破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 少し短めですが早めにできたので投稿。あと一話できるといいな…


第三十話 トダカ「いつもの事だからヨシ!」

 

 

 

 

 

 

 先ほどまでの絶叫が嘘のように静まり返った執務室で、俺はトダカが淹れてくれた熱い茶を啜っていた。

 

 

 胃のあたりがキリキリと痛むが、茶柱が立っているのを見て「不吉な予兆をへし折った証拠だ」と自分に言い聞かせる。

 

 

 

 

「……で、ユウナ様。カガリ様の行方不明の件、いかがいたしましょうか? 捜索隊を出しますか?」

 

 

 

 

 トダカの冷静すぎる問いに、俺は茶カップをデスクに置いて、低い声で答えた。

 

 

 

 

「……隠蔽だ。隠蔽するしかねぇよ。代表首長がニート集団……もとい、アークエンジェル一行と一緒に出奔したなんて今広まったら、俺が積み上げてきた対外的な信頼がガタ落ちだ。『カガリ様は過労で静養中、見舞いは一切断る』で通せ。いいな、絶対にだぞ」

 

 

 

 こめかみを押さえ、必死に思考を回復する。カガリが自身のあり方に苦悩していたのは計算内だったが、まさかこのタイミングで原作イベント(家出)を強行するとは。

 

 

 

 

 

(……待てよ。アークエンジェルが無断で出撃したってことは、原作にあった『オーブ軍ムラサメ隊の合流イベント』が消滅したってことか!?)

 

 

 

 

 俺はガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。背中に冷たい汗が流れる。

 

 

 

 

 

(まずい……! 原作では、セイラン家に反発したトダカたちが希望はアークエンジェルにあるとムラサメ隊を派遣したからこそ、キラたちの戦力が維持されてたんだ。今のオーブは俺がクリーン(?)に統治しちゃってるから、部下たちが反発する理由がない! つまり、このままじゃムラサメ隊が合流せず、アークエンジェルの戦力が大幅にダウンする……!)

 

 

 

 

 

 戦力が足りなければ、ベルリンでカオスガンダムを撃退できない。下手をするとアークエンジェル轟沈なんて最悪のバッドエンドを迎える可能性もある!!

 

 

 

 

 

「ちょっとー!! トダカァァ!今すぐアスハ派の熱血パイロットたちを至急集めてくれない!?」

 

 

 

 

「は? はぁ、それは構いませぬが……一体何を?」

 

 

 

 

 

「いいから最速で! 名目はこうだ、『独裁を強めるセイラン家の方針に反発して、軍を追放された不平分子』! 彼らを武装解除せず、ムラサメごと『正義の義勇軍』としてアークエンジェルに合流させる手筈を整えてくれ! 援軍だ、援軍を送るんだよ!!」

 

 

 

 

 俺はトダカの肩を掴んで激しく揺さぶった。もはやなりふり構っていられない。

 

 

 

 

「そいつらにドッズライフルも全部持たせてやってくれ! 陽電子リフレクターのデータもな! 冷静に考えろ! こんな情勢で脱走兵がえっちらおっちら移動してたら、最悪ザフトか連合に見つかって殺されかねん!」

 

 

 

 トダカは俺のあまりの剣幕に引き気味だったが、俺の頭の中はフル回転だ。

 

 

 

 原作のムラサメ隊は、確かに精鋭だった。だが、今の世界は俺が引っかき回したせいで「何が起こるか分からない地獄」に変貌している。もし途中で撃墜されて合流に失敗してみろ。戦力不足でアークエンジェルが沈み、カガリまで海の藻屑だ。

 

 

 

「いいか! 『追放』されるんだから、腹いせに最新兵器を強奪していったって設定にするんだよ! ドッズライフルがあれば、あのクソデカいデストロイの腹に穴を開けられる。リフレクターのデータがあれば、キラのフリーダムだって無駄打ちせずに済むだろ!?」

 

 

 

 

「ユウナ様……それ、後始末が大変ですぞ。軍の最新機密を盗まれたとなれば、責任問題どころでは……」

 

 

 

 

「責任なんて俺が全部取ってやる! どうせ俺は『独裁者』なんだろ!? 悪役の特権をフル活用してやるよ! だから今すぐ、腕利きのパイロットをまとめて、アークエンジェルを追いかけさせろ! 早くしないと、あいつら本当に迷子になるぞ!」

 

 

 

 

 

 俺がまくし立てると、トダカは一瞬、何か言いたそうな顔をして俺を凝視した。

 

 

 

 

 

 

 ……えっ、何その顔? まさか原作みたいに「貴殿のやり方は間違っている!」とか言って反発されちゃうわけ? ここでトダカと揉めるのは流石にメンタルにくるんだけど!?

 

 

 

 

 

 だが、トダカは深く、本当に深いため息をつくと、諦めたように肩の力を抜いて部屋を出ていった。

 

 

 

 

 ……いや、今の顔。どっちかっていうと「反発」じゃなくて「呆れ」だよな?

 

 

 

 

 

「……まあ、いつものことか。大丈夫だろ」みたいな、保護者が聞き分けのない子供を見るような、そんな生暖かい視線を感じた気がするんだけど。

 

 

 

 

 

 トダカがいなくなった静かな執務室で、俺はガクッと膝をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうやだ……今日は不貞寝する……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 床に突っ伏し、虚空を掴むように呟くユウナ。だが、彼は知らなかった。

 

 

 

 

 

 先ほどトダカが一瞬見せた「言いたげな顔」の中身は、原作の様な反発でも、独裁への危惧でもなかったということを。

 

 

 

 

 

 トダカは、ただこう言おうとしたのだ。

 

 

 

 

 

 

「……普通にカガリ様に通信を入れれば済む話では? ムラサメ隊がアークエンジェルを追えるのなら、当然ジャミングも通信拒否もされていませんし。なぜそんな、わざわざ『追放劇』なんて大掛かりな茶番を仕組む必要があるのですか? 何か勘違いをされていませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

  ユウナは一つ、決定的な勘違いをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 この世界に、ふざけた「歴史の修正力」なんて超自然的なものは存在しない。ユウナという人物に元視聴者の意識が憑依しているという一点を除き、それ以上のオカルト的な強制力はどこにも存在しないのだ(シンの霊感は例外だが)

 

 

 

 

 歴史というものは、本来大きな川のようなものである。一箇所に岩を投げ込み流れを塞いだとしても、水はただ低い方へと、あるいは勢いの増した方へと新たな筋を作る。そこに「元の形に戻ろう」とする意思などない。

 

 

 

 

 ユウナが「修正力の仕業だ」と忌み嫌う現象の正体は、すべて冷酷なほどシンプルな因果関係の産物だ。

 

 

 

 

 カガリがアークエンジェルと共にオーブを離れたのは、運命が彼女を呼び寄せたからではない。ユウナが「カガリには光の道を歩ませる」と称して、軍事や政治の生々しい裏側をすべて独りで抱え込み、彼女を徹底的に蚊帳の外へ置いたからだ。

 

 

 

 何も知らされず、ただ自身のために闇を背負い続けるユウナを見た彼女が、唯一の血縁者であるキラたちの元へ身を寄せたのは、人間として極めて自然な反応だった。その上で迷わずにカガリは自身のすべき事を理解して行動を開始したのだ。ふとユウナの過去の発言を振り返って見よう。そして今後の情勢を見極めれば答えは自ずと見えてくるはずだ。

 

 

 

 

 

 ユウナは、自分が折ったはずのフラグを、自分自身の空回りと「説明不足」という名の過剰な演出で再構築していた。

 

 

 

 

 この滑稽な自作自演に、本人が気づくことは今はまだない。

 

 

 

 

 

「……ふん、見てろよ。修正力なんて、俺のドッズライフルで風穴を開けてやる…!」

 

 

 

 

 

 そう毒づきながら、自分の撒いた種で起きた嵐に立ち向かおうとする「自称・独裁者」の背中は、どこか悲哀と、それ以上の滑稽さに満ちていた。

 

 

 







・歴史の修正力。

 そもそも歴史の修正力なんてものがあるのなら北京は消滅してますし、ブレイク・ザ・ワールドも防げませんし、アスランがホウレンソウマンになってませんしリヴァイアサンなんてやべぇ兵器は産まれません。

 ユウナは自分が憑依転生したと言うオカルト的な事象に巻き込まれてしまったという経験のせいで、歴史の修正力(最終的に強引に悲劇は起こり自分はグフに潰される)なんてものが本当にあると信じていますが、そんなものはなく。しかし、知る術もないので結果としてアークエンジェルの脱走を本気で歴史の修正力と勘違いしてしまうのでした。



 トダカさんが指摘すればどうにかなりましたが、あまりにも奇行を重ねてるせいでユウナなりに考えがあるんだろう多分…と現場猫モードなっているので普段の行いって大切ですね。しかもユウナは責任は俺が取ると言いましたし……ちなみにヒントとして筆者はこの作品を描くにあたってメーデーを見ています。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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