破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
アルテミス要塞の陥落。女王アウラの捕虜化。イングリットの消息不明。そして、最高指導者であるオルフェ自らの出撃。
選民思想と優秀な能力によって、旧人類への絶対的な優位を疑わなかったアコードのリデラード、グリフィン、ダニエルの三人は、今、人生で初めての底知れぬ焦りの中にいた。
彼らは決して無能ではない。むしろアコードとしての頭脳は、この絶望的な局面において「即時撤退」こそが再起への唯一の道であることを弾き出していた。
母であるアウラさえ救い出し、オルフェと共に戦場を離脱できれば、ファウンデーションの残存戦力をもってすれば捲土重来は可能。アウラという精神的支柱を切り捨てられないことが彼らの限界ではあったが、それでも撤退判断そのものは迅速だった。
だというのに、退けない。
アルテミスへ向かおうとする彼らの進路を、一機の「旧式機」が執拗に邪魔をし続けて、遮り続けているからだ。
「……ほんっと学習しねえ馬鹿! お前ら旧人類が、俺たちアコードに勝てるわけねえだろ!」
グリフィンが駆るブラックナイトスコード・ルドラが、激しい推進炎を噴き上げながら叫ぶ。だが、その声音にはかつての傲慢な余裕など微塵もなかった。
史実と違い、彼らは既に同胞であるリューをコンパスの手によって失っている。万全の戦術、数的な優位、そして最新鋭の機体。その全てを揃えていながら、たった一機の、自分たちから見れば博物館行きの骨董品に等しいデスティニーに、撤退の妨害をされ続けているという事実に、グリフィン達の心は悲鳴を上げていた。
グリフィンたちが何より焦燥を深めているのは、目の前のデスティニーのパイロット――シンの「心」が、依然としてまったく読めないという事実だ。
デュランダルが心血を注いで開発させた「Bデバイス」。死刑囚の脳髄が絶え間なく撒き散らす不協和音のようなノイズが、アコードの誇る読心能力を掻き乱す。シンの実際の操縦とは真逆の行動が偽装された思考として流れ込み続けているため、彼らがシンの動きを先読みしようとすればするほど、その精度は大幅に失墜していた。
だが、ノイズだけが要因ではない。むしろそれは補助的な恩恵でしかなく、さらに異常なのは、シン自身の挙動であったのだ。
(なんなんだ、こいつは……! 読めないんじゃない、こいつ、何も考えてないのか!?)
グリフィンは戦慄した。信じがたいことだが、今のシンは、この世界のあらゆるパイロットの中でも唯一、「反射」だけでモビルスーツの操縦を完遂できるのだ。
思考を介在させず、脊髄反射のみで戦域を把握し、肉体の一部として機体を駆動させる。かつてデュランダル議長がシンの素質を見出した際、「理論上、思考を捨てて反射のみで動ければ、アコードの読心は完全に無力化できる」と予想してはいた。しかし、それはあまりにも非現実的な理想論であり、提唱した議長本人ですら期待はしていなかった境地だ。
だが、今のシンはそれをやってのける。瞳の奥にSEEDの光を宿し、愛する妻であるルナマリアと、最愛の娘トワ、そしてこの一年で増え続けた「守るべきもの」すべてを背負った男の執念。
「行かせるかよ……! 守るって決めたんだ、俺はもう、誰も失わない!!」
猛り狂うデスティニーは、もはや一機のMSではない。翼から溢れ出す極光が残像を紡ぎ出し、三方向から迫るルドラの火線を、紙一重の回避で全て置き去りにしていく。
アコードたちがどれほど必死に機動しようとも、シンの「反射」は常にその一歩先を、思考を介さない速度で踏み越えていた。
「こ、こいつ……掠りもしないなんて……ッ!」
「お母様のところへ行かせなさいよぉぉ!!」
リデラードがヒステリックに叫び、対モビルスーツ重斬刀を振り下ろす。だが、デスティニーはその一撃を「アロンダイト」で軽々と受け流し、直後にはゼロ距離からのパルマフィオキーナでリデラードの撃墜を狙い、辛うじて彼女は攻撃を避ける。
一歩間違えば、あるいはこれが一騎打ちであれば、リデラードは今この瞬間に確実に殺されていた。アコードとして「選ばれた」はずの自分たちが、旧人類の、それも旧式機に圧倒されているという戦慄が、彼らの背筋を冷たく撫でる。
いよいよ躊躇っている暇はない。グリフィンが、ダニエルが、そしてリデラードは、生まれて初めての死の恐怖を振り払うように意識の深淵で手を取り合い。決意する。
「……やるぞ、『シンクロアタック』だ!!」
それは、アコードたちにのみ許された禁断の連携。互いの意識を深層レベルで混ざり合わせ、三つの肉体を一つの人格が操る「一個の生命体」として同調させる。個々の認識の齟齬、情報伝達のタイムラグ――それら戦場における一切の不純物を排し、三人分の脳の情報処理能力をフル活用する超知覚領域。
リデラードの脳裏に、かつての苦い記憶がフラッシュバックする。以前、キラ・ヤマトの精神を侵食しようとした際、コンパス側が用意した「何らかの防壁」――ドス黒い負の感情、デストルドーの濁流に呑まれかけ、発狂寸前まで追い込まれたあの屈辱と恐怖。
(また、あんなことになったら……!)
一瞬の怯え。しかし、目の前でアロンダイトを構え直すデスティニーの「反射」は、リデラードに立ち止まる自由すら与えない。
「行くぞッ!!」
グリフィンの号令と共に、三人の意識が爆発的に結合した。リデラードの視覚がグリフィンの感覚と繋がり、ダニエルの空間認識が三人の情報を統合する。
個の境界が消え、三機のルドラはまるで鏡合わせのような精密さで、同時に、かつ別々の最適解を求めて加速を開始した。
「……キャハハ!! 見える、見えるわ!!」
成功だ。混濁する意識の中で、リデラードは強烈な全能感に包み込まれた。シンの放つBデバイスのノイズさえも、三人分の処理能力をもってすれば、端へと追いやり、その奥にある機体の「挙動」そのものを三つの視点から多角的に包囲できる。
もはや言葉による連携すら不要。指先一つ動かすように三機のルドラが一糸乱れぬ連携で、獲物を屠る獣のごとくデスティニーへと牙を剥こうとした、その瞬間だった。
「……ッ!? なに、この殺気は!?」
三人の意識が同調しているがゆえに、その戦慄もまた三倍の深度で彼らの脳を突き抜けた。宙域の死角、複数の方向から飛来した無数の発光体が、回避不能のタイミングでルドラの装甲を焼きにかかる。
「小型機動ポッド……ドラグーンだと!?」
咄嗟に機体を翻し、盾を掲げて致命傷を避けるアコードたちだが、グリフィンが驚愕に声を上げる。
直後、その機動ポッドが描いた光の軌跡をなぞるように、さらに太く、鋭いビームの奔流が戦域を縦横無尽に切り裂いた。
「――レイ!?」
通信回線から聞こえてきたのは、シンの弾んだ、弾けるような喜びの声だった。
モニターに映し出されたのは、無数のドラグーンを従え、漆黒の宇宙を白銀の翼で滑るMS。コンパスではなく、あえてザフトに残る道を選んだ男――レイ・ザ・バレルが、その愛機と共に戦場へ君臨したのだ。
彼は別の方面で、撤退を行わんとする一部のファウンデーションの残存部隊を冷徹に排除していたが、ユウナの演説と、戦場に響き渡るハイネの歌声によって敵が戦意を喪失した隙を突き、この激戦区へと急行したのである。
今、戦場に鳴り響いているのは、疾走感溢れる激しいビート。かつてSEED DESTINYという物語を始める狼煙となったテーマが戦場に流れていく。
誰もが崩れてく 願いを求め過ぎて。
自分が堕ちてゆく 場所を捜してる。
「(……えっ、マジで!? マジで西川兄貴の曲ぜんぶこの世界ではハイネが作ってたの!? コンプリートベストでも出すつもりかあの男……!?)」
なお、黄金のコックピットの中で、ユウナが「- ignited -イグナイテッド-」のイントロを聞きながら、内心で戦慄のあまりツッコミを入れまくっていたのは、幸いにも誰にも知られていなかった。
『シン、援護する。……こうして共に戦うのも、二年ぶりだな』
通信越しに響くレイの声は、二年前と変わらず冷静で、しかし確かな信頼に満ちていた。デスティニーと、かつてその背を預け合った伝説の機体――プロヴィデンスの流れを汲むドラグーン搭載機が、再び肩を並べて敵を見据える。
かつて、ギルバート・デュランダルが提唱した「デスティニープラン」の守護者として開発されたデスティニーとレジェンド。
その二機が今、再びプランを強行しようとするアコードたちの野望を打ち砕くために戦っている。これ以上の皮肉が、あるいはこれ以上の「救い」があるだろうか。
「ああ、レイ! 最高のタイミングだ!」
シンの声に、もはや迷いはない。そして、隣を行くレイの瞳にも、かつての影は微塵もなかった。迷い、傷つき、一度は絶望の淵でレイはシンを利用しようとしていた。だが、今の彼らはただ、魂の底から信頼し合える最高の戦友(とも)として、この戦場に並び立っている。
その高揚感と精神の安定は、ユウナの前世のゲーム――『スーパーロボット大戦』で例えるなら、二人揃って気力が150を優に突破し、限界を超えた170にまで達しているかのようだった。
「……フッ。シン、五分で終わらせるぞ」
レイがレジェンドのドラグーンを再展開し、氷のように冷徹で、それでいてどこか楽しげな薄笑いを浮かべる。
「いや、レイ。もっと欲張ろう。――この曲が終わるまでに、全部ブチのめす!」
シンの威勢のいい返奏に、戦場を支配する「- ignited -イグナイテッド-」のビートが加速する。
「……調子に乗るなよ、旧人類の落ちこぼれどもがぁッ!!」
三人の意識を同調させたシンクロアタックの全能感に酔いしれるグリフィンたちが、顔を真っ赤にして咆哮した。三機のルドラが、一斉にその高出力ライフルを構え、回避不能のタイミングで一斉射を放つ。
だが、その瞬間。
デスティニーとレジェンドは、まるで申し合わせたかのように逆方向へ、しかし完全に同期した軌道で加速した。飛来する無数の火線を、あるいは最小限のロールで、あるいはスラスターの瞬発的な明滅だけで紙一重に回避していく。
「馬鹿な……!? シンクロしている俺達の射線を、なぜ……!?」
「遅いんだよ、お前達は!」
シンの冷ややかな声が通信機を打つ。思考を介さない「反射」の極致にあるシンと、戦域の全てを俯瞰する「空間認識能力」の化身であるレイ。コンディション最高の二人が並び立った時、その力は全てを凌駕する圧倒的な力となるのだ。
「……なら、これならどうだ! 死ねッ、デスティニー!」
三人の意識が完全に一つとなったルドラたちが、ビームマントから追従式の残像を鏡像のように投影する。偽物の群れ達はどれが実体か判別不能な極彩色のノイズが、包囲網を絞りながらデスティニーへ肉薄した。
だが、次の瞬間。デスティニーの関節部が「熱」を帯びたかのように赤く発光し、光学センサーすら追いきれない、物理法則を無視したかのような瞬発力を叩き出す。
ルドラ三機が同時に刃を叩きつけたはずの空間には、既に残像すら残ってはいなかった。
「なっ……消えた!? 瞬間移動だと……!?」
オカルトじみた挙動に、アコードたちの全能感が一瞬で凍りついた。読心すら及ばない「反射」に加え、機体性能を限界まで引き出したデスティニーの速度は、既に彼らの思考能力の閾値を超えていた。
なおこの光景を実は見ていたユウナは「ドラゴンボールみたいな事してない!?」とドン引きして叫んでいたという。
「そんな寝ぼけた分身が、通用するかぁッ!!」
「知らないよ、こんな武器!」
彼らの頭上から、叩きつけられるようなシンの怒声が響く。自分達はMS戦をしていたというのに相手がいきなりサイヤ人の様な行動を行い始めたのだから当然である。
ダニエルが半泣きでパニックに陥り、狂ったようにセンサーを走らせる。だが、彼らがモニター越しに目撃したのは、さらなる絶望だった。
紅い翼を広げたデスティニーが、夜の闇を切り裂く極光と共に「増殖」していく。二体、三体ではない。十、二十……。宇宙(そら)の全方位を埋め尽くす、実体と見紛うほどの質量を持った光の残像。
「分身はっ……! こうやるんだぁぁ――っ!!!」
一個中隊、いや、一個大隊にすら匹敵する戦慄の機数が、一斉にアロンダイトとドッズライフルを構え、逃げ場のないルドラたちへ殺到した。
「質量を持った残像だと!?」
グリフィンの絶叫が、三人の共有意識を激しく揺さぶる。彼らの高性能なセンサーは、目の前の敵を捉え続けている。
しかし、その敵は一機ではなく、数十機。それも、ただのホログラムやコンピュータ・ウイルスによる攪乱ではなく実物が迫っている様にしか見えないのだ。
デスティニーの超高速機動にミラージュコロイド、さらにはヴォワチュール・リュミエールによる光学的・物理的な干渉が組み合わさった結果、アコードたちの視界には、機体が「テレポートを繰り返しながら、別々の個体として独立した動きをしている」という、戦術論を根底から覆す光景が投影されていた。
ハッキリ言ってオカルトに片足どころか下半身が全て突っ込まれていると言っても過言ではない。ある残像はアロンダイトを振りかざし、またある残像はドッズライフルの銃口を向ける。一機を狙えば、その瞬間に別の場所から本物が現れる。
「あ、あああ……! どこだ、どこに本物がいるんだよぉ!!」
全能感に酔いしれていたダニエルの声は、今や完全なパニックに染まっている。三位一体のシンクロアタックですら、この「一個中隊規模の超機動」を処理しきれない。一人対三人の戦いは、いつの間にか一軍対三人の絶望的な包囲戦へと塗り替えられていた。
「レイ!!」
「……これだけの舞台だ。俺も出し惜しみはしない。大盤振る舞いと行こう…!」
シンの楽しげですらある咆哮に呼応するように、隣で冷徹な殺気を放つ白銀の機体が動き、レイの静かな宣告と共に、レジェンドの背部プラットフォームから、すべてのドラグーンが解き放たれる。
宇宙の闇を切り裂くビームの尾を引きながら、無数の攻撃端末が幾何学的な陣形を描き、逃げ惑うルドラたちの退路を完全に封鎖する。
レジェンドの背部から放たれたドラグーンが、暗黒の宇宙に幾何学的な死の網を描き出す。だが、その光景はかつてのそれとは決定的に異なっている。
そこから放たれる火線の量は、明らかに異常。本来のレジェンドであれば、大型2基、小型8基(腰部含む)の計10基、総砲門数は34門程度。しかし、オーブやプラントによって改修されたレジェンドSpec IIが誇る弾幕の密度は、その程度の数字には収まらない。
「……3倍だ」
レイが短く、氷のように冷たい声で呟く。この機体は、かつての対バリア対策の為に搭載していたビームスパイク機能を敢えてオミットしている。その代わりに空いたリソースの全てを、ドッズライフル技術の統合と、ジェネレーター直結の連射性能向上へと注ぎ込んだのだ。
一発一発がドッズライフルに迫る貫通力を持ち、それがかつての3倍の密度で降り注ぐ。それは最早、アコードという「進化した人類」の反射神経を以てしても、対応できる猶予を遥かに超越している。アコードは確かに新人類に相応しい能力の持ち主だ。だが「人類」という範疇である以上その制約と限界からは逃れられない。
最早アコード達は叫ぶことしかできずに機体を翻す。だが、避けた先には既にシンの分身が待ち構え、追い払われた先にはレイのドラグーンが先回りしている。
「ここまでだ!!ドラグーンの熱線に焼かれて死ぬがいい!!」
レイの冷徹な宣告と共に、全ドラグーンが一点へと収束する。
全方位から収束する、レジェンドの暴虐的なまでの熱線のカーテンを相手に生き残ろうと、知らぬ間にキルゾーンに誘い込まれたグリフィンたちは、死の淵で本能的な防衛行動をとった。
「ふざけるなッ! こんなところで、俺たちがぁッ!!」
三人は咄嗟にサブアームを展開し、磁場によってビームを偏向させる『ゲシュマイディッヒ・パンツァー』を起動。鉄壁の守りで熱線の奔流を弾こうと試みる。だが、彼らが対峙しているのは「ただの射撃」ではない。
レイの判断によりドラグーンの軌道がミリ単位で変化した。磁場による防御が及ばない、サブアームの関節部、そしてビームマントの隙間から露出した頭部や各部接合部。そこを針の穴を通すような精密射撃が次々と貫いていく。
「なっ……関節を狙って……!? あ、ああああッ!!」
まず犠牲になったのは、リデラードだった。防御が追いつかなくなった一瞬の隙、小型ドラグーンから放たれたドッズビームが彼女のコックピットを直撃する。
「リデェェェェル!!!」
グリフィンの絶叫が響く。だが、最悪なのはここからだった。彼らはシンクロアタックによって、意識を一つに同調させていたのだ。
リデラードが焼かれ、消滅した瞬間の「熱」、引き裂かれるような「恐怖」、そして死の「絶望」。そのすべてが、強烈な精神的フィードバックとなって生き残った二人の脳髄を直撃したのだ。
「ひ、ひぎぃぃぃッ! 嫌だ、来るな、あつい、あついよぉぉ!!」
ダニエルが半狂乱となり、もはや操縦すらおぼつかない状態で虚空を掻く。しかし、モニター越しに、まるで彼の恐怖を煽るかのように、レジェンドの無数のドラグーンがゆっくりとその銃口を彼に向けた。
無慈悲な一斉射が放たれた瞬間、ダニエルの機体は、叫び声を上げる間もなく光の渦に飲み込まれ、宇宙の塵へと変えられた。
出逢う光のない時代の
眩しさだけ
ハイネの歌声が、最期の審判を下すように力強く響く中。残されたのは、グリフィンただ一人。
「あぁ……あぁ……」
仲間二人の凄惨な死を、神経接続を通じて「自分の死」として脳に叩き込まれたグリフィンに、もはや抗う術は残されていなかった。
かつては「選ばれた種」として他者を見下していた傲慢な瞳は今、溢れんばかりの涙と、処理しきれない絶望に濁っている。モニターに映るデスティニーの分身群は、彼には自分を地獄へ引きずり込もうとする死神の群れに見えていた。
ハイネの声が、高らかに戦場を震わせる。それは、閉ざされた運命(デスティニープラン)を拒絶し、不確かな未来へと踏み出す者の咆哮。最早声を出す余裕すらないグリフィンの震える指が、空を掴むように操縦桿を離れた。
変われる力 恐れない
深い鼓動の先に
脳内を駆け巡るのは、仲間が焼かれた瞬間の肉の焦げる音、内臓が沸騰する感覚。シンクロアタックという完璧な連携が、今や彼を最も残酷に苛む呪縛へと成り果てていた。
そこへ、極光の翼を限界まで広げたデスティニーが、残像を束ねて一直線に肉薄する。
シンの瞳には、もはや怒りすらなく、ただ目の前の「脅威」を断つという敵を潰す為の反射と、大切なものを守るという静かな決意だけが宿っていた。
デスティニーの右拳が、青白く、不気味に、そして烈火のごとく輝き出す。掌に集束される凄まじい高エネルギーが、周囲の空間を歪め、大気を排したはずの真空中ですら、その熱量が鳴動しているかのようだ。
交わす炎よ 描かれた
運命に届け
「逃がさない……これで、終わりだぁぁーーーッ!!」
歌詞が運命への決別を歌い上げた、その瞬間。シンの叫びと共に、デスティニーのパルマフィオキーナがルドラに解き放たれた。
逃げも隠れもできない、金縛りに遭ったようなグリフィンのコックピットへ、青白い光を纏った掌が直接叩きつけられる。装甲が紙細工のように歪み、粉砕され、ルドラの胸部が内側から膨れ上がる。
青白い光がルドラの装甲を内側から焼き、グリフィンの視界は白濁した絶望に塗り潰された。
「あ……あが、ぁ……ッ!!」
最後に脳裏を掠めたのは、誇りでも野望でもなく、ただ冷たい死への恐怖。シンクロアタックによって焼き付いた仲間の末路が、彼自身の意識を闇の底へと引きずり込んでいく。直後、機体は激しい衝撃と共に四散し、アコードの一角を担った青年の意識は、宇宙の塵となって永遠に途絶えた。
爆炎が収まり、静寂が戻り始めた宙域で、デスティニーとレジェンドは、まるで呼吸を合わせるようにしてその動きを止めて通信画面開いていた。
「……やったな、レイ!」
コックピットの中で、シンは清々しい笑みを浮かべて戦友に声をかけた。かつて背負っていた重圧も迷いもなく、ただ目の前の敵を打ち破った達成感に溢れている。
『ああ。だが……宣言通りにはいかなかったな』
だが、いわば調子に乗っているシンとは違いレイの返奏は、いつものように冷静で……そしてどこか茶目っ気を含んでいたのだ。
「えっ? いや、勝ったんだからいいだろ?」
『……お前があの時、掌底ではなくアロンダイトを使っていれば、歌詞が「運命に届け」と歌い上げる前に撃破できていたはずだ。タイムロスだな』
「うぐっ……! し、しかたないだろ! コックピットを確実に狙わないと、あのマントで防がれると思ったんだからさ!」
人類最高峰の能力を持つはずのアコードたちを撃破した直後とは思えない、まるでシミュレーターのスコアを競い合う学生のようなやり取り。
二人の精神状態は、もはや敵の策に嵌るような脆弱なものではなく、アカデミー時代の他愛もない会話を楽しんでいた頃そっくりである。草葉の陰でデュランダルも涙を流しているだろう。
『ふ……。まあいい、結果は上々だ。それで、キラ・ヤマトの援護に向かうか?』
「いや……隊長や副総裁なら大丈夫だあの二人、いや総裁やババ三佐をいれると四人か?今は最高にノリに乗ってるしな。俺たちの出る幕なんてなさそうだ」
レイの問いに、シンはふっと視線を遠くへ向けた。そこには、極光を撒き散らしながらカルラと撃ち合うマイティストライクフリーダムと。黄金の装甲を煌めかせながらカルラの随伴式大型ドラグーン、ジグラートを次々と粉砕するユウナ達の姿が。
キラへの信頼、そして副総裁ユウナは多分死ぬ事はないだろうという確信を持ってシンは軽やかに操縦桿を倒した。
「俺たちはミネルバを叩く! これ以上、あんな奴らに俺たちの場所を汚させない!」
『了解した。……行こう、シン』
粒子を撒き散らす極光の翼と、無数のドラグーンを従えた白銀の機体。かつての「運命」を乗り越えた二人は、双星の如き軌跡を描きながら、次なる標的――戦場に座するかつての母艦、ミネルバへと向かって加速していくのであった。
・- ignited -イグナイテッド-
西川アニキの歌う曲。これが流れた時点でユウナ的には何気に驚愕しています。なんせFREEDOMはあくまでオリ曲の範疇でしたがこちらはユウナも慣れ親しんだ曲。つまり、今後知ってる曲がどんどん流れてくる可能性が生まれてしまい、もうどうにでもなーれとなってるそうな。
・レジェンドspec2
史実とは違いオーブで修復され、再びレイの元に帰ってきた機体。その強化内容は主にザフト由来ですが、ひたすらにドラグーンの密度を上げる為に火線を増やすというもの。当時のザフトはドッズライフル対策でビームリーマーを開発したものの、同時に今後の戦場ではビームリーマーに類似する防御兵装を持つ機体や回避性能に優れた機体が多く現れると考え、ならどうするのか?といえば……ドラグーンの攻撃を全てをドッズビームにした上で、密度をひたすら高める。つまり、回避型機体が絶対に避けられないような機体を作り出せばいいというコンセプトで、ドラグーンの数を3倍にしたこんな発想の機体が生まれるのでした。
とはいえ火線を増やした弊害によって貫通力は確実だが一発だけでは仕留めきれなくなっており、さらにエネルギーもバカ喰いするので超短期決戦タイプの機体となっており、ある意味レジェンドの汎用性を台無しにした失敗作……もとい試作期としては尖り過ぎた機体ですが、アコードすらも避けられない弾幕を作り出すことで強引に撃墜するという大戦果を上げることに成功したのでした。なお、こんなもん扱えるのはムウかレイくらいなものなので戦後はさらにマイルドに調整される技術試験機として唯一ザフトに返還され、今後の兵士達の生存率を上げる為にレイは活躍していくでしょう。
・ドラグーンの熱線に焼かれて死ぬがいい
仮にこの作品が劇場作品であった場合この場面で知ってる人は爆笑するかもしれません。
ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?
-
原作通り。
-
平和の為に覚悟を決める。