破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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自作+予め完成してるのでサクサクかけますね。


第二話 スパロボ世界じゃなかったよ畜生!

 

 

 

 

 

「いやー凄いねセイラン!どこもウチの息がかかってる連中ばっかじゃないか!」

 

 

 俺は端末のモニターに映し出される、オーブ政府の組織図を眺めて自嘲していた。

 

 

 

 

 画面上の「セイラン」の文字は、今やオーブの全権を象徴している。だが、それは高潔な支持の上に築かれたものでは断じてない。

 

 

 

「……本当に、徹底的に掃除したんだな、父上は」

 

 

 

 セイラン家の掌握手順は、吐き気がするほど効率的で陰湿だった。ウズミ様が亡くなり、後ろ盾を失ったカガリが代表に就任した直後、セイラン家は「国家再生」を掲げて行政の要職にいた旧アスハ派を片っ端から引きずり下ろした。だが、本来なら五大氏族が互いを監視し合うオーブにおいて、これほど容易に権力が集中することはないはずだった。

 

 

 

 それが可能になった最大の理由は、前大戦の終盤、オーブが選んだ「誇り高き自壊」にある。

 

 

 

「……五大氏族。盾となるはずの家々が、あの日、文字通り『自爆』してしまったからな」

 

 

 

 カガリのアスハ家。

 

 

 宇宙(アメノミハシラ)へ独立を宣言したロンド・ミナ・サハク率いるサハク家。

 

 

 そして、マシマ家、キオウ家、トキノ家。

 

 

 

 前大戦のオーブ防衛戦。アークエンジェルとクサナギを宇宙へ逃がした後、ウズミ様をはじめとする当時の首長たちは、地球連合にオーブの技術も魂も渡さないために、カグヤのマスドライバーと共に自爆という道を選んだ。

 

 

 国を想う至高の精神。だが、その結果、オーブは「導き手」を一度にすべて失ったのだ。

 

 

 カガリ一人が背負うには、その喪失はあまりにも大きく、重すぎた。

 

 

 さらに追い打ちをかけたのが、残った氏族の現状だ。

 

 

 まず、最大のライバルであったはずのサハク家。ロンド・ギナ・サハクが野心に走って戦死し、跡を継いだミナはあろうことか「アメノミハシラ」でオーブ本国からの独立を宣言してしまった。実質的な除名だ。これで国内の最大勢力が消えた。

 

 

 

 外交を司るキオウ家は、数年前の紛争で当主が急死。さらに現在は、外務省の外郭団体であるODR(国際災害救助隊)としての活動に全リソースを割いており、国内の権力争いからは事実上フェードアウトしている。

 

 

 

 トキノ家やマシマ家の現当主たちも、父上(ウナト)の巧妙な懐柔工作と、連合とのパイプという「毒飴」によって、今や牙を抜かれた飾り物と化していた。

 

 

 

 

「サハクは宇宙に引きこもり、キオウは人道支援の沼。アスハは孤立し、他は父上の犬か。……これじゃあ、不純物が入り放題なわけだ」

 

 

 

 あの日、命を懸けてオーブを守ろうとした先代首長たちが、今のこの惨状を見たらどう思うだろうか。

 

 

 

 自分たちの死が、結果としてセイラン家のような俗物を増長させ、国民を切り売りする売国奴の温床を作ってしまった。この皮肉に、俺は胃の奥が焼けるような感覚を覚えた。

 

 

 

 

 

 だが、単に他家が消えただけで、これほど完璧に国を私物化できるものだろうか。

 

 

 俺はさらに深い階層のログを漁り、その「仕上げ」の手口を知って、さらに顔を歪めた。

 

 

 

 父上――ウナト・エマ・セイランがやったことは、単なる政治工作ではなかった。それは、一人の少女に対する執拗な精神的虐待と、民衆の不安を煽る高度なプロパガンダの合わせ技だったのだ。

 

 

 

 

「……そりゃ、こんなのアニメに描けない訳だ」

 

 

 

 

 第一に、カガリへの徹底した「無能感」の植え付けだ。

 

 

 

 先代首長たちが自決した後、何もわからないまま代表の座に就いた彼女に対し、父上は『親代わり』の顔をして近づいた。そして、彼女が何かを決断しようとするたびに「それでは国が滅びる」「ウズミ様ならそうはなさらなかった」と、優しく、しかし確実に彼女の自信を削り取っていった。

 

 

 

 そうして精神的に追い詰め、自分たちセイラン家を頼らざるを得ない状況へと誘導した。カガリがオーブの理想を叫べば叫ぶほど、現実の政治実務から彼女を遠ざけ、孤立させる。今のカガリは、セイランという檻の中に閉じ込められた鳥に過ぎない。

 

 

 

 

 さらに、カガリへの追い打ちがエグい。

 

 

 

 

 彼女が代表として必死になればなるほど、周囲の官僚や国民は「……やはりウズミ様のようにはいかないな」と落胆の溜息を漏らす。その失望の隙間に、父上は「カガリ様を支えられるのは、経験豊かな我らセイランだけだ」と、毒の混じった救いの手を差し伸べ、着実に思想を誘導していった。

 

 

 

 

 おそらく、その背後にはロゴスの後押しもあったのだろう。

 

 

 

 

 たった十代の、まだ幼さの残る少女をここまで徹底的に精神的に追い詰め、国を奪い、操り人形にする。

 

 

 

 

 そして何より――。

 

 

 

 

 

「……待てよ。俺、これから何をすることになってる?」

 

 

 

 ふと、原作の記憶が脳裏をよぎる。

 

 

 

 

 政略結婚を強行し、あろうことかアスラン・ザラの目の前で彼女の髪を執拗に触り、セクハラ同然の態度で「僕のカガリ」を全世界に見せつける。……あの、反吐が出るほど傲慢で、鳥肌が立つほど気持ち悪い「ユウナ・ロマ・セイラン」の醜態。

 

 

 

 

「……何やってんだよ、憑依前の俺ぇぇぇぇッ!!」

 

 

 

 

 

 俺は思わず自分の頭を抱え、床にのたうち回りたくなった。

 

 

 

 

 女性へのリスペクトも欠片もない、最低の所業だ。あんなことをしていれば、キラに強奪されずとも、いつかアスランに首を撥ねられても文句は言えない。

 

 

 

 

 今からでもカガリやアスランに通信を入れて、謝罪と警告をすれば済む話か?

 

 

 

 

 いや、無理だ。

 

 

 

 

 今のユウナが急に「君の味方だ」なんて言ったところで、「また何か企んでいるのか」と警戒されるのが関の山だ。むしろ、アスランに至っては「ユウナ・ロマ・セイラン、やはり貴方を信用できない」と、さらに敵意を強める未来しか見えない。

 

 

 

 

「……詰んでる。完全に、盤面が真っ黒じゃないか……!」

 

 

 

 味方はおらず、敵には殺意を持たれ、外にはジェノサイドの危機が迫っている。

 

 

 

 カガリ達はすでにプラントへ向かい、俺という不純物を置き去りにしたまま、物語の歯車は無慈悲に回り始めている。

 

 

 

「……まずは、これだ。何が何でも、カガリとの婚約は100%白紙に戻す」

 

 

 

 

 これだけは譲れない。俺は筋金入りのアスカガ派なんだ。前世の記憶がある俺が、二人の仲を引き裂くような真似を万に一つもしたくない。

 

 

 

 それに何より、アスラン・ザラという「最強の騎士」に、寝首を掻かれるリスクなんて負いたくない。一瞬で物理的にダルマにされる未来が目に見えている。

 

 

 

 だが、問題はどうやってそれを実現するかだ。

 

 

 

 

 今さら父上のところへ行って、「やっぱり愛がないから結婚したくないでーす!」なんて言ったところで、あの狸親父が納得するはずがない。

 

 

 

「『何を言っているんだいユウナ? 愛? そんなものは後で愛人でも作って補えばいい。なんなら今からお前の好みの女を用意しようか?』……とか、笑顔で言い出しそうなんだよな、あのクソ親父は」

 

 

 

 

 セイラン家の息がかかった「デカパイ美人の愛人」をあてがわれ、抱き込まれて終わりだろう。父上にとって、この婚姻はオーブを完全に私物化するための、ただの「手続き」に過ぎないのだから。

 

 

 つまり、カガリを守り、俺が生き残るためには、元凶である父上――ウナト・エマ・セイランをどうにかして表舞台から引きずり下ろすしかない。

 

 

 

「……親殺し、か。ハードモードすぎるだろ」

 

 

 

 実の親を政治的に、あるいは社会的に抹殺する。

 

 

 

 この書庫にある売国の証拠をバラまくか? いや、そんなことをすればセイラン家の一員である俺も連座して、国民に石を投げられて処刑されるのがオチだ。

 

 

 

 自らの手を汚さず、かつセイランの権力を「俺だけ」が継承し、それをオーブのために正しく還元する。そんな綱渡りのような芸当、あの無能なユウナのスペックで可能なのか?

 

 

 

「だが……まだ、死んでいない志がある」

 

 

 

 

 俺は端末に表示された、オーブ国防軍の名簿を凝視した。

 

 

 

 

 上層部は父上の毒飴に懐柔された俗物ばかりだが、現場の指揮官クラスには、まだ死んでいない「オーブの魂」が残っている。

 

 

 

「トダカ一佐……」

 

 

 

 真っ先に脳裏に浮かんだのは、あの『海の男』だ。

 

 

 原作での彼は、あまりにも悲劇的だった。オーブを、カガリを想いながらも、無能なユウナ(憑依前の俺だよ畜生!)が結んだ軍事同盟のせいで、不本意な戦いへと駆り出された。

 

 

 

 そして最後は、自分が戦火から救ったはずの少年――シン・アスカの手によって、旗艦タケミカヅチと共に海に沈んだ。

 

 

 

「……あんな悲劇、二度と繰り返させてたまるか」

 

 

 

 

 

 もし戦後、シンが「自分を逃がしてくれた恩人を、自分の手で殺した」なんて事実を知れば、あいつは発狂どころじゃ済まないぞ。あんなに真っ直ぐな奴に、そんな業を背負わせていいはずがない。

 

 

 

 幸い、証拠は十分すぎるほど揃っている。この書庫にある売国工作の数々、連合との不適切な癒着。これらを突きつければ、正義感の強いトダカ一佐なら、必ず俺の話を聞いてくれるはずだ。

 

 

 

 

 父上は、俺のことを「自分の言いなりになる無能な人形」だと信じ切っている。実の息子が裏切るなんて、これっぽっちも考えていないだろう。だからこそ、今なら警戒は甘い。

 

 

 

「だが、一人じゃ足りない。まずは味方を、物理的な『力』を少しでも増やすべきだ」

 

 

 

 トダカ一佐は、オーブ国防海軍の要だ。後に旗艦タケミカヅチを任されるほどの信頼と実力を備えている。

 

 

 

 彼を、そして彼が指揮する現場の兵士たちを味方に引き入れることができれば、最悪、父上に対する物理的なクーデターを起こしたとしても、こちらが圧倒的に優位に立てる。

 

 

 

「……やるぞ。売国奴の息子が、自ら実の親を告発しに来たとなれば、一佐も驚くだろうがな」

 

 

 

 

 俺は震える脚に力を込め、冷たい書庫を後にした。

 

 

 まずは「無能な放蕩息子」の仮面を被り、適当な理由をつけて外出の許可を取り付けなければならない。

 

 

 

「ねえ、父上。僕、次の公務の前に少し軍の新しい船……ほら、『タケミカヅチ』だっけ? あれの見学に行きたいな。僕が将来治める国の軍隊なんだし、景気づけに挨拶くらいしておかないとさ!」

 

 

 鼻にかかったような、いかにも甘やかされたボンボンらしい口調。鏡の前で何度も練習したその演技で、俺はウナトの許可を(「おやおや、珍しくやる気だね」という呆れ顔と共に)せしめ、トダカ一佐とのコンタクト予約を無理やりねじ込んだ。

 

 

 これで、最初の「フラグ折り」への切符は手に入れた。

                 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その日の夜。

 

 

 自室のベッドに潜り込んだ俺は、別の意味で必死だった。

 

 

 

「……いない。やっぱり、どこにもいないッ!」

 

 

 

 俺は手元の端末を、穴が開くほど見つめ続けていた。

 

 

 

 もし、ここがスパロボの世界なら、どこかに「甲児くん」とか「竜馬さん」とか、あるいは「木連」とか「ベガ星連合軍」とかのニュースが転がっているはずだ。

 

 

 

 

 もしそうなら、マジンガーやゲッターが全部解決してくれるかもしれない。あるいはAGEのフリットさんが、どこかでヴェイガンと戦っているニュースがあるかもしれない……!

 

 

 だが、調べれば調べるほど、現実は無慈悲だった。

 

 

 どこをどう探しても、ヒットするのは「プラントと連合の緊張状態」と「オーブの孤立」ばかり。どこにも光子力もゲッター線も、火星から攻めてくる独特の音がするMSの話も出てこない。

 

 

「……純度100%の、コズミック・イラかよ…フリットさんもミスマル提督もマネキン大佐もマジでいないのか……」

 

 

 結局、朝方まで「ワンチャン、マジンガーZの記念館とかないかな」と血眼で検索し続けた俺は、一睡もできないまま、目の下にクマを作って最新鋭の旗艦タケミカヅチへと向かう羽目になるのであった。

 

 

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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