破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
皆様沢山の評価を本当にありがとうございます。今作品や現在連載中のアズールレーン作品も含めて執筆に集中していますので感想欄の返信が遅れて申し訳ございません。ゆっくりと少しずつ返信させて頂きますね。
本日最後の投稿は23時になります。
「……よし!!!!よっしゃぁぁぁぁ!!!」
通信が切れた直後、俺は誰もいない執務室で思いっきりガッツポーズを決めた。はぁぁぁぁよかったぁ!!本当に良かった!!!
やった。やりきったぞ。プラントが核の炎に焼かれる最悪のシナリオは、これで完全にへし折った!
「……何がそんなに嬉しいんだか。たかが戦艦一隻沈めただけで、はしゃぎすぎだろ、ボンボン」
一度切れたはずの回線から、呆れ果てたようなカナードの声が戻ってきた。どうやら向こうも、俺のあまりの豹変ぶりに毒気を抜かれたらしい。
「はしゃぐさ! 君のおかげで、今日だけで数千万の命と未来が救われたんだぞ。最高の仕事だ、カナード!」
「フン……。ま、ローエングリンの使い勝手は悪くなかった。次はもっとマシな敵を用意しておけ」
「ああ、約束するよ。とりあえず『オルテュギア』は指定した宇宙ドックに入れてくれ。補給もメンテナンスも、オーブの最高技術を注ぎ込んでやる。それと、君と部下たちはシャトルでオーブに降りてきてくれ。最高級の肉と酒を用意して待ってる」
「……肉か。悪くない。せいぜい期待させてもらう」
今度こそ通信が切れた。俺は一つ大きく深呼吸をして、乱れたスーツの襟を正す。
「さてさて……。お次は、迷える元英雄のご機嫌伺いといこうか」
俺は執務室を出て、ユニウスセブンの破片が降り注いだ被災地へと向かった。
そこでは、泥にまみれ、顔を真っ黒にしながらも被災者の声を聞き、陣頭指揮を執るカガリの姿があった。そして、そのすぐ後ろには、護衛の「アレックス・ディノ」としてアスラン・ザラが、影のように控えている。
俺はゆっくりと二人の背後に歩み寄り、静かに声をかけた。
「……やっぱ凄いね、カガリは。代表自ら泥を被って、国民の痛みを自分のものにしようとしている。なかなか真似できることじゃないよ」
「……! ユウナか」
カガリが驚いたように振り返る。その隣で、アスランもまた、仮面の下の瞳に驚愕を宿して俺を見つめた。
「ユウナ・ロマ・セイラン……お前がこんな場所まで来るとはな」
「俺だって、たまには現場の空気を吸わないと正しい判断が鈍るからね。……アレックス、少しカガリから離れて二人で話さないか? 代表の護衛を休ませる時間は、俺が保証する」
カガリは不審げな顔をしたが、俺の真剣な目を見て何かを察したのか、「……少しだけだぞ」と言って作業員の方へ戻っていった。
二人きりになった被災地の片隅。瓦礫の山を背に、俺はアスランに向き直った。
「……迷っているね、アスラン・ザラ。いや、アレックス・ディノだったかな」
「……何のことだ」
「とぼけないでくれ。君の目は、
アスランの表情が険しくなる。図星を突かれた男の、痛みを堪えるような沈黙。
「さっき、宇宙で連合の核攻撃部隊が動いたよ。……結果は、プラントに核は一発も届かなかった。ちゃんと旗艦を沈め、今はジュール隊が事態を収束させている。……君の友人は、無事だ」
アスランの肩が、目に見えて震えた。安堵、そしてそれ以上に、自分という最強の駒が盤上にいないことへの、戦士としての「焦り」が彼を苛んでいるのがわかる。
「安心しろ。カガリには指一本、出させやしない。俺が全力で、彼女とこの国を守り抜いてみせるよ」
俺はそう言って、懐から一通の封筒を取り出した。それはオーブの正式な公印が押された、特使としての派遣書類――そして、事実上の「辞令」だ。
「……これを君に渡す。アレックス・ディノではなく、アスラン・ザラとしてだ」
アスランは戸惑いながらも、その書類を受け取った。
「これは……」
「君にはザフトへ復帰してもらう。新造艦『ミネルバ』へ合流し、プラントの今を、デュランダル議長が作ろうとしている世界を、その目で直接見てくるんだ。……君がずっと望んでいたことだろう?ミネルバに乗りたい、シン・アスカを放って置けないと」
アスランが驚愕に目を見開く。自分をオーブに縛り付けるどころか、むしろ「行け」と背中を押す俺の意図が読めないのだろう。
「いいか、アスラン。君がここで燻っているのは、カガリへの責任感からだ。だが、今の君は『迷い』という鎖で縛られた、ただの重荷でしかない。一度戦場へ戻り、自分自身で納得する答えを見つけてこい。その間、カガリの安全とオーブの舵取りは、この俺が、ユウナ・ロマ・セイランが完璧にこなしてやる」
俺は不敵に笑って、彼の肩を軽く叩いた。
「もし君が、やっぱりデュランダルの作る未来が正しいと思ったなら、そのままプラントの英雄になればいい。だが、もし彼が道を誤っていると感じたなら……その時は、またオーブに戻ってきて『カガリの剣』になってくれ」
アスランはしばらくの間、渡された書類を強く握りしめたまま俯いていた。だが、次に顔を上げた時、その瞳からは先ほどまでの
「……いいのか、ユウナ。俺を行かせれば、もう戻らないかもしれないぞ」
「ふざけんじゃねぇよ、このヅラ野郎!」
俺はいきなり声を荒らげ、アスランの鼻先に指を突きつけた。
「いいか、今すぐカガリにこう叫んでやってもいいんだぞ! 『このアレックス・ディノという男は、プラントで新しい女でも作って、もう二度と戻ってこないつもりらしいです!』ってな! ああ!?」
「な……っ!? な、何を言っているんだ、お前は!」
アスランは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で絶句し、数秒遅れて顔を真っ赤にした。あまりに奇怪な暴言と、心当たりがなさすぎる(はずの)不名誉なレッテルに、前大戦の英雄が完全に狼狽している。
「そんな、そんなつもりは断じてない! 俺はただ、今の情勢をこの目で確かめたいだけであって……!」
「だったら『戻らないかも』なんて格好つけた台詞を吐くんじゃねぇ! カガリを泣かせるような真似をしてみろ。その時は俺が、代表代行の特権をフル活用してお前の顔を全世界の指名手配書に載せてやるからな!」
まくし立てる俺の勢いに、アスランは完全に気圧され、「……あ、ああ。分かった。必ず戻る」と、力なく、しかし確実に約束を口にした。
「あと、それからなぁ……!!」
俺はさらに身を乗り出し、アスランの胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄った。もはや政治家の威厳なんてどこにもない。ただの必死な男の形相だ。
「これだけはお願いだ! 定期的に、絶対に、カガリに連絡を入れてやってくれ! あいつ、見ての通りめちゃくちゃ病んでるんだよ! 三日に一回でもいい!一言でもいいから声を聞かせてやってくれ! いいな!?」
「え、ええっ!? ああ、いや……それは……」
「それからだ! ザフトに戻ったら、部下には優しくしろ! 絶対にだ! 上から目線で説教ばっかりするんじゃなくて、よく話し合うんだぞ! 分かったか!!」
俺はもはや懇願するように、アスランの両肩をガシッと掴んで激しく揺さぶった。
頼むぞ、本当に。お前がミネルバでシンとコミュニケーション不足のままギスギスして、最終的に「議長の言うことは正しい」とか言い出したり、裏切ってグダグダになる展開だけは勘弁なんだ。後お前がシンを殴るのも俺の心臓に悪い!
「……ユ、ユウナ、落ち着け。分かった、分かったから揺らすのをやめてくれ……!」
アスランは完全に引き気味だが、俺の異様なまでの必死さに、何か「並々ならぬ事情」があることだけは察したらしい。
「努力はする。カガリへの連絡も、部下との対話も……。君がそこまで言うなら、善処しよう」
「よし、言ったな! 約束だぞ! 破ったらマジで指名手配だからな!」
俺が手を離すと、アスランはふらつきながらも、どこか毒気を抜かれたような顔でため息をついた。
「……君という男は、本当に分からないな。政略結婚を企んでいるのかと思えば、今度は恋路の心配か……。だが、不思議と悪い気はしない……行ってくる」
アスランは今度こそ、苦笑いを浮かべながら高速艇へと向かっていった。
(お前から君、か……ふぅ……。これでいい。シン・アスカという多感な少年に、アスランの「説教モード」が炸裂して最悪の関係になるのは、この「懇願」で多少は緩和されるはずだ。……多分。というか、してくれ、頼む!)
……いや!まだまだ言うべきことあるわ!!
「待て!! まだ終わってない! まだだ、アレックス!!」
一度歩き出したアスランの背中に、俺はなりふり構わず絶叫した。もはや周囲の作業員たちが「代表代行が発狂した」と言わんばかりの目で見てるが、知ったことか! ここでお前を叩き直さないと、後で泣くのは俺と世界なんだよ!
「ぜっっったいに! パワハラとかするなよ! 自分の正論で相手を追い詰めるな! 殴るなよ、特に部下の少年とか絶対に殴るなよ!? 寄り添え! 共感しろ! 社会人の基本『ホウレンソウ』を忘れるな! 分からないことがあったらすぐ上司や仲間に相談しろ! 勝手に一人で背負って、勝手に悲劇のヒーロー面して戦場を彷徨うなよ!!」
「な……っ!? な、何を……何を言っているんだ君はぁ!!」
アスランが顔を真っ赤にして叫び返した。前大戦の英雄が、これほどまでに公衆の面前でプライバシー(と将来のやらかし)を抉られることがあっただろうか。
「あとこれだ! 万が一、万が一だぞ!? プラントで別の女の気配を感じたら、間髪入れずに『俺にはカガリという婚約者がいる!』って言い張れ! 隙を見せるな! 曖昧な態度は万死に値すると思え! いいな、絶対だぞ!!」
「いい加減にしろ!! 誰が殴るか! 誰がパワハラなんてするか! そもそも俺がそんなに不誠実に見えるのか!? 何なんだお前は!! さっきから何なんだ!!」
「見えるんだよ!! お前は無自覚なんだよ!!」
俺はさらにアクセルを踏み込んだ。こうなったら全部ぶちまけてやる。メタ知識全開の説教を食らえ!
「お前なんか放っておいたら、知らない間に困ってる女に優しくしまくって、気づけば周囲がハーレム状態になってるんだよ! それでいて自分だけ『俺はカガリ一筋だ』みたいな顔して無自覚に修羅場作るんだろ! 罪深いんだよその顔面とスペックは!」
「なっ……な、何をデタラメを!」
「デタラメじゃない! あとMSシミュレーターだ! お前、部下が必死にトップの成績出そうと頑張ってる横で、さらっとその記録塗り替えてドヤ顔するだろ! 『まだ甘いな』とか言って無意識に煽り倒すだろ! それが部下のプライドをどれだけ粉砕するか考えたことあるのか! ぜってぇやるだろ、テメェはそういうこと!!」
「い、言い掛かりだ! 俺はただ、軍人として最善を尽くそうと……!」
「それがパワハラなんだよ、この天才肌が!! 凡人の気持ちに寄り添え! 自分の物差しで世界を測るな! いいな、ホウレンソウだ! 報・連・相!! ほうれん草を食うみたいに体に叩き込め!!」
「狂ってる……! お前はどうかしてるぞユウナ!!」
あっ「君」から「お前」になった。アスランもついにキレた。前大戦の英雄が、年相応の……いや、それ以上にムキになって俺に食ってかかってくる。
「大体、さっきから聞いていれば! お前こそ、カガリの髪に執拗に触って見せつけていたのを忘れたわけじゃないぞ! あの時、どれだけカガリが戸惑っていたか分かっているのか!」
「ああ、それは本当ごめん! マジでごめんって! あの時は俺も『ユウナ・ロマ・セイラン』のキャラ作りに必死だったんだよ! でも今は違うだろ! 今は全力でお前の背中を蹴り飛ばしてやってるんだよ!」
「それがどうかしてると言っているんだ! なんだその『パワハラするな』だの『ホウレンソウ』だの、挙げ句の果てにはハーレムだと!?俺は!俺はそんな……!」
「いいから聞けよ! お前の無自覚は万死に値するんだよ! ほら、早く行け! ぐずぐずしてるとカガリがもっと不機嫌になるぞ!」
俺たちがそんな風に、子供の喧嘩さながらに言い争い、アスランが俺の胸ぐらを掴み返そうとしたその時。
「いい加減にしろぉぉぉぉッ!!! お前たち、公衆の面前で、しかも被災地で何をしているんだ!!!」
地平線を揺るがすようなカガリの怒号が響き渡った。見れば、カガリは顔を真っ赤にして、持っていた泥まみれのスコップを地面に叩きつけていた。周囲の作業員や避難民も、あまりの惨状(?)に作業を止めて遠巻きに眺めている。
「……ッ、カガリ……!」
「あ、いや、カガリ、これはその……」
「アレックスもユウナもだ! 二人ともオーブの要職にある自覚を持て! 特にユウナ! お前はさっきから何を訳の分からないことを喚いている!アレックス、お前もだ! 言い返してどうする!」
カガリの剣幕に、二人揃って「ハイ……」と縮み上がる。キラを除けば最強の調整者と転生した悪役ボンボン、完敗の瞬間である。
アスランはバツが悪そうに顔を背けると、吐き捨てるように「……もういい、行く!」と言って、今度こそ車へと走り出した。
「おい、待て! 行くならちゃんと行き先を考えろ! 今ならミネルバがまだ出航してない! 連絡して、強引にでも乗せてもらえ! 挨拶しろ!ちゃんと自分から声をかけるんだぞ! ホウレンソウだぞ!」
「分かっている! しつこいんだよ、お前は!」
「あと、カガリのこと忘れてんのかテメェ! ?行く前にまずカガリに事情を説明しろ! あと一日くらい二人で過ごして、しっかり話し合ってから行け! 俺はそういう『言葉足らずで察しろよ』みたいな不器用なところを心配してんだよ、このヅラ!!」
俺が全開の怒鳴り声でそう言い放つと、車に手をかけていたアスランが、今度こそ限界を突破して叫び返した。
「俺はヅラじゃない!! アスラン・ザラだ!!」
その瞬間、被災地の空気が一瞬で凍りついた。
周囲で瓦礫を運んでいた作業員、警備の兵士、そして避難民たちの視線が一斉に「アレックス・ディノ」……いや、アスラン・ザラに集中する。
「……あ」
アスランが血の気を引かせた顔で固まる。
そして、その隣で顔を真っ赤に沸騰させたカガリが、手に持っていたスコップを振り上げた。
「……この馬鹿!!! 公衆の面前で本名を口にするな、お前はぁぁぁッ!! 何を考えているんだ!?」
「カ、カガリ! 今のはユウナが……!」
「ユウナもアスランも、どいつもこいつもバカか! 秘密保持の概念はどこへ行ったんだ!!」
カガリの激昂に、俺とアスランは並んで「すみません……」と頭を下げるハメになった。なんだこの、前大戦の英雄と、未来を知る代表代行の情けない姿は。
結局、俺の(ある意味)必死のゴリ押しにより、アスランは「あと一日だけオーブに留まり、カガリと今後のことを話し合う」ことになった。
夕暮れ時、二人でトボトボと宿舎へ向かう背中を見送りながら、俺は大きくため息をつく。
(……ふぅ。これでいい。少しでも言葉を交わしておけば、カガリが後に政略結婚に流されそうになった時なんかにも、アスランの踏ん張りが違ってくるはずだ。……まあ、その『変な政略結婚』の相手(俺)は、もうその気はないんだけどな)
俺は懐から、カナードから送られてきた「連合艦隊壊滅」の二次報告書を取り出した。
アスランのことは、これで一区切りだ。明日の朝には、彼はスッキリした顔でミネルバへ向かっているだろう。
そのはずだった、そうだと思ってんだけどな……。
そりゃアスランだって本人は一途で真面目なはずなのに、ハーレムだのパワハラやりそうだのヅラと言われるとキレますし、ユウナも原作のアスランを知ってれば必死にもなりますよ。
次回更にアスランをおもちゃにします。
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
-
通常の優柔不断アスラン
-
報連相の化身と化したアスラン