破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第六十六話 忠義の嵐

 

 

 

 東アジア共和国の「流星」たちが宇宙に描いた鮮烈な光跡は、戦局の天秤を傾かせつつあるが、しかし、広大な宙域で繰り広げられる激戦は、その一角の勝利だけで終わるほど甘くはなく、戦闘はさらなる激化の途を辿っていた。

 

 

 大西洋連邦の艦隊は、持ち前の堅実なドクトリンを崩すことなく、整然とした弾幕網で敵部隊を次々と叩き落としていく。その隣では、かつて保有していた要塞アルテミスを敵に好き放題されているユーラシア連邦が、名誉挽回と言わんばかりに秘蔵の戦力を投入していた。

 

 

 戦場に展開するのは、かつての特務機をベースに少数生産された量産型ハイペリオン。機体周囲に展開される光波防御帯「アルミューレ・リュミエール」の輝きが、敵陣へとねじ込んでいく。

 

 

 

 一方、北側から迫るプラントのザフト正規軍もまた、圧倒的な個の武力を示していた。その先頭を駆けるのは、かつての英雄たちが駆る「化石」を最新鋭へと生まれ変わらせた異形の双璧――デュエルブリッツとライトニングバスターだ。

 

 

「ふざけんなよ! なんでデュエルとバスターを持ってんだプラントは!?連合に返還したんじゃねぇのか!?」

 

 

 

 

 連合から強奪されたこの二機は、本来であれば第一次大戦の終結後に大西洋連邦へと返還、あるいは解体・封印されるべき負の遺産であった。しかし、プラントの技術者たちは、その優れた基礎設計と「英雄たちの愛機」という象徴性を惜しみ、極秘裏に最新技術を注ぎ込み続けていたのだ。

 

 

 かつてのGATシリーズとしての骨格を維持しつつも、その内部は核エンジンを搭載した最新鋭の動力系へと刷新され、全身の駆動部にはフェイズシフト装甲の最新展開理論が組み込まれている。デュエルブリッツは、かつて同時期に奪取したブリッツの「グレイプニール」や「ランサーダート」の意匠を現代的な高出力兵装として再構築し、近接戦闘と隠密性を高次元で両立。一方のライトニングバスターは、かつての遠距離砲撃能力を数倍にまで跳ね上げた超高出力ビーム砲を装備しその砲戦能力を高めている。

 

「もうそれほぼ中身新造したセカンドシリーズと変わらねぇじゃねぇか!? 借りパクしたものに核エンジン搭載して乗り回すって、連合に中指立ててないか、それ!?」

 

 

 オウガのコックピットで、ユウナはモニターに映る「亡霊たちの狂宴」を見ながら喚き散らしていた。彼がここまで混乱し、憤慨するのには理由がある。

 

 

 そもそも、このコズミック・イラ。ガンダムSEEDシリーズという激動の時代における情報の伝播は、極めて不透明で歪曲に満ちているのだ。

 

 

 歴史というものは常に勝者や特定の意図によって書き換えられる。例えば、一部で囁かれる「ハーフコーディネイター部隊は優遇され、戦後その功績を正当に表彰された」という言説。その実態は、使い捨ての捨て駒という言葉すら生温いほど過酷な扱いを受けており、戦後にその真実が辛うじて日の目を見たのは、キオウ家を中心とした命懸けの働きがあったからに他ならない。

 

 

 あるいは、ブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルが「自身のグループ会社にコーディネイターを雇い入れる度量があった」という風評も同様だ。実際にはそのような事実は存在せず、むしろ彼は財団の意を汲んで戦前から徹底したヘイト活動を主導していた「狂信的な差別主義者」であった。

 

 

 そして今、ユウナが信じて疑わなかった「デュエルとバスターは戦後、連合側に返還された」という情報。それこそが、この世界、そしてガンダムSEEDシリーズおける有名なデマの一つであったのだ。

 

 

 その情報の出処を辿れば、かつて小説版の口絵やイラストを担当した小笠原智史氏が、半ば冗談も兼ねたエッセイの中で描いた「返還された機体」というイメージが、何故か公式の歴史事実として独り歩きしてしまったものに過ぎない。

 

 

 つまり、公式設定としての返還などは端から存在せず、ザフトは鹵獲した名機を「自分たちの所有物」として秘匿し、最新鋭の核エンジンなどを詰め込んで、この決戦の場に解き放ったのである。

 

 

  無論、この「借りパク」の極致とも言える機体を戦場で目撃してしまった大西洋連邦の将校たちが、驚愕と激怒のあまり口の端をピクピクと震わせていたのは言うまでもない。

 

 戦後に深刻な外交問題へと発展する可能性は極めて高いが、今は人類存亡の危機という超法規的状況下。沈黙せざるを得ず、彼らは苦虫を噛み潰したような顔で共闘を続けるしかなかった。そうさしたる問題ではないのである。今は、取り敢えず今は多分。

 

 

 「ユウナ様! オーブ軍が攻勢を開始しました!!」

 

 

 巨神「オウガ」のコクピットにババの鋭い声が響く。彼は 暑苦しさの溢れる野太い声と共に火砲を乱射し、迫りくる敵機を次々と火球へと変えながらも、常に戦場全体の推移を把握していた。

 

 

 もはや情報の整合性を考えるのすら嫌になったユウナは、現実逃避するかのようにサブモニターを拡大した。そこには、ただでさえ規格外の火力を誇るデュエルブリッツとライトニングバスターが、あろうことかエターナルから射出されたミーティアユニットとドッキングを開始する光景が映し出されていたのだ。

 

 

「……もう俺しーらない!」

 

 

 

 ヤケクソ気味に、デュエルとバスターがミーティアを装備し、もはや戦場を蹂躙する破壊神と化した光景から目を逸らすようにして、ユウナはメインモニターをオーブ軍の展開図へと切り替えた。

 

 そこには、旗艦イズモ級から次々と発艦し、統制された動きで迅速に作戦行動へと移行するオーブ軍の精鋭たちが映し出されている。

 

 

「……頼むぞ。理論上は、アレも現代の戦場で通用するはずなんだ。オウガがこれだけヘイトを稼いで、敵の意識を一点に引き付けている今なら、あいつらが手薄な横っ腹を食い破ってぇぇぇ!? おいババ!! てめぇ、いきなり急加速してんじゃねぇよ!?」

 

 

 突如としてコックピットを襲った強烈な重力加速度に、ユウナの意識が飛びかける。

 

 

 背部スラスターが咆哮を上げ、オウガの巨体が真空の闇を突き抜けていく。がそのスピードは通常のデストロイの二倍の速度である。負荷も多分二倍であるが。

 

 

 

「ご安心を、ユウナ様! 開発者曰く、多分、恐らく、きっと……サブパイロットはGの負荷で最悪気絶することはあっても、死ぬことはないと言っておりましたぞ! ワハハ!」

 

 

「その、不安要素しかねぇ三段活用を信じられるかぁ! 止まれ! 今すぐこの暴走機体を止めろぉぉ!!」

 

 

「……それはできませぬ、ユウナ様。私は、貴方様を再びオーブの地へと帰還させるために、この命の全てを差し出す覚悟にございます。今のオーブにとって、貴方様は必要不可欠な存在。私が貴方様に忠義を尽くすと誓ったあの日から、その想いは一片たりとも変わっておりませぬ」

 

 

 それまでの暑苦しい笑い声が嘘のように消え、ババの声は低く、どこまでも真剣な響きを帯びた。

 

 

 言葉と同時に、オウガの巨腕が唸りを上げる。眼前に立ち塞がったザフト反乱軍のジン三機を、狙い違わず放たれた火砲が紙細工のように一瞬で粉砕し、爆炎の彼方へと追い遣った。

 

 「それに……何より、私個人としても、貴方様には生きていて欲しいと、そう願っておりますからな」

 

 ふっと、ババが漏らした独白。それを受けたユウナは、一瞬だけ何かを言いかけたように口を噤んだ。コックピットに訪れる、戦闘中とは思えないほどの短い沈黙。

 

 

 

 「……おい、ババ」

 

 

 

 「はい、ユウナ様」

 

 

 「お前……本気を出してないだろ」

 

 

 

 

 

 

 ユウナの声には、先程までのパニックはなかった。冷徹なまでの観察眼が、自分を襲うGの「質」を見抜いていた。

 

 

「散々俺を叫ばせておいて……実は、こっちへの負荷に細心の注意を払って、出力を調整してやがるな? 本当なら、さっきのジンを落とした時だって、もっと踏み込めたはずだ」

 

 

「……はて。何のことやら、私にはさっぱり」

 

 

 ババはとぼけたような声を出したが、その操縦には微かな迷いが生じているのをユウナは見逃さなかった。

 

 

 本来、ユウナがその歴史や戦場記録で目にしてきた「デストロイ」という機体は、狂気の象徴であった。ステラやスティング、そして近年のコンパスによる活動記録に残るパイロットたち――その誰もが、機体の巨体に精神を蝕まれるかのように、あるいはその圧倒的な質量に酔いしれるかのように、敵味方の区別すら危うい破壊の化身と化していた。

 

 

 巨大な足で敵機を踏み潰し、全方位に死の光を撒き散らす。全力稼働によるその蹂躙劇は、見る者に生理的な恐怖を植え付ける。しかし、今このオウガが演じている戦いは、それらとは根本的に異なっていた。

 

 

 

 「……丁寧すぎるんだよ」

 

 

 ユウナはいよいよ確信に至る。オウガの挙動は、あまりに「理性的」で基本に忠実過ぎたのだ。遠距離から効率的に砲撃を行い、肉薄しようとする敵機には最小限の動きで迎撃用武装を振り回し、再び最適な位置へと離脱する。

 

 

 それは巨大機を扱うマニュアルとしては完璧かもしれない。だが、ユウナが知っているババという男は、こんな「慎重な優等生」ではないはずだ。

 

 

 かつて、黄金の機体「アカツキ」を複座で乗り回していた頃のババは、もっと苛烈で、野心的ですらあった。ユウナに自らの戦果をこれでもかと見せつけるように、超高速戦闘で戦場を縦横無尽に駆け抜け、機体性能の劣るアカツキでハイネの駆るデスティニーとすら互角以上に渡り合ってみせた男なのだ。

 

 しかし、今のババは違う。まるで壊れ物を扱うかのように、あるいは高価な美術品を運搬しているかのように、ユウナにかかる負荷できる限り削ぎ落とそうとしていると。その丁寧すぎる挙動の違和感に、ユウナは完全に気付いてしまったのだ。

 

 

 そもそも、メサイア攻防戦の頃のババに比べれば、その後の「コンパス」での活動中、ババとはごく普通に意思疎通が成立していたはずなのだ。今回の戦端が開かれた直後、ババは「あの時と一緒ですね!」などと口にし、あまりの会話の噛み合わなさにユウナも「そういうものだ」と半ば諦めてスルーしていたが、今の立ち回りは明らかに不自然だ。

 

 

 おそらく「オウガ」の名を叫んで名付けたあたりまでは素であっただろう。だが、本格的な乱戦に突入してからのババは、ユウナという「脆弱なナチュラル」を殺さないための気を使っていると。己の牙をあえて隠しつづけてると。

 

 「しらばっくれんな! ――全力だ。全力稼働を許可する」

 

 「なっ……ユウナ様、それは流石に!!」

 

 

 

 彼が後ろから焦った様に口にすれば、あまりにも分かりやすく、ババが初めて本気で焦りを見せた。余裕綽々だった狂戦士面が剥がれ、一人の「守護者」としての動揺がその声に混じる。

 

 

 「いいか、勘違いするな! 俺だって死にたくねぇし、お前と一緒に複座で振り回されるなんて、金輪際ごめんだ! だがなぁ……お前に気を使われて、お荷物のデバフ野郎扱いされたまま戦うなんてのは、死んでもゴメンなんだよ!」

 

 ユウナは歯を食いしばり、モニターに表示されたオウガのステータスを指でトントンと指名して見せる。正常、オールグリーン。

 

 

 これ程までに暴れているようで全く無茶はしていないことの証拠であり、彼が本気を出していない。出せない事への根拠であると示すかのように。

 

 

 「俺のことは無視して全力稼働しろ! お前だって俺と同じナチュラルで、同じ特注の対Gスーツを着ているんだ。さっき自分で言っただろうが、気絶することはあっても死ぬことはねぇってな。だったら、もし俺が白目を剥いて気絶しやがったら、無理やり叩き起こすか、無視してそのまま戦い続けろ!出し惜しみするな」

 

 それでもなお、ババは操縦桿を握る手に躊躇いを残していた。主を死地へ、それも肉体的な限界を超えた領域へ連れて行くことへの、根源的な恐怖。

 

 

 そんな彼の躊躇を断ち切るように、ユウナは手元のコンソールを素早く操作し、ミレニアムへと通信を繋いだ。

 

 

 「こちらオウガ! 今から正面の敵陣に最短距離で突っ込む。ここまで盾になってやったんだ、あとはお前ら単独でも戦えるな!? 全機、道を空けろッ!!」

 

 「ユ、ユウナ様!? 何を勝手な……!」

 

 

 驚愕するババ。だが、その通信に割り込んできたのは、これまで無言でオウガの護衛に徹していた、オレンジ色のデスティニーを駆る男だった。

 

 「……ババ、いい加減に割り切れよ」

 

 

 戦場に似つかわしくない程に芯の通ったハイネの声が回線に響く。彼は護衛に徹して次々とドッズスナイパーライフルを構えた敵を逆狙撃し、近づくジンを一刀両断しながらもオウガの側から離れる事はない。

 

 ババとハイネ。かつてはメサイアの戦場にてただ一人の戦士として、ユウナを巻き込んだ世界一無駄な一騎打ちを行ったコンビは今。同じ戦場に、同じ志を持って初めて肩を並べて立っている。

 

 

 

「相手はコンパスの副総裁サマだ。命令は絶対なんだろ? 公務員やってんなら、お上の決断には従うもんだ。何より……一人の男がこれだけの覚悟を決めてんだ。それをお前が無視するってのは、それこそ不敬なんじゃないのか?」

 

 

「そう、か……了解いたしました、ユウナ様。万が一のことがあれば、この命、貴方様の墓前に捧げる所存にございます。ですから、どうか……どうかご無事で!」

 

 ハイネの言葉が、ババの胸に重く突き刺さった。かつて共に戦場を駆けた戦友の、そして守るべき主の、魂からの叫び。ババは大きく息を吐き出し、まるで憑き物が落ちたかのように、鋭い眼光を前方へと向ける。

 

 

 悲壮な決意を滲ませ、祈るような声で叫ぶババ。だが、そんな忠臣の情緒を、今のユウナは冷たく踏みにじる。

 

 

「黙れ、右翼だ。大体後方に布陣してるファウンデーションの連中なんて今は無視していい。眼前のザフト反乱軍を徹底的に叩け」

 

 

 

 今まで散々俺に好き勝手喚かせてくれたんだ。今度はこっちが好きにさせてもらう番だぞ。

 

 そう言わんばかりにババの献身的な誓いを鼻で笑うどころか、まるで聞こえていないかのように命令を上書きする。

 

 

 それは、これまで散々自分の泣き言や抗議を「そういうものだ」とスルーし続けてきたババに対する、中指を立てるのような意趣返しでもあった。

 

 

 

 「奴らさえ撲滅すれば、多国籍軍の包囲網はさらに密度を上げられる。逃げ場を失った鼠を追い詰めるのは、その後で十分だ。――行けッ、ババ! 迷うな!」

 

 「……御意!!」

 

 ババの短い応答と共に、黄金の巨神が爆発的な再加速を見せた。その後方を、ハイネのデスティニーが橙色の光輪を撒き散らしながら、翼を翻して追従する。

 

 

 アコードたちがその突撃を阻もうと動くが、猛威を振るうシンのデスティニー、そしてアスランのズゴックによる猛攻が彼らを釘付けにしていた。戦場は膠着という名の濁流と化し、アコードたちには「オウガ」という名の巨大な鉄槌を止める術など残されていなかったのだ。

 

 

 

 

 

 先程までとは比較にならない、全リミッター解除状態の暴力的な機動。ユウナの視界は一瞬でブラックアウトしかけ、肺は座席に押し潰されて悲鳴を上げる。だが、彼は歯を剥き出し、血の気の引いた顔で笑った。

 

 

 「やれぇッ!!」

 

 

 ユウナの咆哮が響く。黄金のオウガは、眼前のナスカ級戦艦へと最短距離で肉薄した。回避も迎撃も間に合わない至近距離。

 

 「シュトゥルムファウスト、斉射ッ!!」

 

 ババが叫び、両腕部の内蔵ビーム砲が火を噴いた。ババは無線誘導の適性があまり高く無く、火力はあるものの両腕部のこの装備を有効活用する事は今まで出来なかなかった。しかし、至近距離に近づけば指先の一つ一つがドッズビームライフルと変わらない兵装が……累計10本もの螺旋の奔流が圧倒的な火力を繰り出して見せる。

 

 その一撃は、通常のビームを凌駕するドッズの螺旋を伴い、ナスカ級の強固な装甲をバターのように易々と抉り抜く。内側から噴き出す爆炎、断末魔のように歪む船体。

 

 

 「――次だ! 止まるなババ、全部薙ぎ倒せ!!」

 

 爆沈する戦艦を盾にするようにして、オウガは次の標的を目指し、さらなる深淵へと突っ込んでいく。ユウナの意識は遠のきながらも、その瞳にはかつてないほどの輝きが宿り、初めて主従となったこの二人は本当の意味で共に宇宙をただ、駆け抜けていくのであった。





・ババ
実は本気を出しておらず、明らかに手を抜いていたババ。描写をメサイア戦と比べればアカツキでゲッター起動をするような技量だというのに、オウガは彼を気遣いバレない様に砲戦に集中。それを指摘した結果馬場も吹っ切れてオウガ敵軍を蹂躙しはじめるのでした。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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