破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 前回の後書きで前作主人公と書いたはずが、何故か原作主人公になってましたけど定義的に間違ってはないからまぁいいか…


第二十七話 それでも!俺は!やってない!!!

 

 

 

 

 

 アスランを「劇薬」としてザフトに叩き込み、ミネルバが水平線の彼方へ消えていくのを見送った夜。

 

 

 

 

 俺は執務室の明かりを落とし、極秘回線を開いた。アスランという「矛」を放り出した以上、オーブに残された最強の「盾」――あるいは「最後の切り札」を、今のうちに手元に引き寄せておく必要がある。

 

 

 

 呼び出し音が数回。静寂の中に響くその音は、俺の鼓動より少しだけ速い。やがて、通話がつながった。

 

 

 

 

「……はい、マルキオ邸です」

 

 

 

「夜分に失礼。カガリの『元婚約者』、ユウナ・ロマ・セイランだ。……キラ・ヤマト君に、繋いでもらえるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 受話器の向こうで、息を呑む気配がした。

 

 

 

 

 

 

 数秒の沈黙の後、代わって聞こえてきたのは、あまりにも澄んだ、しかしどこか所在なげな少年の声。

 

 

 

 

 

 

 

「……僕です。ユウナ・ロマ・セイランさん。僕に、何か……?」

 

 

 

 

 

(やばい、めちゃくちゃ警戒されてる……!)

 

 

 

 

 

 

 受話器を握る手に、じわりと嫌な汗が滲む。

 

 

 

 そうだよな、キラからすれば俺は「カガリの髪の毛をこれ見よがしにさわりまくってたセクハラ野郎」で、「急に豹変して権力を握った不気味な政治家」でしかない。

 

 

 

 

 親友のアスランがあんなメンヘラ状態でプラントへ飛んだ元凶が俺だと知られたら、今すぐフリーダムでカチコミに来られてもおかしくない。

 

 

 

 

 

(やばい、やばい、やばい!! 距離感を完全に間違えた!!)

 

 

 

 

 

 受話器を持つ手が震える。キラの冷徹な警戒心が鼓膜を突き抜けて脳髄まで凍りつかせる。

 

 

 

 

 

 いや、だってさぁ! 俺だってこんなはずじゃなかったんだよ!

 

 

 

 

 ついさっき、カガリから申し訳なさそうに「ユウナ……すまない、アスランがなんだか大変なことになっていて……」と通信が来たと思ったら、画面越しに見えたアスランが、魂を抜かれた抜け殻みたいな顔で「……俺は……有害……ホウレンソウ……」とかブツブツ言いながら高速艇に吸い込まれていったんだぞ!?

 

 

 

 

 あれは俺のせいじゃない! ……いや、8割くらい俺のせいかもしれないけど、あそこまでズタボロになるまで追い打ちをかけたのはカガリだろ! キラはそんなこと知らないだろうけど、親友をあんなメンヘラ廃人にした元凶が俺だとバレたら、今すぐフリーダムでこの行政局ごとハイマットフルバーストされる!

 

 

 

 落ち着け、ユウナ・ロマ・セイラン。こういう時こそ、現代日本仕込みのウィットに富んだジョークで、この凍りついた空気を解きほぐすんだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ハハハ! いやあ、キラ准将! 最近そっちに暗殺部隊とか来てないかな? 大丈夫? 護衛とかつけちゃう? ちなみに、もし刺客が来てもオーブ政府はぜんっぜん関係ないからね! ほんとだよ! 信じて!!」

 

 

 

 

「…………准将? 准将って、何のことですか?」

 

 

 

 

 

 ヒィッ!! 声が、声の温度がさらに5度くらい下がったぞ!

 

 

 

 

 しまった、あまりにもネット上の「キラ准将」という愛称(蔑称?)に慣れすぎていて、この時期の彼がまだ階級なんて持ってないオーブへの亡命者(というかオーブ国籍だけど!)に過ぎないことを完全に忘れていた!

 

 

 

 

 

 

(そうだよ! この時期のキラはまだ准将じゃねぇ!! あまりにもネットで准将、准将言われてるから、つい口が滑った!!)

 

 

 

 

 

 脳内を前世の記憶が駆け巡る。

 

 

 

 そりゃあそうだ。十代の若造が、明らかにコネと身内人事の塊みたいな扱いで、あの伝説のブライト・ノアより高い地位に座らされていれば、ネットでネタにされないはずがない。

 

 

 

 軍事教育もまともに受けてないのに「准将」なんて、そりゃあ「キラ・ヤマト准将の新たなる剣スレ」とかが乱立するわけだ。懐かしいな、俺も当時はスレ住人として楽しんでたよ……。

 

 

 

 

 

(ちなみにフリット・アスノなんてアセム編の時点で中将、それ以降は実質大将クラスだ。それに比べりゃ准将なんて可愛いもんだが、今はそんなガンダム豆知識を披露してる場合じゃないんだよ!)

 

 

 

 

 

 現実逃避したくなるほどの焦燥感が俺を襲う。

 

 

 

 

 受話器の向こうからは、相変わらず「……准将?」という、不審者を見るような冷え切ったキラの声が響いている。

 

 

 

 

 

「あ、ああ、いや! 准将っていうのはその、オーブの言葉で『凄い天才パイロット』っていう意味のスラングでね! はは、ははは……!」

 

 

 

 

「……そうですか。そんな話は聞いたことがありませんが。……セイランさん、あなたは一体何を……」

 

 

 

 

 ヒィッ! 声が怖い! 完全に「敵」を見る目(声)だよこれ!

 

 

 

 俺は受話器を握りしめ、半狂乱で言葉を畳み掛けた。

 

 

 

 

「い、いやだってキラ君は前大戦の英雄だし!ブルコスやらザラ派の過激派が暗殺部隊とか差し向けてくるかなって心配したんだよ! だから護衛をつけようかって……! えっ、やめて! そんな低い声で警戒しないで! 僕はただの心配性の代表代行だよ!!」

 

 

 

 

「……ますます怪しいです。カガリからも、アイツの様子がおかしいとは聞いていましたが……」

 

 

 

 

「それはカガリの誤解だ! 僕は今、世界で一番君たちの安全を願っている男なんだよ! 頼むから信じてくれ、キラ君!」

 

 

 

 

 

 

「……ユウナ・ロマ・セイラン。貴方は一体――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 キラの冷徹な問いかけが、核心に触れようとしたその時。

 

 

 

 

 

 ――ガガッ……ピーーーッ!!

 

 

 

 

 

「えっ? おい、キラ君!? もしもし!?」

 

 

 

 

 

 

 突如として受話器から激しいノイズが走り、通信が物理的に遮断された。

 

 

 

 

 沈黙する受話器。俺の背筋に冷たいものが走る。

 

 

 

 

 

 

「……ジャミングか」

 

 

 

 

 

 さっきまでの、前世の知識に振り回されていたパニックが嘘のように、俺の頭は急速に冷え切っていった。

 

 

 

 

 ふぅー……と、肺の中の空気をすべて入れ替えるように、ゆったりと息を吐く。そっかー…このタイミングでかぁ…。

 

 

 

 

 

 

 おかしいな。この通信端末、俺が特注した代物だぞ。ちょっとした電波妨害程度じゃビクともしないはずだし、オーブの民間通信網とは別系統だ。

 

 

 

 それが遮断されたということは、単なるテロ組織のジャミングじゃない。それこそ、一国の軍相当の機材が必要になる訳で。

 

 

 

 

 

 

 俺は冷静に椅子に深く腰掛け、デスクの引き出しから隠していた別のローカル端末――軍の正式ルートを完全に迂回する独立回線用――を手に取った。

 

 

 

 

 

 そして、ボタンを一つ叩き込むなり、さっきまでの冷静さを窓から投げ捨てて絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トダカァァァ!!! やばい!! キラ・ヤマトが暗殺集団に狙われてるぅ!! 今すぐ救助部隊を出せ!! 間に合わなかったら俺の首が飛ぶんだよぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜の行政局に、ユウナ・ロマ・セイランのなりふり構わぬ悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から述べると。俺は、間に合わなかった。

 

 

 

 

 トダカ一佐の名を受けたムラサメ隊が猛スピードで海岸線に到着した時には、そこは既に「終わった」後だった。

 

 

 

 

 転がっているのは、フリーダムの精密射撃によって完璧に四肢を焼かれ、戦闘不能に追い込まれた挙句、証拠隠滅のために自爆した特殊部隊の機体群。

 

 

 

 そして、あちこちに散らばる所属不明の遺体。装備はどれも最高級品だが、皮肉なことにブラックマーケットで金さえ出せばどこでも手に入る範疇のもので、尻尾を掴ませる気は微塵もない。

 

 

 

 そして何より。キラ・ヤマト、ラクス・クライン、マリュー・ラミアスといった重要人物たちは、忽然と姿を消していた。どこかの秘密ドックか、海中にでも潜伏したのだろう。

 

 

 

 

 

 

「カガリぃ!!! やべーぞ!! キラ准将がぁぁ!!! キラ准将が行方不明だぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 俺は首を振り乱しながら、カガリとの緊急通信回線に飛び込んだ。

 

 

 

 弟のキラと親友のラクスも行方不明になり、恋人のアスランとも離れ離れ。精神的に余裕なんてカケラもないはずのカガリだったが――画面に映る俺の、なりふり構わぬ狼狽ぶりと、「准将」とかいう謎のワードを連呼して泡を吹かんばかりの姿を見て、彼女は一周回って冷静になっていた。

 

 

 

 

 

「……落ち着け、ユウナ。頼むから一度黙って深呼吸しろ」

 

 

 

「落ち着けるかぁ! 国際問題だぞ! ああ、俺の生存ルートがぁ!」

 

 

 

 

「いいから落ち着けと言っているんだ! キラのことだ、簡単には死なない。それよりユウナ、お前さっきから言っている『准将』ってなんだ? 誰のことだ? ……お前、本当に大丈夫か?」

 

 

 

 

 「……准将!? ああ、それはその! もし、もしもだよ、キラ君が将来的に正式にオーブ軍に所属することになったら、それくらいの地位は必要かなーって俺が勝手に考えた仮のポストだよ! 期待の表れだよ、期待の!」

 

 

 

 

 俺は滝のような汗を拭いながら、必死に言葉を繋いだ。前世のネットミームを現実で口走るリスクがこれほど高いとは。

 

 

 

 

 

「それよりカガリ、問題はそこじゃないんだよ! どうすりゃいいんだよこれ! 俺がわざわざキラ君に電話した直後に通信が途切れて、その後に暗殺部隊が来たんだぞ!? これじゃ、まるで俺がラクス様たちの居場所を特定して、暗殺の首謀者として動いたみたいじゃないか! 完全に罠だ! 嵌められたんだよ!」

 

 

 

 

 

 実際、タイミングが悪すぎる。親切心の警告が、結果として「犯行予告」みたいになっている。キラたちのことだ、今頃潜伏先で「やっぱりあのユウナという男が黒幕か……」とミーティングしているに違いない。

 

 

 

 

 すると、画面の中のカガリが、ふと動きを止めた。その瞳が、スッと細くなり、温度を失った「怖い目」に変わっていく。

 

 

 

 

「……ユウナ。一つ聞いていいか」

 

 

 

「な、なんだいカガリ?」

 

 

 

 

「……なぜお前は、あそこに『ラクス』がいると知っていたんだ? 私ですら、本人達に教えてもらうまでキラが一人で療養しているとしか聞かされていなかったんだが」

 

 

 

 

 しまっ――!!

 

 

 

 

 完全に墓穴を掘った。この時期、ラクスがキラと一緒にオーブに隠れ住んでいるのは、アスランすら知らない「最高機密」に近い情報だったはずだ。

 

 

 

 

「あ、いや、それは……その、あれだよ! ほら、……俺の張り巡らせた超有能な情報網がだね!」

 

 

 

 

「情報網……? お前、キラたちのプライバシーまで嗅ぎ回っていたのか? 暗殺部隊が来たというのも、そもそもお前が呼び込んだんじゃないだろうな……?」

 

 

 

 

 

「違うんだ! 信じてくれカガリ! 俺はただ、平穏な生活を迎えたいだけなんだよぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 必死の弁明も虚しく、カガリの視線は「黒幕なのか?」と言わんばかりの冷え切ったものになっていく。

 

 

 

 

 アスランを壊し、キラを怒らせ、今度はカガリに「ストーカー気質の黒幕」だと疑われ始めた。俺の支持率、身内から順番に崩壊してないかこれ!?

 

 

 

 

「……わかった。とにかく今は、お前の言い分を信じて政府としては庇ってやる。だがな、ユウナ。……例え今後キラから連絡が来ても、私はお前にその事は伝えないぞ。いいな?」

 

 

 

 

 カガリの言葉は、もはや元婚約者に向けたものではなく、得体の知れない「不審な政治家」を警戒する防衛本能そのものだった。

 

 

 

「お願いします! マジでお願いします! むしろ教えないで!准将……じゃなくてキラ君に合わせる顔がないから! 隠し通して!」

 

 

 

 

 俺が必死の形相で両手を合わせて拝み倒すと、カガリはさらに深い、心の底からの溜息をついた。

 

 

 

 

 

「……お前のことが、本当にわからなくなった……。かつての軽薄さも、今の異常なまでの必死さも、どれが本当のお前なんだ……?」

 

 

 

 

 

 カガリはそう言い残し、頭を抱えながら、逃げるように通信を切った。

 

 

 

 

 

 画面が暗転し、俺の情けない顔がモニターに映し出される。……最悪だ。信頼関係を築くどころか、完全に「近寄ってはいけない不気味な何か」にジョブチェンジしてしまった。

 

 

 

 だが、凹んでいる暇はない。カガリに不審がられようが、キラに嫌われようが、現実に「暗殺部隊」はオーブの土を汚したんだ。

 

 

 

 俺はすぐさま、別の回線を開いて叫んだ。

 

 

 

「トダカぁ! 聞いてるか!? テロリストがこれほど容易くMSも含めて侵入した以上、オーブの防諜体制はザルも同然だ! 直ちに警戒レベルを最大に上げろ! 軍内部に潜んでいるかもしれないロゴスの息がかかった連中を、一人残らず洗い出すんだ! 徹底的にやれ!」

 

 

 

「は、はっ! しかし、そこまでやるとなると、反発も……」

 

 

 

 

 

「構うか! 責任は全部俺が取る! いいか、次にキラ……じゃなかった、一般市民が危険に晒されたら、今度こそ俺が発狂してオーブを焦土に変えるぞ! 意地でも守り抜け!!」

 

 

 

 

 通信を切った後、俺は椅子に深く沈み込み、震える指で顔を覆った。

 

 

 

 

(……キラ君、今頃どこで何してるかな。頼むからアークエンジェルの中で『ユウナを殺すリスト』とか作らないでくれよ……。俺の平穏な隠居生活が、どんどん遠ざかっていく気がする……)

 

 

 

 今日は眠れない。眠れるはずがなかった。

 

 

 






・カガリ
 不審ゲージMAX ただしそこそこ信頼度も稼いでるので一応は信頼してくれた。一応は。


・キラ
 警戒度MAX。当たり前である


・アスラン
 ものすごいネガティブモードで気持ち悪い起動しながらウィンダムとか撃墜してるってさ。


・シン
 アスランとの関係はそこそこ良好。ぶつくさいいつつ積極的にトレーニングをつけてもらっており、ザムザザーはピンチになって撃退するというよりはアスランに負けるもんか!!!と即SEEDを発動して解体する事なりそう。


・ルナマリア
 原作と違ってアスランはないわ…となりつつあまりにもメンタルがボロボロなので大丈夫?と心配している。


・タリア
 何気に一番の被害者。泣いていい。



・人材登用スキルMAXの浮気チンポ野郎
 想定よりミネルバの空気が安定してヨシ!……となるはずも無く今後も裏で定義的にアスランカウンセリングをしてるらしい。



・レイ
 原作ではアスランはの好感度最低だったが、あまりにも自尊心がボロボロなアスランを見て内心混乱しつつも気を遣ってる。

・ユウナ
 ルイスにやっぱり関係してたんだ!!と責められた時の沙慈くらい狼狽している。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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