破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
「確かに、ゲルググメナースのような最新鋭の高性能機を相手に、正面から単独で戦い続けるのは厳しいでしょう。だからといって、機体全体の基本スペックを底上げしようとすれば、それこそ天文学的なコストがかかり、皆様のドクトリンである物量を維持できなくなります」
エリカは不敵とも言える笑みを浮かべ、言葉を区切った。オーブやザフトと大西洋連邦では MSの運用しそうはまるで違う。数で相手を圧殺するのが連合方式ならば、質で数を補うのが前者だ。
「ならば、逆に考えればいいのです。戦闘中のすべての時間において勝っている必要はありません。――今、相手を倒す『その瞬間』だけ、性能で上回ればいい」
エリカが手元のスイッチを押すと、静止していたスクリーンが再び動き出した。本日4回目となる、ゲルググメナースとの戦闘シミュレーション。
先ほどと同じように、ゲルググが圧倒的な機動力でウィンダムⅡを翻弄し、鋭いビームの一撃を放つ。誰もが先ほどと同じ敗北の結末を予感した、その刹那だった。
画面上のウィンダムⅡのバイザーが、突如として禍々しく、鮮烈な赤色に発光した。正確には、バイザーの奥に隠されたツインアイが、血のような赤に輝いたのだ。
キィィィィン、と空間を切り裂くような甲高い駆動音がシミュレーターから響く。直後、ウィンダムⅡは敵に向かって異常な速度で突進しながらゲルググの放ったビームを、文字通り紙一重の急制動で完全に回避。常識を無視するかの様な狂気的な方向転換で懐へと滑り込むと、唖然とするゲルググのコクピットへゼロ距離でビームライフルを突きつけ、容赦なく引き金を引いた。
閃光。そして大破するゲルググメナース。
さしものザフトの最新鋭機も、その一瞬の「獣」のような超加速には反応すらできていなかった。
「な……ッ!?」
技術者たちから、言葉にならない驚愕の悲鳴が上がる。だが、シミュレーションは止まらない。5回目、6回目――戦場を宇宙空間や入り組んだ市街地へと変えても、結果は劇的に塗り替えられていった。
ウィンダムⅡが窮地に陥るか、あるいは勝機を見出したその瞬間、バイザー越しのツインアイが赤く染まる。その瞬間だけ機体は全く別物の「化け物」へと変貌し、関節部から凄まじい負荷の火花を散らしながら、異常な超機動でゲルググメナースを確実かつ一方的に屠っていくのだ。
唖然とし、開いた口が塞がらない連邦技術者たち。彼らの視線が、再び手元の資料へと突き落とされる。
(――通常の3倍近い、関節駆動系の強化数値)
その意味を、彼らの瞬時に理解した。常時あの動きをすれば、機体は数分と持たずに自壊する。だが、敵を仕留める「一瞬」だけそのリミッターを解除し、強引に最大出力を叩き出すというのであれば話は別だ。
そして、その一瞬の超負荷に耐え抜くためにこそ、このガチガチに固められた狂気的なまでの関節強化が必要不可欠だったのだ。
スクリーンを背に、息を呑む大西洋連邦の面々をエリカは見据えた。その瞳には、彼らの度肝を完全に抜いたという確固たる確信が宿っており、控えめに言ってドヤ顔で口を開く。
「ナチュラルの反応速度の遅れを、機体側の瞬間的な爆発力で強制的に凌駕する。これこそが、我がモルゲンレーテの導き出した答えです」
エリカが手元の端末を滑らせると、スクリーンにはウィンダムⅡの透過構造図と、複雑に張り巡らされたエネルギーのバイパス経路が映し出された。そこに示されていたのは、常識破りな強制駆動システムの全貌だ、
そう、ウィンダムⅡの機体内部には、主電源である通常の大容量バッテリーとは完全に独立した、超高出力型の 補助バッテリーが別途搭載されていたのだ。
システムが起動した瞬間、この補助バッテリーから各部の関節駆動モーターやスラスター群に向けて、回路の許容限界を遥かに無視した莫大なエネルギーが強制的に注ぎ込まれる。すなわち、機体全体にあえて瞬間的な「過負荷」を発生させる仕組みであったのだ。
本来、モビルスーツ工学において、このような過負荷を前提とした設計などというものは悪魔の所業であり、最も忌むべき禁忌とされる。
過電流や急激な電圧上昇は、精密な電子機器の焼き付きやアビオニクスの機能不全を誘発し、最悪の場合は機体の爆発や駆動骨格の破断といった致命的な自爆事故に直結するからだ。
安全性と信頼性、そして何よりコストパフォーマンスを最優先すべき「量産機」の設計において、事故のリスクを跳ね上げる過負荷システムを組み込むなど、まともな設計者の発想ではあり得なかった。
だが、この設計案は、そんな忌むべき事故の引き金をあえて制御下に置き、戦術的な兵器としての仕様にまで昇華させていた。
過負荷によって電子回路が焼き切れる前に、強化された関節駆動系が強引にパワーをねじ伏せ、敵を圧殺するわずか数秒間だけ、超機動を実現する。まさに、量産機の皮を被った、瞬間限定型の決戦兵器とでも呼ぶべき歪な解答が、そこに提示されていたのである。
「ある種の『暴走モード』に近い仕様、と言えるかもしれませんね。ですが――その暴走を完全に制御下に置くことができるのであれば、話は別です」
エリカは自信に満ちた声音で、驚愕に囚われた技術者たちへ向けて解説を続けた。
「この過負荷システムが発動する時間は、一度の出撃において累計でわずか30秒間。一度に使用可能なのは10秒間であり、作動後のクールタイムを考慮すれば、実質的に3回限定の切り札となります。しかし、その10秒間に限れば、本機はザフトの最新鋭機であるゲルググメナースすら完全に凌駕する絶対的な機動性を発揮するのです。もちろん、ただ無茶な負荷をかけるだけでは機体が空中分解しかねませんから、フレームや各部駆動系には、この刹那の衝撃を受け流し、軽減するための処理が徹底的に施されています」
スクリーンに表示されたシミュレーションデータが、エリカの言葉を裏付けるように精密な応力分散のグラフを描き出す。
「パイロット自身の判断で、敵を仕留める瞬間、あるいは致命的な一撃を回避するその一瞬だけ、機体のリミッターを解除して強制的に能力を跳ね上げる。これによって、ナチュラルとコーディネイターの間にある絶望的な肉体差、反応速度の壁を、機体性能で強引に凌駕するのです」
技術者たちは、そのあまりにも合理的かつ狂気的な戦闘ドクトリンに息を呑んだ。だが、スペックシートの末尾に記載された、補助バッテリーの限界値を見た一人が、ハッとしたように顔を上げる。
「待ってください、シモンズ主任。このデータを見る限り、システム作動時の過電流によって、この超高出力補助バッテリーにかかる負荷が限界値を大きく超えている。これでは、規定の3回を作動させた時点で――」
「ええ、完全に壊れます。ですが、何の問題もありません。この補助バッテリーは、最初から使い捨ての消耗品として、壊れることを大前提に製造されているからです。限界まで電力を搾り出し、回路を焼き切って3回使い切れば確かにただの鉄屑と化しますが、システム自体が機体の基幹システムから完全に独立したセクションに配置されています。そのため、たとえ補助バッテリーが完全に焼き切れようとも、ウィンダムⅡ本体の通常性能が低下したり、アビオニクスに不具合を来すような悪影響は一切ありません。切り札を失った後は、ただ元の『優れた汎用量産機』に戻るだけです」
エリカはあっさりと、悪びれる様子もなく首肯する。壊れることすら仕様の内であると。
オーブがお出ししてきたその歪で、しかしこれ以上ないほどに実戦的で魅力的な解答に、大西洋連邦の技術者たちは、もはや言葉を失うしかなかった。
「ですから、このウィンダムⅡという機体は、ある意味でこの一瞬の過負荷に耐え抜くためだけに、骨格から関節に至るまですべてを再設計された機体なのです」
驚きに震える連邦の技術者たちを見据えながら、エリカは言葉を重ねる。
「あえて問題点を挙げるのであれば、機体そのものの耐久性はともかく、このシステム――システム名に関してはそちらで正式に命名していただいて構いませんが――これを発動した際、先ほど申し上げた通り補助バッテリーが確実に破損するため、運用のたびにパーツの交換費用や整備コストが跳ね上がることでしょう」
確かにそれは、予算を管理する軍上層部からすれば頭の痛い問題になり得た。しかし、エリカの口調にはそれを補って余りあるという絶対的な確信があったのだ。
どれ程までに大西洋連邦はウィンダムを失ってきたのか。その度にどれだけの損耗に頭を悩ませていたのか?と。
「ですが、考えてもみてください。それによって一時的にゲルググメナースをも凌駕する絶対的な性能を手に入れ、大西洋連邦の、地球連合軍の貴重な熟練パイロットを確実に生還させることができるのであれば……兵器の費用対効果としては、むしろ安いものではないでしょうか?」
その問いかけは、技術者たちの胸に深く刺さる。自分たちが心血を注いだウィンダムが、次々と撃破されてパイロットごと戦場の藻屑となって消えていった悪夢。
その命を、わずかな消耗品のコストで買い戻せるというのだ。パイロットは貴重なものであり、機体がいくら作れようが、熟練のパイロットがいなければ意味はないというのは歴史的に旧世紀の大日本帝国軍などが証明していると言えるだろう。
「それに、平時はこのシステムを使わなければいいだけの話です。本当に必要な、ここ一番という死線でのみ起動する強化モードを内蔵しているだけですから、前線の連合兵の皆様は、それまで慣れ親しんだウィンダムとほぼ変わらない操作感覚のまま、この機体を扱うことができ、機種転換の必要もありませんよ?」
完全な新型機であれば、パイロットの機種転換訓練やシミュレーターの更新にまた膨大な時間を取られ、ユーラシア連邦などは今頃苦労しているだろう。
だが、このウィンダムⅡであれば、その必要もない。平時は扱い慣れたいつもの愛機であり、いざ命の危機に瀕した瞬間だけ、コーディネイターを圧倒する牙となるのだ。
ナチュラルの、ナチュラルによる、コーディネイターに勝つための仕様。
かつてのプライドをズタズタにされ、藁にもすがる思いでオーブへやってきた大西洋連邦の技術者たちにとって、それはあまりにも魅惑的で、これ以上ないほどに求めていた完璧な解答そのものだった。
そこに致命的な「毒」が仕込まれていることなど露ほども知らず、大西洋連邦の技術者たちは、差し出された共同開発の契約書に歓喜と共にサインを描いてしまう。
そして、その後の開発プロセスや実戦配備に至るまでのすべての過程を含めても、彼らがオーブの周到に仕込んだ巧妙極まる「遅行毒」に気づくことは、ついになかったのである。
――同日、モルゲンレーテの最奥に位置する、限られた人間しか立ち入れない極秘の執務室。
大西洋連邦との息詰まる交渉のファーストステージを終え、ユウナは椅子の背もたれに深く体を預けながら、ホログラム画面に映る青年に向かって呆れたような、称賛の混じった声をかけた。
「それにしても、お前もえげつない事を考えたな……」
ユウナの脳裏をよぎっていたのは、自身の知る知識の引き出しにある、機体の限界を超えて一瞬だけ圧倒的な超性能を発揮する、あの『EXAMシステム』や『トランザム』といった、どこか強化システムの数々だった。まさか、それらに類するコンセプトを、大西洋連邦の主力機にそっくりそのまま植え付ける提案をするとは。
だが、そんなユウナの感嘆を、ハインラインは相変わらず冷徹な態度で、バッサリと切り捨てた。
「……私はただ、発想を変えた側に過ぎません」
画面の向こうで、奥の瞳に一切の感情をにじませず、ハインラインは淡々とロジックを口にする。興奮状態であれば分かりやすく早口を口にするはずの彼が冷静な辺り、つまりそういうことだ。
「確かに、モビルスーツを一時的に過負荷で強制強化するシステムさえあれば、ナチュラルのパイロットであっても、我が軍の最新鋭機体に肉薄、あるいは一時的に凌駕することは可能でしょう。彼ら大西洋連邦の技術者が、目の前にぶら下がった果実に飛びつくのも無理はありません」
ハインラインはキーボードを叩いていた手を止め、現実を突きつけるように言葉を繋いだ。
「ですが――モビルスーツという限られたプラットフォームに搭載可能な推進剤の総量や、長期戦を戦い抜くためのエネルギー容量は、ベースがウィンダムである以上、一定の規律から外れることはありません」
それこそが、ハインラインの仕込んだ『遅行毒』の正体であった。瞬間的な超高機動によって生じる、パイロットの肉体を圧し潰さんばかりの凄まじいG(重力加速度)。それに関しては、かつてユウナ自身が無理やり着せられてその恐ろしさを身を以て堪能させられた、オーブ製の最新型高性能パイロットスーツの技術が解決策となる。
その耐G機能を適度にデチューンした廉価版を大西洋連邦へ量産・供与すれば、ナチュラルのパイロットであってもその一瞬の狂気的な機動にギリギリ耐えることができるのだ。実際、オーブ軍の国防部隊はすでにこの新型パイロットスーツへの更新を完了させていた。
だが、人間の肉体は技術で騙せても、物理の絶対法則までは騙せない。
モビルスーツという限られたフレームの中に詰め込める推進剤の絶対量や、エネルギーの総量は、基本的に変わることはないのだ。
これが、核動力を備えたNJC搭載機や、ガイアティターンズやセイバー改といったザフトのセカンドシリーズをベースにした改修機であれば話は別だ。
それらの機体は、最初から規格外の高性能機として力を発揮することを前提として骨格から設計されているため、大容量のプロペラントや膨大なエネルギー要求にも耐えうるだけの潤沢なキャパシティと余裕がハナから備わっている。
しかし、ウィンダムⅡのベースはどこまでいっても量産機のウィンダムだ。平時はほんの少し基本スペックが強化された「だけ」の、ごく一般的な量産機。
それが、戦闘中に過負荷によっていきなり強制的に超高機動へと移行すれば、機体内部の貴重な推進剤とエネルギーは、文字通り一瞬にして爆発的に食い潰されることになる。
「仮に彼らが、このウィンダムⅡをずらりと並べて我が国に攻め込んできたとしてな」
ユウナは愉快そうに口元を歪め、オーブ周辺海域の防衛マップへと視線を向けた。
「現在のオーブは、領海内の島々をエタニティのビームガトリングガンを筆頭とした重火器でガチガチに固め、完全な要塞化を進めている。おまけに空には最新鋭の『ムラサメ改』が手ぐすね引いて待っているんだ。そんな地獄のような迎撃網に突っ込めば、いくら改修されたとはいえ、ただのウィンダムⅡなどバカスカ撃破されていくだろうな……そうなれば、死に直面した連邦のパイロットたちは、パニックを起こして慌ててあのリミッターを解除し、過負荷システムを起動するはずだ」
「ええ。それこそが狙いです」
ハインラインは冷淡に計算通りだと言わんばかりに頷いた。内心ユウナはコイツだけは絶対敵に回したくねぇなと思ったのは内緒だ。
「過負荷をかけてしまえば、確かに一時的にオーブ側の熾烈な対空砲火やムラサメ改の攻撃を避けることは可能でしょう。その圧倒的な速度をもってすれば、オーブの防衛線を強行突破し、本土にタッチダウンすることだって出来るかもしれません。大西洋連邦の将軍たちは、その局地的な突破力を見て『素晴らしい新兵器だ』と大喜びするでしょうね」
そこで言葉を区切ると、ハインラインの瞳が、獲物を罠にハメた捕食者のように冷たく細められた。
「ですが……命惜しさに過負荷を起動し、超高速戦闘を強要されたウィンダムⅡが、果たしてその後、どれだけの時間戦い続けられるでしょうか?性能の低下はないとシモンズ主任は説明しましたが、それはあくまで『ハードウェアが壊れない』というだけ。エネルギーや推進剤の『消費』は、全くの別問題です」
ハインラインはキーボードの上に長い指を滑らせ、画面に別のシミュレーション結果を呼び出した。それは、過負荷システムを3回使い切った後の、ウィンダムⅡの残存エネルギーメーターだった。
「オーブの防衛線を突破し、タッチダウンを決めたその瞬間、彼らに残されている継戦可能な推力は、控えめに言っても心許ない状態に陥ります。パイロットたちは、ただ目の前の敵を突破するだけでなく、最終的に『母艦に生還するための推力』まで常に逆算し、カツカツの燃料をやりくりしながら戦闘を継続しなければならなくなるのです」
戦場で、これほど過酷な精神的負荷はない。一歩動くたびに、命のカウントダウンである燃料計が恐ろしい勢いで減っていく。
仮に補給艇や上陸艇などが存在しているのであれば補給が行えるのも含めて問題はなかった。しかし、オーブのリヴァイアサンの存在が全てを狂わせたのだ。
「そんな極限状態の彼らに、オーブ軍がさらに容赦のない第二波、第三波の迎撃を仕掛ければどうなるか。焦燥と恐怖に駆られたパイロットたちは、燃料の消費を理解していながらも、目の前の攻撃を避けるために再びリミッターを解除せざるを得なくなる。あっという間に3回のリミットへ強制的に追い込まれ、戦闘領域の真ん中でまともな継戦も不可能となるでしょうね」
それは、機体が壊れずとも、戦術的にはなす術なく撃破される未来が確定することを意味していた。まさに、魅惑的な超性能の裏に隠された、あまりにも冷酷な罠。しかし、大西洋連邦がその事実に気づく可能性もゼロではない。
「……だが、あちらの技術者たちも伊達にエリートを名乗ってはいないだろう?気づく可能性もあるんじゃねぇか?」
ユウナが少し意地悪な笑みを浮かべて、ハインラインの言葉を継いだ。それにしてもこの二人、謀略に関してはノリノリである。
「いずれ実戦データや運用試験の段階で、プロペラントの不足という致命的な事実に気付く可能性はある。そうなれば、彼らは確実に、外付けの増加用プロペラントタンクを実装して燃料を増やそうとするだろうな」
「ええ、確実にそうしてくるでしょうね。ですが、それこそがこの罠の第二段階です」
ハインラインは冷徹極まる口調で、大西洋連邦の足掻きを先回りするようにバッサリと言ってのけた。
「外部タンクを増設すれば、当然ながら機体の総重量が増し、ウィンダムが本来持っていた優れた回避力や運動性は確実に低下します。結果として、平時の状態ではさらに敵の攻撃に当たりやすくなり、それを補うために、結局は重くなった機体を無理やり動かす過負荷システムへ頼らざるを得なくなる。――そして、切り札である過負荷モードが切れた瞬間、残されるのは燃料タンクをぶら下げただけの、鈍重な格好の的です」
ハインラインは完全に見抜いていた。彼らが良かれと思って施すであろう改良すらも、すべてオーブの迎撃網の餌食になるための布石に過ぎない。
大西洋連邦のプライドを絶妙にくすぐり、救世主のような顔をして手渡された「ウィンダムⅡ」という名の新型機。その中身は、一度起動すれば最後、自らの血を爆発的に垂れ流して破滅へと突き進む片道切符を装備されているとこの時点では誰も気付けてはいないのだ。
かと言ってこの過負荷システムを採用しなければ強化版ウィンダムとして一定の戦果は上げるだろうが、ウィンダムは既に前大戦時にその多くがオーブ軍によって撃破されている。まさに、あのサインをした瞬間。将来的に野心の赴くままにオーブを貪ろうとする権力者への破滅が約束されたも同然だ。
後に「オーバーロードシステム」と名付けられたこのシステムをオーブ軍やザフト軍は採用する事はなく、ウィンダムⅡは名機として長く大西洋連邦で愛される事になるのだが、果たして第三次オーブ侵攻作戦が行われるのか?
そして、ウィンダムⅡのパイロット達が悲劇的な末路を迎えるのかどうかは神のみぞ知るのだろう。
なおウィンダムⅡの開発により、素材や基礎レベルの研究を大西洋連邦の費用で好き放題行う事が出来たが為に、民生利用も視野に入れたオーブもまたホクホクだったのはいうまでもない。
・オーバーロード
ハインラインが提案した、サブバッテリーにあえて過負荷を与えて機体性能を短期間だけ一気に無理やり向上させるシステム。一度の戦闘で3回、累計30秒という限定的な時間ながらユウナが着ていた新型パイロットスーツも含めてザフト兵の最新鋭機。ゲルググメナースをも凌駕する戦闘が可能となっている。とはいえ一度戦えば整備は必須、3回使えば確定でオシャカになるなど問題も多いが。
・ナチュラル主体のパイロットがザフト軍の最新鋭機に一時的にでも短期で互角に渡り合える。
・平時の利用では使わなければ純粋強化されたウィンダムとして優秀+ヴァローナと比べて機体の更新も容易である事。
・暴走前提で作っているので使用した所で『表向きは』それほどデメリットもなく、そのまま継戦可能な事。
・なによりパイロットの人命が最も貴重であり、大西洋連邦は痛いほどにそのことを大規模戦戦争を経験したことで理解していたこと。
などの原因により、一部のヴァローナ採用派を押し除けて正式採用されることに。ウィンダムなどの生産工場がそれ程の手間なく流用でき、現存の機体の改修も可能であるなど素早く軍備を整えられるのも歓迎された理由でした。
・オーブの罠
しかし、オーブ視点ではこの機体はオーブ侵攻にはあまり適していない機体となっています。
まず欠点の一つとしてどこまで行ってもウィンダムの改修機であるため過負荷により高速戦闘を行えばプロペラント(推進剤など燃料など)やメインバッテリー(サブは壊れる前提だがメインのバッテリーの消費も劣悪になる)をバカスカ消費する事。
オーブ軍はエタニティや対空ケイオス爆雷、ムラサメ改など基本的に専守防衛を重視しているがため対空装備で国土を囲っており、嫌でもウィンダムⅡはオーバーロードによって攻撃を避ける必要があるのですが、そのままオーブ本土にタッチダウンしたとしても継戦能力はガタ落ちしています。
その辺りは本来補給艇や母艦が侵攻軍として参加していれば、即回復できるのですが、リヴァイアサンの存在によってそれらは文字通り撲滅される為難しくなっており、対空迎撃を掻い潜ったとしても限られた武装。限られた推進剤。心許ないバッテリーによりウィンダムⅡは相当苦労する事になるでしょう。かといって継戦能力を向上させようと侵攻軍のMSにプロペラントタンクや追加武装を山盛りすると、今度は対空迎撃を重量化により避けられず犠牲者が増えるばかりで……専守防衛特化の島国であり、リヴァイアサンという切り札があるオーブだからこそ、一見すると優秀な MSであってもオーブ侵攻には全く適していない機体となってしまうのでした。
一応ザフト軍のように宇宙からウィンダムⅡを投下する事でその辺りは解決できるとは言え、オーブ軍はグルドリンなど宇宙戦力も拡充してしますし。恐らく将来的に開発される超大型ウミサソリ型MA、デススティンガーはそんな降下部隊を迎撃する為にドッズホーミングレーザーなどが搭載されるかもしれませんね。
・ハインライン
今回のMVP。しれっと参加していますが、プラント所属の研究者である彼がオーブ+連合の新機体の設計計画に口出しするのはめちゃくちゃ問題だったりしますが、もはやその辺りを指摘するのはユウナくらいなもの。実は後々ユウナはオーブのためとは言えプラントと大西洋連邦が戦争状態に陥った時にやばくないか?と指摘した所。
「それまでにもっと優秀な機体を、こちらも作りますので」
とドヤ顔したそうな。事実現在のゲルググメナースは15mサイズまで小型化されており、将来的には小型 MSとして10mサイズでありつつ火力などを向上させようとするなどドッズライフル対策に研究も進んでおり、仮に戦端が開かれた場合、連合のオーバーロードシステム搭載型の改修ウィンダムvsザフトの小型 MSという構図になるでしょうね。
・オーブの利益
なお今回オーブは素材やバッテリー、パイロットスーツなども含めて大西洋連邦の資金でウィンダムⅡの製造のために基礎研究を進めており、それが自国のMS開発や民生品に流用されるのは明らか。何気にこのような基礎技術はかなり重要で、普段はできないことも含めて嬉々として研究し将来のMS開発の礎とするでしょう。なおオーブが開発中の対話式サポートAI などは勿論非公開。なんなら基礎研究の名目でこの資金を流用して、こちらの完成度をあげているのかもしれませんね。
大西洋連邦の選挙結果は?展開によって今後のお話に影響が出ますが、あくまで大西洋連邦国民の一人として投票して頂けると幸いです。
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【フォスター政権+親オーブ派】
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【モンロー主義派】
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【反オーブ+反プラント派】