破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第七十六話 死すべき者達の意地

 

 

 

 くそ、死ぬ……マジで死ぬ……ッ!

 

 

 

 俺はオウガのコックピットの中で、何度も、何度も断続的に意識を飛ばしかけていた。自業自得だがババの野郎、やっぱ俺が乗ってるってことを忘れてねえか? 100メートル級の巨体を手足の様にぶん回しやがって。

 

 

 

 急加速と急旋回が繰り返されるたび、座席に叩きつけられる肉体に殺人的なG負荷が襲いかかる。気絶したと思ったら、次の瞬間には足元に走る激痛で無理やり叩き起こされる。

 

 もう七回目だ。いい加減、三途の川の向こうにキラキラした何かが見えてきたぞ。あれウズミ前代表じゃねぇか?

 

 

「……ミーアの差し入れを断っておいて本当に正解だったな……。あんなもん食ってたら、今ごろパイロットスーツの中はゲロまみれの地獄絵図だったわ……ッ!」

 

 

 

 胃液を無理やり飲み込み、霞む視界でモニターを睨みつける。デュランダルは特注Bデバイスの効果は五時間程度と言っていたが、その前に俺が廃人になるわ。

 

 

 だが、俺を気遣う余裕を捨てて戦場に集中し始めたババと、自身の曲を背景に援護を見せるハイネのデスティニーの働きは確かだ。カルラ(旗艦が制圧されたらしく名前が判明した)を援護しようとする無人機やジグラートは、俺たちが撒き散らすスーパースキュラの火線と、ハイネの的確な迎撃によって次々と塵に変わっていく。

 

 

 正直な話、キラとラクス対オルフェなんていう人類最高峰の化け物同士の殴り合いに、俺たちが直接混ざるなんて逆立ちしたって不可能だ。一歩間違えれば巻き添えでこっちが消し飛ぶ。

 

 

 

 だがな……敵が有利になる要素を片っ端から潰して回ることなら、俺達にだってできる。まぁ俺はコックピットで偉そうにギャーギャー叫んでるだけだから負担は軽い方だけどな…!そもそも俺副総裁だけど!!ろくに鍛えてない副総裁だけど!!!

 

 

 

 モニターの警告音が鳴り止まない。次から次へと集結しやがって……無人機にジン、おまけにジグラートとかいう端末か。掃っても掃っても、湧き出るように増えていきやがる。

 

 

 

「ババァ!気をつけろよ!敵の数、明らかに増えてるぞ! ?宰相の野郎、なりふり構わず残存戦力を全部ここに叩きつけるつもりかよ!」

 

 

 どうやらオルフェの野郎、残存する無人機を全部オウガとマイティーストライクフリーダム……長いな、もうマイフリでいいか。とにかく、その二機を同時に沈めるために全戦力を集結させてるようだ。

 

 

 

 あいつとキラたちの戦いを見てると、心底ゾッとする。機体性能なら間違いなくこっちに分があるはずだが、あっちは一人でカルラを操りながら、アコードとしての異常なまでの反応速度で食らいついてやがる。

 

 

 信じられないことだが、モニター越しに映るあのアコードのボスのパイロットとしての腕はキラたちを上回ってやがる。

 

 

 

 最高の機体であるマイフリにキラが乗り、ラクスがサポートに回っているっていうのに、仕留めきれない。もしプラウドディフェンダーのナノ粒子によるバリアがなければ、今ごろマイフリさえも撃墜されていたんじゃないか……? そんな寒気のするような光景が目の前で繰り広げられていた。

 

 

 

 オウガのスーパースキュラが再び唸りを上げて轟音と共に射線上の無人のジンをまとめて塵へと変えていくが、それでもまだ足りない。状況は刻一刻と悪化している。どう転んでもおかしくないこの泥仕合を、どうにかして盤面をひっくり返さなければ…!

 

 

 

(援護を……。いや、動けるやつが少なすぎるだろ!)

 

 

 

 

 必死に味方の状況を脳内で整理するが、笑えるくらいに余裕がない。ハイネは今、俺たちの護衛で手一杯だ。シンとレイは、既に降伏したはずの部隊が妙な動きをしないよう睨みを利かせているし、カナードはアルテミス近辺の防衛から動かせない。

 

 

 

 ムウとヒルダ? アカツキがあのザマじゃな……。ボロボロになった機体の修理で後方に引っ込んでいて、ムラサメ改の予備もない。アグネスはどうだ? ……いや、いっちゃ悪いが、アグネスは確かに強いが、不意打ちに特化したNダガーNではどうしょうもない。

 

 

 

 そしてアスラン。あいつはさっきの戦闘で相当に消耗して、今は補給の真っ最中だ。念入りに整備と弾薬の補充を受けさせてるが、現場に戻ってくるまでにはまだ時間がかかるらしい。

 

 

 

 激痛とG負荷で意識が遠のきそうになるのを、気合だけで繋ぎ止める。

 

 

 

 視界の端で火花を散らすマイフリとカルラ。……分かっている。一つだけ、たった一つだけこの絶望的な状況を打破できる装備が、マイフリには備わっている。だが、カルラの圧倒的な機動力の前には、それを……ディスラプターをチャージし、照準を固定する暇さえない。

 

 

 

 なら、カルラの動きを一瞬でも、ほんの一瞬でも釘付けにして止める必要がある。挑発か? いや、ダメだ。アイツは現状ですら激怒しているが、なおかつその怒りを戦闘力に変換しやがっている。言葉のナイフ程度じゃ足止めにはならねえ。

 

 

 

 ならば、肉を切らせて、骨を断つ――それしかねえ。

 

 

 

「……ババ! ちょっと聞け!!」

 

 

 

 俺は血の気の引いた顔で、震える指を操作パネルに叩きつけながら、後ろのババの脳に手順を叩き込む。失敗すれば一気にこちらが不利になり、最初で最後しか使えない博打。だが、千日手となってアスランがくるまで時間を稼ぐ事に失敗してキラ達が殺されるよりは…!

 

 

 

「……ッ!? その手が……! 了解いたしました、閣下!!」

 

 

 

 ババの覚悟に満ちた返事と同時に、俺の、いや、このシリーズを愛する全てのファンの脳を焼き尽くした、あのアニメ史に残る最高の名場面。かつて『舞い降りる剣』で流れ、伝説となったあの旋律。

 

 

 

 

 ――Meteor -ミーティア-

 

 

 

 

 

 かつてテレビで興奮して釘付けになった伝説の回にて流れたあの曲が耳に届いた瞬間、俺の脳は一気に焼き切れた。恐怖? 激痛? そんなもん、最高のイントロの前には誤差だよ、誤差!

 

 

 

 

「はは……はははは!!」

 

 

 

 最早ハイになって笑うしかない状況で、俺はハイネのデスティニーに作戦概要を叩きつける。データを受け取ったハイネが、一瞬だけ沈黙した。

 

 

 

「……すまん、ハイネ。危険なのは分かってる。だが、お前の命を俺に貸してくれ」

 

 

 

「了解。いいってことよ。わざわざ俺の曲を流してもらったんだ。命令じゃなくたって、こんなの志願してでも乗るさ!」

 

 

 

 俺の言葉に、通信モニターの中のハイネは、いつもの不敵な笑みを浮かべてみせる。頼もしすぎる返答に、俺は唇の端を吊り上げた。

 

 

 そのまま、激闘を続けるマイフリのコックピットへ割り込みをかける。いくら相手の攻撃を無力化したところでナノバリアは近接戦には通用しない、オルフェの積極的な剣戟の前に二人とも防戦一方だ。

 

 

 

 

 

「キラ! ラクス! ディスラプターの準備をしろ!」

 

 

 

「ユウナさん…!既に承認は済ませておりますわ! ですが、チャージをする暇が……今のこの距離では、撃つこともままなりません!」

 

 

 

 ラクスの、余裕をかなぐり捨てた叫びが通信越しに響く。無理もねえ。マイフリに搭載された新装備、ディスラプターは、冗談抜きで絶対無敵の最強兵器だ。それこそ、かつての救世主が持ってたドッズライフルが子供の水鉄砲に見えるほどの、究極にして最悪の攻撃力を誇る。

 

 

 だが、そんな攻撃を放つ為にはほんの、本当にわずかな「溜め」の時間が必要だ。超高速の接近戦を仕掛けられている現状では、チャージを開始した瞬間にオルフェの剣に叩き切られるのがオチ。だからこそ俺たちがそのための時間を稼ぐ必要があるわけで。

 

 

 

「それくらい、俺たちが時間を稼いでやる! いいか、主人公になったつもりで俺たちを踏み台にしろ! そして、この戦いを終わらせろ!!」

 

 

 

 そうさ。この物語の主人公はキラであり、シンなんだ。

 

 

 

 俺という男は本来、ヘイトを集めて無様に散るヴィランとして生み出された。ババだって名前すら怪しいモブに近い存在で、ハイネもまた、物語の序盤であっけなく退場した。

 

 

 

 俺たちは皆、主役を引き立てるための、あるいは世界観の無情さを描くための、悲劇や喜劇を背負わされた「脇役」に過ぎない。

 

 

 

(だがな……悲劇で終わらせるつもりなんて、さらさらねえんだよ!)

 

 

 

 全員が死ぬ運命だったとしても、そんなの知ったことか。命を投げ捨てる悲劇で物語を盛り上げるんじゃなく、生きて、主人公を勝利へと押し上げる最高の「踏み台」として、この役目を完遂してやる。

 

 

 

 前世の記憶を持ったこの俺が、この世界で意地汚く生きるために足掻き続ける為になぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんのぉぉぉーーーッ!!!」

 

 

 

 

 ハイネが叫び、オレンジ色の粒子を撒き散らしながらカルラへと急加速する。手に持ったドッズライフルが唸りを上げ、正確無比な射撃をオルフェへと叩き込む。

 

 

 

 だが、あの野郎……キラとの超高機動白兵戦の真っ最中だというのに、首の皮一枚でその全てを回避しやがった。

 

 

 

 それでもハイネは止まらない。加速を維持したまま懐へ潜り込み、巨大な実体剣アロンダイトを振り下ろそうとする。

 

 

 

 だがその瞬間、カルラが不気味な機動を見せた。マイフリに強烈な飛び蹴りを見舞って距離を離すと、その背後から端末兵器サハスラブジャを即座に展開。

 

 

 

 まるで前世で見たGNファングのように、宙を舞う無数の刃がビームカッターとドッズビームを乱射し、ハイネを串刺しにせんと殺到する。

 

 

 

「目障りだ……! 貴様のような有象無象が、邪魔するなぁぁぁッ!!」

 

 

 オルフェの絶叫が通信に混じる。その動きは、かつての優雅で知的な宰相の面影など微塵もない。端末の一つ一つにパイロットの剥き出しの憎悪が叩き込まれているのか、白亜の美しい外見に似合わず、野蛮で、狂気的で、執拗なまでの攻撃。

 

 

 

 サハスラブジャの猛攻が、死神の鎌のようにハイネを追い詰め、その四肢を切り刻もうと牙を剥き、ハイネはその瞬間、手にした武装のすべてをパージした。

 

 

 

 少しでも生き残る確率を上げるため、誘爆の恐れがある武装をすべて切り捨て、回避にのみ全神経を注ぐ。ヴォワチュール・リュミエールとミラージュコロイドを組み合わせたデスティニーの回避性能は、セカンドシリーズの機体を遥かに凌駕するものだ。

 

 

 

 だが、敵は異常だった。

 

 

 心を読めないはずなのに、カルラはサハスラブジャを憎悪のままに操り、ハイネを逃がさない。

 

 

 

「チッ、しつけえな……ッ!」

 

 

 

 逃げ切れない。死神の鎌がハイネの右足を、次いで左手を無残に切り刻む。

 

 

 だが、ハイネもただでは転ばない。残った右手を黄金に輝かせ、強引にパルマフィオキーナを展開させ、迫りくる端末の一つを至近距離で握り潰し、爆砕することに成功する。

 

 

 

 しかし、そこまでだった。

 

 

 

 ハイネはエースとして最高峰の実力を持っている。だが、相手は人類最高峰、いや、それすら超越したアコードの王、オルフェ。その実力差は、一歩や二歩では埋まらない。

 

 

 次こそはコックピットを切り刻まんと、残りの端末がハイネへと殺到する。

 

 

 

――だが。

 

 

 

この瞬間を、この一瞬の「隙」を待っていたんだよ!!

 

 

 

放つ光 空に堕ちる

望むだけの 熱を捧げて

 

 

 

「行け、ババ!! 飛ばせぇぇぇッ!!」

 

 

 俺の絶叫に合わせ、『オウガ』の両腕がその巨体から分離し、猛スピードで射出された。デストロイにとっては当たり前の動きではあるが……だがそれは、オルフェにとって完全な意識の範囲外だったはずだ。

 

 

 

 

 

 当然だ。これまでオウガは、両腕部飛行型ビーム砲 『シュトゥルムファウスト』を一度も飛ばさずに戦闘を続けていた。いくらババがMAへの適性を開花させたとはいえ、コーディネイターでも、エクステンデッドでも、ブーステッドマンでもない。

 

 

 そんな生身の「ナチュラル」であるアイツに、激しい機動をしながらこの無線端末をまともに制御することなんて不可能だったからだ。

 

 

 

 だがな……「戦闘機動中」に使えないだけだ。

 

 

 

 オウガの操作を全て放棄して!立ち止まって、全ての意識をその一点に集中させりゃなぁ!!複雑な操作だって可能になるんだよ!

 

 

「うおおおおおぉぉッ!!」

 

 

 ババの咆哮と共にオウガはその足を完全に止め、全ての計算リソースを両腕の制御へと回す。

 

 

 不意を突かれたカルラへ向かって、巨大な鉄拳――シュトゥルムファウストが、大気を、いや真空を裂いて突き進む!

 

 

 

「なっ……有線端末だと!? この土壇場で、そんな機動をッ!」

 

 

 

 巨大な鉄拳――シュトゥルムファウストが、黄金の光跡を引きながらカルラへと迫るが、オルフェは即座に全ての端末を呼び戻した。残る7機のサハスラブジャが、正確な包囲陣を形成し、迫り来る鉄拳を八つ裂きにせんと殺到する。

 

 

 放たれたドッズビームの奔流。だが、オウガの両腕に施されたヤタノカガミがその輝きを増し、ビームを無慈悲に跳ね返した。反射した閃光が、逃げ遅れた端末の一つを直撃し、爆砕する。

 

 

 陽電子砲すら無力化するヤタノカガミはファウンデーション最高傑作のMSのドッズ攻撃でも防ぐが……しかし、それはあくまでオルフェにとっては必要経費だ。

 

 

 

 オルフェの執念が、サハスラブジャにビームカッターを展開させた。実体を持った光の刃が、飛ばされた鉄拳に喰らいつき、スラスターが引きちぎられ、指が粉砕され、装甲が剥がれ落ちていく。

 

 

 デスティニーによって陽動をかけた後、不意打ち気味に鉄拳を飛ばしてカルラを撃墜するという発想は悪くはなかった。だが、結局は一矢報いることすらできず、黄金の鉄拳はカルラの手前で無残に爆散した。

 

 

「ハハハ! 愚かな! 無駄死にだ、ユウナ・ロマ・セイラン! 貴様も、その出来損ないの兵士も!!」

 

 

 

 オルフェは勝ち誇り、憎悪を込めてオウガへ視線を向ける。だが、あいつは気づいていなかったんだ。爆発したシュトゥルムファウストが、通常のMSの胴体ほどもある 「余りにも巨大な質量」であったことを。

 

 

さーてと。問題だ、じゃあそんなMSに迫る規模のデカさの端末が二つ同時にぶっ壊れてしまえばどうなると思う?答えは単純、爆発する。それも内部のデリケートな精密部品も含めた全て!派手になぁ!!

 

 

 凄まじい爆炎と、粉砕されたヤタノカガミの破片、そして残留電磁波が一瞬、ほんの一瞬だけカルラの視界とセンサーを真っ白に染め上げる。

 

 

 それが、オルフェにとって致命的な死角となってしまった。

 

 

 

「……今だ、キラ!!」

 

 

 

 

嘆き 光 波にのまれ

痛みの中 君は目醒めて

 

 

 

 

 俺の叫びと、Meteorの旋律が重なる。爆炎の向こう側で、マイティーストライクフリーダムの額が不気味に、そして神々しく発光した。全エネルギーを一点に収束させ、因果を断ち切るための「理(ことわり)」が解放される。

 

 

「『ディスラプター』出力100%――当たれぇぇぇッ!!!」

 

 

 

一瞬、世界の色彩が死んだ。

 

 

 

 質の悪いホラー映画でも観せられている気分だ。視界がネガポジ反転し、この世の理がひっくり返ったかのような異彩が戦場を塗り潰す。

 

 

 

 

 マイフリの頭部から放たれたのは、ZZガンダムのハイメガキャノンみたいなド派手な極太ビームじゃない。針のように細く、だがこの世のどんな物質よりも鋭い、超極細のビーム。それが、カルラを撫でた。

 

 

 

 オルフェの驚愕が機体越しからでも分かる。色彩が死んだこの世界で彼は反応する暇も、回避する術もなかった。カッターナイフで薄い紙を切るかのように、カルラの機体はスッパリと寸断されていく。

 

 

 

 右足、左足、そして左手。アコードとして超感覚も、原子崩壊を伴うその一撃の前には、文字通り「無価値」だった。

 

 

 

傷つけながら 出来る絆が

孤独を今 描き始める

 

 

 

 対象物を分子レベルを超えて原子崩壊させると同時に、周囲への核分裂を抑制する。ドッズライフルが可愛く見えるどころか、これに比べりゃ全盛期のデストロイの主砲ですらおもちゃに思える。

 

 

 ラクスの承認が必要な理由がよく分かる。なんてもん作ってんだよハインライン…!

 

 

 その気になれば、あのアルテミス要塞をシールドごと真っ二つにできる。

 

 

 マイフリに搭載されたのは、ただのモビルスーツの武装じゃない。一機で戦場……いや、世界の勢力図を書き換えちまう、究極の戦略兵器なんだ。

 

 

 

 色彩が元の色にもどっていけば、そこに残されていたのは、もはや撃墜寸前の無残な鉄屑と化したカルラだった。たった5秒だ。わずか5秒の惨劇とは思えない。

 

 

 

 圧倒的なパイロットスキルと、最新鋭の機体性能を併せ持っていたはずのカルラは、たった一射の光によって、見る影もなく解体されていた。

 

 

 

 

 

 バッサリと切り刻まれたカルラは、右足も、左足も、そして左腕さえも失っている。オルフェが咄嗟に回避したのか、コックピットや主要なバイタルパートは無事なようだが、それでも機体は最早おしまいだ。

 

 

 

(……なんてもん作ってんだよ、ハインラインの野郎……よく考えれば、俺がマイフリを控えさせておくって意見にアイツが同調したのもこれが理由なんだろうな。)

 

 

 

 防御不能の究極兵器。掠めただけで原子レベルで存在を否定する最悪の刃。そんなもの最終兵器として使われない方がいい。

 

 

 誰にも見せず、誰にも見られずに朽ちて、忘れ去られるべき兵器。それがこの重核子ビームであって開発者から見ても使われないのが1番の幸せだと思ったんだろうか?

 

 

 

 駆動系までイカれたのか、宇宙を漂うだけの金属塊となったカルラに対し、マイフリがトドメと言わんばかりに追撃を放つ。

 

 

 

 マイフリの翼から放たれた強烈な雷撃――広域放電攻撃が、カルラの周囲に残存していたサハスラブジャのすべてを捉えた。抵抗する間もなく、端末たちは高電圧の奔流に焼かれ、次々と火花を散らして沈黙していく。

 

 

 

 

 もはや、カルラに戦う術は残されていない。

 

 

 

 

 あんなに誇り高く、美しかった白亜の機体は、今や手足を奪われて虚空を彷徨うだけの無力な塊に成り果てていた。Meteorの旋律が静かに終焉を予感させる旋律へと移り変わる中、誰の目から見ても、勝敗の天秤は完全に振り切れていた。

 

 

 

光はまた 空に堕ちる

望むだけの 熱を捧げて

 

 

 

 

 だが、オルフェは足掻く。足掻き続ける。

 

 

 

 死に損なった獣のように、無様で執拗で、それでも泥に塗れるかの様に執念と妄執による足掻きを。

 

 

 

(……まだ動くのかよ。執念ってより、もう呪いだろ、それは)

 

 

 

 モニター越しに見えるカルラが、激しく火花を散らしながらもスラスターを強引に再点火させた。失敗すれば全てを失う……そんな強迫観念にでも取り憑かれているのか。憎悪と焦燥のままに、残された唯一の腕でビームサーベルを、轟音を立てるかのような勢いで構える。

 

 

 

 

 通信機能は死んでいるんだろう。でなければ、今ごろ宇宙を呪い、キラへの罵倒を叫び続けていたに違いない。オルフェは差し違えんとばかりに、満身創痍の機体をマイフリへと突撃させた。

 

 

「させるかよ!」

 

 

 その刹那、割り込んだのはオレンジ色の閃光――ハイネのデスティニーだった。こちらも四肢を半分削られたボロボロの状態だが、残された唯一の手である右手に、これまた唯一残された「武器」を構えている。

 

 

 それは、この世界で俺のアイディアを元に完成させた装備。

 

 

 敵を殺すのではなく、捕縛し、無力化するために特化したオーブ版スレイヤーウィップ――「雷蛇」を彼は構えて突撃する。しなやかに、そして鋭く放たれた電磁ムチが、突撃するカルラの残った腕に絡みつく。直後、デスティニーのジェネレーターから直結された超高圧の雷撃が、カルラの装甲を伝って機体内部へと流し込まれた。

 

 

 

 

 

崩れ落ちゆく 過ちの果て

最期の夢を 見続けてるよ

 

 

 

 

 

 激しいスパークがカルラの全身を走り、残っていた各部の光が次々と立ち消えていく。ようやく沈黙した白亜の機体は、完全に機能を停止。コックピット内のオルフェも、その衝撃に耐えきれず意識を失ったようだった。

 

 

 

「……ふぅ。悪いなキラ。最後の最後で、でしゃばっちまってよ」

 

 

 

「……いえ。助かりました、ありがとうございますハイネ隊長」

 

 

 

 通信から聞こえてくるハイネの苦笑まじりの謝罪に、キラがどこかホッとしたような声で返す。

 

 

 

 そのやり取りを、俺はようやく肺に残っていた空気をすべて吐き出しながら聞いていた。

 

 

 

 

 終わった……。今度こそ、本当に終わったんだな。

 

 

 モニターの端では、まだ一部の敵が「捕虜になっても処刑されかねない」と絶望的な抵抗を続けたり、逃亡を計ったりしているのが見えるが、それもシンやレイ、それに合流した部隊によって次々と鎮圧されていく。

 

 

 

(……あ。アスランの野郎、ようやく補給完了してやがる)

 

 

 

 万全の状態で戦域に戻ってきたジャスティスの姿を見て、ふと冷静な思考が脳裏をよぎった。……これ、俺たちが命を削って無茶しなくても、アスランが戻るのを待ってから「コンビネーションアサルト」的な連携攻撃を仕掛ければ、もっと楽に勝てたんじゃねえか?

 

 

 

(……いや、考えるのはよそう。あの時はあれが最善だったんだ。……そう思わないとやってられん……ッ!)

 

 

 

「オーブ万歳!」「カガリ様万歳!」

 

 

 

 通信回線には、勝利を確信したオーブ兵たちの歓喜の声が飛び交っている。

 

 

 

 その熱狂の中に、「ユウナ様万歳! 我らが副総裁に栄光あれ!!」混じってはいけない単語を叫ぶオーブ兵達の声が聞こえてきたが全力で無視だ。おい下手な事言ってんじゃねぇ!!!

 

 

 

(……おい。そこはカガリだけにしておけよ……。余計な火種を増やすんじゃねえ……)

 

 

 ツッコミを入れようとしたが、もう口が回らない。アドレナリンが引いていくと同時に、それまで気合で無理やり抑え込んでいたダメージが、一気に津波となって押し寄せてきた。

 

 

 あっ……ダメだ。これ、マジで限界。

 

 

 

 視界がぐにゃりと歪み、豪華なはずのコックピットシートが、まるで底なし沼のように俺の体を飲み込んでいく。

 

 

 

「ユウナ様!? ユウナ様、しっかりしてください!!」

 

 

「……悪い、俺疲れたからちょっと、休むわ……」

 

 

 

 後ろからババが狼狽した声を上げているのが遠くに聞こえる。悪い、ババ……あとの掃除は任せた。

 

 

 最後にそれだけ絞り出すと、俺の意識はストンと、深い闇の底へと落ちていくのであった。

 






・ディスラプター
 冗談抜きで現状SEED世界における最強兵器。その威力のヤバさは劇場版で示された通りで単独で要塞を真っ二つにする上にMSサイズで連射可能とC.E.の技術力の集大成と言える装備。ただし、チャージにはほんの数秒の時間が必要となって、原作では問題なかったものの。今作でらはラクスがアコードとして覚醒せず、オルフェが近接戦を積極的に仕掛けてきて鍔迫り合いにすらならなかったおかげで全く射撃のチャンスができない。故に2段構えのハイネ、ババ(ついでに何もしてないユウナ)のコンビネーションによって僅かな隙が生まれ、今回の勝利に結びつくのでした。

 轢き逃げされたザクを放り投げたアスランの時とほぼ同じ、というか作者の別作品であるアズールレーンの二次創作「ヴィシア戦記」の最新話でも似たような事が描かれており、短期間で似たような展開じゃねぇかと、我ながら感じてしまいますが……誰かが囮となって、全力で撹乱をしてからの第三者による本命の一撃は基本的にハマりやすい戦術だったり。

 オルフェの敗因はたった一人で戦い続けていたからであって、イングリットのように周囲を警戒、索敵できる存在や。シュラと二人で最初から戦っていれば対処できたはずだったりします。確かにオルフェはキラよりも強かった。しかし、一人ではどちらにせよ限界を迎えていたでしょうね。

 なおクソ高いオウガの両手を犠牲にしなくてもアスランが補給を終えてれば普通にコンビネーションアサルトで倒せたのは内緒です。



・ユウナ
 もうぶっちゃけますが別に死んだ訳でも、精神世界で対話をする訳でもなく。単純に体力の限界を迎えて気絶しただけです。全力稼働のトリプルBデバイスは5時間程度で廃棄しなければいけなくなりますが、実際にはそれ以上にユウナ「の」体力は力尽きましたとさ。まぁババは普通に平気なのですが。

・反省点
 実の所ムウやヒルダの出番も与えたかったものの没に、そのまま戦闘して敵の量産機を撃破するシーンを入れようとしても、アカツキである以上個性的な戦闘は不可能。かと言って核兵器で無力化されたレクイエムにゼウスシルエットで攻撃をとなっても、最早その必要もなく。結果として彼らは終戦まで合流ポイントの母艦で待機している羽目に。この辺りも多国籍連合によって彼らがレクイエム破壊後も頑張らなくてもよくなった証拠ですが、出番が減ってしまったのは事実でもあるので心苦しいですね。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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