぶつけてみた。ババは即座に、目に見えるような勢いで背筋を正すのが気配で分かった。顔は見ないぞ!絶対暑苦しい…!

 

 

「はっ、何なりと! ユウナ様、御下命でしょうか!」

 

 

「……いや、下命ってほどじゃないんだが。あと数分で戦闘が始まるだろ? なのに、この機体にはまだ名前がない。一応『デストロイ』なんて仮称で呼ばれてるが……二倍サイズでヤタノカガミをフル搭載して、中身も外見もこれだけ改良してるんだ。同じ名前で呼ぶのは釈然としないし、何より国を背負って戦うこいつが『破壊する(デストロイ)』なんて名前なのはダメだろ。色々な意味で」

 

 

 内心では、前世のアメリカの「ヘルキャット(地獄の猫)」だの「アヴェンジャー(復讐者)」だのといった、物騒極まりないネーミングセンスの機体も思い浮かべていた。

 

 あっちはあっちで振り切っていて格好いいが、ここは一応、平和を掲げるオーブの機体だ。連合の連中もよく「フォビドゥン(禁じられた)」だの「レイダー(掠奪者)」だの「カラミティ(惨劇)」なんて、悪役全開の名前を制式採用したもんだよ。ネーミングセンスが中二病のそれだろ。

 

 

「デストロイじゃあ、ただの破壊魔だ。こいつはもっとこう、守護とか、理不尽を叩き潰す力とか、そういう意味を込めるべきだと思うんだが。……お前なら、こいつを何と呼ぶ?」

 

 

 俺がそう問いかけると、ババはしばし沈黙した後、コックピットが震えるほどの咆哮を上げた。あっやべぇスイッチ入った気がする…!

 

 

 

「おおお……! 素晴らしい! 破壊の先にある平和を見据えた、新たなる真名! さすがはユウナ様、機体の魂までも見抜いておられる! このババ、感服いたしました!しかも、この私に名前をつける権利を下さるとは! ユウナ様!なんと慈悲深きお言葉……ッ!!」

 

 

 

 後ろでズビズビと鼻をすする、文字通りの号泣が聞こえてきたが……よし、無視だ。全力で無視することにする。

 

 

 一応、今からならミレニアムに頼めば登録名くらいは変えられるし、内心こいつのことは大の苦手だが――いや、本気で二度とこんな鮨詰め複座なんてごめんだが!――それでも、これから死地へ向かう相棒の名前くらいは、こいつにも決める権利はあるはずだ。

 

 

 俺だって色々考えたがどうもネーミングが日本神話関連ばかりになっちまう。それも悪くないが、正直被りそうで怖いんだよな……例えば咄嗟にフツノミタマだのクサナギだの考えたがどちらもすでに採用済み。

 

 

 なら自然現象は?と思いつくが大抵のものは既にオーブ軍艦艇に名付けられている。シラヌイだとかアケボノだとか……俺の思いつくであろう名前は大体既に先駆者がおり、それに被らない名前を名付けようとするのはなかなか難しい。

 

 

 ババはしばらく呻くように悩み抜いた末、自身に満ちた声で妙案だと言わんばかりに提案する。

 

 

 

 

「……『王牙(おうが)』。というのは、いかがでしょうか?」

 

 

「オウガ?」

 

 

 俺が聞き返すと、ババは確信に満ちた熱量で言葉を継いだ。

 

 

「左様です! このオーブに相応しき、唯一無二の存在であるユウナ様にふさわしい、最強の――」

 

 

 

「おい待て、オーブの『王』はカガリだろ。何さらっと俺を据えてんだ」

 

 

 

「いいえ! この国の真の王に相応しいユウナ様こそが、その牙を持って――」

 

 

「カガリな?これ以上は政治的にも俺の首の皮一枚的にも色々とヤバいから、マジで黙れババ。」

 

 

 一瞬殺すぞという言葉が口に出そうになるくらいには俺がマジなトーンで制止すると、ババは心底不満そうに「……ユウナ様がそうおっしゃるのであれば」と引き下がった。

 

 やべぇよこいつ。放っておいたら俺を担ぎ上げてカガリ相手にクーデターでも起こしかねないぞ。そうなったら真っ先に俺が処刑されるんだよ。全力で命をかけて止めなきゃならない案件なんだから頼むからザフト反乱軍みたいな事はマジでやめてくれ!!

 

 

 いや待てよ?よく考えたら俺一回クーデター起こしてウナト達を追放してるし……よし!これ以上はやめよう!!おしまい!もう閉店!オラ!見せ物じゃねぇんだぞ帰った!帰った!!!

 

 

 ともかく、ババは気を取り直したように、その「王牙」という言葉の解釈を強引に捻じ曲げてきた。

 

 

 

「……では、解釈を少し変えまして。カガリ様という『王』を守るための牙。常に主君の後ろに潜み、自ら牙を持たぬ民たちの代わりに理不尽を噛み砕く牙。これならば、いかがでしょうか?」

 

 

「……まぁ、それならギリギリ許容範囲か」

 

 

 

 カガリを守る牙、か。確かに今の俺にピッタリな、最低で最高の役回りかもしれない。カガリという王を守るための、最終兵器である牙。牙を持たぬ民たちの牙となり、未来を守るための黄金の盾になる。悪くない。少なくとも「デストロイ」なんて、呪いのような名前よりは遥かにマシだ。

 

 

 俺がそんなことを考えていると、背後のババはさらに熱弁を振るい始めた。

 

 

 

「それにユウナ様! 『オウガ』という響きには、オーガ……すなわち『鬼』という意味も込められます! 我らオーブ軍兵士は、皆が護国の鬼となる覚悟。敵対する者たちにとって、この機体はまさに容赦なき鬼そのものとなるでしょう!」

 

 

「……確かに、コイツの戦い方はえげつないからな。鬼と呼ばれるくらいで丁度いいか」

 

 

 俺は苦笑交じりに応じながら、ふと思い出した。そういえば、この世界(ガンダムSEED)の生みの親である福田監督は、昔『GEAR戦士電童』という作品にも携わっていたはずだ。そこにも「凰牙(オウガ)」と呼ばれる機体が登場していた。前世で遊んだスパロボの記憶だが、なんとも懐かしい。

 

 

 こんな土壇場でその名前が出てくるとは。これも一種のオマージュか、あるいは運命的な巡り合わせだろうか。というかズゴックの追加装備もどう見てもドラグナーで見たことあるものだったし、そう言う世界の意思的なものが動いてるのかもしれん。

 

 

 

 そんな柄にもない感傷に浸りつつ、俺はミレニアムのオペレーターに通信を入れる。

 

 

 

「ミレニアム、聞こえるか。……すまないが、本機の呼称を『デストロイ』から『オウガ』に変更してくれ。登録の書き換えを頼む」

 

 

 

『……えっ? オ、オウガ、ですか?』

 

 

 

 通信の向こうでオペレーターの……アビー・ウィンザーだったか?の戸惑う声が聞こえる。無理もない、出撃直前のこのクソ忙しいタイミングで何を言ってるんだと思われても仕方ない。ごめん。本当にごめんな…!

 

 

 

「ああ。あと数分で出撃だって時に、こんなお遊びに付き合わせてすまんね。だがデストロイって名前のままじゃ……ん、どうした?」

 

 

『いえ……かしこまりました。登録を『オウガ』に変更します。……ところで副総裁、通信の背後でババ三佐が物凄い勢いで号泣されている声が入っているのですが、何かありましたか!?』

 

 

「……。ああ、それは気にするな。全力で無視しろ。」

 

 

 

  俺はそれだけ言い放ち、通信を切った。背後からは「うおおぉぉん! ユウナ様ぁぁ!」という、もはや嗚咽とも咆哮ともつかない声が響き続けている。

 

 

 

 下手にこいつの忠誠度を上げてしまったことに、今更ながら激しい後悔の念が湧き上がってくる。そういえば、エヴァンゲリオンにはパイロットを外部入力で強制的に気絶させるシーンがあった気がするが、本気でコンパスの技術陣に頼んでそれを取り入れてもらうべきだろうか?

 

 

 この暑苦しい忠義の叫びをシャットダウンできるスイッチが、今この瞬間に何よりも欲しい。いやマジで!帰ったら真っ先にエリカさんとハインラインに作らせよう!絶対に…!!

 

 

 

 だが、泣いても笑ってもあと数分。ここから先は、俺の指先一つで命が羽虫のように消えていく地獄だ。そんな場所へ向かうのに、このままガタガタ震えていては精神が保たない。

 

 

 

「……よし。考えろ。もっとこう、生命の神秘とか、癒やしに満ちたものを……」

 

 

 

 俺は深く、深くシートに身を沈め、目を閉じた。迫り来る死の恐怖と、背後からの湿っぽい泣き声を脳内から締め出す。代わりに想起するのは、帰りを待っているミーアの姿だ。

 

 

 あの扇情的な衣装に包まれた、滑らかな肌の質感。指に吸い付くような曲線のライン。そして何より、視界を覆い尽くさんばかりの、あの圧倒的なボリュームを誇る桃色の双丘……。

 

 

 そうだ、今はただミーアの乳のことだけを考えよう。あの至高の柔らかさに顔を埋める瞬間を想像すれば、この鉄臭いコックピットも、ババの熱気も、アコード達も、すべては些細なノイズに過ぎない。

 

 

 トダカの事はきっとどうにかなる。ならもう、俺は直前までミーアの乳だけでバカになるか。いやどっちかと言えば猿の方が近そうだが。

 

 

 俺はひたすらミーアの豊満な胸部を脳内で再構築し、精神の平穏を取り込もうと努めた。リラックスだ。これこそが、副総裁が過酷な最前線で正気を保つための、唯一の方法なのだから。

 

 





https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=338757&uid=277688

 先日募集させて頂いたヤタノカガミ搭載デストロイのネーミングにおけるアンケートの結果、蒼天様による王牙(オーガ)という名称をオウガと少し改変した上で採用させて頂きました。蒼天様及び、様々な素敵な名前の提案誠にありがとうございます。

 今回オウガと名付けた1番の理由は本編にもある通り、この作品は機動戦士ガンダムSEED FREEDOMの二次創作であり、原作映画では福田監督が制作に関わったドラグナーに登場する機体のオマージュであるキャバリアーアイフリッドや、通称ツインレーザーソードと呼ばれるドラグナーの合体技など過去作品のオマージュが多数入り混じっている。

 ならば、福田監督のもう一つの代表作であるGEAR戦士電童のオマージュ要素があってもいいのでは?となった事や、王の牙というネーミングがユウナの立場にぴったりである事などが採用理由となっていますね。なお元ネタとなった凰牙のパイロットであるアルテアは、敵陣営として登場しつつも記憶が混濁した事で味方ポジになった事も含めて少しだけユウナに似ていたります。いや、ユウナに似ているって普通に悪口ですが。

 なお実は、ババの発言にユウナは作中でもトップクラスのガチギレをしていたのは秘密です。ババも悪気はないというか本気でユウナに忠誠を誓っているのですが、ユウナ自身は権力欲もなければカガリを蹴落とす意図も理由も何もひとつありません。とは言えババからすればユウナは一度クーデターを引き起こしていますし大体ユウナの身から出た錆です。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。