破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
「……何をしたんですか。あなたは、一体」
モルゲンレーテ社の地下深く、厳重に秘匿されたエリカ・シモンズ主任のラボに、その凍りつくような声が響いた。
ホログラムディスプレイに並ぶのは、連合の最高機密である新型MA『ザムザザー』の火器管制アルゴリズム。そして、まだ実戦配備すら疑わしい新型量産機『ウィンダム』の構造図。さらには、特殊部隊用のダガー系統の派生データに見たこともないMAのデータに至るまで、そこには「あるはずのないもの」が整然と並んでいた。
エリカの顔は、技術者としての好奇心よりも、生物としての生存本能的な「恐怖」で青ざめている。
「何って……。ちょっと連合の中将閣下とお喋りして、整備の参考に資料をくれって頼んだだけだよ」
俺はわざと軽く答えたが、エリカの視線は俺の顔に突き刺さったままだ。
「『ちょっと』でアルミューレ・リュミエールの発展型の防御機構のソースコードが手に入るわけがないでしょう! これ、本来ならスパイが何十人も死んでようやく掠め取れるかどうかの代物よ。しかもこのウィンダム……機動性の理論値が従来のダガー級とは比較にならない。こんなもの、今のオーブ軍が正面からぶつかったら……」
「だから、持ってきたんだよ」
俺は彼女の言葉を遮り、冷めた目でモニターを指差した。
「シモンズ主任。連合は本気でプラントを、コーディネイターを根絶やしにするつもりだ。その矛先は、いつか必ずオーブにも向く。……中将閣下との通信のあと、その基地が隕石で消し飛んだ。意味はわかるだろ?」
エリカが息を呑む。
俺がこれらの単語を口にしただけで、連合は証拠隠滅のために自軍の基地一つを「不慮の事故」として処理した。情報の価値が、数千人の兵士の命を超えた瞬間だ。
「……本当はもっとエグいものも頼んだんだけどね。流石にそれは送られてこなかったよ。でも、このザムザザーやウィンダムのデータがあれば、オーブの防衛システムを『連合特化型』にアップデートできる。そうだろ?」
「……ええ、そうね。これだけの『答え』を渡されたんだもの。撃墜不能と言われたリフレクターの干渉波長を特定して、無効化するプログラムを組むことだって……理論上は可能だわ」
エリカは震える手でコンソールを叩き、データを暗号化のさらに奥へと格納していく。その背中は、まるで核爆弾を抱えているかのような緊張感に満ちていた。
だが、俺の方はと言えば、彼女の言葉を聞いて素で固まっていた。
(えっ、マジで? プログラム書き換えるだけであのアホみたいに硬いシールドがどうにかなっちゃうの? オーブの技術力、というかエリカさん、やばすぎない……?)
前世の知識で「未来の機密」をぶちまけてはみたが、まさか即座に「答え」に辿り着けるとは思っていなかった。これがコーディネイターの、そしてモルゲンレーテの地力か。
「……あ、いや、流石だねシモンズ主任。頼もしいよ。じゃあ、ついでにこれも聞きたいんだけど……」
俺はダメ元で、ずっと気になっていた「別のガンダム世界」の技術を口にしてみた。
「例えばさ、ビームそのものをドリルみたいに高速回転させて、貫通力を無理やり上げる……なんてこと、できないかな? 陽電子リフレクターみたいな空間を歪める防御膜に対して、力業でねじ切るようなイメージなんだけど」
そう、AGEシステムが開発した『ドッズライフル』の回転式ビーム粒子だ。あれなら、理論上は拡散を抑えつつ一点への貫通力を跳ね上げられるはず。
とはいえ物理法則なども違う別世界の技術。期待もせずダメ元で聞いてみれば、エリカ・シモンズは作業の手を止め、怪訝そうな顔でこちらを振り返った。
「ビームを……回転させる? 粒子を螺旋状に加速させて収束を維持し、摩擦係数に近い概念をエネルギー体に持たせるというの? ユウナ様、あなた……」
「あ、いや、今のはただの素人の思いつきっていうか! ほら、ドリルって強いじゃない? 男のロマンっていうかさ!」
慌ててバカ息子のフリをして誤魔化そうとしたが、エリカの瞳には、かつてないほどの鋭い光が宿っていた。
「……いえ。発想は面白いわね。既存のビームサーベルの電磁場技術を応用して、ライフルのバレル内で粒子に回転をかける。偏光ポテンシャルを強引に捩じ曲げれば……ええ、リフレクターの反発を『貫通』するベクトルが生じるかもしれない」
エリカは再び猛烈な勢いでキーを叩き始めた。その口元には、技術者特有の不敵な笑みが浮かんでいる。
「これ、本気で開発する価値があるわ。もし完成すれば、連合のMAはもはや鉄の棺桶よ。……それにしてもユウナ様、あなたのその『発想』、どこから湧いてくるのかしらね?」
(……AGEの救世主様、ありがとうございます。オーブにドッズライフルが実装されそうです)
俺は心の中で、遠い別の宇宙の救世主に深く感謝した。
ここで、俺が提案した「ドッズライフル」の仕組みと、今の『コズミック・イラ(CE)』のビーム兵器の違いを整理しておこう。
ユウナ先生の!ドッズライフル vs CE標準ビームライフル解説ー!
・CEの標準的なビーム
基本的には、高エネルギーのミノフスキ……じゃなかった、ミラージュコロイド技術の応用や重水素から生成された熱核反応によって作られる高エネルギーのイオンガス(プラズマ)を磁場で収束させて撃ち出すものだ。いわば「熱い塊をぶつけて溶かす」のが主流だ。
・ドッズライフルの理論
「ドリル・オービタル・ディスチャージ・システム(DODS)」の略。最大の特徴は、バレル内の電磁誘導によってビーム粒子そのものをドリル状に高速回転させることにある。
なぜ回転させると強いのかといえばエリカさんが瞬時に理解した通り、これには二つの大きなメリットがある。
一つ目は直進性と貫通力の向上だ。
ただのプラズマの塊ではなく、螺旋状に回転するエネルギー体は、ジャイロ効果に似た理屈で拡散を抑え、極めて高い直進性を得る。そして衝突の瞬間、対象を「溶かす」前に「削り開く」。
そして、二つ目はこの武装は対陽電子リフレクターの天敵だという事。
これが今回のキモだ。ザムザザーやゲルズゲーが装備する陽電子リフレクターは、面(平面や曲面)でビームのエネルギーを弾き返す。
だが、ドリル状に回転し、一点にエネルギーが収束したドッズライフル的なビームは、その「面」の磁場干渉を強引に捩じ切って突破する可能性がある。
「……これ、できちゃったらヤバいな。フリーダムのバラエーナ的な収束されたプラズマビーム砲みたいな大出力がなくても、アストレイのライフルサイズで連合のMAを沈められるようになるぞ…!」
CEの世界において、ビームは「出力こそ正義」だった。太ければ強い、多ければ強い。だが、そこにドッズライフルのような「回転による貫通」という異質の概念を持ち込めば、戦術の前提がひっくり返る。
(ガンダムAGEの世界じゃ、量産機のジェノアスじゃ歯が立たなかったヴェイガン機の装甲を、このライフル一丁でぶち抜いたんだ。今のオーブ軍がこれを持てば、少なくとも『武器が効かない』という絶望からは解放されるはずだ)
俺の脳裏に、前世の記憶に刻まれた「絶望」が蘇る。
あの巨大な破壊の権化、デストロイガンダム。ベルリンを、そしてユーラシアを焼き尽くしたあの化け物を前に、ザフトと連合の一般兵たちは、ただの紙屑のように散っていった。ビームを弾かれ、圧倒的な火力の前に何もできず死んでいく……。
(あの光景を、ここで再現させるわけにはいかない。ドッズライフルさえ完成すれば、あの殺戮巨神にだって、オーブの兵士たちは抗う牙を持てるはずなんだ)
そう。どんなに巨大な盾を構えようが、それを回転して穿つ一点の光があれば、絶望は「戦闘」へと変わる。思考を巡らせていた俺の背中に、ゾクリと冷たい感覚が走った。
視線を感じて振り向くと、そこにはモニターの光に照らされ、文字通り「目が据わった」状態のエリカ・シモンズが立っていた。彼女の瞳は、純粋な好奇心を超え、未知の技術を貪り尽くそうとする技術者特有の狂気に染まっている。
「ユウナ様……。あなた、他にも何か隠しているでしょう? 今の『回転ビーム』の理論、あれを素人の思いつきで済ませるには、あまりに理にかなってるわ。不自然なほどにね」
エリカがジリジリと距離を詰めてくる。その手には、いつの間にかメモ用のタブレットが握られていた。
「いい、ユウナ様。今のオーブには時間が無いの。あなたのその『突飛なアイディア』が、どれだけの命を救うことになるか分かっているはずよ。……ほら、他にもあるんじゃないかしら? 荒唐無稽でいい、形になっていなくていい。このエリカ・シモンズが全部、現実の兵器に落とし込んであげるから。……出しなさい、全部!」
「ひ、ひぇっ……」
逃げようとした俺の肩を、エリカの細い、だが万力のような力がこもった指が掴んで離さない。
まずい。この人、完全にスイッチが入ってる。これ、適当に誤魔化さないと、俺が脳みそを分解されるまでラボから出してもらえないパターンだ。
「わ、わかった! わかったからエリカさん、顔が近い! 目が怖いってば!」
俺は必死に、前世で得たロボットアニメ知識という名の「禁断のアーカイブ」を脳内でフル回転させた。
(ええい、こうなったらヤケだ! この世界にある材料で、オーブを最強のハリネズミに変えてやる!)
俺は腹を括った。もう「バカ息子」の仮面が剥がれるだの、正体が疑われるだの言っている場合じゃない。目の前のエリカさんの「技術者の業」に薪をくべ、オーブという国を、連合が触れた瞬間に血まみれになる凶器へと作り変えてやる。
「エリカさん、まずはこれだ! 空対地、あるいは広範囲制圧用に『ケイオス爆雷』ってのはどうかな」
「ケイオス……爆雷?」
「そう、爆弾の中に無数のタングステン製の針を詰め込むんだ。空中で炸裂すると、円柱状にその針が超高速で撃ち出される。ムラサメの機動力を生かして上空からバラ撒けば、地上の連合部隊を文字通り一瞬で『針の山』にできる。爆発そのものより針の運動エネルギーで殺すから、不発弾の心配も少なくて、占領後の安全性も高いはずだ」
エリカのペンが止まらない。
「……広範囲への運動エネルギー弾による飽和攻撃。機体へのダメージというより、随伴する歩兵や軽車両を根こそぎにする……えげつないわね。でも、防御スクリーンを抜けるには最適だわ」
「まだある! オーブの防衛拠点限定だけど、『アンビリカルケーブル』の概念を導入してくれ」
「アンビリカル……へその緒?」
「そう。MSの背中に巨大な電源ケーブルを直結させるんだ。オーブの地下にある地熱発電所や各拠点の動力源から、直接エネルギーを供給し続ける。バッテリー切れを気にする必要がないアグニクラスの超高出力火砲を、文字通り『ゲロビ』みたいに掃射し続けられる固定砲台型のアストレイ……名付けて『アンビリカル・アストレイ』だ!」
エリカの目が、ついに光り輝いた。
CEの世界において、MSの最大の弱点はフェイズシフト装甲(PS装甲)を含めた「電力消費」だ。それを物理的なケーブルで解決し、要塞化された拠点から無限の火力を叩き出す……その凶悪な合理性に、彼女は震えていた。
「面白い……面白すぎるわユウナ様! 拠点の防衛に特化するなら、重いバッテリーも、換装用の予備電源もいらない。ただ『最強の盾(陽電子リフレクター)』を張りながら『最強の矛(アグニクラスのゲロビ)』を振り回し続ける……! これならデストロイのような巨大兵器が来たとしても、正面から焼き切れるわ!」
俺は脳内にある「他作品の叡智(パクリ)」を、オーブの現状に合わせて最適化しながら、次から次へと吐き出した。
エリカ・シモンズの目は、もはや獲物を狙う猛禽のそれだ。彼女は俺の手を握りしめ、恍惚とした表情で囁く。
「……決定ね。今夜からモルゲンレーテは全ラインを再編するわ。ユウナ様、あなたのその『地獄のアイディア帳』、一文字も漏らさず書き写させてちょうだい!」
「ああ、もう好きにしてくれよ……!」
俺は半ば投げやりになりながらも、自分の知識がこの世界の技術と結びつき、新たな「牙」へと変わっていく光景を、恐ろしさと、そしてどこか奇妙な高揚感と共に眺めていた。
連合が来るなら来い。
ただし、その時は覚悟しろ。オーブはもう、テメェらが知っている「平和主義の国」じゃない。
触れた瞬間に全身を貫かれる、鋼のハリネズミだ。
エリカさんの信頼を勝ち取りいつのまにか名前で呼べる様になったよ!その代わりに目が爛々と輝いてめちゃくちゃ怖いよ!
ケイオス爆雷とアンビリカルケーブルについての解説はまた次回。次回は今まで以上にオリジナル要素強めかも?
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
-
通常の優柔不断アスラン
-
報連相の化身と化したアスラン