破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第六十四話 やはりコネ!コネこそが全てを解決する!

 

 

 

 

 

「ババァ!!! テメェふざけんな!! 変形するなら、せめて一言断ってからにしろって言っただろうがよぉ!!?」

 

 

 俺はマイクが割れんばかりの勢いで怒鳴り散らした。恐怖という感情が、あまりの衝撃と理不尽な揺れによって怒りに上書きされた結果だよクソが!!

 

 

 敵の艦砲射撃を受けた時だって、心臓が止まるかと思うほどの恐怖だったが、この機体が勝手に、しかも何の予告もなく変形を始めた時の衝撃はそれを遥かに超えていた。揺れる、なんて生易しいもんじゃない。

 

 

 前後左右から同時に大型トラックに追突されたような衝撃が絶え間なく襲いかかり、コクピット全体が「グワシャッ!」と嫌な音を立てて軋んだんだぞ!?首吹っ飛ぶかと思ったわ!?

 

 

 

 そもそもだ。デストロイは本来なら情緒も神経もぶっ壊れた生体CPUとかいう連中が乗ることを前提にしてるんだ。ババみたいな戦闘ジャンキーは何度も練習で慣れてるのかもしれないが、こっちはただの人間なんだぞ!?

 

 

 俺からしたら交通事故を起こしたのかと思うレベルで揺れまくって、シートベルトが食い込んで内臓が飛び出しそうになったし、危うくメインモニターに頭を叩きつけて自機の中で殉職しかけた所だ。ミーアになんて言えばいいんだよこんなバカなやり口で俺が死んだらさぁ!?

 

 

 おまけに、元々一人乗りを想定してた機体を無理やり二人乗りに改造した挙句、機体サイズを二倍にして出力までバカげたレベルに引き上げているんだぞ。

 

 

 そんなもん、想定外の挙動なんてレベルじゃない、構造的欠陥の塊みたいなもんだ。物理法則そのものが「そんな動きできるか!」って悲鳴を上げているのが聞こえる気がする。一応これでも俺の安全性は保証されてるらしいが、安全性ってギリ死なないラインを攻めればいいってもんじゃねぇんだぞ!?

 

 

 

「も、申し訳ございませんユウナ様!! つい武者震いが極まり、貴方様への配慮を欠いてしまいました! このババ、万死に値します!」

 

 

 

 後ろからババの、妙に艶のある謝罪の声が聞こえてくる。声だけは神妙だが、操作レバーを握る指先が嬉々として動いているのが気配で分かる。この野郎久々の実戦にウォーモンガーモードになってやがる…!

 

 

 

「謝るなら今すぐ動くのをやめろ! 揺らすな! 俺の三半規管はもう限界なんだよ!?開幕まだ5分も経ってないのにアカツキの時以上にやべぇよこのバカ!!!」

 

 

 

「ハッ! 左様でしたな! それでは通告いたします!今から再び敵をより効率的に殲滅すべく、MS形態へ変形いたしますので衝撃に備えてくだされ!」

 

 

 

「ちょ、ま……待てババ、今すぐはやめろって、まだ心の準備が――」

 

 

 

 

俺の制止が間に合うはずもなかった。「ぐわんっ!」という、胃袋が口から逆流しそうな凄まじい縦揺れと共に、黄金の巨軀が再びその形を組み替え始める。

 

 

「がぁぁぁぁぁ!!!揺れ、揺れすぎだバカぁぁぁ!! お前なんで真顔で平気な顔してんの!?肉体サイボーグかなんかになってんのかよぉ!!」

 

 

 

 俺の叫びを置き去りにして、巨大なパーツが噛み合う衝撃がダイレクトに脳髄を揺さぶる。MS形態に戻っていくその凄まじい挙動の中、俺は白目を剥きながら、短くも、激しい振動で俺自身がシェイクされてドロドロの得体の知れない何かになっていくような、言語化できない絶望感に包まれていた。

 

 

 

 これ、敵に殺される前に、自分の機体の振動で脳震盪起こして死ぬパターンだろ!誰だよこれ作った奴!予算出したカガリの野郎ふざけんじゃねぇぞ!?

 

 

 

 だが、現実は俺に休む暇など与えてくれない。

 

 

 

 モニターがMS形態の視界に切り替わった瞬間、そこには絶望的なまでの「火の粉」が舞っていた。

 

 

 

「チッ、敵も切り替えてきましたな! 臆病風に吹かれたかと思えば、これほどの殺意……良きかな!!」

 

 

 

 正面のザフト反乱軍、そしてファウンデーションの混成艦隊。彼らは、俺たちのヤタノカガミに対してビームや陽電子砲が無意味であることを、先ほどの惨劇で嫌というほど理解したらしい。

 

 

 

 代わりに見舞ってきたのは、物理弾による飽和攻撃――凄まじい密度のミサイル、そしてレールガンの連射だ。

 

 

 

 本来なら、回避不能なクソデカい的であるこの機体にとって、実弾攻撃は脅威のはずだ。かつて砂漠の虎さんは言っていたはずだ。「フェイズシフト装甲といえど無敵ではない、通常弾頭でも76発でその効力を失う」と。

 

 

 

 だが、このオウガには、その常識は通用しない。ババが鼻歌混じりに指先のビーム砲やバックパックの「ネフェルテム503」を全方位へと展開し、迫り来る弾頭の八割を光の弾幕で叩き落としていく。撃ち漏らした残りの二割が、嫌な音を立てて黄金の装甲を叩くが、その程度では揺らぎもしない。

 

 

 

 なんせこの機体には、特注の艦艇サイズ「パワーエクステンダー」が積まれているのだ。さらに、通常のデストロイの二倍、全高100メートルを超えるという冗談みたいな巨体。一箇所への被弾ダメージは広大な装甲表面に分散され、VPS装甲の電力消費を物ともしない底なしのエネルギーが、衝撃を瞬時に無効化し続ける。

 

 

 

 フェイズシフトの弱点である「物量による電力枯渇」を、圧倒的なサイズと電力で解決するという、脳筋にも程がある解決法。それがこの黄金の巨神の正体だった。

 

 

 

 ……まあ、外側がどれだけ無事でも、中にいる俺の精神は無事じゃないんだがな!!

 

 

 

「ちょ、ああぁぁぁ!! モニター真っ白じゃねぇか! 爆発の光で見えねぇよ! 当たってる! 今絶対コックピット付近に当たったろ!?」

 

 

「はっはっは! 問題ありません、ユウナ様! 蚊に刺されたようなものです! それにしても……」

 

 

 

 視界は迎撃の閃光と、装甲で弾け飛ぶミサイルの爆炎で埋め尽くされている。直撃を受けるたびに、コクピット全体が「ガガガッ!」と激しく震え、俺の脳漿をかき混ぜる。

 

 

 ババは、回避という概念を捨て去ったかのように操縦桿を微動だにさせず……いやミレニアムの盾になるんだから仕方ないかも知れないが、俺のギャーギャー喚く声をBGMにするように、陶酔しきった表情で言葉を継いだ。

 

 

 

「やはり、ユウナ様との二人乗りは……かつてメサイアを共に駆けた、あの日々を思い出しますぞ!」

 

 

「思い出さんでいい! 黒歴史のゴミ箱に捨てとけそんなもん!!?さっさとこの地獄を終わらせろぉぉぉ!!!」

 

 

「了解です!飛ばしますよユウナ様!!」

 

 

 

 

 返事を聞いた瞬間に、シートに身体がめり込んだ。黄金の「オウガ」の背部ブースターが火を噴き、フルスロットルで加速する。クソが!!やっぱ慣性制御が追いついてねぇぞこれ! 俺の肺から空気が全部押し出され、視界の端がチカチカと暗くなる。

 

 

 

 目の前には、ファウンデーションとザフト反乱軍の混成艦隊がひしめき合っているが、だが、今のババにはそれすらデブリ程度にしか見えていないらしい。

 

 

 

「邪魔だぁぁぁ!!ユウナ様の御前であるぞォッ!!」

 

 

 

 絶叫と共にオウガの口部――本来のデストロイなら「ツォーンMk2」が放たれる部位が、白熱した光を孕んで開かれた。放たれたのは、螺旋を纏ったドッズ仕様の破壊光。それが直撃したナスカ級のブリッジは、爆発する暇すら与えられず、一瞬で空間ごと消滅した。首を刎ねられた巨艦が、慣性のまま虚空を滑っていく。

 

 

 

 それだけじゃない。腹部の大型エネルギー砲「スーパースキュラ」が火を噴く。改修により316mmという、もはや戦艦の主砲すら鼻で笑うような馬鹿げたサイズに拡張された砲門。そこから放たれた極太の光柱は、射線上にいたファウンデーションの戦艦を「撃ち抜く」のではなく、文字通り「すり潰した」。

 

 

 光の奔流に接触した部分から、数千トンの装甲が紙屑のように丸まり、熱で融解し、消えていく。回避? 防御? そんな概念はこの理不尽な火力の前では何の意味も持たねぇ。

 

 

 

「MS隊、来ます!!」

 

 

 

 絶望的な戦力差に、ようやく敵のMS隊が死に物狂いで突っ込んできた。だが、彼らがオウガの装甲に触れることは叶わない。

 

 

 

 全身の至る所に配置された対空防御ビーム砲「ネフェルテム503」が、全自動で無数の光の筋を撒き散らす。接近を試みたザクやグフが、花火のように次々と空中で弾け飛んでいく。本来であればエクステンデッド達はここまで手動操作を行なっていたらしいがこの辺りはナチュラル、というかババ仕様に簡略化されている。

 

 

 

 それでも、執念で肉薄しようとする手練れはいた。ドッズスナイパーライフルを構えたザクや、ヒートロッドを振り回すグフ。だが、そいつらが俺たちの死角に回り込もうとした瞬間、横からオレンジ色の閃光が躍り出た。

 

 

 

「おっと、そいつは通せねぇな!」

 

 

 

 ハイネのデスティニーだ。あいつはオウガの巨体の陰から飛び出すや否や、スレイヤーウィップを鮮やかに操り、敵機の四肢を一瞬で絡め取って無力化していく。

 

 

 

 

 

 ……あ。

 

 

 

 あれ? 何これ。

 

 

 

 

 ババが敵を蹂躙し、ハイネは連携で俺たちをガードしている。モニターの中で、黄金の「オウガ」とオレンジの「デスティニー」が、まるで一対の完成された芸術品のような一糸乱れぬ連携により戦場を支配していた。

 

 

「……なぁ」

 

 

 

 俺は、激しい揺れに襲われつつ虚ろな目でモニターを見つめた。もうね、あれだな。アカツキに無理やり放り込まれた時以上に思うんだけどさ…!

 

 

 

「……これ、俺いる必要ある? マジで俺いる必要あんの!??ただシートの上でギャーギャー喚いて、内臓シェイクされてるだけのこの存在、作戦上のメリット一ミリもねぇだろぉぉぉ!!!」

 

 

 

 もはや自分が指揮官なのか、それとも黄金の機体に括り付けられた生贄なのか、俺にはもう判断がつかなかった。

 

 

 胃からこみ上げる酸っぱい何かを無理やり飲み下し、俺が自分の存在意義に絶望していた、その時だった。後方に位置していたミレニアムのカタパルトが、眩い閃光を放つ。

 

 

 

「シン・ホーク、デスティニー! 行きますッ!!」

 

 

「アスラン・ザラ、ズゴック、出る!」

 

 

 

 黄金の巨軀が切り拓いた死の空白地帯を抜けて、二機のモビルスーツが悠然と戦場に舞い降りた。

 

 

 一機は翼を広げた死神の如きデスティニーSpec II。そしてもう一機は、なぜかこの最終決戦に似つかわしくない、コミカルな外見に凶悪な武装を隠し持ったズゴック。

 

 

 二機は迷いのない加速で、戦場の中心に居座るオウガの左右へとぴたりとついた。まるで、巨大な王を守護する近衛騎士のように。

 

 

 

「大丈夫か、ユウナ! 無茶苦茶な戦い方だが、助かったぞ」

 

 

 

 通信ウィンドウに割り込んできたのは、アスランだった。ズゴックの不格好なモノアイが、こちらを気遣うように……いや、値踏みするように動く。ゆらぁ…って宇宙空間でズゴックが動いてるのはギャグかな?

 

 

 

 

「……っ、アスランか! 全然大丈夫じゃねぇよ! 三半規管は死んだし、さっきから脳震盪で視界が二重になってるんだ! マジで死ぬ、俺はもう死ぬかもしれん……!」

 

 

 俺の必死の泣き言に対し、アスランは一瞬の沈黙の後、淡々と前を向いた。

 

 

「……そうか。それだけ答えられるなら大丈夫だな。行くぞ、シン」

 

 

「さらっとスルーしたよな今!? この野郎、俺が副総裁だって分かってんのか!? 人の生死を勝手に判定してんじゃねぇよ!!」

 

 

 

 俺の抗議は、またしても無視された。ふざけんなよ!大体なんでよりにもよってズゴックで宇宙戦闘こなしてんだよ!あっ今腕ビームでジンを狙撃して普通に撃墜してる…!

 

 

 おかしい、なんかもう戦場がカオスの坩堝というかお祭り騒ぎのバカ騒ぎになってるじゃねぇか!?当事者でなければ大興奮だったのによぉ!畜生…!!

 

 

 

 一方のシンは、少しの間、無言でオウガ、そしてその横に並び立つハイネのデスティニーを見つめていた。オレンジ色のデスティニーと、自分のSpec II。

 

 

 

 ……ステラの機体と重ねているんだろうな。やっぱり。

 

 

 

 

「……アグネスのインパルスは特務で動いてる。なら、俺たちは俺たちの役目を果たすだけだ」

 

 

 

 シンの声は、静かに研ぎ澄まされていた。かつての迷いも、怒りに任せた咆哮もない。ただ、目の前の敵を討つという純粋な意志。

 

 

 

 それに応えるかのように、戦域の深淵から四つの「不吉な影」が、異常な加速でこちらへと急接近してきた。ブラックナイトスコード――アコードたちの駆る最新鋭機だ。奴らにとって、戦場を黄金色に焼き尽くし、絶対的な物量差を覆そうとするこのオウガは、戦略的に見ても最優先で排除すべき忌まわしきイレギュラーそのものなのだろう。

 

 

 そりゃそうだよ!短期間で艦艇7隻以上撃破したクソでか金色MAとか真っ先に潰そうとするわ!

 

 

 

「来やがったな、アコードの連中……!!」

 

 

 

 

 俺はモニター越しに、死神の鎌を構えたかのような黒い機体群を見て、ガチガチと歯が鳴るのを必死に抑えた。

 

 

 

 あいつら、絶対怒ってるよな? レクイエムを核でぶち壊された上に、こんな成金趣味のデカブツに自慢の艦隊をボコボコにされて、冷静でいられるはずがない。

 

 

 

 四機のブラックナイトスコードは、オウガの巨体が持つ鈍重さを突くべく、扇状に散りながら包囲網を狭めてくる。その一糸乱れぬ連携は、まるで四機で一つの巨大な捕食者のように見え、見ているだけで胃の底が冷たくなる。

 

 

「ユウナ、そこから動くなよ!」

 

 

 

 アスランの声が響く。動くなって言われても、この金色の動く山じゃ動こうにも動けねぇんだよ! 今もナスカ級を一隻轟沈させた上で、俺の内心の毒づきを無視して、ズゴックがその不格好な両腕を構え、モノアイを鋭く発光させた。

 

 

 

「シン、行くぞ!俺は隊長機を仕留める!お前は残りの機体を!」

 

 

「了解! ……あんな化け物に、その機体に……副総裁には一歩も触れさせるもんかぁ!!!」

 

 

 

 

 シンの咆哮と共に、デスティニーSpec IIが加速し、残像を伴ってブラックナイトスコードの包囲網へと突っ込んでいった。それと同時にアスランのズゴックも、その重厚な見た目からは信じられないほどの鋭い踏み込みで、隊長機を強襲する。

 

 

 目の前で繰り広げられるのは、もはや人間の動体視力の限界を超えた戦闘ではなく乱舞だ。Bデバイスによる読心対策と洗脳防止策を講じているとはいえ、相手はアウラが「最高傑作」と豪語するアコードの精鋭たち。

 

 

 

 読心が通じなかろうが、彼ら自身の操縦技術と空間認識能力、そして強化された肉体性能は、歴戦の猛者であるアスランやシンを相手にしてもなお、互角以上の立ち回りを強いていた。

 

 

 

「あいつら……! 当たらない…掠りもしないのかよ!?」

 

 

 

 

 正直に言えば俺はカナードの事を少し舐めていた。正確にはアスラン、キラ、シンに比べると総合力ではともかく、単純な技量であれば劣っていると考えていたし、あの三人ならばアコード戦においてもカナード以上に優位に立てると思っていたんだ。

 

 

 だが結果はちがう。シンのアロンダイトが虚空を切り裂き、アスランのミサイルがブラックナイトの装甲をかすめるが、決定打には至らない。アコードたちが放つ高出力のビームや剣の刺突を、二人は紙一重のところで回避し続けている。

 

 

 精神的なデバフを封じ込めてなお、純粋な操縦技能だけでこの二人と渡り合っているという事実に、俺はアコードという存在の底知れぬ気味悪さを感じずにはいられなかった。腐ってもアウラの最高傑作という言葉に嘘偽りはないんだろう。

 

 

 というか単独でアコードを仕留めたカナードのヤバさを改めて自覚する。とはいえ、デスティニーとズゴックでは前回のようなフラッシュアイによる目潰しは通用せず、相手も恐らく対策の一つや二つは取っているはず。

 

 

 

 つまり純粋な技量勝負となる訳で……下手をすると、アスランとシンでさえ負ける可能性が出てくる事を嫌でも自覚してしまう。

 

 

 

「……ババ! もういい、戦艦(大物)狩りは一旦中止だ! それより、あのアコードどもに近づこうとするジンや、周りのザコを最優先で潰せ! 今はあいつら二人が抑えてるが無人機との連携までやり始めるとやべぇぞ…!」

 

 

「了解いたしました、ユウナ様! 塵芥共をまとめて掃き清めましょうぞ!!」

 

 

 

 

 俺の精一杯の叫びにババが即座に応じる。

 

 

 

 カナード達がユーラシアで行った戦場では無人機のディンを多数連れたアコードがカナードを相手に奮戦していたが、あの連携は脅威なんてもんじゃない。今は戦場はこう着状態だがそれを逆転させる一手は許すもんかよ…!

 

 

 

 

 オウガの口部、ツォーンMk2の砲門が再び白熱する。近づこうとしていた無人機ジン数機が、ドッズ化した高密度ビームの直撃を受け、逃げる間もなく爆砕された。黄金の巨神がその巨体を揺らし、全方位に配置されたネフェルテム503から光の雨を降らせることで、シンたちが戦う聖域への部外者の侵入を遮断していく。

 

 

 

 

「チッ、いいなぁあいつら……俺も混ぜてほしいぜ……!」

 

 

 

 

 オレンジのデスティニーのコクピットで、ハイネが悔しそうに声を漏らす。その視線は明らかに、目の前で繰り広げられる最高峰の格闘戦に釘付けだ。

 

 

 

「バカ言え! 行くなら俺を降ろしてからにしろ! ……いやマジで! ハイネ、頼むから護衛に徹してくれよ! お前がいなくなったら、もし横から伏兵が来たら俺は死ぬんだ! 確実に死ぬんだからな!?」

 

 

 

「はは、分かってるって。……まぁ、アスランとシン、あの二人が組んで負けるなんて想像できねぇしな。俺は俺の仕事、つまり副総裁の護衛をガッチリ務めさせてもらうよ」

 

 

「……おう、頼むぞ。マジで頼むからな……」

 

 

 

 

 俺の情けない必死の訴えに、通信回線からハイネの苦笑が聞こえてきた。シャレにならないから仕事を放棄するのだけはマジでやめてくれよ……一応こいつ終戦したのにまだ戦い続けた前科があるから怖いんだよ…!

 

 

 

 

 トラウマを刺激され、冷や汗を拭い、少しだけ安堵したその時だった。

 

 

 

 

 それまでオウガの影で静かに、しかし着実に準備を整えていたミレニアム。そのブリッジ側方面から宇宙の暗闇を切り裂くように、一発の赤い信号弾が放たれる。

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ、……ようやくか……ッ!」

 

 

 

 

 緊迫した空気と、ババのクソバカな機動のせいで、俺の肺は潰れかけ、意識は朦朧としていた。だが、あの鮮烈な赤色が虚空に弾けた瞬間、俺はひきつった口端を吊り上げ、なんとか笑みを浮かべることができた。

 

 

 

 すべてはコノエ艦長が立てた作戦通りだ。レクイエムを叩き壊した混乱に乗じ、この規格外の超巨大MAオウガを戦場の中心に放り込んで、敵艦隊の隊列をズタズタに引き裂き、最精鋭であるアコードの連中を俺たちに釘付けにする。

 

 

 

 

 ここまでが、地獄のロードマップにおける「第一段階」の完遂。そして、この赤い光こそが、敵に引導を渡す「第二段階」への移行合図だ。

 

 

 

 

 直後、オウガのメインモニターが、全周囲から迫りくる無数の識別信号で埋め尽くされた。

 

 

 

 モニターの東側からは龍を模したエンブレムを掲げた東アジア共和国の艦隊が、西側からは量産型ハイペリオンで構成されたユーラシア連邦の部隊が、まるで巨大な顎のようにファウンデーションと反乱軍の残党を挟み撃ちにしていく。

 

 

 さらに北側からは、プラントのザフト正規軍が、白銀の甲冑を纏ったような機体――レイが駆るレジェンドSpec IIを隊長機として、ドラグーンの光の網を広げながら敵の退路を断つべく進軍してくるのが見えた。かつて敵対した者たち、協力し合った者たちが、今この瞬間に俺たちの盾としてあるいは矛として集結していく。

 

 

 五日もあればそりゃプラントにレジェンドを受け渡す事も可能だ。レジェンドはプラントにおいても短期間の間に追加で武装がいじられたらしく明らかに火線の量が増えて……いや増えすぎて無いかあれ。

 

 

 

 そして南側、最も鋭い加速で戦場を切り裂き、好き放題暴れ回ってるのはオーブの精鋭部隊だ。

 

 

 

「来やがったな、カガリ……! 遅いんだよ、こっちは内臓がシェイクされて使い物にならなくなってんだぞ……!」

 

 

 

 毒づきながらも、モニターに流れる戦況報告が俺の絶望を塗り替えていく。アコードたちの動揺が、通信回線のノイズ越しに伝わってくるようだ。

 

 

 

 戦略兵器であるオウガを潰そうと執着するあまり、連中は自分たちが巨大な罠のど真ん中に引きずり込まれたことに気づくのが遅すぎたのだ。

 

 

 さらに、俺の目の前にあるコンソールに、決定的な報せが飛び込んでくる。後方の重要拠点、アルテミス要塞にて、カナード達がバシレウスで強襲を仕掛けることに成功。大量の歩兵隊をアルテミスに突入させることに成功したと。

 

 

「よし…ヨシ!!!」

 

 

 

 俺は、震える手で精一杯のガッツポーズを繰り出し、肺に残っていた熱い空気をすべて吐き出した。モニターに映し出される、アルテミス要塞中枢へのカナードたちの突入成功の報。胃液が逆流しそうなこの地獄の中で、ようやく掴み取った勝利の確信だ。

 

 

 あらかじめ、ミラージュコロイドを搭載したバシレウスにはアルテミスの付近で待機させており、レクイエムが破壊されて全軍がパニックに陥ったその瞬間に、要塞の喉元へ突き立てる。アルテミスの傘の内部に侵入する事が今回の作戦のキモとなっている。

 

 

 

 これは本当に賭けに近かった。デュランダル曰くミラージュコロイドで隠れている存在を彼らが感知できるかどうかは五分五分、何れにせよ違和感自体は感じる為、恐らく最終的にはバレる可能性は高い。それまでに効果的に、迅速に動く事でアルテミスを制圧する必要があるとデュランダルには助言されている。

 

 

 だからこそだ。バシレウスには満載を通り越して増加ユニットも含め大量の人員を。さらにはモルガまで数機動員してアルテミス攻略に向かわせたんだ。

 

 

 今頃向こうでは地獄が作られてるだろう。大量の睡眠用の強力なガスが、ハロやモルガによってばら撒かれて兵士達はバタバタと倒れており(ハロにガスってなんだよアスランお前…)後数時間は目覚めることはない。そんな彼らは武装解除されつつ、偶然パイロットスーツやノーマルスーツで難を逃れた連中も歩兵隊の数の暴力には叶うはずもない。

 

 

 勿論要塞の周囲の出撃済みの護衛艦などは不意打ちで傭兵部隊Xのムラサメ改が沈めており、内外問わずにマリューさんやカナードの指揮の元に制圧されていくはず。

 

 

 そう、アークエンジェルを失ったノイマンを除くマリューさん達クルーにはずっとバシレウスに潜んでもらい、艦長として。そしてトダカ奪還とアウラ拘束の指揮を頼んでいるんだ。

 

 

「いいか?いざとなったらこの言葉を忘れるなよ!マリューさんを盾に!マリューさんを盾に!!」

 

 

「「「了解!!」」」

 

「副総裁!?」

 

 

 なんてやり取りもあったが、今頃マリューさんは白兵戦で無双しているんだろう。あの人アスランと渡り合えるやべぇ技量の持ち主だからな。マリューさんを盾にするのが一番だ。ムウに殴られそうだが。

 

 

 戦況は刻々と変化していく。確実な勝利を確信していたアコード達はあっという間に劣勢に追い詰められる事となる。俺が、俺達が紡いできた絆パワー……なんて青臭いものじゃないがコネのパワーを思い知れ…!

 

 





・アルテミス要塞
 原作ではラクスの奪還だけを重視していたがために短期間の滞在となりましたが、今作ではシュラ達が出撃した後。前日マスドライバーより発射され。強行軍でアルテミス付近にミラージュコロイドで待機していたガス満載のバシレウスが、その隙をついて参入。大量の催眠ガスを使用し、増設された箇所にも含めて大量の歩兵を連れ込み制圧のために出撃しています。いわばズゴックのやっていた事と似ていますがそれを戦艦単位で行い、更に催眠ガスの量や質までいじって「閉鎖された宇宙要塞で」無差別使用を行うコルシカ条約のBC兵器云々に完全に中指を立てた攻略戦を開始しています。最強歩兵マリューさんを盾にしながら。


 なぜ本来ミレニアムの艦長がマリュー艦長に変更されていたというのに、今作ではコノエ艦長となっていたのか?というちょっとした伏線の回収だったり。現在は傭兵部隊Xやアークエンジェル隊のクルー達はガスをばら撒いて人を眠らせ、それでもなお反撃する兵士は射殺するという、かなりの激戦を繰り広げており…その辺りも後日まだ描写しましょう。


・アコードの読心
 劇場版などの描写からアコードの読心を遊戯王とで例えるなり「対象をとる」ことが重要では無いかと本作では解釈しています。対象を取る、たとえばアコードから認識してその場所に読心、あるいは念波のための人員がいるのなら問題なく行えますが。

 対象が複数に分けられている(Bデバイス)、遠方に対象がいる(アスラン戦におけるカガリの描写からシュラはカガリの思考を読み取れなかった)、強制的な質問や集中しなければ浅い記憶だけを読み取る羽目になる(オルフェがイングリットの感情に気づかない。カガリにリモート操作をさせる作戦を知ってるアスランの目的をシュラは気づかない)など結構な制約もあるらしく、その中の一つがミラージュコロイドによって対象が隠されている場合にアコードはその存在を直前まで気づかないのでは?という描写が幾つもあり。遊戯王で例えるのなら無限抱擁やエフェクト・ヴェーラーを相手に常時月の書を使い裏側守備で対抗してるようなものです。



 今作では予めその弱点を知っているデュランダルの助言によって大規模な要塞攻略作戦を一隻の戦艦で行うという無茶振り+BC兵器の無差別使用というコルシカ条約や世論に中指を立てた作戦の実施が行われる羽目になりました。

 ユウナお前本当に最低だよ…なおそのガスは各国からも提供されており、アルテミス要塞ではどうみてもG-3ガスの容器みたいなものが設置されていたり、歩兵用の弾薬満載の中継拠点と化したモルガが催眠ガスをばら撒いたり、ハロが通気口に侵入してなど色々と絵面が酷い事になっています。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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