破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第七十二話 割を食ったもの達

 

 

 

 

 ミネルバ。

 

 

 前大戦の激戦を最後まで戦い抜き、史実とは異なり轟沈の憂き目に遭うこともなく、ザフト軍旗艦としての栄誉を一身に浴びた歴戦の名艦。その紅き船体はプラントの不屈の象徴であったはずだった。

 

 

 だが今、その双翼の巨体は反乱軍の手に落ち、かつての戦友たちに砲口を向ける「賊軍の砦」へと成り下がっている。そして、周囲を固めていたはずの反乱軍艦艇が次々と宇宙の塵と消えた今、この船は宙域に唯一残された、孤独で無惨な最後のザフト反乱軍の残存艦であった。

 

 

 

「……おのれ……ッ、おのれぇぇ!!」

 

 

 

 ブリッジで指揮を執る首謀者、ジャガンナート中佐は、血涙を流さんとばかりに充血した目でモニターを睨みつけていた。

 

 

 

 どれほど大義を言い繕おうが、最早敗北は決定的。画面に映し出されるのは、自分たちが誇りとしていた「同胞」が散っていく光景と、何より耐え難いことに、その撃沈スコアを稼いでいる部隊の中に、プラント正規軍の機体が混ざっているという事実だ。

 

 

 

 どこで間違えたのだろうか?苛立つ様にジャガンナートは震える拳をコンソールに叩きつけた。

 

 

 

 当初の予定では、アプリリウス市の議会周辺を電撃的に占拠し、政治的主導権を握るはずだった。だが、その作戦は漏れていたのか忌々しいジュール隊やバルドフェルド隊の妨害にあって無残にも失敗。それだけではない。撤退の際、電子撹乱のために市内で放ったNJダズラー使用……それが、決定的な致命傷となってしまった。

 

 

 

 軍事的な撹乱を目的としたそれは、同時にアプリリウス市内の民間インフラに壊滅的な打撃を与えた。病院の生命維持装置、食料供給システム、市民の足である交通網。自分たちが「プラントの未来のため」と称して引き起こした行動は、結果として自分たちの愛すべき本国と市民すべてを完全に敵に回すという、最悪の愚行となってしまったのだ。

 

 

 

(我々は、守るべきものを……自らの手で踏みにじったというのか……!) 

 

 

 前大戦の結果、プラントが受けた損失は計り知れなかった。地球連合の各国は、自国内の安定を望みながらも、同時に宇宙軍の再建を最優先事項として進めているがそれは当然の帰結でもあった。

 

 

 連合にとってザフトは今なお最大の仮想敵であり、過去に大量虐殺兵器を使用した事実がある以上、たとえ復興が遅れても防衛のための力を蓄えるのは、国家としての生存戦略に他ならない。

 

 

「想いだけでも、力だけでも」

 

 

 かつてラクス・クラインが語ったこの言葉は、単なる理想論の否定ではない。理想を現実にするためには「力」という血生臭い装置が必要であるという、一種の諦観と嘆きを含んだ真理であり、それを連合各国やオーブが行うのは、至極真っ当な国家戦略といえる。

 

 

 だが、ジャガンナートたちザフト反乱軍の兵士にとって、その「当たり前」の流れは、破滅へのカウントダウンに他ならなかった。プラントの成り立ちを考えれば、コーディネイター至上主義者は決して一部の過激派ではない。むしろ多数派に近い思想だ。

 

 

 そんな彼らにとって、世界が再び旧態依然とした「ナチュラル優位」の色に染まり、軍事力という名の鎖で自分たちが縛り付けられていく現実は、耐え難い恐怖であった。

 

 

「我々が戦わねば、同胞たちは再び迫害の歴史に突き落とされる……!」

 

 

 多くの同盟者が犠牲になる中、彼らはそれを「義憤」と呼び、立ち上がった。ナチュラルの圧政に屈しない未来を勝ち取るための蜂起。だが、その結果がもたらした現実は、あまりにも皮肉だった。

 

 

 

 ジャガンナートは、モニターに映る戦況図を眺め、憎悪のまま不気味に口角を歪めた。彼の蜂起は、ある意味で無駄ではなかったのだ。

 

 

 現在、世界はファウンデーション軍、およびザフト反乱軍を「人類共通の敵」として認識している。かつて対立していた連合、ザフト正規軍、そしてオーブ。それらが今、自分たちという巨大な悪を討つために、かつてない強固な結束を見せている。

 

 

 

 望んでいた形とは、あまりにも正反対の結末。彼は、世界の意志を統一するための「生贄」を用意する手助けをしていたに過ぎなかったのだ。多くの若い兵士たち、志を共にした同胞たち。

 

 

 そんな彼らをハーメルンの笛吹き男のごとく死地へと誘い、人類共通の敵という祭壇に捧げることで、皮肉にも地球連合とザフト正規軍の、史実以上の強固な連携を引き出してしまったのだ。

 

 

 

 その構図は、かつて彼が最も忌み嫌い、唾棄した存在――ロード・ジブリールやロゴスと何ら変わりはない。

 

 

 

 

「認めん……! 断じて認めんぞ、こんなことは……ッ!!」

 

 

 

 

 ジャガンナートは口をパクパクと震わせながら、モニターを凝視した。周囲のファウンデーション艦隊は、もはや戦意を喪失し、次々と降伏信号を発信している。旗艦『グルヴェイグ』に至っては、艦内で降伏を主張する一派と、狂信的に抗戦を叫ぶ一派が武器を取り、凄惨な殺し合いを始めているという惨状だ。

 

 

 

 

「……撤退だ! 撤退するぞ! 艦を反転させろ!!」

 

 

 

 もはや、組織的な交戦など不可能。狂ったように叫ぶジャガンナートに対し、一人のオペレーターが、涙と絶望に顔を歪めながら問い返した。

 

 

「どこにですか!? ……どこに、逃げろと言うのですか!?」

 

 

 その言葉は、鋭い刃となってブリッジの空気を切り裂いた。背負ったのは全世界からの憎悪。プラント本国は自分たちが放ったNJダズラーによって敵に回り、唯一の同盟国であったファウンデーションは今この瞬間に崩壊しつつある。

 

 

 この広大な宇宙のどこにも、彼らを受け入れる港などは、もう存在しない。

 

 

「……黙れ! どこでもいい、この場から離れろと言っているんだ!」

 

 

「無理です……後方、および左右より接近する高速反応多数! 完全に、包囲されています!」

 

 

 

 オペレーターの悲鳴と共にメインモニターに映し出されたのは、かつてのザフト軍の誇りであるデスティニーとレジェンドだ。極光の翼をはためかせ、無数のドラグーンを従えた二機の「死神」が、かつての母艦であるミネルバを逃さぬよう、逃げ場などないと言わんばかりに迫ってくる。

 

 

 ジャガンナートは、アコードたちが裏で行っていた「精神干渉」によるモラルハザードの防止策を知る数少ない人間の一人だった。戦意を強制的に維持させ、疑念を抱かせない。そんな非人道的な処置も、大義を成すためには必要悪だと、彼は苦々しくも受け入れていた。

 

 

 しかし、今。戦場に鳴り響き続けるハイネ・ヴェステンフルスの歌声は、まるで呪縛を解く「魔法の鍵」として機能してしまっている。

 

 

 

「……忌々しい歌を止めろ! 通信を遮断しろと言っているだろう!!」

 

 

 ジャガンナートが喚き散らす。だが、一度正気に戻り、自分たちが犯した「本国への攻撃」という大罪に気づいた兵士たちのパニックは、もはや制止不能だった。秩序は崩壊し、艦内は絶望の叫び声に満たされている。

 

 

 国際救援チャンネル越しから流れる彼の曲は兵士達からすれば自分達を今まさに殺そうとする鎮魂歌に過ぎないのだから。

 

 

 

「……火星だ! 艦を反転させ、火星のマーズコロニーへ向かえ!!」

 

 

 

 血走った目でジャガンナートが叫ぶ。正気の沙汰ではない。ミネルバがいくら高性能艦であっても、特別な装備も無く無補給のままで火星までの長距離航行に耐えられる保証はない。

 

 

 仮に辿り着いたところで、ならず者の烙印を押された自分たちが受け入れられる道理など、万に一つもなかったのだから。

 

 

「な、何を言っているんですか!? 中佐、正気ですか!!」

 

 

「黙れ! ここにいても殺されるだけだ、動かせ! 早くしろ!!」

 

 

 

 狂乱がブリッジを完全に支配しようとしたその瞬間、自動扉が激しい音を立てて跳ね上がった。

 

 

「動くなッ!!」

 

 

 怒号と共に、ブリッジへ乱入してきたのは数人の若い兵士たちだった。その手には自動小銃が握られ、先頭に立つ男が威嚇のために天井へ向けて一発、乾いた銃声を響かせる。

 

 

 火薬の匂いと硝煙が、緊迫した空気をさらに重く塗り潰し、かつては共に戦うはずだった上官へ自動小銃がそうして向けられていく。

 

 

 彼らはつい先刻まで、コーディネイター至上主義に酔いしれ、ナチュラルを「劣等種」と見下していた者たちだ。選民思想という名の熱病に浮かされ、理想の世界を築くのだと息巻いていた若者たち。

 

 

 だが、今の彼らの顔にあるのは、崇高な理念などではない。死への恐怖と、行き場のない怒りが混ざり合った、無様なまでの「生への執着」であった。

 

 

 

「貴様ら、何をしている! 持ち場に戻れッ!!」

 

 

「……黙れよ、クソジジイ」

 

 

 兵士の一人が、掠れた声で吐き捨てる。その瞳は、正義や忠誠心に燃える者のそれではない。自分たちがしでかしたことへの底知れぬ恐怖と、「自分たちだけでも助かりたい」という行き当たりばったりの願望。

 

 

 生贄を差し出すことで、少しでも戦後の裁判で情状酌量を勝ち取ろうとする、追い詰められた鼠の目だ。

 

 

 

「あんたのせいで……あんたのせいで俺たちは、故郷に帰れなくなったんだ!!」

 

 

「そうだ……あんたを拘束してコンパスに、ザフトに引き渡す! そうすれば、俺たちは……!!」

 

 

「な、貴様……反乱のつもりかッ!?」

 

 

 

 ジャガンナートが震える声で叫ぶ。だが、その言葉はもはや、この場を支配する狂気を煽る燃料でしかなかった。

 

 

 

「うるせえんだよ、この老害が! 反乱を始めたのは、最初からあんただろうがッ!!」

 

 

 

 一人が叫ぶと同時に、雪崩のように兵士たちがジャガンナートへと襲いかかった。それは軍人の規律ある行動などではなく、ただの「八つ当たり」であり、出口のない恐怖をぶつけるための暴力に過ぎなかったのだ。

 

 

 もみくちゃにされながら、ジャガンナートのノーマルスーツが乱暴に引き裂かれ、強引に剥ぎ取られていく。かつてはプラントの未来を背負うと誇ったその衣服は、今やただの無残な布切れへと成り果てた。

 

 

 下着同然の姿にまで貶められた老兵に対し、若い兵士たちは容赦なく拳と蹴りを叩き込む。鈍い打撃音と、老いた肉体が悲鳴を上げる音がブリッジに響き渡る。

 

 

 

「……ん、んぐぅッ……!」

 

 

「おい、死なせるなよ! 舌を噛んで自殺でもされたら、俺たちの手土産が台無しだ!」

 

 

 

 兵士の一人が、持ち込んだのか、あるいはその場で脱いだものか、汗と脂で汚れた靴下をジャガンナートの口に強引に押し込んだ。奥深くまで詰め込まれ、吐き出すことも、自害することも許されない。

 

 

 

「……ッ!? ……んんーッ!!」

 

 

 

 ジャガンナートは必死に周囲のブリッジスタッフへ助けを求める視線を送る。だが、視線が合ったオペレーターたちは、一瞬の戸惑いの後、冷淡に目を逸らした。

 

 

 

 いや、それだけではない。ある者は拳を握りしめ、自分もあの暴行に加わるべきではないか、そうすれば「自分は中佐に逆らっていた側だ」と証明できるのではないか――そんな醜い打算が、沈黙するスタッフたちの間に静かに伝染していく。

 

 

 

 大義のために命をかける。その志を、誰も否定はできない。それを間違いだと言い切ることも難しいだろう。だが、そのメッキが剥がれ落ちたとき、人はどこまでも醜くなれる。

 

 

 史実において、彼は最後の最後まで部下に裏切られることもなく、イザークによって艦長ごと誅殺されたが、ある意味史実のジャガンナートは幸福であったと言えるだろう。

 

 

 死の間際まで、プラントには自分たちを支持する味方が残っていると信じ、ブリッジの人間たちと共に特攻すら辞さない大義と覚悟を分かち合った「同志」であると疑わずに逝けたのだから。

 

 

 だが、この世界の彼は真逆だった。彼は史実と違い、爆炎の中で命を散らすことはなく、生き延びることだけはできた。しかし、その代償はあまりにも大きかったのだ。

 

 

 信じていた部下たちに嬲られ、家畜のように縛り上げられ、自らが唾棄した「ロゴス」のような醜悪な姿にまで零落し、死してなお消えない汚名と屈辱を背負って終わりを迎えるまで生き続けなければならない。

 

 

 それは死よりも過酷な、終わりのない地獄の始まりに他ならない。彼の人生は公開処刑という名の終焉まで徹底的にその尊厳は陵辱され、後世にその名は刻まれるであろう。どう刻まれるのかはいうまでもない。

 

 

 やがて、沈黙を続けていたミネルバから、一際明滅の強い降伏信号が発信された。同時に全回線を通じて、首謀者ハリ・ジャガンナート中佐を拘束したという報告が、震える兵士の声でもたらされる。

 

 

 

「……これで終わりか」

 

 

 

 レイの呟きに、シンが静かに頷く。二機の死神は、かつての母艦の周囲に駐留し、反乱軍が二度と牙を剥かぬよう、鋭い視線でその動向を監視し続けるのであった。

 

 

 

 

 

 一方その頃、ミレニアムの指揮を取るコノエ艦長は、モニターに映し出される各戦域の勝利報告を眺めながら、ふうと深く椅子に背を預けた。

 

 

「終わったか……」

 

 

 

 コノエがポツリと独白する。ファウンデーションの野望は挫かれ、ザフト反乱軍も鎮圧された。だが、勝利の余韻に浸るよりも先に、彼は妙な物足りなさを感じていた。

 

 

 

「……そう言えば今回、自分は何もしていないな」

 

 

 

 コノエは手元のコンソールを眺め、自嘲気味に呟いた。実際には、事前の作戦立案や補給路の確保、各部隊との調整においては心血を注いで働いていた。しかし、いざ実戦の火蓋が切られてからはどうだ。

 

 

 

 激戦が繰り広げられる中、ミレニアムは終始「オウガ」の影に身を潜めていた。ユウナたちが駆るオウガが敵陣のド真ん中へ突撃し、艦隊を次々と蹂躙していく様を、コノエはただ後方の安全圏から見据えていただけである。

 

 

 ミレニアムの誇る主砲が、一度として火を噴くことはなかった、もともとコノエは、前線で派手に暴れ回ることを好むような血気盛んな性格ではない。無理に武功を立てようと焦る気持ちも微塵もなかったが、それでもふとした瞬間に首を傾げてしまう。

 

 

(わざわざ副総裁にスカウトされて、この最新鋭艦の艦長に据えられたというのに……)

 

 

 

 そう、彼が振り返ればミレニアムの艦長に就任して以来、戦闘面において「活躍」と呼べるような華々しい出番はほとんどなかったのだ。

 

 

 だが、それはコノエ艦長の無能だからではない。そもそも、旗艦であり母艦でもあるミレニアムが、最前線で敵の砲火を浴びるような事態そのものを、ユウナが極端に嫌っていたという事情がある。

 

 

 旗艦であり、母艦であるミレニアムが落とされれば、その時点で全軍の運用能力は瓦解し、全てがお終いになる。ユウナの持論は徹底していた。「最前線でミレニアムが獅子奮迅の活躍を見せなければならない状況になった時点で、戦略としては既に敗北している」というものだ。

 

 

 なるほど、確かに歴史や物語に名を刻む艦たちは、常に死線の真ん中にいた。

 

 

 かつての大戦を駆け抜けたアークエンジェルやミネルバ。あるいは、ガンダムシリーズにおける名艦であるホワイトベース、プトレマイオス。そして、世代を超えて戦い続け、五十年もの間、勝利の象徴であり続けたディーヴァといった艦艇達。

 

 

 それらの艦が、弾雨の中を潜り抜け、主砲で敵陣を切り裂く煌びやかな活躍は、見る者の心を打つ。トダカ海将のように「宇宙戦艦ヤマト」の伝説の如く、たった一隻で絶望的な戦況を覆す戦艦の勇姿に、男ならば一度は憧れるものだ。

 

 

 しかし、軍事のプロフェッショナルであるコノエには理解できていた。母艦がそんな「英雄的な活躍」を強いられるのは、守るべき護衛艦隊が全滅したか、あるいは当初の作戦が完全に破綻した際の「奇策」や「博打」に過ぎないということを。

 

 

(英雄的な奮戦など、指揮官にとっては屈辱でしかない、か……)

 

 

 ユウナの戦術思想は、徹底して「退屈な勝利」を追求するものだった。装備を万全に整え、最適なパイロットを選別し、常に技術的な優位を担保した上で、メタゲームにおいて徹底的な対策を講じ続ける。

 

 

 テロリストだろうが、進化を自称するアコードだろうが関係ない。ユウナという男は、勝利のための「準備」という工程に対し、病的なまでの固執を見せていた。母艦が最前線に立ち、敵の砲火を浴びる状況を彼が嫌うのは、それが「イレギュラー」だからだ。

 

 

 本来、ユウナは現在進行形で行われているバシレウスによるアルテミス要塞陥落のような「奇策」すらも、内心では唾棄しているはずだ。盤石で余裕を持った退屈な勝利こそが彼の理想であり、奇策を用いざるを得なくなった際。自軍に少なくない損害というリスクを示された際は、彼はいつもひどく不安げで、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

 

(……贅沢な御仁だ)

 

 

 コノエは内心でそう呟いた。世間一般には「慎重」という言葉で片付けられるが、ユウナのそれは度を越している。石橋を叩いて渡るだけでは飽き足らず、徹底的な補修工事を行って強度を完璧にし、その上で「万が一橋が壊れた際」の予備プランまで用意してようやく一歩を踏み出す。

 

 

 彼は戦場において、例のBGMと共にデデン!と現れるランスロットの活躍で全ての策を台無しにされてブチ切れるルルーシュという存在を決して忘れなかった。

 

 

 イレギュラーによって全てを台無しにされる恐怖はいざこの世界に転生した上で、オーブ防衛戦におけるミネルバ隊の活躍によって嫌でも理解してしまっていたし、イレギュラーによって作戦を台無しにされるのであれば、イレギュラーが現れる事を前提とした装備を整えた上で備える。

 

 

 Bデバイスやガイアティターンズにおけるフラッシュアイは、正に彼の慎重さ、或いは恐怖心の発露と言えるだろう。

 

 

 

 その過剰なまでの用意周到さが、結果としてC.E.史上最強クラスの性能を誇る最新鋭艦ミレニアムを、常に後方で「備え」として温存させ続けることになったのだ。

 

 

 だが、その恩恵を最も受けているのは、他ならぬ現場の人間たちだ。コンパスにおいて、各パイロットに与えられる任務は常に明確だった。

 

 

 

 「あれもこれも」と欲張ることはさせない。パイロット一人一人が「やるべき事」を一つだけに絞り、それに集中できるよう、戦場というカオスを事前に整理して提供しているのだから。

 

 

「……おかげで、こちらの仕事がなくなるわけだ」

 

 

 

 徹底して和らげられた艦長としての負担。本来なら戦域全体の混沌に頭を悩ませるはずのコノエ艦長が、今や「報告を待つだけ」の存在でいられる。これは指揮官としてはある種の屈辱であると同時に、ある意味これ以上ないほど平和で、誇らしい理想像でもあったのだ。

 

 

 最新鋭のブリッジに響くのは、激しい警報音ではなく、ただ粛々と進む各部隊のステータス報告のみ。

 

 

 

 メインモニターに映し出されているのは、今もなお戦場の中央で圧倒的な存在感を放ち、黄金色の残光を撒き散らしながら戦う「オウガ」の勇姿。そしてその傍らで、もはや人智を超えた激闘を繰り広げる「マイティストライクフリーダム」と「カルラ」の一騎打ちだ。

 

 

 

 既に別宙域でシュラを討ち取ったアスラン達の勝利報告も既に入っている。この、神々の争いにも似た最後の一騎打ちに決着がついた時、この長きにわたる混迷の戦いは完全に幕を閉じる。

 

 

 

 コノエは、自艦が放つことのなかった砲門の代わりに、全通信回線を開くためのスイッチを入れた。その表情には、戦いを終える者だけが持つ静かな慈愛が宿っている。

 

 

「各機、および友軍艦隊へ。作戦は最終段階を通過した。間もなく、この戦闘は終わる」

 

 

 

 彼の凛とした声が、宇宙(そら)を駆けるすべての兵士たちの耳に届く。

 

 

「全艦、これより警戒の上で救助体制に移行せよ。繰り返す、救助体制だ。……敵味方の区別は不要。漂流するすべての負傷兵、および脱出ポッドの回収準備を。我々の役目は、一人でも多くの命を連れ帰ることだ」

 

 

 破壊の嵐が過ぎ去ろうとしている戦場で、ミレニアムは最後にして最大の任務――「救済」のためにその舵を切る。モニターの向こう側、黄金の輝きと極光が交差する戦場の終焉を見届けながら、コノエ艦長は平和な未来への第一歩を、静かに、そして力強く踏み出すのであった。

 

 

 





・ジャガンナート
 本作で割を食った人の一人。史実であれば大義を最後まで信じ続け、理想に準じてイザークによって仕留められたが。今作ではあまりにも反乱ザフト兵がNJダズラーによってやらかした挙げ句、ハイネの歌による催眠解除、レクイエムの早期破壊(地下の炉心はまだ生きてますが到底使用不可能)、多国籍連合によって反乱軍の艦艇がミネルバを除いて撲滅(これに関しては劇場版においてザフト反乱軍が全面に押し出されていたのが大きい).された事など圧倒的に不利になる要素が連発された結果、生き残ったパイロットによる保身のためのクーデターによってブリッジを制圧。本人は陵辱ゲーのような、誰得シーンを見せつけながら拘束され、彼らが少しでも罪状をどうにかする為に。デキムを射殺したマリーマイア兵ムーブをされる羽目になりましたとさ。彼に関してはプラントで国賊と処刑される末路を辿るでしょうし、ある意味国際社会においてプラントは責務を果たした証拠として、最後の最後に祖国への奉仕を最大限に行ったプラント屈指の英雄として歴史に刻まれるでしょう。皮肉込みで。


・コノエ艦長
 本作で割を食った人。ミレニアムの活躍シーンの多くがユウナ達によって奪われてしまい、本人曰く実戦では何もしていないとすら思っていたりしますが。これに関してはMS隊が優秀過ぎた、殴り込み専用のバシレウスと比べて火力と装甲に特化してるが無理を行う必要がなかった。ユウナが母艦を失う事を恐れてその運用に口出ししていた事などが大きいでしょう。

 とはいえコノエ艦長はミレニアムが後方にいたから直接戦果を上げなかっただけで、作戦会議においては積極的に案をだしており、オウガを盾にする事やレクイエム破壊作戦などを成功に導き出しており。クルーやユウナ達からすれば、ミレニアムという最終防衛ラインを犯されずに作戦を成功に導く知将として評価されていますので周りの評価はめちゃくちゃ高かったり。ラミアス艦長やグラディス艦長のように最前線で暴れざる得なかったタイプではなく、正しい意味で艦隊司令としての責務を果たし続けた結果、原作よりおとなしい活躍ばかりになってしまった悲劇の人でしょう。見せ場をオウガや汚ねぇ芋虫に奪われており、本当に申し訳ない……。

・デュランダル議長
 正直にいえば今回のファウンデーション戦における影のMVPと言える人。とはいえその所業は到底表に出せるはずもなくユウナ達に功績を持っていかれますが。忘れがちですが現在は死刑も視野にいれた裁判の最中であり。ユウナやラメント議長は悩んでいます。
・DPを生み出した責任をとって処刑するか。
・生かした上でその生涯を社会奉仕のための研究にあてさせるか。
・グラサンノースリーブでオーブ出身の医師がオーブに生えてくるか。

その辺りは展開次第と言えるでしょうね。

・シュラ
 色々あってナレ死した人……な訳ではなく次回その辺りも。とはいえ現状1万文字をこえてまだ終わりませんので恐らく前後編になります。果たしてアスランはどうやって仕留めたのか。

 なお脳みそデバイスのせいで破廉恥戦法はありません。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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