破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
今回の投稿はここまで。次回は明日朝7時からです!
アプリリウス市、プラント最高評議会議長室。
柔らかな光が差し込む静謐な空間で、ギルバート・デュランダルは手元の端末に映し出されたタリアからの報告書を静かに読み終えた。
「……ほう。大気圏内飛行用ユニットに、サブフライトシステム、か」
その声は穏やかだったが、隣に控える秘書官は、議長の双眸に冷徹な知性が光るのを見逃さなかった。
「オーブの代表代行……ユウナ・ロマ・セイラン。前大戦の遺物とはいえ、これだけの装備を即座に供与する決断力。かつての彼からは想像もつかない『変貌』だね」
デュランダルは椅子に深く腰掛け、組んだ指の上に顎を乗せた。彼にとって、オーブは「中立」という名の不確定要素でしかなかった。カガリ・ユラ・アスハという理想主義の少女を抱え、連合とプラントの間で揺れ動く、扱いやすい駒――。
だが、タリアの報告にあるユウナの挙動は、その認識を根底から覆すものだ。
(模擬戦でシン・アスカの能力を最大限に引き出し、さらにその『不殺』の傾向を肯定して、ミネルバに恩を売る。……まるで、こちらが用意したシナリオを書き換えているかのようだ)
デュランダルは、シンの戦績データを開いた。九機のムラサメを相手に、カメラアイのみを破壊しての完勝。それはシンが「オーブという居場所」に深く根ざしてしまった証左でもあった。
「シン君。君は復讐の炎を糧に、私の剣となるはずだったのだがね……。今の君は、オーブという名の『優しさ』に毒されているようだ」
デュランダルは、小さくため息をついた。
シン・アスカが「オーブの息子」として完成されてしまえば、彼をプラントの、ひいては自分のデスティニープランの旗頭として利用することが難しくなる。
「……それもこれも、すべてはユウナ・ロマ・セイラン。君が始めたゲームなのかい?」
彼は壁に投影された地球のホログラムを見つめた。オーブの沿岸部で観測された、先日使用したアグニを連射し続ける異常なエネルギー反応。そして、重力を無視するかのような水中機動を可能にする「何か」の開発。
「彼が握っているのは、ただの政治権力ではない。……『未来の形』そのものだ」
デュランダルは、静かに通信回線を開いた。
「レイ。……聞こえるか。シンを注視し続けなさい。そして、オーブの代表代行が彼に何を吹き込んだのか、一文字も漏らさず報告するんだ」
通信を切り、議長は独りごちた。
「ユウナ君。君がオーブを『最強のハリネズミ』にしようというのなら……私はその針を、内側から折る方法を考えなくてはならないな」
プラントの賢者が、オーブの「偽物(バケモノ)」を、明確に排除すべき対象、あるいは奪うべき資産として認識した瞬間だった。
深い霧に包まれたアイスランド。その切り立った崖の上に建つ古城の一室で、世界の運命を左右する「ロゴス」の会合が開かれていた。
円卓を囲むメンバーたちの顔は、一様に険しい。手元の端末に映し出されているのは、オーブが極秘裏に、しかし着々と進めている異常な軍拡の報告書だ。
「……何なのだ、このエネルギー反応は。オーブの沿岸部で観測された出力は、陽電子砲数門分に匹敵する。一国の防衛レベルを逸脱しているぞ!」
「それに、あの『フォビドゥンヴォーテクス』の機密が漏洩している疑いがある。オーブの技術者が水中戦術のシミュレーションを書き換えているとの情報も入っているんだ。これは看過できん!」
焦燥を剥き出しにするメンバーたち。その中心で、ロード・ジブリールは優雅にワイングラスを傾け、つまらなそうに鼻で笑った。
「落ち着きなさい、諸君。たかだか一地域の、資源も持たぬ小国が何をしようと、我ら連合の物量の前では些事(さじ)に過ぎない。吠える小型犬を恐れる必要があるかね?」
円卓を囲むメンバーたちの脳裏には、嫌応なしに一人の男の顔が浮かんでいた。
先代の盟主、ムルタ・アズラエル。ユウナであれば我らの盟主王やアズにゃんと呼んでいたであろう存在。
(……アズラエル氏なら、今ごろとっくにオーブを焼き払っていただろう)
メンバーの一人が、膝の上で震える手を隠した。
あいつは狂っていた。コーディネイターを「理屈の通じぬ異物」として心底忌み嫌い、核を撃つことにも、条約を破ることにも、一秒の躊躇(ためら)いもなかった。だが、その狂気ゆえに、ロゴスの利益を阻む「芽」を見つけ出す嗅覚だけは神がかっていたのだ。
『オーブの沿岸部に不穏な動きがある』と分かった瞬間、あいつなら間違いなく、全戦力を投入してでも叩き潰していたはずだ。それこそ核兵器を集中運用して無差別で焼き尽くす事すらも。今のジブリールのような、余裕ぶった「静観」など選ばずに。
「ジブリール、君は『小型犬』と言うが……その犬が、いつの間にか狼の牙を持っていたらどうするつもりだ?」
古参のメンバーが、絞り出すような声で言った。
「アズラエル氏は確かに過激すぎた。……だが、だからこそ、我々に『不透明な恐怖』を感じさせる時間は与えなかった。今のオーブには、得体の知れない『何か』が育っている。ユウナ・ロマ・セイラン……あの若造が実権を握ってから、あそこはもはや我々の知るオーブではない」
ジブリールのワイングラスが、わずかに揺れた。アズラエルという名を出されることを、彼は何よりも嫌う。
「……死んだ男の影に怯えるとは、諸君も焼きが回ったものだな」
ジブリールは冷ややかに言い捨てたが、その瞳の奥には苛立ちの火が灯っていた。彼にとっても、オーブの変貌は計算外だった。ただの「カネと保身にまみれた貴族の息子」だと思っていたユウナが、今やロゴスの喉元に突き立てられた、正体不明の「楔」になりつつある。
誰が内通者なんだ?誰があの男に情報を流した?ジブリールは苛立ちを隠すようにワイングラスを置くと、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。
「諸君、オーブなどという小石に構っている暇はない。……いよいよ『フォックストロット・ノベンバー』を発動させる。これこそが我々の、そして人類の真の再編だ」
その言葉に、円卓のメンバーたちは息を呑んだ。
フォックストロット・ノベンバー。それは、ユニウスセブン落下の混乱に乗じ、プラントへ宣戦布告。と同時に、ロゴスが飼い慣らす地球連合軍の核攻撃部隊を秘密裏に派遣し、コーディネイターをこの宇宙から一兵残らず、一市民たりとも逃さず「撲滅」する絶滅作戦である。
「ユニウスセブンの破片を落としたのはコーディネイターどもだという大義名分は、既にメディアが広めている。……世界が怒りに燃える中、我々は神の火をもって報復を遂行するのだ」
「しかし、ジブリール、オーブがその核攻撃を……」
「オーブなどというメラネシアの小島の群れに、プラントへの核の雨を止める術があると思うかね? 我々の物量、我々の科学、そして我々の『正義』。それら全てを注ぎ込んだこの作戦が始まれば、全ては灰に帰す」
ジブリールは、窓の外に広がるアイスランドの冷たい海を見つめた。
その視線の先にあるのは、もはやプラントだけではない。核の閃光で世界を白紙に戻し、ロゴスという唯一絶対の秩序で再構築する狂気の地図だ。
「……まずはプラントを消す。オーブの『楔』とやらは、その後の余興で引き抜いてやればいい」
死の商人たちの狂乱。世界を白紙に戻そうとする「撲滅」のカウントダウンが、静かに、しかし確実に始まった。
その頃、オーブの一室。ユウナ・ロマ・セイランは、誰もいない深夜の執務室で、自身の無力感と戦っていた。
(……わかっている。俺がどれだけ兵器を揃えようが、政治で立ち回ろうが、宇宙で放たれる核をこの手で直接止めることはできない。俺はパイロットじゃないんだ)
胸を焼くような焦燥感。だが、彼にはまだ「切っていないカード」があった。
ユウナは密かに用意させていた暗号通信回線を開く。相手は、この世界の表舞台からは消えたはずの、強固な牙を持つ男。
「……やっと繋がったか。この秘匿回線を探し当てるだけで、どれだけの裏金と時間を費やしたことか」
俺は、誰もいない深夜の執務室でモニターを見つめた。そこに映し出されたのは、無造作に伸ばした髪と、獲物を射抜くような鋭い眼光を持つ男。地球連合軍の特務機関が「スーパーコーディネイター」を目指し、その過程で「失敗作」として切り捨てた男。
『こちら傭兵部隊X……お前が俺に用があるのか?ユウナ・ロマ・セイラン』
カナード・パルス。
キラ・ヤマトと同じ遺伝子を持ちながら、憎悪の中で育ち、一度はすべてを失いかけた亡霊だ。
・ 陽電子砲数門分
色々と試してたりしますし当然プラントも連合も把握してます。流石にこのレベルの装備がデフォになることはないんじゃないかな多分…
・アズにゃんなら上手くやれたのに
エクリプスの影響で環境保護団体が前進のブルーコスモスの皆様は必要なら普通に地球上でも核兵器を使える連中だと判明しましたとさ。アズラエルは良くも悪くもロゴスのジジイ達からすると狂人ですがそれでもバイタリティと判断の速さは評価されていました。
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
-
通常の優柔不断アスラン
-
報連相の化身と化したアスラン