破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
大型輸送機『ヴァルファウ』の薄暗い格納庫。出撃を待つ三つのコックピット内で、相次いで生体認証の完了を告げる電子音が小さく響いた。コンソールの光がパイロット達の顔を青白く照らし出し、メインモニターには通信回線を通じてコンパス副総裁、ユウナの顔が映し出される。
「――説明は以上だ。あと数分でテロリストどもの地下拠点上空へ到達する。作戦通り頼むぞ。まずババ。お前はコングの火力を活かし、初手から全力で砲撃を叩き込め。敵の通信網を真っ先に叩き潰すんだ」
「了解です!ユウナ様!」
ババは力強く頷く。
頷く。現在支援砲撃機体としてザウート、ガズウートに変わってザフトで量産中のアイアンコング。それらは既に地上を中心に配備は進んでいるが為、信頼性は申し分はない。
その原案を提出したのはユウナ達オーブであり、オーブ内に於いても少数ではあるが制式採用されているのだ。故にナチュラルのパイロットであっても問題なく運用可能であり。MA乗りとして優秀なババには適任の機体と言えるだろう。
オーブは中立国であり、滅多な事でなければ他国にMSの派遣などは行えない。だからこそ、今回テロリスト相手に貴重な実戦データを得られる機会を得ることが出来たのは数少ない幸運だと言えるだろう。なお、ババ本人は今回ユウナが複座(またの名を強化パーツ)しない事に残念そうな顔をしているのは言うまでもない。
「シンはムラサメ改で上空を抑えろ。敵の空戦MSを撃破しつつ、ババの護衛に回るんだ。そして敵MSの排除を確認次第……アグネス、お前はヤツカハギで降下、現地歩兵隊と連携して残党を完全に掃討しろ」
新型の多脚戦車に乗り込むアグネスと、ムラサメ改のコックピットでシンはそれぞれ短く了解と答える。アグネスは対MS戦を想定していないヤツカハギに不満を感じて……はおらず、寧ろ最新鋭の試験機を回された事実にご満悦の様子だ。同時に多くのテロリストをこの手で合法的に処理出来るのだから不満などあるはずもない。
シンは自身の愛機であるガイアティターンズに代わって、とある特殊な機構を内蔵したムラサメ改を今回は扱う事になる。もしも、ユウナが平時の感性であれば、元オーブ出身のシンがオーブ製の量産機のパイロットとして戦う姿にシリーズファンとして感慨深い目をしていたはずだ。
しかし、そんな落ち着いた三人とは違い、ユウナの雰囲気は普段とは別物で、説明の合間も落ち着かないのか、隠しきれない重苦しい苛立ちが混じって節々から迸っている。
普段のユウナといえば、どこか肩の力が抜けた軽妙な雰囲気を漂わせている男だ。しかし今の彼は、それとは真逆の刺々しいオーラや不満そうな表情を隠せていなかった。
(まあ……そりゃあ無理もないよなぁ……)
コンソールに表示されたユウナの苦虫を噛み潰したような表情を見つめながら、シンは心底同情していた。
本来であれば、今頃副総裁は妻であるミーア・キャンベルのライブに同行しているはずだったのだ。前々からまとめて長期休暇を申請し、裏方として彼女をサポートしながら自分自身も楽しむのだと、子供のように心を躍らせていた姿をシンは覚えている。
それが、大西洋連邦へ正式に引き渡したばかりの試作機『プロトタイプウィンダムⅡ』がテロリストに強奪されるという最悪のタイミングで事件が発生。内通者の存在の危惧や調査に加え、政治的に混乱しつつあるこの状況で正規軍か元正規軍の可能性が高い。
つまり、テロリストとはいえ国民同士がぶつかり合うことへの影響力を危惧した大西洋連邦の都合により、休暇を完全にぶち壊された挙げ句、こうして『ヴァルファウ』の狭苦しい簡易司令室へと鮨詰めにされたのだ。
いわば、他国の尻拭いで休暇を取り下げられたようなもの。これで、不機嫌にならない方が無理というものだが。悲しいかな、ユウナ達は宮仕えの公務員。上からの命令や懇願は従うしかない世知辛い身なのだ。
モニター越しのユウナは、部下に怒りをぶつけまいと必死に深呼吸を繰り返し、平静を装おうとしていた。だが、どれほど呼吸を整えようとも、全身からダダ漏れになっている負のオーラまでは誤魔化しきれていない。
(……こんなに不機嫌そうな副総裁を見るのは、出会ってから初めてかもしれないな)
普段の軽妙で頼りがいのある姿からは想像もつかないピリついた空気に、シンは心の中でそっと合掌するのであった。
コンソールのモニター画面を切り替え、シンは手慣れた手つきで認証キーを入力していく。生体認証に加えて幾重ものパスコードを入力するこのプロセスは、機密性の高い機体を扱うコンパスのパイロットにとっては、最早日常となった二重三重のセキュリティチェックだ。
ザフト時代と比べて面倒くさいのは確かだが、MSの強奪対策にはこれくらい必要かと、カタカタと指を動かす無機質な電子音が連続して鳴り響くなか、不意にインカムから声が割り込んできた。
『――ホーク大尉、少しいいか?』
「ん……?」
呼びかけてきた相手の表示を見て、シンは少し驚いたように眉を上げた。ババ三佐、今回の作戦においては少佐相当に当たる隊長と言える人物だ。
(珍しいな……)
ババといえば、言わずと知れたユウナ副総裁の忠臣――いや、ユウナ本人からしてみれば「忠臣というか、ぶっちゃけ狂信者じゃね?」と内心で密かに思っているのだが、それはともかく。
基本的にユウナと共に(コックピットに彼を投げ込み)出撃する事も多く、こうして個人的に通信で言葉を交わす機会など今までほとんどなかった。
「あ、シン大尉でいいですよ、ババ三佐」
セキュリティチェックの入力を終え、シンはモニター越しに向かって苦笑混じりに応じた。
「俺、婿養子に入ったので慣れてなくて……まだ『ホーク』って呼ばれるの、どうも耳に慣れなくて。できれば下の名前で呼んでもらえると助かります」
『そうか……ならば、シン大尉』
通信の向こうで、ババは重々しく言葉を改める。
『今回の作戦において、私の乗るコングは遠距離砲戦仕様で敵拠点を撃砕する役割を担っている。……だが、君がムラサメ改で私の護衛に回る必要はない』
「え……? でも副総裁の命令は、ババ三佐の護衛と空戦MSの排除じゃ……」
『構わん。私の機体には、試験的にミラージュコロイドと、オーブの最新鋭ナノマシン型フェムテク装甲が組み込まれている。高い隠密性だけでなく、防御能力も従来の機体とは桁違いだ。たとえテロリストどもがドッズライフルを持ち出してこようと、どうとでも対処可能だ』
自らの愛機に対する絶対の自信、そしてユウナの創り出した技術への全幅の信頼を込めて、ババは言い放つ。
『だから君は、私に気兼ねすることなく敵基地の中枢へと突入し、思う存分暴れまわってくるといい。そのムラサメは特別製だ。だと言うのに私という重荷がいれば性能を引き出せないはず。なによりその機体はユウナ様の生み出したもの。君ならば性能を引き出せるはずだ』
通信越しに伝わってくるババの声は静かだったが、そこには少なからず圧が含まれている。ただの独断や慢心などではない。己の腕と機体性能に対する絶対的な自負、そして何よりユウナが手掛けた機体を駆る以上、完璧な戦果を挙げねばならないという主君への狂信的なまでの忠誠心だ。
ババの言葉の裏には、シンに対する期待と同時に、「主君の生み出した特別機を任された以上、無様な戦いをしてユウナ様に恥をかかせるな」という重苦しい無言のプレッシャーが明確に内包されていた。
コンソールの上を滑らせていたシンの指先が、一瞬だけピタリと止まる。
(そういえば……この人、核動力すら載ってない初期のアカツキで、あのハイネ隊長と直接やり合って引き分けたっていう怪物だったな……)
コンパス内でも屈指の実力者であるハイネを相手に真っ向から渡り合った過去を持つ男の言葉だ。ただのハタリやハッタリで言っているわけではないことくらい、シンにも痛いほどよく理解できた。
期待している、だが期待は裏切るなよ。シンの周りにはあまり居ないタイプのパイロットであったが、彼にとっては悪い気は不思議としなかった。
「……わかりました」
シンは深く息を吐き出すと、腹を括って力強く頷く。やりたいようにやれと太鼓判を貰った以上は遠慮はいらない。やるべき事は暴れる事のみ。
シンの戦い方はキラやアスラン、カナードと比べれば一撃必殺で確実に相手を仕留める荒々しいものであるが、護衛ではその腕前を存分に発揮出来ないのもまた事実なのだから。
「ババ三佐の意図は理解しました。……ただ、その作戦変更の件はちゃんと副総裁に自分で許可を取ってくださいね。あの人、事後報告とか『報連相』にはめちゃくちゃ厳しいですし……何より、今の副総裁はいつもより機嫌が悪いですから」
苦笑いを交えつつ、切実な念押しを口にするシンに対し、ババは通信の向こうで短く、どこか満足げに鼻を鳴らすのであった。
一方その頃――。
大西洋連邦領内の深い樹海に隠された、暗鬱な密林の底。表向きは数年前に破棄され、湿った苔と幾重にも這い回る巨大な蔦に覆われた旧連合軍の地下バンカーに、そのテロリストグループは潜伏していた。
遮光シートと擬装網で覆われた無機質なコンクリートの構造物は、外界からの光を完全に遮断し、まるで鬱蒼とした樹海の腹の中に呑み込まれた棺桶のようだ。
かつては重厚な警戒音が鳴り響き、最新の防衛要塞として機能していたはずの基地内。しかし今や、湿気で青錆が浮き出た非常灯が淡く弱々しく明滅するだけの、死んだような静寂に包まれている。剥げ落ちた壁面、継ぎ目が歪んだ冷却配管から絶え間なく滴り落ちる水の音が、無機質に冷たいコンクリートの床を叩き、不気味な水音を暗闇に響かせていた。
「……どうして、こうなった……」
埃とオイルの臭いが充満する暗がりの中で、男たちのうちの一人が絞り出すように頭を抱え込んだ。青白い端末の光に照らされたその顔はゲッソリと痩せこけ、焦燥と絶望に苛まれている。
しかし、その絞り出すような呟きに返答する者は誰一人としていなかった。ただ冷気と共に足元から這い上がってくる重苦しい沈黙だけが、狭い空間を支配している。
彼らは旧ブルーコスモスの中でも、特に排外主義と選民思想に凝り固まった苛烈な流派(といっても五十歩百歩であるが)の残党であった。本来描いていた計画であれば、プラントの政治家や有力者たちが外交や和平交渉のために地球へと降り立つタイミングを狙い澄まし、MSでの凄惨極まりない襲撃テロを敢行。
無防備な要人らを惨殺し、その凄惨な一部始終を全世界へライブ配信することで、互いの疑心暗鬼を煽り全面戦争へと世界を引き戻す――控えめに言っても、狂気の沙汰としか言いようのない、身勝手極まりない最悪のシナリオを企んでいたのだ。
だが、その妄執に満ちた計画は、実行に移される前に脆くも崩れ去っていた。
世界和平監視機構『コンパス』――世界の裏で蠢く火種を容赦なく摘み取る即応力と、一切の情け容赦のない電撃的な軍事介入。それによって、彼らを影で手引きし資金や兵器を潤沢に融通していた裏の政治団体、さらには武器商人や闇のパトロンたちまでもが、次々と跡形もなく叩き潰されたのだ。
パトロンという巨大な財布を失い、外部からの補給線すら完全に断たれた彼らは、日を追うごとにジリジリと後先のないどん詰まりへと追い詰められていった。
地下バンカーの奥には、MSが何機か鎮座している。だが、現代のMSとは途方もない数の精密パーツと高度な電子制御で組み上げられた電子機器の塊だ。まともなメカニックも不足し、交換用の油脂類や予備パーツすら手に入らない現状では、まともなメンテナンスなど望むべくもない。
日を追うごとにシステムチェックにはエラーコードが頻発し、機体の稼働率は衰弱していく病人と同じように下がる一方であった。
さらに彼らを苛んでいたのは、基地内に蠢く数百人規模の構成員たちの食事もである。蓄えていた食料や水、タバコなどの嗜好品は底を突きかけており、かつて世界を変えると息巻いていた男たちの間には、荒んだ飢餓と不満が充満していた。
もちろん、周囲の集落や物資集積所を襲い、略奪や徴発によって強引に資材を奪い取るという手がないわけではなかった。実際に、近隣エリアで暴走した他のテロリストグループの中には、手近な街を襲撃して一時的な物資や、鬱憤晴らしの「お楽しみ」にするための捕虜を手に入れた者たちもいた。
――だが、その末路を彼らは嫌というほど思い知らされている。
掠奪を行ったグループは、短期的には飢えを満たしたものの、わずか2〜3日以内――最悪の場合は事件発生から数時間もしないうちに、悲鳴を上げる暇すら与えられずコンパスのMS部隊によって影も形もなく撲滅されたのだ。
一網打尽にされた同胞たちの残骸を知っているからこそ、彼らは打つ手もなく、軽率な表だった強硬手段には踏み切れずにいた。
かといって、飢えと恐怖に怯えながら、じわじわと野垂れ死ぬのを待つことなど今更できるはずもない。暴走することもできず、引き返すことも許されない。行き場のない焦燥感と絶望だけが、腐臭漂う地下バンカーの空気を重くドロドロと濁らせていた。
故に、彼らは最後にして最悪の覚悟を決めた。決めてしまったのだ。
潜伏させていた偵察兵やスパイからもたらされた、近隣のルートで大型輸送機によるMS輸送が行われているという極秘情報。それは絶望の淵に立たされていた男たちは、それを最後の賭けと捉えてしまう。
大西洋連邦が運搬するMSを輸送機ごと強奪し、速やかに自らの戦力として組み込む。そうして戦力を整えた上で、一気に軍事行動へとなだれ込む計画だった。
彼らなりに計算はあった。コンパスは紛争根絶や無差別テロの阻止には即座に動くが、単に大西洋連邦が自国のMSを強奪された程度の事件なら、即座に介入してくる可能性は低いと踏んだのだ。そんな事態でいちいちコンパスを頼れば大西洋連邦側は国際的な恥をかくことになる。軍が重い腰を上げ、本格的な奪還や基地攻略作戦に動き出すまでにはどうしても時間がかかるはずだった。
その隙に強奪したMSを含めた全戦力を叩きつけ、近隣のザフト基地やコーディネイターの村や街を襲う。
どうせ野垂れ死ぬなら、最後に盛大な惨劇を引き起こして散る。ヤケクソになった狂信者たちは理性を捨て、身勝手な最後の暴走へ向けて動き出す。そして、彼らは結果的に言えば強奪作戦には成功し、多数の物資を手に入れる事には成功した。成功してしまったのだ。
彼らは当初、狂喜乱舞した。ずっと地下に閉じこもっていた自分たちが、ついに一矢報いたのだと。
大型輸送機ごと複数のMSを丸ごと奪い取ることに成功し、その中にはウィンダムの改修機と思われる見慣れぬ新型機の姿もあった。長らく飢えと恐怖に晒されていた男たちは、突如として手に入れた圧倒的な力に酔い痴れ、一時的な全能感に満たされていた。
これさえあれば好きなだけ暴れられる。遺伝子をいじくり回した化け物どもを殺戮する聖戦を、今度こそ実行できる。
強奪した物資の中に含まれていた酒や煙草を片手に、彼らは欲望のままに豪遊し、浮かれ気分で最後の戦いに向けた準備を進めていた。
だが、そんな彼らの愚かな馬鹿騒ぎは、たった一夜限りの夢で終わることになる。
彼らが輸送機ごと強奪したその新型機『プロトタイプウィンダムⅡ』は、大西洋連邦ではなく、オーブが主導して極秘裏に開発・生産していた代物であった。
さらに言えば、ただの量産試作機などではなく、次世代の雛形機。宇宙世紀で例えるのなら初代ガンダム、このC.E世界においてのストライクに匹敵する程の価値と期待がこの機体には込められている。
そう。この試作機であるプロトタイプウィンダムⅡを強奪するというのは、控えめに言ってもオーブと大西洋連邦の双方の顔面に糞を叩きつけ、中指を立てて挑発するに匹敵する最悪の暴挙だったのだ。
大西洋連邦軍にとっては自国の面目を潰されたどころの話ではなく、オーブ側にとっても国家の威信と最新技術の機密を根底から揺るがす致命的な不祥事に他ならない。何より舐められたら殺すという精神はC.E世界では基本ではあるのだが、それはオーブもまた例外ではないのだ。
「……おい、なんだこれは……」
豪遊の宴が明けた翌朝、機体のコンソールを解析していたメカニックの青ざめた声が、静まり返ったハンガーに響き渡った。
酔いが一気に冷めていく。データログに刻まれていたのは、大西洋連邦の規格ではなくオーブの極秘識別コード。自分たちが奪ったものが、単なる連合の量産機などではなく、二大国家の政治的・軍事的思惑が絡み合った最重要機密だという事実を、遅まきながら理解してしまう。
コンパスどころの話ではない。もしこの存在が明るみに出れば、隠蔽と回収のためにオーブ軍と大西洋連邦軍がなりふり構わず大挙して押し寄せてくる。それも、証拠隠滅のために自分たちを基地ごと跡形もなく消し去りに来るのは火を見るより明らかだった。
基地内に冷たい戦慄とパニックが走る。まともな猶予など、最初から一刻すら残されていなかったのだ。希望的観測は絶望に変わり、酒宴の酔いなど全員まとめて冷めてしまうのは当然だろう。
「……こうなったら、もう猶予はないぞ!」
「軍が押し寄せてくる前に打って出るしかない! 準備を急げ!」
焦燥に駆られた男たちは、もはや理性を完全に投げ捨てた。包囲網が完成する前に、強奪した戦力全てを叩きつけて『義挙』を強行するしかない。死地へ向かって転がり落ちるように、彼らは最後の暴走へと突き進んでいった。
――次の瞬間。
何の前触れもなく、天を覆う重圧な落雷のごとき衝撃が地下基地の頭上を襲った。
地上へと貫通した超高初速の砲撃は、音すら置き去りにして襲来。分厚い擬装網と樹海をまるごと蒸発させると、寸分の狂いもなく基地上部にそびえ立つ長距離通信用メインアンテナの基部を打ちぬいた。
高熱のプラズマと化す金属片が花火のように飛び散り、巨大なパラボラアンテナは激しい白熱光を発しながら一瞬で架台ごと崩れ去る。
さらに間髪を容れず、第二波の精密誘導弾がコンクリートの深層へと垂直に穿たれた。
狂いなく狙い打たれたのは、基地の心臓部である通信管理室と広域データ中継ブロック。地表を何十メートルも掘り進んで作られた重装甲の天井が、まるで紙粘土のように容易く押し潰され、内部で高圧エネルギーの破裂が連鎖する。
通信サーバー、暗号化回線のメインフレーム、果てはバックアップ用の予備アンテナ線に至るまで、極限まで高められた衝撃波と熱線の渦に呑み込まれ、一瞬のうちに黒焦げの金属屑と塵芥へ変貌を遂げた。
基地全体を突き上げる凄まじい地鳴りが収まり、舞い散る粉塵とオイルの焦げた臭いが充満するなか、残されたのは不気味なまでの静寂だった。
コンソール上の通信インジケーターは、血の気が引くように次々と警告の赤から死を意味する黒へと変色していく。メインモニターは激しいノイズを吐き出した後に沈黙し、無線機からはただ砂嵐の不快な雑音だけが虚しく響いていた。
敵の姿はおろか、MSの機影すら一度として捉えていない。それにもかかわらず、最初のコンマ数秒の砲撃だけで外部へ繋がるすべての通信網を完膚なきまでに破壊されたのだ。
助けを呼ぶことも、外界の情勢を知ることも、自分たちの『義挙』を世界へ宣言することすら永遠に叶わない。
遮断された地下空間で、自分たちが一瞬にして外界から完全に切り離された孤島……いや、キルゾーンに閉じ込められたという現実。これから訪れるであろう、姿なき暴威を前に、彼らはただ暗闇の中で、首を締め付けられるような絶望に呑み込まれていくしかなかった。
自業自得である。
・ヴァルファウ
公式にも存在するプラント製の大型輸送機であり連合も似たようなものを保有。オーブは本来保有していない装備ではあるがラメント議長時代(任期的に今は引退済み)に数機融通され、少数ながらオーブ国内でもライセンス生産を行なっている。今回の任務は極秘作戦であり、表立ってミレニアムを扱えないこともあって使用された。なおカナード達は別任務中、本編で描写するかどうかは迷っている、色々と際どいネタですがその辺りもまた触れるかも。
・作戦参加人員
アグネス、シン、ババ、そしてユウナの四人がメインで後は歩兵隊やヴァルファウの搭乗員など。今回はプロトタイプウィンダムⅡの対処のために、強奪事件を察知した瞬間。いま動ける最低限の人員だけを詰め込んでいる為にある意味では運がなかったものの、それでも当時のウィンダム15機程度なら余裕で撃破可能な猛者ばかりな為オーバキル気味。
ババは基本的にはこんな性格だったりしますしプライベートではハイネと仲良いものの、基本ユウナの前では暴走していたりするので素の会話が成立したことにシンは少し驚いていたり。基本的には部下達に指導もできる隊長ポジなのですが全部ユウナが悪いんです。とはいえ今回の作戦は二カ国に関わるMSの存在がデリケートな上に、パイロットはともかくザフト所属のコノエ艦長のような人間を責任者にするのも問題があり。結果的に『ナチュラル』で『オーブ関係者』で『政治的問題に理解のある』ユウナが休暇返上する羽目に。なおユウナはオウガを持ち込むぞだの、マスドライバーで打ち上げてからオウガで基地を再降下からの蹂躙だのとかなりブチギレていたのは内緒。後々大西洋連邦からギリギリまで謝礼をむしり取ってやると内心キレています。
・強奪事件
ユウナ達は最新鋭のMSを奪われて(なにより休暇を潰されたこと)に激怒していますが、実際にはテロリストは別にこの機体を特別欲しかった訳でもなかったり。仮に本気でウィンダムⅡを強奪しようとすれば準備段階で痕跡を残してしまい失敗してたでしょうし『偶然』ウィンダムⅡ「も」強奪できたという結果が今回の惨状に。つまり時系列的には強奪された瞬間即座にオーブから今動ける人員だけ連れて大西洋連邦に急行。その結果今回の奇襲につながりました。
次回はいよいよ本格的なヤツカハギとコングの実戦タイム。そして特殊なムラサメ改には何が特別なのやら……。
大西洋連邦の選挙結果は?展開によって今後のお話に影響が出ますが、あくまで大西洋連邦国民の一人として投票して頂けると幸いです。
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【フォスター政権+親オーブ派】
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【モンロー主義派】
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【反オーブ+反プラント派】