破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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EX8 ユーラシアの挑戦とオタク達

 

 

 

 世界は激動の中にあった。

 

 

 新たなる秩序が模索される陰で、かつて地球上の広大な版図を誇った大国は、人知れず深い焦燥に突き動かされていた。

 

 

 ユーラシア連邦――。

 

 

 軍事大国として君臨してきた、大国のそのプライドは今、完全に打ち砕かれようとしていた。原因はMSの開発技術における、決定的な敗北である。

 

 

 

 プラントやオーブ、大西洋連邦といった最高峰の技術を持つ勢力に引き離されているのは、まだ受け入れられた。だが、彼らにとって最も耐え難かったのは、かつて格下と見做していた東アジア共和国にすら、遥か後方を拝まされているという現実だ。

 

 

 東アジア共和国は、独自の新型戦闘機『流星』の投入や、局地戦に極限まで特化させたMSの運用により、独自の軍事思想と優れた技術力を証明してみせたのだ。ひとつのコンセプトに全てを注ぎ込むことで、彼らは独自路線を突き進んでいく。

 

 

 

 翻って、ユーラシア連邦の現状はどうだったか?戦線の主軸はいまだに、大西洋連邦から供給、あるいはライセンス生産しているダガーLやウィンダム。大国の軍隊でありながら、その主力兵器を大西洋連邦の技術に依存し続けている歪な構造が、そこにはあった。

 

 

 もちろん、彼らも手をこまねいていたわけではない。

ユーラシアの意地を結集した独自開発機として、ハイペリオンGという名の独自機体を生み出しており、自慢の光波防御盾「アルミューレ・リュミエール」は、かつて絶対無敵の盾として、ユーラシアの防衛構想の要となるはずだった。

 

 

 

 しかし、その希望は一瞬にして過去のものとなる。

 

 

 世界を震撼させた「ドッズショック」。圧倒的な貫通力に特化したドッズライフルの急速な普及は、ユーラシアの技術者たちが誇った無敵の盾を、文字通りただの燃費の悪い標的へと変え果てさせたのだ。頼みの綱だったバリアすら、時代の火力のインフレによって容易に撃ち抜かれる現実を突きつけられたのである。

 

 それはビームリーマーやビームディフェンスロッドが開発された後も同じだ。鳴り物入りで生産した防御機構を台無しにされた挙句、自国の優れたMA生産会社であるアドゥカーフ社に至ってはファウンデーションと繋がった挙句口封じのように物理的にこの世界から消し飛んでしまった。

 

 

 頼れる天才はおらず、蓄積されるべきデータは他国へと流れるか消失。残されたのは時代遅れの設計図と、自国製ではなくMSの山。

 

 

「このままでは、我が国の機体は歴史の闇に埋もれる」

 

 

 

 危機感を募らせたのは、軍の上層部だけではない。最前線のドックで、油にまみれとなって立ち尽くす、名もなき技術者たちだった。他国の猿真似ではない、大西洋連邦のお下がりでもない、ユーラシアの、ユーラシアによる、ユーラシアのための新型量産MSを作らねばならない。

 

 

 

 予算も、時間も、そしてスタープレイヤーたる天才すらもない絶望的な状況下で、ユーラシア連邦の命運を賭けた、無謀なる挑戦の幕が上がろうとしていた。

 

 

 

 

プロジェクトX

新型MS開発計画 〜高みを目指す挑戦者達〜

 

 

 

 

 

 ファウンデーションの乱と呼ばれる未曾有の動乱が終結して間もなくのことである。ユーラシア軍の薄暗い地下作戦会議室に、国内に残された一線級の技術者、研究者、そして兵器開発の専門家たちが一堂に集められた。

 

 

 

 重苦しい沈黙が支配する中、教壇に立った軍上層部の将官は、集まった男たちを見据えてこう問いかけた。

 

 

 

「単刀直入に聞く。我々の現行機、そして開発中の機体は、オーブやプラントに勝てるのか?」

 

 

 その問いかけに、並み居る天才や秀才たちは、一様に視線を落とし、悔しそうに唇を噛み締めることしかできなかった。誰も「勝てる」とは言えなかった。それが、ユーラシア連邦が置かれたあまりにも残酷な現在地だった。

 

 

 歯車が狂い出したのは、あの「ドッズショック」の到来からだった。かつてユーラシアの国防構想の柱であり、主力となる予定だった大型MAの数々は、ドッズライフルの圧倒的な貫通力の前に、一夜にして「デカいだけの的」へと成り下がった。アドゥカーフ社の崩壊も重なり、ユーラシアの長距離砲撃・防衛ドクトリンは根底から覆されたのである。

 

 

 

 ならば、すぐにでも新たなMSの開発に着手すべきであった。しかし、時代はそれを許さなかった。

 

 

 ロゴス崩壊の余波による世界的な経済の大混乱。ハイパーインフレと物資の不足がユーラシアの国力を容赦なく削り取っていく。さらに追い打ちをかけるように、広大な領土の各地で多発した独立運動の鎮圧に軍は追われ、国家予算は新型開発ではなく、目先の泥沼の戦後処理へと消えていった。

 

 

 開発計画は、各地で遅れに遅れた。設計局のデスクには、予算凍結のスタンプが押された書類が無造作に積み上がり、実験室の灯りは次々と消えていった。他国が新技術を競い合い、次世代へのステップを駆け上がっていく中で、ユーラシアの時間だけが、完全にストップしていたのである。

 

 

 

 開発の遅れ、そして足元の混乱。それは宿敵である大西洋連邦とて同じはずだった。あちらもロゴス崩壊の直撃を受け、大統領が交代し、軍の再編成に追われている。

 

 

 しかし、そんな事実はユーラシアの技術者たちにとって、何の慰めにもならなかった。かつて旧世紀の冷戦において、アメリカとソ連は熾烈な軍拡競争を繰り広げた。だが、ソ連は経済の破綻をはじめとする様々な要因により、その競争に敗北した。

 

 

 歴史は繰り返す。そのソ連の系譜を受け継ぐユーラシア連邦と、アメリカの後継国家である大西洋連邦。両者の間に横たわる、産業の底力と基礎体力の格差は、あまりにも残酷だった。

 

 

 何より、大西洋連邦には実績があったのだ。かつてザフトのMSに対抗すべく、ヘリオポリスでG兵器を生み出したのは大西洋連邦である。その後もストライクダガー、ダガーL、そして量産型MSのひとつの完成形とも評される傑作機ウィンダムをロールアウトさせ、前線へと安定供給してみせた。

 

 

 技術の土壌、産業のポテンシャル、そして兵器を形にするための資本力――。

 

 

 どちらが優れているかなど、比べるまでもなかった。

 

 

 大西洋連邦は立ち止まっているように見えて、いつでも再跳躍できるだけの、筋肉を残している。だが、ユーラシアにはもう、削れるだけの脂肪すら残されていない。

 

 

 しかし、だ。

 

 

 ポテンシャルの差を見せつけられ、叩きのめされながらも、ユーラシアの技術者たちの目は、まだ死んではいなかった。

 

 

 

 

 彼らには、夢があった。彼らには、大国としてのプライドがあった。

 

 

 

 ザフトが戦場に送り出し、量産機として徐々に配備されているゲルググメナースや、オーブが誇る可変MSムラサメ改の洗練された機構を見た時、彼らは技術者として純粋に「素晴らしい」と賛辞を贈った。だが、それで終わりではなかった。称賛のすぐ裏側には、煮えくり返るような「負けてたまるか」というガッツが、確かに息づいていたのだ。

 

 

 

 確かに今は劣っている。他国のお下がりを買い、最先端から置き去りにされている。だが、このまま白旗を上げて歴史の敗北者になるつもりなど、毛頭なかった。

 

 

 静まり返る会議室で、将校はゆっくりと一同を見渡した。その鋭い眼光が、技術者たちの奥底で燻る炎を値踏みするように動く。

 

 

 

「……我らユーラシア軍には、いくつかの選択肢がある。その一つが、オーブ連合首長国へ共同開発を打診することだ」

 

 

 

 その言葉に、室内がわずかにざわついた。

 

 

 

「周知の通り、オーブのモルゲンレーテ社は現在、東アジア共和国と手を組み、新型戦闘機『流星』の後継機をはじめとする戦闘機の大々的に共同開発を発表している。さらに、ザフトが順次配備を進めつつあるあの重装甲兵器アイアンコングの裏にも、オーブの技術が深く関わっているという情報がある」

 

 

 

 将校は一度言葉を切り、再び壇上から技術者たちの表情を見回した。

 

 

 

 拳を固く握りしめる者、悔しげに視線を逸らす者、複雑な表情で天井を仰ぐ者。国籍や政治的立場を越えて世界中に技術の種を蒔き、戦後の兵器市場を席巻しつつあるオーブという存在。その巨大な影に対し、技術者たちが抱く感情は複雑怪奇だった。

 

 

「我がユーラシアが頭を下げて申し込めば、中立を標榜し、技術の輸出で国を潤すオーブのことだ。おそらく喜んでこの共同開発に参加し、我々に最新の技術ノウハウを分け与えてくれるだろう。開発期間は劇的に短縮され、生存性の高い堅実な機体が完成するはずだ」

 

 

 それが最も手っ取り早く、それが最も確実性の高い選択肢。現在ユーラシアの各地で配備されてるオーブの開発した芋虫型MAモルガはその優れた走破性と拡張性により、既に500機以上配備され、その倍以上の内定を既に受けている。

 

 

 モルガの実績を考えれば、きっとオーブは親身になって MSの開発を手伝ってくれるだろう。かのセイラン副総裁もユーラシアとの蜜月関係は望むことであり、カガリ代表にメリットを挙げて説得したに違いない。

 

 

 

 しかし、ここで将校の声が一段と低く、重くなった。

 

 

「――だが。私はあえて諸君に問いかけたい。……本当に、それでいいのか?」

 

 

 良いわけがなかった。

 

 

 技術者も、研究者も、専門家も、誰一人として口には出さなかったが、その答えは会議室を満たす張り詰めた空気そのものが証明していた。

 

 

 そしてそれは、教壇に立つ将校をはじめとする、壇上の軍人たちにとっても全く同じ想いだった。

 

 

 オーブの軍門に下り、その技術的慈悲に縋れば、確かに目先の平和と安全は手に入るかもしれない。だがそれは、ユーラシア連邦という大国が、自らの足で歩むことを永遠に諦めるのと同義だった。

 

 

 他国の模倣ではなく、お下がりでもなく、自分たちの血と汗で鍛え上げた「自国の翼」でもう一度高みを目指す。その誇りだけは、どれほど困窮しようとも、泥に塗れようとも、絶対に手放してはならない最後の生命線だった。

 

 

 将校は一同の眼差しに宿る、静かな、しかし確固たる眼差しの炎を認め、深く、満足そうに頷いた。

 

 

「ならば、これより本題に入る」

 

 

 将校は手元の資料を閉じ、背後の巨大スクリーンを指し示した。そこに映し出されたのは、いまだ骨組みすら定まっていない MSの設計計画だ。何一つ描かれてない真っ白なキャンバスがスクリーンに表示される。

 

 

「諸君。私はこれより、我がユーラシア連邦の未来を賭けた、完全独自の新たなる量産MSの開発を、ここにいる全員に依頼したい」

 

 

 会議室の温度が、一気に数度跳ね上がったかのような錯覚が走る。

 

 

「……だが、勘違いしないでほしい。これは栄光に満ちた道などではない。どこまでも困難で、出口の見えない不眠不休の夜が幾日も続くことになるだろう。我々が血反吐を吐きながら一歩を進める間に、オーブやプラントは、我々の想像を遥かに絶する化け物じみた新機体を平然と発表し、諸君のプライドを、心を、完膚なきまでに叩き折ってくるかもしれない」

 

 

 それは脅しではなく、あり得る予測だ。世界の最先端を走る天才たちと、持たざる国となったユーラシアの技術者たち。その間にある溝は、それほどまでに深い。

 

 

「それでもだ」

 

 

 将校は教壇に両手を突き、魂を絞り出すように、集まった挑戦者たちを睨みつけた。

 

 

「他国の影に怯える日々を終わらせるために。我が国の意地を世界に示すために。……諸君、それでもなお、この無謀な戦いをやってくれるか?」

 

 

 沈黙が破られた。

 

 

 それは、誰からともなく沸き起こった、確かな熱を帯びた決意のざわめき。それはユーラシアの地上の星たちが、今、再び前を向いた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今になって改めて振り返ってみれば、本当に、本当に酷い環境だったと思いますね」

 

 

 白髪交じりの髪を苦笑交じりに掻きむしりながら、当時、駆動系開発のチーフを務めていた科学者M氏は静かに語り始めた。その目は、どこか遠い、しかし熱狂に満ちていたあの時代を見つめている。

 

 

「何が酷いって、とにかく予算が信じられないくらい少なかったんですよ。あの作戦会議室での大演説で、私たちはすっかりその気になって『やってやるぞ!』と拳を握りしめたわけですが、いざ翌日からあてがわれた開発室に行ってみれば、ただの廃倉庫同然の場所でね。暖房設備すら満足に動かない。

 

 

 それもそのはずで、後から知ったことですが、この開発計画はユーラシア軍の主流派が動かしていたものではなかったんです。我が国の誇りを取り戻そうと危機感を募らせていた、一部の少数派の将校たちが、上層部のあちこちに必死に根回しをして、予算の端切れをかき集めて無理やり立ち上げた独自の極秘プロジェクトだった。

 

 

 

 軍の多数派の連中は、この計画にこれっぽっちも興味がなかったんですよ。彼らにしてみれば、大西洋連邦からライセンスを買っているウィンダムやダガーLで現状の防衛体制としては十分機能しているし、性能だって決して悪い機体じゃない。なら、なぜわざわざ膨大な時間と血税をドブに捨てるような真似をしてまで、自国製の新型MSなんて開発しなきゃならないんだ、というわけです。彼らの言い分と正論でした。というか後から考えれば少数派で我々が異端だったのでしょう。

 

 

 それに当時は、あのファウンデーションの乱もようやく終結し、長年世界中で戦争の火種を撒き散らしていたブルーコスモスも完全に弱体化していました。つまり、世界が一時の平和へと向かい始めていた時期だった。

 

 

 戦争のため、あるいは目先のテロ鎮圧のためなら、軍も泥縄式にドバドバと予算を絞り出せたんでしょうが、そんな平和な時代に、しかも軍の少数派が掲げたいつか来るかもしれない脅威への備えや大国としてのメンツなんて大義名分のために割かれる予算なんて、あるわけがなかった。

 

 資材を申請しても『却下』の赤スタンプ。他国の最新MSの技術データを閲覧しようにも接触するのも難しく、ならばと弄っていたのはユーラシアのオンボロ MSやジャンク屋から買い叩いてきたような旧式MSのパーツを前に、夜中まで回路を繋ぎ直す毎日でしたよ。

 

 

 ……でもね、不思議と辛くはなかった。それどころか、あの日々は本当に楽しかった。

 

 

 集まった連中はみんな、他国に、特にオーブやプラント、それに東アジア共和国にまで出し抜かれている現状が悔しくて悔しくてたまらない、プライドの塊みたいな奴らばかりでしたから。誰もが『今に見ていろ、世界をあっと言わせるユーラシアの意地を見せてやる』って、それだけを燃料にして、寒さで凍える手を擦り合わせながら、全員が一丸となって開発に没頭していた。

 

 『負けてたまるか』。

 

 

 ただその一言のガッツだけで、私たちはあの先の見えない暗闇に光を求めて笑顔で突き進んでいたんです」

 

 

 

 

 

 

 予算もない、資材もない、上層部からの期待もない。ない無い尽くしのどん底から始まった開発計画において、集められた研究チームが最初に着手したのは、新型機の設計図を引くことではなかった。

 

 

 彼らが最初に行ったのは、パイロットたちへの徹底的な聞き込み、チーム同士での泥臭い親睦会、そして他国のサブカルチャーの調査という、一見すると兵器開発の常識から大きく逸脱した三つのアプローチだった。

 

 

 まず何よりも、彼らは技術者の自己満足による暴走を恐れていた。最先端の技術をただ好き放題にいじくり回し、机の上の数値だけで気持ちよくなって「最強を謳うだけの独りよがりな兵器など、戦場ではただの鉄屑にしかならない。

 

 

 今、現場で本当に求められているものが何かを骨の髄まで理解しない限り、これ以上の一歩は踏み出せないと誰もが自覚していた。だからこそ、各地の基地を這いずり回り、死線を行き来するパイロットたちの本音を、耳にタコができるほど拾い集めることから始めたのだ。

 

 

 一方で、そんな開発チームに向けられる多数派の周囲の目は冷ややかだった。ただでさえ少ない予算をやりくりしているはずの連中が、夜な夜な安酒を酌み交わす親睦会を開き、挙句の果てにはオーブやプラントから流れてくる漫画やアニメ、ネットの流行といったサブカルチャーの調査にまで時間を割いていたのだから、「与えられた予算で遊んでいるのではないか」と勘ぐられるのも無理はなかった。

 

 

 

 しかし、その一見すると不真面目な時間が、このプロジェクトにとっては何よりも大切な生命線だったのだ。

 

 

 

 このプロジェクトに集められたのは、高慢な軍事評論家、偏屈な叩き上げの技術者、理論第一の頭の固い科学者、そして我が強い現役のパイロット。出自も世代も専門領域も全く異なる、文字通りの烏合の衆であり、全員が部署もバラバラのところから無理やりかき集められた者たちだった。

 

 

 それぞれが自らの領域に少なからずプライドを持っており、普通に机を挟めば、互いのエゴと主張がぶつかり合うだけの決裂は火を見るより明らかだったのである。

 

 

 

 だからこそ、酒を酌み交わし、他国のサブカルチャーという共通の娯楽を斜め上から分析し合うことで、硬い組織の壁を溶かし、意見をすり合わせるための共通言語を育む必要があった。後年、科学者M氏が「もしあの時に腹を割って話し合う場を設けていなければ、私たちは設計図を引く前にエゴの殴り合いに発展して、ろくに開発なんて進まなかっただろう」と深くしみじみと振り返っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し話を変えよう。

 

 

 

 それにしても、なぜ共通の話題が「サブカルチャー」だったのか。旧世紀の遺産から最新のトレンドに至るまでのアニメや漫画、ゲームといった娯楽を技術者たちが貪るように嗜むことになったのには、もちろん明確な理由があった。

 

 

 

 彼らが血眼になってその背中を追いかけていた、オーブやプラントという二大先進国の特異な開発環境を参考にしたのである。

 

 

 

 実のところ、常に世界の軍事技術の最先端を爆走し続けるこの二国では、MS開発の最前線において、信じがたいことにアニメのサブスクリプションサービスや膨大な電子書籍といった娯楽コンテンツが、軍の国家予算によって完全無料で提供されていた。

 

 

 

 それどころか、技術者たちにはそれらを積極的に視聴・閲覧することが、膠着した思考を解きほぐすための手段として、むしろ組織側から公式に推奨すらされていたのである。

 

 

 一見するとふざけているとしか思えないこの奇妙な開発環境を構築し、強力に推し進めた人物こそが、他ならぬオーブ連合首長国のユウナ・ロマ・セイラン氏であったのだ。

 

 

 彼は政治家という立場でありながら、モルゲンレーテ社に対して既存の常識を根底から覆す数々の画期的なアイデアを提言し、世界の技術史を裏から激変させてきた張本人として、他国の開発者たちの間でもあまりにも有名であったのだ。

 

 

 セイラン副総裁は当初、激務に追われる開発者たちへの慰問や慰労、あるいは福利厚生の一環として、そのような前代未聞の環境を作り上げていった。

 

 

 しかし、それは単なる息抜きや優しさだけの施策ではなかった。彼自身、後に「自分のアイデアの多くは、多種多様なサブカルチャーに触れることで得られたものだ」と語っている。

 

 

「このアニメに出てくる架空の技術を、現実のメカニズムで再現できないか?」

 

 

「この作品で描かれた奇抜な概念を、我々の兵器に模倣することはできないか?」

 

 

 既存の軍事ドクトリンに囚われない、子供のようでありながら極めて論理的な柔軟な発想の飛躍。それこそが、彼がオーブにもたらし続けた数々の技術革新の源泉だったのである。

 

 

 余談ではあるが、後に設立された世界平和監視機構『コンパス』の副総裁へと就任した彼は、この独特の思想をコンパスの内部にも徹底して持ち込むことになる。

 

 

 今やコンパスの各基地や最新鋭の母艦内には、常に地球圏で最も新しいゲームハードやソフトが惜しみなく補充されていた。隊員たちの間では定期的にアニメの上映会や。トレーディングカードゲームの公認大会や、ポケモン、スマブラといったゲームの大会が当たり前のように開催されており、死線と隣り合わせの兵士たちにとって最大のメンタルケアとして機能している。

 

 

 その充実した福利厚生ぶりから、世間では「世界で最もホワイトな軍隊」とまで噂されるほどであった。――もっとも、そのコンパスへの加入条件や求められる技能スペックが、一般の兵士からすれば狂気としか言いようがないと言うのはまた別の話である。

 

 

 

 

 一方、プラントがオーブと同様にサブカルチャーに対して寛容な、いや、むしろ貪るように研究するような空気へと傾斜していった背景には、オーブのような先見の明とは真逆の、組織のプライドを根底から粉砕された痛烈な「失態」が存在していた。

 

 

 それはかつて、第二次連合・プラント大戦の終盤にまで遡る。当時、ザフト軍は戦場において、オーブが開発し世界に衝撃を与えたあのドッズライフルの現物を、幸運にもほぼ無傷の状態で鹵獲することに成功した。

 

 

 プラントが誇る最高峰の頭脳集団である、コーディネイターの天才科学者たちは色めき立った。「自分たちの知性をもってすれば、この得体の知れない新型ビーム兵器の化けの皮を剥ぐなど造作もない」と、誰もが勝利を確信して解析に勤しんだのである。

 

 

 しかし、現実はあまりにも非情だった。

 

 

 

 ザフトの精鋭設計局は、戦中はおろか、戦後しばらくしてオーブ側がドッズライフルの仕組みを「オープンソース化」として全世界に公開するその瞬間まで、ついにその基本原理を自力で明らかにすることが出来なかったのだ。

 

 

 

 解析室のホログラムスクリーンを前に、天才たちは連日連夜、文字通り髪をむしりながら頭を抱え続けた。ありとあらゆる防御を貫通する、あのあまりにも異常なドリル状の光条。それを説明するために、知性をフル回転させ、勝手に複雑怪奇な迷宮へと迷い込んでいく。

 

 

「特定の位相に合わせたビームの相互干渉により、対象のリフレクターが持つエネルギー波長を局所的に中和、無効化しているのではないか?」

 

「いや、縮退寸前の未知の干渉波形をパルス状に生成し、空間そのものを穿っているに違いない!」

 

 

 高度な数式と最先端の物理理論が乱舞し、議論が白熱する設計局。誰もが、オーブの背後にいるユウナ・ロマ・セイランという男が、自分たちの知覚を遥かに超えた人類未踏の超理論を組み込んでいるのだと信じて疑わなかった。

 

 

 

 そんな中、徹夜の連続で赤く充血した目をこすりながら、メインモニターに映し出されたビームの超高速高解像度データを、ただ一人ぼう然と見つめていた若手の科学者がいた。彼は、先輩達がデュランダル前議長の前で議論や説明を行う片隅で、ぽつりと一言、こう呟いたのである。

 

 

 

「……まるで、昔の古臭い2Dアニメのようだ」

 

 

 

 その若手科学者が頭に思い浮かべていたのは、少し前にネットの広告で見かけた、旧世紀の復刻アニメであつむた。

 

 

 

 『天元突破グレンラガン』。

 

 

 男たちが巨大な「ドリル」を掲げ、目の前に立ちはだかるすべての困難を、ただただ熱く、理不尽を貫き通し、無理を通して道理を蹴っ飛ばしていく荒唐無稽な物語。彼がモニターの中に見たビームはそのアニメに登場するドリルそのものの回転運動に見えたのだ。

 

 

 だが、当然ながら、彼自身も含め、そんな彼の呟きを真に受ける者など、その場には一人もいなかった。

 

 

 彼が意見を提言した先輩科学者たちはもちろん、最高権力者として彼らの激論を静かに見守っていたギルバート・デュランダル前議長すらも、その言葉を「寝不足の若者の他愛ない戯言」として軽く受け流してしまった。

 

 

 そうだ。現実はアニメではない。

 

 

 超高温のプラズマの奔流であるビームが、物理的な実体を持つ刃になり得るはずがない。データに見られる磁場による「螺旋」の動きは、あくまで未知の干渉波形を生成するための複雑な計算の『副産物』に過ぎない。

 

 

 まさか、その「回転力そのもの」でモビルスーツの強固な装甲を物理的に削り取っているなど、高度なエリート教育を受け、世界の最先端にいると自負するコーディネイターの天才たちにとっては、思考の外側に放り出されるべき「バカの発想」でしかなかったのだ。

 

 

 しかし、現実はどこまでも非情だった。

 

 

 後に明かされたドッズライフルのタネは、彼らがこねくり回した量子物理学の難解な数式などでは断じてなかった。複雑な干渉波形による位相の中和などという、スマートで高尚な代物でもなかった。

 

 

 ただ、ビームそのものをドリルのようにひたすら超高速で回転させ、圧倒的な「物理的掘削力」を与えただけという原始的な答え。

 

 

 ビームを構成するプラズマの奔流に、実弾兵器の「ライフリング」という、旧世紀のいにしえの概念を力技で無理やり適用させる。強力な磁界をローリングさせ、高密度に収束されたエネルギーそのものを超高速スピンさせる。

 

 その結果生まれるのは、対象をスマートに無効化する技術ではなく、ただひたすらに標的の装甲を「抉り、削り、ねじ切る」という、原始的なまでに暴力的で物理的なエネルギーの塊だったのだ。

 

 

 そう、若き科学者がポツリと呟いた通り、それは旧世紀の天才クリエイターたちから見れば、馬鹿げた、荒唐無稽で破天荒なロボットアニメの演出そのもの。

 

 

 「難解な超理論で構築されているに違いない」というコーディネイターゆえの傲慢な先入観が、ザフトの頭脳を完全に盲目にさせていたのである。技術を複雑化することだけが進化ではない。あまりにもシンプルで、あまりにも常識外れな、逆転の発想の前に、プラントの技術者たちは文字通り完敗したのだ。

 

 

 この痛烈な教訓を、プラントの科学者たちは決して忘れなかった。

 

 

 それまでの彼らは、白衣をまとい、清潔な実験室に引きこもり、難解な数式や世界中の最先端論文だけを恋人として、それこそ狂信的に研究に励むことこそが美徳であり、科学の頂点を歩む者の唯一の正道だと信じて疑わなかった。

 

 

 しかし、その凝り固まったプライドは、オーブの放ったドリルによって完全に打ち砕かれたのだ。

 

 

 以降、ザフトの設計局のデスクには、量子力学の専門書や構造力学のデータと並んで、旧世紀のロボットアニメのアーカイブや設定資料集が公式に並ぶこととなった。凝り固まった脳髄に未知のインスピレーションを叩き込むため、架空のロボットたちが繰り広げる荒唐無荒で破天荒なアクションを視聴することが、技術者たちの義務、あるいは推奨される習慣となったのである。

 

 

 そしてこの改革は、科学者たちの頭を柔らかくしただけに留まらなかった。

 

 

 その後、相次ぐ大戦による疲弊、ファウンデーションの乱によって、ザフト軍は深刻な慢性的人員不足に直面していくことになる。兵力の確保が国家の最優先課題となる中で、この「インスピレーションのためのサブカルチャー推奨環境」が、思いもよらない形でザフト軍を救うこととなるのだ。

 

 

 

「ザフトに志願すれば、最先端のホビーや、旧世紀のアニメから漫画にいたる膨大なアーカイブがすべて無料で楽しめる。それどころか、それらを大真面目に語り合うことが業務や訓練の一環として認められている」

 

 

 

 

 かつて、戦争の引き金となった「血のバレンタイン」の悲劇の直後、ザフト軍への志願者は爆発的に増加していた。地球連合、そしてナチュラルへの激しい憎悪と復讐心こそが、若きコーディネイターたちを戦場へと駆り立てる最大の動力源だったからである。

 

 

 しかし、戦後5年以上が経過し、度重なる大戦の終結を経て世界が平穏を模索し始めると、当時の燃え盛るような復讐の熱意は自然と低下していった。

 

 

 熱狂が去った後に残されたのは、どの時代、どの世界にも共通する軍隊いう組織への冷ややかな現実だった。

 

 

 戦場のザフト軍は、若者たちの間でいつしか「キツイ、汚い、危険」の3K、さらには「帰れない、厳しい、給料も安い」という、新3 Kも含めた目を背けたくなるようなマイナスイメージの塊として染まっていったのは言うまでもない。最早義務や軍人としての名誉だけでは、もはや平和な時代を生きる若者の心は動かせなくなっていたのである。

 

 

 

 ザフトの上層部や広報部門も、当然ながら手をこまねいていたわけではない。イメージ刷新のためのプロパガンダや、新規の志願者を獲得するための熱心なキャンペーンを何度も試みていた。しかし、その血の滲むような努力の成果は、なかなか実を結ばなかった。

 

 

 何より決定打となったのが、あのファウンデーションの乱の最中に起きた、ザフト内部での大規模なクーデターである。ジャガンナート元国防委員長をはじめとする、かつての狂信的な思想に囚われた「国賊」たちを身内から生み出してしまった事実は、ザフトという組織の信頼を根底から失墜させた。世界を滅ぼしかけた大罪人たちの巣窟――そんな最悪の烙印を押された軍隊への志願者が激減するのは、火を見るより明らかだった。

 

 

 まさに、組織としての存続すら危ぶまれるほどの暗黒期。

 

 

 だが、かつて科学者たちのために用意された「サブカルチャーへの底なしの寛容さと福利厚生の充実ぶり」がネットや口コミを通じて一般の若者たちの間に知れ渡るようになると、冷え切っていた志願者の列にポツポツと変化が現れ始めた。

 

 

 国家の重い大義名分には動かなかった現代の若者たちが、「あそこなら最先端のエンタメが公認で楽しめるらしい」という極めて不純で魅力的な噂に釣られ、重い腰を上げ始めたのである。

 

 

 この奇妙な動向にいち早く気づいたザフト軍上層部は、背に腹は代えられないとばかりに、半分ヤケクソ気味にこの福利厚生を爆発的に拡大する方針へと打って出た。国賊を生み出した汚名をそそぎ、何としてでも致命的な人員不足を解消するためには、もはや軍隊としての伝統や硬固なプライドなどと言っている余裕はなかった。彼らは文字通り、なりふり構わぬ条件を次々と提示したのである。

 

 

 

 そのなりふり構わぬ条件の数々は、軍隊の常識を遥かに超越していた。

 

 

 正規の兵士として入隊した暁には、地球圏で流通する最新鋭のゲームハードが複数、即座に無償支給される。それだけに留まらず、なんと月に二本、常識的な範囲内であればジャンルを問わず、自分が望むゲームソフトを無料でダウンロード購入できる権利が与えられた。

 

 

 さらに、世界中のアニメや漫画、映画に電子書籍とあらゆるサブスクリプションサービスは、ザフトの軍籍を持つ者であればすべて完全無料で利用可能となったのである。

 

 

 極めつけは、月に二回の自分の好きなタイミングで申請できる「サブカル休暇」の創設だった。お気に入りの新作ゲームの発売日や、応援しているアイドルのライブ配信、アニメの最終回といった個人的なイベントに合わせて、公に銃を置いて部屋に引きこもることが許されるという、一般の民間企業すら青ざめるほどの破格の待遇。

 

 

 かつては憎悪と復讐心に燃えるエリートたちで構成されていたザフト軍は、こうして若者の物欲と趣味の時間を人質にした、世界で最も甘い汁の吸える組織へと急速に変貌を遂げていった。志願者を確保するためなら、国防の要たる軍隊が「巨大なオタクサークル」の最大手パトロンになることも辞さない。それほどまでにザフトは追い詰められており、同時に貪欲でもあった。

 

 

 

 結果として、このヤケクソな勧誘計画は大成功を収める。

 

 

 

 かつてはその能力の高さゆえに、軍を敬遠していたコーディネイターの若者たちが、ゲームハードやサブスク無料の権利を求めて次々と徴兵検査の列に並び、致命的だった人員不足は急速に解消へと向かっていったのだ。

 

 

 

「これでいいのか? 本当にこれでいいのか?」

 

 

 

 右肩上がりに急増していく志願者数のグラフを前に、ザフト上層部の将官たちは、揃ってこめかみを押し押さえながら本気で頭を抱えていたという。

 

 

 兵力が戻ったのは重畳。国難を脱したのも確か。だが、入隊してくる若者たちの動機は「祖国を守るため」でも「ナチュラルの圧政に抗うため」でもなく、ただ「支給される最新ゲームハードが欲しいから」であり、「軍の高速回線でアニメのサブスクを快適に見たいから」なのだ。

 

 

 

 かつてプラントの栄光を背負って戦った退役将校たちからすれば、血の涙が流れるような現状であった。しかも、この奇策は現場の実務を担うコーディネイターの内務官たちにとって、文字通りの地獄の始まりを意味していた。

 

 

 ただでさえ逼迫している軍事費とは完全に別枠で、膨大極まりない「福利厚生費」という名のエンタメ予算を計上しなければならなくなったのだ。

 

 

 世界最高峰の処理能力を持つはずの内務官たちが、最新ゲームハードを数万台規模で一括発注するための予算繰りに頭を悩ませ、流通ルートを確保するために涙を流しながら地球圏のあちこちを駆けずり回る羽目になり、若手兵士たちに約束した「月に二本の無料ダウンロード枠」のライセンス契約交渉に費やしていたのである。

 

 

 

 だが、このなりふり構わぬ「軍隊のオタクサークル化」は、当時の誰もが予想だにしなかった最大の副産物を、その後の地球圏にもたらすこととなる。

 

 

 

 後年、多くの歴史家たちが一様に首を傾げ、そして深い皮肉を込めて分析するひとつの歴史的特異点があった。

 

 

 「なぜ、血のバレンタインからファウンデーションの乱に至るまで、あれほど根深く続いていたザフト兵やプラント出身者のコーディネイターよるナチュラルへのヘイトクライムが、乱の終結以降、忽然と激減したのか?」という謎である。

 

 

 その答えは、良い意味でも悪い意味でも、あまりにも下俗で、あまりにも平和なものだった。

 

 

 若きコーディネイターの兵士たちは、地球連合やナチュラルへの憎しみを燃やし、小難しい政治思想に傾倒してテロや虐殺を画策するよりも、今夜配信される新作アニメの展開を考察し、週末に開催される基地対抗のゲーム大会で勝利することに、自らの有り余るエネルギーのすべてを注ぎ込むようになっていたのである。

 

 

 憎悪に身を焦がす暇があるなら、ゲームのランクマッチをあと一戦回したい。他者を呪うエネルギーがあるなら、推しのアイドルのライブ配信を特等席で観るために、明日の過酷な訓練を「サブカル休暇」の申請書類と共に笑顔で乗り切りたい。

 

 

 

 かつてコーディネイターの能力の高さは、傲慢さと選民思想、そして凄惨な復讐心へと結びつきやすかった。

 

 

 

 しかし、国費によって極上の娯楽で満たされ、魂の飢えを完全に癒やされた若い兵士たちは、牙を抜かれると同時に、これ以上ないほど従順で、これ以上ないほど平和を望むオタクへと昇華していったのだ。

 

 

 

 現在、プラントとオーブ連合首長国が民間レベルにおいて蜜月と称されるほど強固な友好関係を築き上げているのは、明らかにこの時代、この環境下で多感な時期を過ごした世代が、両国の中心を担うようになったからに他ならない。

 

 

 

 かつてのように遺伝子の差異や過去の因縁を巡って血生臭い議論を論争する代わりに、彼らは「今期の覇権アニメ」や「新作ゲームの攻略法」について国境を越えて熱弁を振るい、ネットの掲示板(軍隊用)で夜通し語り合う。共通のカルチャーという強固な土台の上で育まれた彼らの絆は、政治家たちのいかなる外交辞令よりも遥かに強かで、壊れにくいものであった。

 

 

 

 その歪で、しかし驚くほど平和な融和の象徴として、現在でも両国の間で定期的に開催され、地球圏全土を熱狂させている一大公式イベントが存在している。

 

 

 

 『第○次ゲーム戦役』――。

 

 

 

 かつて世界を震撼させた大戦のコードネームをなぞり、あえて悪趣味な名を冠されたそのデジタルな舞台では、ザフト軍とオーブ軍から募った腕自慢の有志たちが一堂に会し、最新の対戦ゲームで国家の威信を賭けて激突する。

 

 

 参加するメンツも、普段は新型モビルスーツのテストパイロットを務めるエリートや、実戦で修羅場を潜り抜けてきたコンパス出向組のエースなど、無駄に豪華な顔ぶれもまた揃っていた。かつては本物の火線を交え、互いの命を奪い合っていたかもしれない両軍の若者たちが、毎年の様に今やデバイスを握りしめ、和気藹々と。時に怒号混じりにゲームの世界で高みを目指し合う。

 

 

 

 このコーディネイターやナチュラルたちの無駄遣いとも言えるeスポーツイベントは、ネット配信されるや否や、地球圏全土で凄まじい同時視聴者数を叩き出し、毎年あらゆるトレンドを独占するほどのお祭り騒ぎとなっている。

 

 

 

 画面の向こうで繰り広げられるコンボやテクニックの応酬と、それに狂喜乱舞する兵士たちの姿を見て、往年の退役将校たちは未だに苦い顔をするが、これによって世界からどれほどの血の雨が遠ざけられたかは計り知れない。

 

 

 

 誰も死なない、誰も傷つかない、熱狂と歓声だけの電子の戦場。オーブが蒔き、ザフトがヤケクソ気味に育て上げた「サブカルチャー」という名の平和の種は、こうして時代を超えて、世代を超えて地球圏の若者たちを縛り付け、最高にくだらなくて、最高に愛おしい融和の世界で花開くのであった。

 

 

 

 






・新型MS開発計画
 ユーラシア連邦の一部派閥が行う国産 MS開発計画。ユーラシア連邦はファウンデーションの独立を発端とした騒ぎやロゴス崩壊の余波はいまだに少なくはなく、ウィンダムやダガーLがあるならそれで良いと国産の MS開発は事実上凍結されており、ブルーコスモスの弱体化やファウンデーションの滅亡も含めて「今は」 MS開発にそこまで予算を使いたくはない。寧ろその予算で内政や復興に役に立ってモルガの購入代金に当てたいと、極めて常識的な判断を行なっており。ある意味彼らのやっている事はエゴと言えるでしょう。それでも、集められた彼らは自国産のオーブやプラントにも負けない MS開発にこだわっており、今回はそんな彼らの活躍をプロジェクトX風に描写予定。次回をお待ちくださいませ。

・ザフトのオタク化
 馬鹿馬鹿しい、舐めるなと思われがちですが実際の所現実の軍隊や自衛隊においても若者の獲得のために四苦八苦しており、サブカルイベントなコラボを行うなどあのてこの手で世界中で勧誘競争を行なっています。ザフト軍がここまで福利厚生を行えたのは、人員不足ながらも予算には余裕がある事(史実と違い砂時計がレクイエムで吹き飛んでおらず、設定的にも莫大な高GDP国家である事は資料集に描かれている)のも理由であり。

 オーブもまたモルガの販売や、ユーラシア、プラント、東アジアとの友好関係の樹立による外貨やキラのOSパテント代金でその辺りのサブカル費を用意できており、ユーラシアや東アジア。大西洋連邦では中々真似ができない行為といえるでしょう。基本的にどの時代も軍隊は人員不足ですのでそのうち真似しそうですが。

 その結果、血のバレンタインの風化に加えて。ジャガンナート一派のやらかしによる反ナチュラル、優勢コーディネイター思想の低下。そして、ユウナが軽い気持ちで始めた福利厚生は巡りに巡ってコーディネイターのナチュラルへのヘイトクライムの低下に繋がったのですが、この辺りは長い時間をかけてゆっくりと花が開きますので今はまだユウナ達は気づいていません。一方イザーク辺りの目は死につつも、これにより彼らが求め続けてきた勝手に暴走せず、ヘイトクライムに興味がない兵士達が増加したのもまた事実なので相当複雑な顔をしていたらしいです。

 とはいえ血のバレンタインの慰霊会ではそんな若手の兵士達も沈痛な表情を浮かべて参加しており、最初は福利厚生目的で参加した兵士達も徐々に精悍な兵士となっていったそうな。

大西洋連邦の選挙結果は?展開によって今後のお話に影響が出ますが、あくまで大西洋連邦国民の一人として投票して頂けると幸いです。

  • 【フォスター政権+親オーブ派】
  • 【モンロー主義派】
  • 【反オーブ+反プラント派】
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