破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 アンケートの結果はデュランダル議長との対話ルート。果たして2人の対話はどうなるのやら。

 


第二十八話 全ては拾えない

 

 

「……チッ。胸糞悪いな」

 

 

 

 

 暗闇の中、カナード・パルスは防護服越しに毒づいた。

 

 

 

 証拠を何一つ残さないよう、特殊な遮蔽工作と防護服に身を包んだ彼らは、今、人類の業を凝縮したような光景を目の当たりにしていた。

 

 

 

 

 

 ライトの光が、透明な円筒形のタンクを映し出す。

 

 

 緑がかった培養液の中には、全裸の少年少女たちの遺体が、ただの「検体」として浮かんでいた。まだ幼い。本来なら親の手を握って笑っているはずの年頃だ。

 

 

 

 

 棚には、ラベルを貼られた無数の脳が陳列されている。これらがかつて、誰かの子供であり、未来を夢見るはずだった生命であったことなど、ここでは微塵も考慮されていない。ただの「部品」であり、ただの「消耗品」だ。

 

 

 

「隊長……あっちを」

 

 

 

 部下の一人が指した先――暗い廊下には、さらに凄惨な光景が広がっていた。

 

 

 

 銃や警棒を持った大人たちの死体と、それに折り重なるようにして倒れている子供たちの死体。大人たちは、ロゴスの私兵らしく最新の火器を握っている。

 

 

 

 

 対して、死んでいる子供たちが手にしていたのは、食堂から持ち出したであろうナイフやフォーク、あるいはただの瓦礫だった。

 

 

 

 

 反乱を起こしたのか。それとも「処分」されるのを拒んで抵抗したのか。

 

 

 

 

 どちらにせよ、まともな武器も持たない子供たちが、ナイフ一本で大人たちに立ち向かい、そして無残に殺されていった。その絶望的な闘争の跡が、重なった遺体の山として刻まれていた。

 

 

 

 

「……『失敗作』の処分か。あるいは、極限状態での最終データ収集か」

 

 

 

 

 カナードは、かつて自分がいた場所――メンデルやユーラシアの研究所を思い出していた。自分も一歩間違えれば、あのタンクの中にいたか、あるいはこの廊下でゴミのように捨てられていたはずだ。

 

 

 

 カナードは、転がっていた錆びたフォークを一つ、踏みつけないように避けて歩き出した。

 

 

 

 

 その瞳には、冷静な殺意が宿っている。

 

 

 

 

 

「……うっ、げほっ……!」

 

 

 

 

 背後で、部下の一人がたまらず口元を押さえて膝をついた。他の隊員たちも、防護服越しでも伝わってくる死の臭気と、視界に飛び込む地獄絵図に、銃を握る手が小刻みに震えている。怒りで呼吸を荒らげる者、現実を拒絶するように目を背ける者。

 

 

 

 

 「……お前らは全員、入口まで戻って警戒しろ」

 

 

 

 

 

  カナードの低く、冷徹な声が廊下に響く。

 

 

 

 

 「隊長、しかし……!」

 

 

 

 

 「邪魔だ。今の貴様らに何ができる。……行け」

 

 

 

 

 

 突き放すような物言いだが、それがカナードなりの慈悲であることを隊員たちは知っている。彼らは無言で敬礼し、足早に地獄の門(入口)へと引き返していった。

 

 

 

 

 一人残されたカナードは、チッと大きく舌打ちをしてさらに奥へと進む。

 

 

 

 

 

 辿り着いた研究室の成れの果てには、粉々に破壊されたPCや、焼かれた書類の残骸が散乱していた。

 

 

 

 

 「……徹底してるな」

 

 

 

 重要なデータだけを抜き取り、後はゴミとして放置したのか。

 

 

 

 これだけの命を弄んでおきながら、遺体の一体すら片付ける手間を惜しんで立ち去ったロゴスの連中。その身勝手な傲慢さが、この放置されたままの遺体群に凝縮されている。カナードはさらに不機嫌さを増し、険しい顔で通信機を起動した。

 

 

 

 

 

 「こちらX。……聞こえるか、ボンボン」

 

 

 

 

 

 オーブの執務室で待っているであろうユウナを、いつもの蔑称で呼ぶ。

 

 

 

 

 「……ロドニアの施設を確保した。だが、ここは既にただの廃墟だ。生存者はゼロ。証拠も重要そうなものは隠滅された後だ……。いや、正確には、『人間の形をした証拠』だけが山ほど残されているがな」

 

 

 

 

 血の通わない機材だけを持ち去り、血の通っていた子供たちを置き去りにした施設の闇の中で、カナードの報告はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。……すまないね、X」

 

 

 

 

 通信越しに、俺は絞り出すような声で謝罪を口にした。

 

 

 

 

『……はっ、なんだ? 今更、俺の境遇をここの死体と重ねて同情でもするつもりか? 殺すぞ、ボンボンっ…!」

 

 

 

 

 

 カナードの声は、地を這うような不機嫌さに満ちていた。自分と同じ「造られた命」が無残に使い捨てられた光景。

 

 

 その傷口を抉るような真似をされたと思ったのだろう。だが、俺が謝った理由はそんな高尚なものじゃない。

 

 

 

「違うよ。……君がどう思うかは別として、いくら仕事とはいえ、そんな地獄を見せて気持ちいいはずがないだろうと言いたいだけだ。……君だって人間なんだからな」

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 通信の向こうでカナードが絶句した気配がした。俺は構わず、手元の地図にバツ印をつける。

 

 

 

 

 マルマラ海のポートタルキウスから内陸へ深く入った奥地に位置する、ロドニア・ラボ。

 

 

 

 

 今の時間軸なら、まだ「稼働中」の可能性があると思っていた。エクステンデッド候補の子供たちがまだそこにいて、もしかしたら救い出せるかもしれない。あるいは、ロゴスの非道を暴く決定的な生きたデータが手に入るかもしれない……。

 

 

 

 

 そう思って、オーブ軍の正規ルートでは動けない場所に、カナードたちを派遣したのだが。

 

 

 

 

(既に廃墟か……。つまり、ロゴスはもう『次』の段階に移ったってことだ)

 

 

 

 

「……そうか。既に廃墟か……」

 

 

 

 

 俺は手元の資料を握りつぶした。

 

 

 

 

 原作の知識からすれば、このロドニアのラボが「処分」されるのは、周辺がザフトの勢力圏に落ちた時のはずだと考察していた。

 

 

 

 だが、現実は違った。ロゴスは俺が考えていたよりもずっと慎重で、そして冷酷だったらしい。もっと早い段階で、見捨てた「ゴミ」を焼き払っていたわけだ。

 

 

『……落胆させて悪かったな。どうする、ボンボン。遺体の写真でも撮って、お得意のプロパガンダに使うか?』

 

 

 

 

 

 カナードの皮肉に、俺は力なく首を振った。

 

 

 

 

 

「……いや、写真やデータは必要ない。そんなものを持っていても、君たちのリスクが増えるだけだ。何一つ証拠は残さず、そのまま戻ってきてくれ」

 

 

 

『……了解だ』

 

 

 

 

 短く、どこか冷めた返事と共に通信が切れた。

 

 

 

 

 静まり返った執務室で、俺は椅子の背もたれに深く体を預けた。

 

 

 

 あわよくば、と思っていたんだ。

 

 

 

 

 もしロドニアにエクステンデッドの調整データや、未完成の薬でも残っていれば。それを元に、今頃インド洋あたりでミネルバ隊と交戦を開始するであろうステラ、アウル、スティングの三人を、戦わずに無力化し、治療してやる道が作れるんじゃないかって。

 

 

 

 

 せっかくこのクソみたいな世界に、ユウナ・ロマ・セイランとして生まれ落ちたんだ。一人くらい、あの救いのない運命から引きずり出してやりたかった。

 

 

 

「……甘かった、か」

 

 

 

 

 俺はデスクの引き出しに隠した、例の「お星様になった中将」との極秘通信記録を見つめる。

 

 

 

 彼を脅してガンダム系の機体データやOSの基礎ロジックは根こそぎ抜き取ったが、肝心のエクステンデッドに関する医療データは驚くほど少ない。

 

 

 

 最初に無理にでも強請っておけばと後悔したが、恐らく彼でも持っていなかっただろう。あの手の生体CPUの研究はファントムペインが直接握っている「聖域」だ。他部署の人間が安易に触れられる代物じゃない。

 

 

 

 

 

「……これで、あの三人は切り捨てるしかなくなったのか?」

 

 

 

 

 脳裏に、悲劇的な末路を辿るステラたちの姿が浮かぶ。

 

 

 

 なんとか戦闘不能にして確保し、コールドスリープにでも放り込めないかと考えた。だが、原作の『スターゲイザー』でスウェンが言っていた言葉が呪いのように蘇る。

 

 

 

「長くはないだろう」と。

 

 

 

 調整という名の破壊を繰り返された彼女たちの身体は、既に限界を超えている。無理に眠らせたところで、二度と目覚めない可能性の方が高い。

 

 

 

「……無理に眠らせたところで、二度と目覚めない可能性の方が高い、か」

 

 

 

 

 俺は思考を打ち切った。結論は出ている。救いたいという甘い願望は、現実という名の壁に叩きつけられて粉々になった。

 

 

 切り捨てるしかない。

 

 

 

 原作で、狂気と恐怖に怯えながら死んでいったステラ、アウル、スティング……。あの悲劇をなぞる三人の末路を思い出す。いっそファントムペインの母艦を奇襲して、彼女たちが維持されている専用の調整ポッド――「ゆりかご」ごと奪い出すか?

 

 

 

 一瞬だけ過ったその案を、即座に脳内のシミュレーターが却下する。

 

 

 

 そんなギャンブルにオーブ軍を、カガリの愛する国民を晒すことはできない。何より、カナードやサーペントテールのような貴重な戦力は、来るべき「ロゴスとの決戦」のために失うわけにはいかないんだ。

 

 

 

 

 

「……切り捨てよう」

 

 

 

 

 

 口に出したその言葉は、驚くほど平坦で、冷え切っていた。だが、そんな自分にゾッとするような罪悪感は、不思議と湧いてこなかった。

 

 

 

 

 精神がユウナという男に浸食されたのか? いや、違う。ただ単に、俺は「人の死」に慣れてしまっただけだ。あの中将を道連れに、数千人の連合将兵が爆炎の中に消えたあの瞬間から。オーブ国民でなければ幾らでも切り捨てられると。

 

 

 

 

 一人の少女の命を惜しむ心よりも、盤上の駒を冷徹に計算する頭が勝ってしまった。それが、この時代で「ユウナ・ロマ・セイラン」として生きるということなのだろう。

 

 

 

 俺は震えていた指を静かに止め、冷めた紅茶を一口啜った。暗い執務室の中、モニターの明かりに照らされた俺の顔は、きっと誰よりも狡猾で、誰よりも孤独な「政治家」の表情をしていたはずだ。

 

 

 

 

「さてと……」

 

 

 

 俺は空になったカップを置き、思考を次へと切り替えた。感傷は紅茶と一緒に飲み干した。今の俺にとって、ステラ・ルーシェは「救うべき可哀想な少女」から、「迅速かつ確実に排除すべき戦略的脅威」へとその定義を書き換えられた。

 

 

 

 まずは手元の戦力の確認だ。ドッズライフルの現状については、モルゲンレーテからの報告によれば試験運用はまずまずといった所。あの高出力のビームを収束・回転させる特殊な術理は、この時代の技術者たちを大いに悩ませているが、ベルリン戦までには数丁……最終的にムラサメ隊全機に配備できる分くらいは用意できるだろう。

 

 

「問題は、ベルリンだ……」

 

 

 あそこでデストロイガンダムが街を焼き、殺戮の嵐を巻き起こす。それはこの世界の歴史における巨大な特異点だ。ステラがその中枢として、何十万人、何百万人という命を奪い尽くす。

 

 

 

 今からやるべきことは、いかに迅速に、いかに無慈悲に、デストロイを……いや、ステラを殺すか。

 

 

 

 結局、カナードにはまた汚れ仕事をしてもらう羽目になる。

 

 

 

 シンが現場に辿り着く前か、あるいは辿り着いた後か……。どちらにせよ、原作でデストロイを葬ったフリーダムが存在しない以上、シンや市民を犠牲にするわけにはいかない。

 

 

 

 撃墜するだけならドッズライフルでどうにかなる。しかし、デストロイの厚い装甲をぶち抜き、かつステラを苦しませずに一撃で逝かせるには、通常のドッズライフルでは出力と射程が足りない。

 

 

 

 

 

「……長射程・超高出力。せめて、コックピットだけを正確に貫く専用の『ドッズ・スナイパーライフル』を急造させる必要があるな」

 

 

 

 

 俺は端末を叩き、開発部に無茶な要求を放り込む。

 

 

 

 シンは傷つくだろう。一度は救えたはずの少女を、オーブの放った弾丸が撃ち抜くのだから。それを知ってしまえば、彼にとって俺は、さらに憎むべき「加害者」になるかもしれない。

 

 

 

 だが、感傷に浸っている暇は微塵もなかった。ステラを殺す算段の前に、片付けるべき問題が山積みだ。

 

 

 

 

 

「……それ以前に、ネオ・ロアノークの回収とカオスの撃退はどうする? 原作通りなら、あのあたりでアークエンジェルが介入してくるはずだが、キラ達は潜伏中でそもそも俺とカガリの婚約が解消されてる以上、カガリを連れて脱走するはずもないし……予定が狂いすぎている……」

 

 

 

 ネオを確保して記憶を戻すルート、スティングをどう止めるか、そして何よりオーブ兵を派遣するべきか?カナード達をどこに配置し、どのタイミングで介入させるか。

 

 

 

「クソッ、頭が割れそうだ。まずは現地の情報収集を強化して……」

 

 

 

 俺はモニターに表示されたユーラシア大陸の地図を睨みつけ、脳内で何度も駒を動かす。一人の少女の死を前提とした、最悪のパズル。そのピースを埋めるために、俺は震える手を組み、深い闇のような思考の底へと沈んでいった。

 






 ステラ達を救うことは不可能。可能であればブロックワードを連呼して捕獲した彼女達を治療するなり、コールドスリープさせるなりとどうにか生存させる為に考えましたが、ユウナは切り捨ててカナードに姿を見せずらステラ、スティングを狙撃で仕留めさせる事を覚悟します。

 母艦の位置も分からず、何処にファントムペインが現れるかも分からない。そんな状況で正式にオーブ軍を派遣することも不可能。皮肉な事にオーブ軍が中立で連合の要請を受けないからこその苦しみなのでした。



 そして、申し訳ございません!本当に!本当にありがたいですし全ての感想のチェックはさせていただいて大変励みになってますが、感想が多すぎて一つ一つに返信させて頂くのは不可能になってます…!不定期だったりダメかもしれませんが今は取り敢えず執筆に集中させて頂きます!本当に申し訳ございません……!

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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