破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 カナードがキラと血縁関係かどうかは諸説ありますが、今作では一応DNA的には血縁関係である事前提で展開させて頂きます。


第二十三話 カナード・パルス。仕事の時間だ。

 

 

 

 カナード・パルス。元地球連合軍ユーラシア連邦所属の「機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY」の敵キャラであり。キラ・ヤマトと同じくコロニー・メンデルで生を受けたスーパーコーディネイターの失敗作の烙印を押された男。

 

 

 

 本来のシナリオであれば、彼はプレア・レヴェリーとの死闘を経て、静かな余生(あるいは放浪)を送っているはずの時期だが……。

 

 

 

「……何の用だ。オーブの若き独裁者様が、俺のような傭兵に」

 

 

 

 カナードの声は、氷のように冷たい。画面越しでも伝わってくるそのプレッシャーに、俺の背中を嫌な汗が伝う。

 

 

 

(こいつが、カナード・パルス。……資料通り、いや、それ以上に危うい。ハイペリオンを駆り、単機で戦局を覆す技量。そして、自分が『完成品(キラ)』に劣っているという強烈な劣等感と、それを裏返したような傲慢なまでの自尊心)

 

 

 俺は、震えそうになる指先を机の下で組み、できるだけ「食えない政治家」の顔を作った。

 

 

 

 

「独裁者なんて人聞きが悪いな。俺はただの、心配性の代表代行だよ。カナード、君という個人の……いや、君の持つ『力』に、商談を持ちかけに来たんだ」

 

 

 

「商談だと? 国家の重鎮が、わざわざ公にできないルートを使ってまで頼むことか。……内容によっては、この場で通信を切らせてもらうぞ」

 

 

 

 不審げに目を細めるカナード。当然だ。オーブの最高権力者が、わざわざ連合出身の、それも曰く付きの男に直接コンタクトを取るなど、罠以外の何物でもない。

 

 

 

「罠じゃないさ。もっとも、君のような男にそう思わせるだけでも、今の俺の立場がどれだけ『汚いもの』かを証明しているようなものだがね」

 

 

 

 俺はあえて皮肉げに笑い、本題を切り出した。

 

 

 

「単刀直入に言おう。俺は君のことをよく知っている。君がどこで生まれ、何を背負わされ、そして何を求めて戦ってきたか。……例えば、そう。『コロニー・メンデル』のこととかな」

 

 

 

 

 その単語を口にした瞬間、モニター越しの空気が一変した。

 

 

 カナードの瞳に宿る色が、不信から、実体を持つかのような刺すような殺意へと変わる。

 

 

 

 

「……貴様、どこでその名を。今の言葉、生きて聞き流せるとは思うなよ…!」

 

 

 

 通信越しだというのに、肌がピリつくような感覚。カナード・パルスは、プレアとの死闘を経て自分という存在を肯定し、今は部下たちと共に歩む道を見つけている。

 

 

 

 だが、だからといって自分のルーツ――「最高傑作」を生み出すための踏み台にされた過去や、自分を「失敗作」と断じた者たちを許したわけではない。

 

 

 

 場合によってはガンダムXのフロスト兄弟やクルーゼの様に世界に復讐する道を選び兼ねなかった程には彼の心は荒んでいたのだ。

 

 

 

「誤解しないでくれ。君を侮辱するつもりも、過去の亡霊として扱うつもりもない。むしろ逆だ」

 

 

 

 俺は一歩も引かずに、カナードを、一人の戦士として見据えた。

 

 

 

「君はプレア・レヴェリーとの戦いで、自分を、そして自分を信じる部下たちとの居場所を守り抜いた。それは『失敗』などという安っぽい言葉で片付けられるものじゃない。今の君は、誰の模倣でもない、カナード・パルスという唯一無二の存在だ」

 

 

 

 

 カナードの殺意が、困惑に似た沈黙へと変わる。そりゃそうだろう。目の前の男がプレアの名前を知っていたのだから。

 

 

 

「俺が求めているのは、そんな君の『強さ』そのものだ。連合やザフト、そしてロゴスといった既存の枠組みが、最悪の手段で世界を塗りつぶそうとしている。今のオーブには、表立って動けない俺たちの代わりに、その理不尽をぶち壊すための『独立した剣』が必要なんだ」

 

 

 

「ロゴス、か…余程深い所まで知ってるようだな?」

 

 

 

 

 カナードは鼻で笑った。だが、先ほどまでの刺すような鋭さは消えている。というか試しに口にしたロゴスの名前を知ってる辺り、裏で相当な修羅場を潜り抜けてきたんだろうか?

 

 

 

「……ふん。オーブの代表代行が、傭兵に説教か。俺を失敗作扱いしないのは賢明な判断だが、それでもあんたの指図を受けるつもりはないぞ」

 

 

 

「指図じゃない。対等な契約だ。君のハイペリオンを、君の部下たちを、そして君の信じる道を。それらすべてを支えるためのバックアップをオーブが提供する。……その対価として、来るべき『世界の終わり』を、君のやり方で阻止してほしいんだ」

 

 

 

 俺は、デスクの下で握りしめていた拳をそっと解いた。プレアによって救われ、自分を肯定できたカナードだからこそ、この「誇り」を重視する交渉は響くはずだ。

 

 

 

 

「……いいだろう。あんたがどれだけのものを用意しているか、見せてもらおうか。ユウナ・ロマ・セイラン。あんたの言う『未来』に、俺たちを乗せる価値があるかどうかをな」

 

 

 

 

 カナードの不敵な笑み。ある意味オーブにとっての最強の盾であるシンに続き、俺はついに「何物にも縛られない最強の矛」との接触に成功した。

 

 

 

 

「……フン。交渉の内容を聞く前に、一つ訂正させておけ」

 

 

 

 

 カナードは不敵な笑みを深くし、背後のハンガーにある巨影を親指で示した。

 

 

 

「俺の機体は、もうあの借り物の『ハイペリオン』じゃない。今はこいつ、プレアから受け継いだ『ドレッドノートイータ』だ。……あんたの情報、少し古いんじゃないか? オーブのボンボン」

 

 

 

「……えっ? あっ……」

 

 

 

 俺は間の抜けた声を出し、思考が数秒間フリーズした。ドレッドノートイータ……恐らく、Xアストレイのバックパックを換装し、さらにカナード専用に調整されたドレッドノート!

 

 

 

 

(そ、そうだったぁぁぁ!! そうだよ、プレアとの決着の後、アイツはプレアの意志と一緒にあの機体を譲り受けてたんだ! Gジェネで確か見た気がする!!!スパロボWでもラストにプレアから貰って愛機にしてただろ俺のバカ!!)

 

 

 

 

 内心で冷や汗が滝のように流れる。知識があるからといって、完全に「現在の時間軸」のカナードの状態を把握しきれていなかった。代表代行としての威厳が、ガラガラと音を立てて崩れていくのを感じる。

 

 

 

 

「……あ、ああ。失礼した。ドレッドノートイータ、だな。プレア・レヴェリーの遺志を継いだ、君の今の象徴(シンボル)……もちろん承知しているとも」

 

 

 

 

 

 めっちゃ震え声だけどな!

 

 

 

 

 

「……嘘をつけ。今、盛大に動揺していただろうが」

 

 

 

 カナードの呆れたような視線が刺さる。だが、彼にとって「プレアから機体を譲り受けた」という事実を俺が(後付けとはいえ)肯定したことは、悪い気はしなかったようだ。

 

 

 

「……まあいい。その辺にしておけよ、ボンボン」

 

 

 

 カナードは呆れたように肩をすくめ、俺の慌てぶりを鼻で笑った。どうやら俺の呼び名はボンボンで固定されたらしい。だが、その瞳の奥にあった「外敵」を警戒するような鋭い棘は、少しだけ丸くなっている。

 

 

 プレアとの絆である機体を認められたことが、案外効いたらしい。

 

 

 

 

「いいか。君たち傭兵部隊の拠点として、オーブの秘密ドックの一つを開放する。衣食住のケアはもちろん、武器弾薬、プロペラントの提供もすべてオーブ政府……いや、俺個人の資産で賄おう。全額無料だ」

 

 

 

「随分と羽振りがいいな。俺たちの胃袋と弾倉を掴んで、逃げられなくするつもりか?」

 

 

 

「それだけじゃない。君の部下たちのために、最新鋭の可変MS『ムラサメ』を6機、無償で供与する。さらに母艦のオルテュギアも、オーブの最新技術で近代化改装を施そう。装甲の換装、対空火器の増設、それから――」

 

 

 

 

 

「おい、待て」

 

 

 

 

 次々と条件をまくし立てる俺を、カナードが制した。

 

 

 

「……提供されるもののリストはもういい。それだけ盛るってことは、それ相応の『地獄』へ俺たちを放り込むつもりなんだろ? ボンボン。甘い話の前に、いい加減本題……用件を言え。俺達が何をブチ壊せばいいのかをな」

 

 

 

 カナードの視線が、再び戦士のそれに変わる。与えられる恩恵の巨大さが、そのまま直面する危機の巨大さを物語っていることを、彼は本能で察していた。

 

 

 

 

 俺は深く、重い溜息をつき、手元の端末に一枚の地図を投影した。

 

 

 

「……ブレイク・ザ・ワールドの傷跡も癒えないうちに、月面のアルザッヘル基地で動きがあった。ブルーコスモスの盟主、ロード・ジブリールたちが何をしでかすか、君なら想像がつくだろう?」

 

 

 

「……フン、あの卑屈な連中の考えそうなことだ。報復という名の『大掃除』か」

 

 

 

 

「その通りだ。連合は再びプラントに向けて核攻撃部隊を放つ。……プラント側も対抗策は持っているだろうが、念には念を入れさせてもらうよ。何より、オーブが投資する『傭兵部隊X』の実力がどれほどのものか、この目で確かめたい」

 

 

 

俺は地図上の一点を指し示した。

 

 

 

「アガメムノン級の旗艦『ネタニヤフ』。核攻撃部隊の要だ。カナード、君の初仕事はこいつを轟沈させること。……やれるか?」

 

 

 

「連合の野郎どもが……またあんな代物を持ち出すのか」

 

 

 

 カナードの顔から余裕が消え、深い嫌悪感が剥き出しになった。

 

 

 かつて連合という組織に弄ばれ、捨てられた彼にとって、その組織が再び「核」という短絡的な絶滅兵器に頼ることは、吐き気を催すほどの侮辱に等しい。

 

 

 

「いいだろう、ボンボン。その依頼、引き受けてやる。核の火がどれほど熱いか、あいつらに教えてやるのも悪くない……。俺の、そしてプレアの力でな」

 

 

 

 カナードの瞳に、宿命の炎が灯る。

 

 

 

 彼にとってこれは単なるビジネスではない。自分を「失敗作」と呼んだ過去への決別であり、自分という存在を肯定してくれた者たちのための戦いだ。

 

 

 

 

「……期待しているよ、カナード。君のドレッドノートイータが、宇宙で一番眩しく輝く瞬間をな」

 

 

 

 俺はそう締めくくろうとしたが、カナードが通信を切る前に、追加のデータを転送した。

 

 

 

「ああ、待て。追加で装備はこっちで用意した。……君のドレッドノートを危険に晒すのは得策じゃない。今回はこれを使え」

 

 

 

 モニターに表示されたのは、数機のMSと巨大な兵装の図面だ。

 

 

 

「偽装用のダガーLだ。オーブの現行機じゃない。ジャンク屋から買い取って、秘かに修復・強化した個体だ。これなら連合の残骸に紛れても出所はバレない。万が一の時は部下達をこれに乗せて護衛機として扱ってくれ……そして、これが真打ちだ」

 

 

 

 確か部下達はメビウスかストライクダガーにまだ乗り続けてるはず。それに比べればマシだろうと提示した上で、更に俺が提示したデータに、カナードが目を見開く。

 

 

 

 

「……こいつは、ローエングリンランチャーか。陽電子砲を、MS単機で扱わせるつもりか?」

 

 

 

 

「ああ。この任務のためだけに、モルゲンレーテの奥底から引っ張り出してきた貴重な一品だ。ドレッドノートの出力を回せば、最大出力での狙撃が可能になる。……一撃でネタニヤフを沈め、核ミサイルが誘爆する前に、高速でその場を離脱してくれ」

 

 

 

 陽電子砲。それは一国の戦艦、あるいは要塞クラスが装備する決戦兵器だ。それを傭兵の手に渡し、隠密狙撃に使わせる。俺の提案の「えげつなさ」に、カナードは一瞬呆然とした後、愉快そうに喉を鳴らした。

 

 

 

 

「……ハッ! 隠密で陽電子砲をぶっ放せだと? ボンボン、あんた、顔に似合わず相当に性格が歪んでるな……少しは見直した」

 

 

 

 

「褒め言葉として受け取っておく。撤退は急いでくれ。君のような貴重な戦力を、あんな場所で失いたくないからな」

 

 

 

 

 カナードの口角が吊り上がる。プレアから受け継いだ力で、自分を「失敗作」と断じたロゴスの象徴を、かつて大西洋連邦で産声をあげ、ムルタ・アズラエルを屠った大天使の代名詞でもある最凶の兵器(ローエングリン)で焼き払う。これ以上の皮肉はない。

 

 

 

 

「了解……せいぜい丁寧に扱ってやるよ」

 

 

 

 

 今度こそ通信が切れた。真っ暗な執務室で、俺は椅子の背もたれに深く沈み込んだ。

 

 

 

 

(よし……これで宇宙の盤面は整った。保険だが予めカナードがネタニヤフを沈めれば、歴史は大きく変わる。核の炎でプラントが焼かれる悲劇は、これで回避できるはずだ……)

 

 

 

 だが、安堵感はない。

 

 

 

 俺が渡したその「力」が、この先どれだけの火種を生むのか。それを管理しきれるのか。

 

 

 

「……さて、休んでる暇はないな。エリカさんにローエングリンの最終調整と、カナードへの秘密輸送の指示を出さないと……」

 

 

 

 

 俺は重い体を引きずりながら、再びキーボードを叩き始めた。

 

 

 

 

(旗艦ネタニヤフだけじゃない。あの艦隊には、他にも大量の核を搭載したウィンダムやダガーLがひしめいているんだ。本来なら、その全てがプラントの命を刈り取る死神になるはずの……)

 

 

 

 

 その全てを一度に消し去る術は、今の俺にはない。だが。

 

 

 

 

(……だが、旗艦さえ、あの『ネタニヤフ』さえ初撃で沈めれば、連合の指揮系統はパニックに陥る。核の使用を躊躇わない狂信者どもの出鼻を挫き、イザーク達が核攻撃隊に気づけば作戦そのものを物理的に崩壊させる。それだけの『衝撃』をカナードなら与えてくれるはずだ)

 

 

 

 

 俺がやっていることは、決して美しくはない。裏から手を回し、傭兵を使い、陽電子砲を「暗殺」に転用する。オーブの理念に中指を立ててるクソみたいな所業だ。

 

 

 

 だが、その結果として、数千万、数億の命が救われる可能性があるのなら、俺は喜んで「卑怯者」の汚名を背負おう。

 

 

 

「……死なせないさ。誰一人として。……ロゴスのシナリオ通りにはな」

 

 

 

 

 夜明け前の冷たい静寂の中で、俺は一人、冷え切ったコーヒーを飲み干し、次なる盤面の駒を動かし始めた。

 

 





・ハイペリオン

 ユーラシア連邦が開発したの初のMS。モノフェーズ光波防御シールド「アルミューレ・リュミエール」により圧倒的な防御力を誇るが前大戦次に大破された。カナードはゲームにて大体のシナリオにてハイペリオンに乗り続けており、彼が参戦したスパロボWにおいてもハイペリオンに最後まで搭乗していた為ユウナはカナード=ハイペリオンと根付いており、今回のミスに繋がった。なお、アンケートにてドレッドノートイータが選択されなければ、今作品では平時はアビスやカオスで任務を遂行していた可能性もある(現在既にイータ状態なのは少し早すぎたかもしれないが…)

・ローエングリンランチャー
 MSに携行可能な装備へと小型化されたローエングリン。当然通常のMSに運用できるはずもなくNJC搭載機限定の武器。ドレッドノートイータは核エンジンを搭載しており使用可能であって、今回の狙撃任務では射程、命中を中心に強化を施している。なお前話でロゴスのメンバーがエネルギー反応が陽電子砲数門分に匹敵するものがオーブで確認されたと口にしてるが、それはこちらの実験のせい。いつかオーブをローエングリンランチャーで防衛するエタニティ・アストレイの姿と「無理に決まってんだろ!!!」と予算案を見てブチギレるユウナの姿が見れるかもしれない。


どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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