破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 筆者はアスランが大好きです。それだけは伝えたかった。


第二十六話 アスラン崩壊

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、宿舎のバルコニー。

 

 

 

 ユウナに「一日話し合え」と強制的に作られた二人だけの時間。沈黙に耐えかねたアスランは、昼間言われた言葉がどうしても頭から離れず、意を決してカガリに問いかけた。

 

 

 

 

 

「……カガリ。一つ聞いてもいいか」

 

 

 

 

「なんだ? 改まって」

 

 

 

「俺は……その、無自覚に他の女に優しくして、ハーレム……のようなものを作ってしまうように、見えるか?」

 

 

 

 

 ユウナのデタラメだと笑い飛ばしてほしかった。だが、カガリは一瞬の迷いもなく、夜風に髪をなびかせながら即答した。

 

 

 

「見える」

 

 

「……ッ!?」

 

 

 

「お前は昔からそうだ。本人は無自覚なんだろうが、妙にフェミニストなところがあるからな。ラクスだって、元はといえばお前のそういうところに……」

 

 

 

「……そうか。そうだったのか……」

 

 

 

 

 アスランは手すりに手をつき、がっくりと項垂れた。その背中には、カガリ曰くキラと殺し合った後日と同じレベルの絶望感が漂っている。

 

 

 

「俺は……良かれと思ってやっていたことが、実は周囲に害を撒き散らす『有害な存在』だったのか……?」

 

 

「いや、そこまで落ち込まなくても……」

 

 

 

 マジで凹み始めたアスランの姿に、カガリの方が慌て始める。

 

 

 ユウナの仕込んだ「呪い」は、最強の戦士のメンタルを、戦う前から粉々に粉砕していた。いやこれユウナは関係あるかな…あるかも…?

 

 

 

 

「そ、それにだ! ラクスからも色々言われてるんだから、本当に注意しろよ!」

 

 

 

カガリの追い打ちに、アスランは「ラ、ラクスが……!?」と驚愕の声を上げた。かつての婚約者、そして今は親友の恋人である彼女が自分をどう評価していたのか。そんなこと、今まで考えたこともなかった。

 

 

 

「お前がまだ婚約者だった頃、ラクスが手を差し出そうとしたことがあっただろ? その時、ラクス相手に自然にスッと避けたらしいじゃないか。あの後、彼女は本気で『は? この男、何なの……?』と思ってたらしいぞ!」

 

 

 

「なっ……親切心だ! エスコートするなら男の方がと……!」

 

 

 

「それがキモ……いや、鼻につくんだとよ! それに、誕生日のたびにハロを送りつけてた件だ! あれも普通にドン引きされてたぞ! しかも、アークエンジェルに保護された時自分の部屋のドアロックをハロで解除できるように細工してただろ? あれ、ラクスは本気で怖がってたからな!」

 

 

 

「ま、待て! あれは彼女の利便性を考えて……!」

 

 

 

 

「いいか、アスラン。普通、男はそんなことしないんだよ! 相手の部屋のセキュリティを改造して回るなんて、ただのストーカー一歩手前だ!!」

 

 

 

「俺は……俺はただ、彼女の助けになりたいと……」

 

 

 

 

 アスランはついに両膝を突き、ガックリと崩れ落ちた。

 

 

 

 自分の良かれと思ってやってきた「エンジニア気質な親切」が、実は女性陣から「普通に怖い」「ドン引き」というカテゴリーに分類されていたという残酷な真実。

 

 

 

「……俺は……良かれと思って、相手のプライバシーをデジタル的に蹂躙していたのか……?」

 

 

 

 

「そうだ! 自分の基準が世界の基準だと思うなよ! この、馬鹿が!!」

 

 

 

 カガリも、かつてアスランに抱いていた「よくわからないけど、こいつたまにズレてるよな」というモヤモヤを全て吐き出し、スッキリした顔で腕を組んだ。

 

 

 

 ちなみに、この時カガリが口にしたラクスの辛辣な評価は、あながち間違いではなかった。

 

 

 

 

 かつての婚約者時代、ラクス・クラインはアスランの「一方的で過剰な親切」に、内心ではずっと違和感を抱き続けていたのだ。

 

 

 

(……この方は、私の何を見ていらっしゃるのでしょう?)

 

 

 

 

 そう思っていた矢先に現れたのが、キラ・ヤマトだった。

 

 

 

 キラはアスランのように、誕生日に電子ロボを量産して送りつけたりはしない。ただ、不器用ながらもラクスの「心」そのものに触れようとした。ラクスにとって、それはもう一目惚れという表現すら生ぬるいほどの衝撃であり、歌姫ではなく等身大の自身を見てくれるのだ。

 

 

 

 気づけば彼女の心は完全にキラへと塗りつぶされていたのである。

 

 

 

 事あるごとに、ラクスは内心でキラと「どこぞの婚約者(アスラン)」を比較しては、

 

 

 

 

 

(ああ、キラはハロの軍勢で私の部屋を埋め尽くしたりしませんわ。なんて素敵な方なのかしら……)

 

 

 

 と、キラへの愛を深めていた。

 

 

 

 アスランが良かれと思って積み上げてきた努力は、皮肉にもキラの「普通さ」という魅力を引き立てるための完璧な踏み台にされていたのだ。

 

 

 余談だが、ラクスとてハロという存在そのものを嫌っていたわけではない。

 

 

 むしろ純粋に気に入ってはいたのだが、それはそれとして、アスランが会いに来るたびにハロの群れが物理的にアタックを仕掛け、彼を部屋から追い出そうとしていたのは……何を隠そう、ラクス本人の指示だった。

 

 

 

 

 

「アスランが来たら、適当に突撃して、ハロが多すぎじゃないか?と理解させてあげなさい」

 

 

 

 

 そんな微笑ましい(?)指令を受けていたハロたちに、アスランは「自作のプレゼントにまで拒絶されている」という、エンジニアとしても男としても再起不能なダメージを負わされていたわけである。

 

 

 

「……待て、アスラン! 流石に言い過ぎた。私は、そんな不器用なお前のことが……!」

 

 

 

 

 

 流石に落ち込みすぎて抜け殻のようになったアスランを見て、カガリが慌ててフォローの好意を伝えようとしたが、今の彼の耳には何も届かない。

 

 

 

「……ハロにまで……俺は……」と虚空を見つめる男の心は、既にオーブの空の彼方、あるいは暗黒の深淵へと旅立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もはや虚空を見つめるアスランの瞳からは、光の一粒すら感じられない。オーブの青い空の下、その心だけは既に暗黒の深淵へと旅立ち、音速を超えて絶望の真っ只中に堕ちていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、ユウナに急かされ、カガリにトドメを刺されたアスランは、そのままフラフラとした足取りで高速艇へと向かった。……が、そこは生来のクソ真面目さゆえか、指示通りにちゃんと「ミネルバ」の着艦デッキへと顔を出した。

 

 

 

 

 

 だが、迎えに出たタリア・グラディス艦長や、野次馬根性で集まっていたシン、ルナマリアたちは、タラップを降りてきた「英雄」の姿に言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

「……ミネルバ、か。ああ、そうだ。俺は……今後、ここへ配属される予定の、アスラン・ザラだ」

 

 

 

 

 

 タラップを降り、タリア艦長の前に立った男は、およそ軍人とは思えない弱々しい敬礼を捧げた。その瞳は濁り、周囲の期待に満ちた視線を直視することすらできない。

 

 

 

 

「……いや、だが……デュランダル議長は、こんな有害な俺を拒絶するかもしれない。……当然だ。俺はハロにすら嫌われ、無自覚に他者を煽り、ホウレンソウもできない欠陥品なのだから……。艦長、俺は独房で構わない……いや、いっそデブリ回収作業にでも回してくれないか……」

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 タリア艦長は、軍歴の中で経験したことのない事態に、開いた口が塞がらない。

 

 

 

 

 プラントの英雄、伝説のザラ隊隊長。そんな輝かしい肩書きの男が、今、目の前で「自分を独房に入れろ」と懇願している。

 

 

 

「……何なんだよあれ…」

 

 

 

 

 シン・アスカは、憧れを通り越して「同情」すら禁じ得ない目で、タラップの下でうなだれるアスランを見つめていた。

 

 

 

 

 ルナマリアは「……ないわね。あれはちょっと、女子としては守ってあげたいっていうより、関わっちゃいけないタイプの闇を感じるわ」と引き気味。

 

 

 

 

 あの、冷静沈着なレイでさえ、「……ユウナ・ロマ・セイランに何かされたのか?」と明らかに困惑の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

「艦長、俺は……俺は、ただ報告に来たのだ……。君たちの邪魔をするつもりはない。報告、連絡、相談……ああ、そうだ。俺は今、空腹であると報告すべきか……? いや、それは相談か……?」

 

 

 

 

 

 

 独り言をブツブツと繰り返しながら、フラフラと艦内へ消えていくアスラン。

 

 

 

 

 

 

 この後、急報を受けたデュランダル議長が自ら「セイバー」を携えて彼に面会し、一時間以上にわたって「君は素晴らしい」「君の力が必要なんだ」と全力のカウンセリング(励まし)を行うことで、ようやくアスランのメンタルは「戦えるレベル」まで回復することになる。

 

 

 

 

 だが、あのデュランダルでさえ、面会室を出た瞬間に側近にこう漏らしたという。

 

 

 

 

「……彼は、本当に大丈夫なのかい? 英雄を送り出したはずが、帰ってきたのは『ホウレンソウ』の強迫観念に囚われた哲学者じゃないか。ユウナ・ロマ・セイラン……あのアスラン・ザラに、一体何を教え込んだというのだね……」

 

 

 

 

 デュランダル議長は、廊下を歩きながら珍しく眉根を寄せて溜息を吐いた。彼の描いた「迷えるアスランを導く議長」という台本は、アスランの重すぎる自己否定と、あまりにも過剰な報告義務への執着によって、初手から大幅な修正を余儀なくされていた。

 

 

 

 

 だが、結果として、アスランは意外な方向でミネルバに変化をもたらした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……シン。今日の機体の調子はどうだ? 何か不安なことはないか? どんな些細なことでもいい、俺に報告してほしい。……俺は、お前を無意識に煽りたくないんだ」

 

 

 

 

 

 食堂で、必死に歩み寄ろうとするアスランを見て、シン・アスカは最初はドン引きしていたが、次第に毒気を抜かれていった。

 

 

 

 

 

「……あ、いや、普通というか。……っていうか、アスランもあんまり根を詰めないでくださいよ。そんなに下手に出られると、こっちがパワハラしてるみたいで寝覚め悪いっすから」

 

 

 

 

「そうか……すまない。嫌な思いをさせたならすぐに言ってくれ。……これが、寄り添うということなのか……」

 

 

 

 

 

 

「……ま、悪い人じゃないのは分かりましたよ。……変な人だけど」

 

 

 

 

 

 あの不遜なシンが、少しだけアスランに心を開き始めた。

 

 

 

 

 さらに、アスランが「俺は有害だから下手に指導するとトラブルの元になる」と、自分の戦闘データを全てルナマリアやレイに開示し、「君たちのスキルアップに役立ててくれ」と頭を下げるに至ったのだ。

 

 

 

 ルナマリアも「……なんだか、この人を支えてあげなきゃいけない気がしてきたわ」と妙な母性本能(と言うか同情)を刺激され、レイも「……合理的ではないが、情報の共有速度は飛躍的に向上した」と、その実用性を認めざるを得なかった。

 

 

 

 

 空回りしながらも、必死に「有害じゃない自分」になろうと足掻く英雄。

 

 

 

 

 

 その姿は、かつての孤高の天才ではなく、泥臭く周囲に馴染もうとする一人の「不器用な先輩」として、ミネルバの若きパイロットたちに受け入れられ始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ。アスラン・ザラが周囲と融和し始めたか。私の意図とは少々形が違うが、部隊の結束が高まるのは悪いことではない。……これも君の計算かい? ユウナ君」

 

 

 

 

 

 

 

 デュランダルは、オーブの方向を向き、微かに口角を上げた。だが、その目は笑ってはいなかった。色々な意味で。

 

 






 ちなみにカガリが語ったエピソードの多くは福田監督が劇場版公開記念に暴露した裏設定だったりします(有名なラクスを初デートにジャンク屋に連れて行ってガチ泣きさせたエピソードは、ソースが見つけられませんでしたがそんな話を信じられてしまうのがアスランクオリティ)

アスランは悪い奴じゃないし、基本的にめちゃくちゃ真面目ないい奴です。ただスペックが高かったり、真面目過ぎるせいで空回りしてしまうので、その辺りを指摘してくれる女性は最高のパートナーになってくれるでしょう。


今日はここまで
次回はいよいよ原作主人公登場。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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