破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第六十三話 王の牙

 

 

 

 

 

 だが、現実は非情だ。脳内のピンク色の楽園を切り裂くように、正面モニターにミレニアムのブリッジが、そしてコノエ艦長の顔が映し出された。

 

 

 

「副総裁、準備はよろしいですか。キラ准将、およびハイネ中佐も各機、配置に就きました」

 

 

 

 横のサブモニターには、覚悟を決めたキラの顔や、昂る感情を抑えきれない中佐の表情が並ぶ。いよいよだ。ミーア、すまない。俺は一度猿から人間に進化、いや、肉壁に戻らなきゃならないらしい。

 

 

 

 

「ああ、艦長。……いつでもいい。最初で最後のオウガの舞台だ、最高の演出を頼むよ」

 

 

 

 こんなクソデカ機体は本来抑止力として君臨するものであって、戦場にポンポン出てはいけないもんだ。俺が虚勢を張ってそう告げた瞬間、背後のババが待ってましたと言わんばかりに吠えている。

 

 

「了解! コノエ艦長、ババ三佐であります! 我が君の御心のままに、これより出撃いたします! オウガをミレニアムからパージしてください!」

 

 

 ババの要請を合図と共に、機体全体に凄まじい衝撃が走る。ミレニアムの艦底に堅固に繋ぎ止められていたオウガ――かつては恐怖と虐殺の象徴だったその巨体が、黄金の光を撒き散らしながら漆黒の宇宙へと解き放たれた。

 

 

 

 慣性のままに先行し、ミレニアムの前面を覆うように位置取る巨大な背中。本来なら戦場を蹂躙し、焼き尽くすためだけに作られた化け物が、今は主を守る不動の門番としてそこに君臨している。

 

 

 

「ハイネ・ヴェステンフルス! 出るぞ!!」

 

 

 

 間を置かず、ミレニアムのカタパルトから鮮烈なオレンジの光が飛び出した。ハイネが駆る専用のデスティニーだ。その翼は夜の帳を切り裂くように翻り、巨体ゆえに鈍重なオウガの周囲を鋭く旋回する。

 

 

 やがてオレンジ色の残光は、巨大な金色の肩――ヤタノカガミによって星々すら映し出す装甲の上へと着地した。デスティニーは重厚な質量感を伴って膝をつき、巨大な対艦刀「アロンダイト」を音もなく引き抜く。

 

 

 

 漆黒の宇宙を背景に、燦然と輝く黄金の巨神と、その肩で剣を構えるオレンジ色の騎士。その光景は、さながら女王を護る騎士の如き、不気味なほどに完成された美しさを湛えていた。

 

 

「背中は任せたぞ、戦友!」

 

 

 通信越しに響くハイネの弾んだ声に、背後のコックピットからババがこれ以上ないほど威勢のいい返声を叩き返した。

 

 

「任された!貴殿も背後から撃たないでほしいな戦友(とも)よ!!」

 

 

 この二人、戦後に個人的な交流を深めていたらしく、酒の席や訓練校の視察などで意気投合していた仲だという。だが、互いに多忙な身ゆえに戦場での共同出撃だけは一度も叶っていなかった。

 

 

 それがこの最終決戦という大舞台で、しかも黄金の巨神とその肩に立つ騎士という最高に「映える」形で実現したのだ。二人のテンションは、作戦開始前だというのに既に最高潮に達している。

 

 

 一方で、ミレニアムのブリッジでは、出撃を志願しようとしたのか、キラが「艦長、僕は……」と言いかけたところで、コノエ艦長の諭しつつも断固とした制止の声が響いている。

 

 

「ヤマト准将、およびクライン総裁。貴方方は今は待機を。盤上のキングが自ら最前線に躍り出るのは、まだ早い。まずはどっしりと構えていてください。……まずは、セイラン副総裁の勇姿を、その目に焼き付けていただく」

 

 

 モニター越しに、コノエ艦長の信頼に満ちた(と勝手に周りに解釈される)視線がこちらに向けられる。キラも、そして隣にいるラクスも、どこか祈るような、あるいは期待を込めたような眼差しで、この黄金の巨体を見つめているのが分かった。

 

 

 

(勇姿なんて示したくねぇんだよ、俺はぁぁぁぁぁッ!!!)

 

 

 

 喉元まで出かかった情けない悲鳴を、俺は必死に飲み込んだ。ここで副総裁が「嫌だ!怖い!降ろせ!」なんて喚き散らしたら、ミレニアム全体の士気が音を立てて崩壊する。……今は我慢だ。どうせ戦闘が始まれば、嫌でも叫びまくることになるんだからな!

 

 

 

 そんな俺の絶望を余所に、コンソールから「カチッ」と乾いた異音が響いた。メインモニターの端に、五時間からカウントダウンを始めるタイマーが浮き上がる。稼働限界まで五時間、それより前に終わらせる必要があるが3分で終わらせるどこぞの光の巨人と比べるとかなり余裕はある。

 

 

 

(……Bデバイスが作動したか。本当にもう、後戻りできないんだな……)

 

 

 減っていく数字を眺めながら、俺は「もう嫌だなぁ……」と小声で一度だけ漏らした。だが、隣で鼻息を荒くしているババに、そんな弱音は一滴も届いていない。

 

 

 

「おう! いけババ! だがな、何度も言うが作戦名は『命を大事に』だからな! 分かってるな!?」

 

 

 

 俺としては、最大限の「安全第一」を命じたつもりだった。ドラクエの作戦コマンドのごとく、とにかく生存を最優先に、無理な突撃はせず、慎重に立ち回れという意味を込めて。

 

 

 

 だが、ババは、潤んだ瞳でこちらを振り返り、我が意を得たりとばかりに胸を叩いた。

 

 

 

「おおぉ……! 閣下! 私のような末端の兵の命まで、それほどまでに慈しんでくださるとは! かしこまりました! このババ、その御慈悲に応えるべく、これより命を大事にしつつも決死隊となりて、ユウナ様にこの命をすべて捧げ、敵陣を蹂躙し尽くして参りますぞぉぉッ!!」

 

 

「違ぇよ!!! 俺の!! 命を!! 大事にしろって意味で後半の必要ねぇだろ!?この猪バカがよぉ!!」

 

 

 

 俺の必死の訂正は、出力最大になったスラスターの轟音にかき消された。黄金の巨躯「オウガ」は、ミレニアムを先導するように力強く加速し、漆黒の宇宙を切り裂いて進む。

 

 

 その後ろには、まるで女王の露払いをするかのように、ハイネのオレンジ色のデスティニーが対艦刀を構えたままぴたりと寄り添っていた。

 

 

 

「ユウナ様! 敵艦隊の砲火が一斉に来ますぞ!!」

 

 

 

 ババの叫びと同時に、オウガに搭載された艦艇用並みの高性能レーダーが、俺のモニターへおぞましい数の赤点を吐き出した。

 

 

 正面に展開しているのはザフト反乱軍の主力艦隊だ。ナスカ級、そしてローラシア級……それら無数の艦船から放たれる主砲の銃口が、ミレニアムを――いや、その前面に文字通りの「盾」として鎮座するこのオウガ一点に向けられている。

 

 

 

 『LOCK』『LOCK』『LOCK』『LOCK』――!!

 

 

 

 コックピット内に鳴り響く、耳を劈くようなアラートの嵐。無数の火線に狙われていることを示す警告灯の点滅に、俺の心臓は本気で止まりそうになった。喉の奥まで心臓がせり上がってくるような、生きた心地のしない恐怖。だが、そんな俺のパニックを置き去りにして、ババの無駄に熱い命令が響く。

 

 

 

「ハイネ! 来るぞ! オウガの後ろで待機を!!」

 

 

「了解! 悪いな、盾になってもらうぞ!」

 

 

 

 ババの叫びと共にハイネのデスティニーが加速し、巨大なオウガの背後へと滑り込む。

 

 

 続いてミレニアムまでもが、この金ピカの巨体を防壁にするように速度を微調整し始めた。

 

 

 

(……いや待て、やっぱこれおかしいだろ!?)

 

 

 

 確かにこの作戦は、俺が「ヤタノカガミ」を全面に押し出して耐えるという前提だ。理屈では分かっている。盾が一番前に出るのは正しい戦術だ。

 

 

 ……でも、護衛のハイネも、俺たちを守るはずの母艦も、全員揃いも揃って俺の影に隠れてるこの現状、やっぱり絶対におかしいだろ!?

 

 

 

 我副総裁ぞ!?我副総裁なんぞ!?ユウナバリアー!って言いながら大量の艦砲を向けられてる副総裁を盾にするって絵面がアレだろ流石に!?

 

 

 

「おい、ちょっと待…」

 

 

 俺の抗議など、宇宙の闇に消えていき、正面の空間が、無数の艦砲射撃によって白く塗り潰された。視界を埋め尽くすほどの光の濁流が、逃げ場のない速度で黄金の装甲へと迫り来る。

 

 

 もはや思考は停止し、俺はただ操縦桿を握り潰さんばかりに力を込めて、魂の底から絶叫した。

 

 

 

「う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!! なんとかなれーーーーーーッ!!!」

 

 

 

 刹那、数多の陽電子砲と収束火線砲がオウガへと着弾し、宇宙に黄金と白銀の火花が爆発的に散っていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 レクイエムへの核攻撃。その報は、ファウンデーション軍およびザフト反乱軍の司令部に、言葉に尽くしがたい衝撃をもたらした。

 

 

 唯一無二の、そして絶対的な勝利の切り札。それが本格的な武力衝突の前に、ユウナによるふざけた演説と同時に無力化されたのだ。その事実に、女王アウラは激昂。人目も憚らず手にした扇子を壁に叩きつけ、耳を覆いたくなるような罵詈雑言を側近たちに浴びせ続けた。

 

 

 宰相オルフェもまた、想定外の事態に思考が一瞬停止する。完璧であったはずの自らの筋書きを、ユウナという「イレギュラー」が無残に引き裂いたからだ。

 

 

 彼によってラクスの身柄は囚われたままであり、マッチポンプにも失敗した挙句、同族であるリューを失ったその内面は怒りで埋め尽くされている。しかし、彼は即座に感情を切り替える。

 

 

「これよりグルヴェイグに移る!シュラ、リデル、グリフィン、ダニエルはコンパスの部隊を何としても落とせ!母上はアルテミスで待機を、イングリットは捕虜を見張れ!」

 

 

 そう、命令したオルフェはヴァナヘイム級惑星間航宙戦艦、旗艦グルヴェイグに乗り込み、自ら直接指揮を執ることで軍の混乱を最小限に抑え込んだ。

 

 

 アルテミス要塞の守護をイングリットとアウラに託し、最強のアコードであるシュラを惜しげもなく最前線へと投入。迫り来るミレニアム、そしてあの忌々しいふざけた成金趣味の黄金の巨体を破壊すべく、全兵力をつぎ込む決断を下したのだ。

 

 

「レクイエムの破壊は想定外だが、この物量差であれば巻き返せる」

 

 

 オルフェの言葉は、単なる虚勢ではなかった。当初、コンパス側が50隻程度と見積もっていたファウンデーション艦隊は、実際には大小合わせて80隻近く存在していたのだ。

 

 

 

 これほどの艦隊を短期間で編成できた理由は三つ。

 

 

 

 一つは、自動化システムの徹底による極限までの乗員削減、二つ目は、デスティニープランに基づく英才教育によって、国民を少年兵すら即戦力の士官として短期間で育成し終えていたこと。

 

 

 そして三つ目。これこそが最も残酷な理由であり、この5日間の間に、MSパイロットや将校クラスに対して執拗に行われた精神干渉である。

 

 

 アコードによる精神干渉は、単に相手を操るだけではない。自身と対象の思考を深くリンクさせることで、本来ならばあり得ない行動……例えば、コーディネイター至上主義を掲げる若者に、不倶戴天の敵であるブルーコスモスの如き過激なテロ行為を唆し、MSを強奪させ暴れ回らせるといったことすら可能にする。

 

 

 しかし、思考を錯乱させることは、彼らの能力のほんの一側面に過ぎない。多種多様な能力の中でも、この大規模な艦隊を統率する上で最も効果を発揮したのが「思考の固定化」であった。

 

 

 これは0から1を生み出す洗脳とは本質的に異なる。今回のザフト反乱軍の多くは、本国制圧の失敗や、ラメント議長やラクス・クラインの演説によって、自分たちの正義に疑念を抱き、士気が崩壊寸前となっていた。脱走兵すら相次ごうとしていたその瀬戸際で、アコードたちは彼らの精神に楔を打ち込み、思考を特定の地点で凍結させたのだ。

 

 

 即ち、かつて「血のバレンタイン」で多くの同胞を焼き殺されたナチュラルへの憎悪。そして、そんな仇敵に譲歩の構えを見せる現政権への煮え切らない怒り。それら元々心の中にあった負の感情だけを不自然なまでに増幅させたのだ。

 

 

 もはや彼らの中に迷いが入り込む余地はない。モラルハザードは完全に封殺され、彼らはただ仇敵を滅ぼすことのみを熱望する、死をも恐れぬ狂信的な殉教者へと変貌を遂げたのだ。

 

 

 これこそが、アコードがデスティニープランにおいて欠かせない存在であることの裏返しである。社会における不適切なノイズを封殺し、優れた人材を社会の歯車として最適の場所に固定化する。

 

 

 それは自由意志の剥奪という名の調整ではあるが、それは同時に「迷い」という苦痛からの救済なのだから。

 

 

 

 その非人道性を糾弾したところで、彼らにとっては無意味だ。アコードたちにとって、それは世界のために個々の能力を最大限に活かせる完璧な環境を提供しているに過ぎない。精神を固定された兵士たちは、もはや背後を顧みることもなく、ただ迷いのない瞳で眼前の目標を破壊することだけを見据えている。

 

 

 

 ミネルバの指揮を執るクーデター軍の首謀者、ハリ・ジャガンナート中佐は、数少ない「思考の固定化」を施されていない人員であった。しかし、彼自身の思考もまた、長年の執念と責任、そして引き返せぬ場所まで来てしまったという焦燥によって、アコードの手を借りるまでもなく硬直していた。

 

 

 

「……勝つ。この戦いに勝たねば、我々に明日はない」

 

 

 

 絞り出すような彼の呟きは、しかし、戦場に現れた「異形」を目にした瞬間、驚愕へと塗り替えられていく。

 

 

 

 ファウンデーション軍、そしてザフト反乱軍のモニターに映し出されたその姿は、かつての戦乱を知る者たちにとって、悪夢の再来以外の何物でもなかった。

 

 

 

 

「デストロイ……!? いや、まさか、あのサイズは何だ……!」

 

 

 

 

 兵士の一人が、引き攣った声を上げる。かつてロゴスが投入し、ヘブンズベース攻防戦で数多のコーディネイターを屠った虐殺兵器。だが、眼前に鎮座するそれは、記憶の中にあるデストロイとは明らかに一線を画していた。

 

 

 

 通常のデストロイですら全高約50メートルという、モビルスーツの三倍近い巨躯を誇るが、そのさらに二倍――優に100メートルを超えるという、まさに動く要塞。通常のMSと並べば五倍以上の体格差があるその巨体は、戦艦ミレニアムの前面を完全に覆い隠すほどの威容を誇っていた。

 

 

 そして何より、その毒々しいまでの黄金の輝き。全身を覆う鏡面装甲「ヤタノカガミ」が、遠く離れた恒星の光を反射し、漆黒の宇宙に不吉な黄金の輪郭を描き出す。その姿は、救済の神のようでもあり、すべてを焼き尽くす奈落の鬼のようでもあった。

 

 

 旗艦グルヴェイグの玉座で、オルフェはいち早くその「色」の正体を見抜いた。

 

 

「総員に告ぐ! 撃つな、攻撃を停止せよ! あの機体……あの金色の装甲にビームは効かん! 下手に撃てばこちらが――」

 

 

 オルフェの警告が全軍に響き渡る。だが、彼の理知的な叫びが届くよりも早く、戦場の熱狂と恐怖が理性を上書きした。

 

 

 その火蓋を切ったのは、一隻のナスカ級高速戦闘艦だった。

 

 

 

 指揮系統が二分されていた事に加え、ザフト軍特有の「個々の判断を優先する」という青年士官たちの功名心が仇となる。何より、アコードの精神干渉によって「ナチュラルへの憎悪」を限界まで増幅させられた若き志願兵たちにとって、目前の巨大な標的を前に引き金(トリガー)を抑えることなど、もはや不可能だったのだ。

 

 

 

「オーブの成金め、沈めぇッ!!」

 

 

 ナスカ級の主砲から放たれた緑色のビームが、宇宙を切り裂いてオウガへと着弾する。それが、ダムが決壊するような合図となった。オルフェの制止も虚しく、恐怖に駆られた他の艦艇やMS隊からも、我先にとビームやミサイルが乱射された。

 

 

 

 数多の陽電子砲、収束火線砲、そしてミサイルの奔流。大小80隻の艦隊が放つ、文字通り一国を滅ぼし得るほどの殺意の濁流が、逃げ場のないオウガの巨体へと真っ向から突き刺さった。

 

 

 轟音なき宇宙で、黄金の装甲と白銀のビームが激突する。着弾の瞬間、オウガの周囲には、黄金と白銀の火花が爆発的に散り、眩いばかりの光球が形成された。誰もが「消滅した」と確信したその光の渦の中で、しかし黄金の巨神は、傷一つ負うことなく静かに牙を研ぎつづける。

 

 

 

 

 

 降り注いだ無数のビームは、ヤタノカガミの鏡面装甲に触れた瞬間に吸い込まれるように屈折し、装甲表面を奔る光の奔流となって機体全体を包み込んでいる。さらに、物理的な弾頭を持つミサイルやレールガンの直撃すら、最新鋭のVPS装甲がその衝撃を完全に無効化していた。

 

 

 本来、ビームを跳ね返す「ヤタノカガミ」と、物理攻撃を遮断する「フェイズシフト系装甲」の同時展開は、機体電力の消費があまりに激しく、MSサイズでは実現不可能とされていた領域だ。ましてやこれほどの巨体、通常であれば一瞬でパワーダウンを引き起こし、ただの巨大な鉄屑へと成り下がるはずであった。

 

 

 しかし、この「オウガ」には、その常識を打ち破るための「湯水のごとき予算」が投じられていた。

 

 

 

 開発者であるヴァレリオ・ヴァレリが、この機体のためだけに心血を注いで作り上げた新型大容量バッテリー――「超高出力専用パワーエクステンダー」。それは、ユウナの稼ぎを文字通り垂れ流しながら完成させた、オーブの暴走の産物だったのだ。

 

 

 なお、その開発費用報告書を見た際、代表首長であるカガリの目が完全に死んでいたことは、一部の政府高官の間では有名な話である。

 

 

 このパワーエクステンダーによる底なしの電力供給が、二つの絶対防壁の両立を可能にし、さらには受けたビームエネルギーを再循環させるという、兵器としての完成形を体現させていたのだ。

 

 

 

「……効いてない、だと……?」

 

 

 

 反乱軍の通信回線に、絶望に染まった声が漏れる。無傷。傷一つ、煤一つ付いていない。それどころか、オウガは受けた攻撃エネルギーをその身に溜め込み、全身の黄金がさらに眩く、神々しく発光し始めていた。

 

 

 

「ババ! 溜まったな! 盛大に吐き出させてやれッ!!」

 

 

 

「承知いたしましたぁッ! 逆賊どもよ、これこそがユウナ様の……オーブの怒りと知れぇい!!」

 

 

 

 ユウナの絶叫に近い号令が飛び、ババがコンソールを力任せに叩き込む。オウガの胸部が臨界を超えたエネルギーによって白熱化し、次の瞬間、宇宙の闇を真っ二つに引き裂くような、凄まじいまでの極太の熱線が前方へと解き放たれた。

 

 

 それはもはや、モビルスーツの放つ攻撃ではない。戦艦の主砲数門を束ねたよりも遥かに巨大な、純粋な破壊の奔流だ。

 

 

 

 回避運動すら許さなかった。

 

 

 射線上に位置していたザフト反乱軍のナスカ級2隻、そしてファウンデーション軍のドレイク級1隻は、逃れる術もなく熱線の濁流に呑み込まれる。シールドを展開していたドレイク級は、そのエネルギーフィールドが異常な熱量に晒された瞬間に紙細工のように弾け飛び、装甲に直接光が触れた刹那、金属は沸騰を通り越して原子レベルで分解、艦体は内側から溶解し崩壊を始めた。

 

 

 ナスカ級の内部、ブリッジにいたオペレーターたちは、遮光フィルターすら突き抜けて迫る「太陽」のような光に視神経を焼かれ、驚愕に顔を歪める暇すら与えられない。熱線が装甲を突き破り船内を駆け抜けた瞬間、人間という有機体は一瞬にして白く発光し、骨も残さず蒸発。絶望や苦痛を感じるはずの神経系すら一足飛びに焼き切られ、意識はただ「白」に呑み込まれて消滅していく。

 

 

 真空の宇宙において爆発を許されない超高温のプラズマと化した熱線は、3隻の艦の艦体を構成する全ての質量を 光の粒子へと変え、爆発音の代わりに無慈悲な静寂が戦場を支配する。光が収まった後、そこには数秒前まで数百名の兵士を乗せていた鉄の巨躯の面影はなく、ただ熱で焼けただれ、捻じ曲がった無残な金属の断片が、意志を失った残骸となって虚空を漂うのみだった。

 

 

 

 熱線の発射が終わった後も黄金の巨躯は、まだ受けたビームエネルギーの余韻で神々しく、しかし不気味に発光している。その巨大な頭部に秘めた赤い瞳が、次の獲物を求めて冷徹に煌めいた。

 

 

 直後、ババの入力により「オウガ」の巨体が重々しく動き出す。巨大な脚部が折り畳まれ、姿勢を低く変えて艦艇のような、あるいは巨大な要塞ような重厚な形状へと変形していく。

 

 

 背部に鎮座していた巨大な円盤状のプラットフォームが反転し、全身の黄金の装甲が噛み合い、防御を維持しつつ面制圧を可能にする「砲台形態」へと再構成されていく。その姿は移動要塞そのものだ。デストロイの元ネタとなったサイコガンダムが『モビルフォートレス』と名付けられるのも納得と言えるだろう。

 

 

 変形完了と共に、背部フライトユニットに据え付けられた二門の超大口径装薬エネルギー砲「アウフプラール・ドライツェーン」が、その禍々しい砲口を前方へと突き出し、本来のデストロイが持つそれの二倍近い口径へと拡張された砲身は、もはや戦艦の主砲すら玩具に思えるほどの威圧感を放ち、周辺の空間を熱量による陽炎で歪ませていく。

 

 

 コックピット内では、狂気的なまでの集中力に憑りつかれたババが、技巧を奏でるピアニストのごとき手慣れた指捌きでコンソールを叩いており、艦隊運動による微細な相対速度、恒星風によるビームの偏向、そして周辺のデブリによる散乱係数――それら膨大な変数を一瞬で計算し、誤差を修正して「必殺」の座標を固定する。

 

 

 ナチュラルでは、エクステンデッド、ブーステッドマンの様な生体CPUとして強化されたパイロット以外は到底扱えないであろう複雑怪奇な操作を可能としているのは。多少簡略化されているとはいえ、紛れもなく長期に渡りMA乗りとしての訓練を受け続けたババの忠義の結果であろう。忠義ってなんだよ。

 

 

 

 チャージが臨界に達した瞬間、黄金の砲身から放たれたのは、単なる光の筋ではなかった。高密度に圧縮された粒子が超高速で自己回転を繰り返し、ドッズ仕様特有の巨大な螺旋を描くドッズ状となって虚空を穿ったのだ。

 

 

 

 その光の螺旋が左翼に位置するザフト反乱軍のナスカ級を捉えた刹那、爆発という現象すら追いつかない速度で、数万トンの質量を誇る艦体が中心部からひしゃげ、粉砕されていく。装甲も、隔壁も、エンジンも、その圧倒的な貫通力の前では薄氷に等しい。

 

 

 だが、螺旋の咆哮は止まらない。一隻を屠った後もその勢いを一切減じることなく、後方に位置していたファウンデーション軍の艦艇へと襲い掛かる。直撃こそ免れたものの、螺旋の端が掠めただけで、その重装甲艦の右舷半分が、まるで鋭利な刃物で削り取られたかのように一瞬で消失したのだ。

 

 

 

 剥き出しになった回路から噴き出す火花と、逃げ場を得た空気が真空へと吸い出される絶望的な光景。動力系を完全に断たれたその巨艦は、もはや戦う力も逃げる術も持たない鉄の死体へと成り果て、暗黒の宇宙を漂うばかりとなる。

 

 

 黄金の巨躯は、その惨劇の源でありながら、ただ静かに、そして美しく輝き続けている。発射後の余剰エネルギーが装甲の隙間からオーロラのように揺らめき、赤い瞳の煌めきは、これだけの破壊を尽くしてもなお、飢えが満たされていないことを告げていた。

 

 

 

 戦場に漂う鉄の匂いと死の静寂の中、この王の牙の姿を見た兵士たちの心には、もはや勝利への渇望ではなく、根源的な「死」への恐怖だけが刻み込まれるのであった。

 

 






・ユウナバリアー
 本人はやっぱおかしくない?となってますが、まず敵の攻撃を全て受け止めつつ、盾になるのはかなり大事な事。もちろん我に新兵器ありと語ったハインラインの特殊ジェルもミレニアムには配備されていますが、新兵器というのは奥の手であり、隠せるのならば隠し続けていたほうがいいもの。その結果、オウガを盾に進軍するという史実とは違う戦法が取られる事になったのでした。嫌がらせの様に思えますが適材適所であり、これが最も確実に進撃できるのですから。

・二つの装甲
ヤタノカガミに加えてVPS装甲も同時に装備しているオウガ、ガンダムブレイカーくらいでしか許されない贅沢セットとはいえダブルブイによる専用パワーエクステンダーがこんな無茶な事を可能としています。もしも時間に余裕があればフェムテク装甲解析しつつ、ヤタノカガミとセットに組み込む事も可能であったかもしれませんが、結果的にビームを無効化するヤタノカガミと実弾に対する防弾性能の高いVSPの組み合わせが一番なのでしょう。なおここまでやっても、接近してコックピットを切り刻まれるか高火力のドッズスナイパーライフルでコックピットを狙われると詰みますので無敵ではありません。だからこそのハイネの出番なのですが。

・ババの戦闘スタイル
 仰々しく書いてますが実はやってる事は攻撃を受け止め、反射した後に砲撃形態となって反撃してるだけの事。本来のデストロイは格闘戦すら可能な荒々しい機体だったりしますがババの動きは実はかなり堅実であったりします。

 また設定としてババは実はオウガの腕部内蔵火器であるシュトゥルムファウストを運用することが出来ません。いくらババがMAを動かすための訓練を専用に受けているにしても、戦場における無線兵器の効果的な使用は難しく。腕を飛ばしてビームをばら撒く事は実戦レベルの使用は不可能。なのでシュトゥルムファウストはただの腕を飛ばせない、ジオングの腕ビームとほぼ同義ですね。それでもめちゃくちゃ強いのですが。

・アコードの思考の固定
五日の期間にアコードが何をしていたのかといえば、自国の兵士や反乱軍兵士を一人一人に軽く精神干渉を行い、兵士達が裏切る、寝返る、脱走するなどのモラルハザードを起こさない処置をしていたが為。それをわざわざほぼ全員に行うのであればそりゃ時間もかかるでしょうし、恐らく史実でも似たような事はしていたのかもしれませんね。


ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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