破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
ムラサメ隊を「追放」という名の密命で送り出してから数日が経った。
俺はモルゲンレーテの試験場に赴きつつ、タブレットでそれとなくミネルバの動向を探っている。幸い、ダーダネルスやクレタでの悲惨な撃墜報告は入っていない。あれだけ目立つ船が沈没すりゃ目立つのだからすぐに分かる。
カガリがあっち(アークエンジェル)に行ってしまった以上、アスランからの生存報告を兼ねた定期連絡も途絶えてしまったが……あいつのことだ、きっと上手くやってるんだろう。そう信じたい。
そう思いつつ、俺は今日、別の案件に思考をシフトさせた。
「アストレイ・リヴァイアサン」の稼働テスト。着手からわずか一ヶ月、まだ試験的ではあるが、俺はこの機体のコンセプトを改めて振り返る。
この機体の核となったのは、俺の脳内にある別世界の知識……『IS(インフィニット・ストラトス)』に登場する、水を、正確には水をナノマシンで制御して操る機体の概念だ。
オーブ連合首長国が連合軍の水中用MS、特にあの忌々しいフォビドゥンヴォーテクスへの回答として、モルゲンレーテ社で極秘開発させた水中特化型防御・制圧用試作機。それがこの「リヴァイアサン」だ。
「……『アストレイ』なんて名前を付けてはいるけど、中身は別物だよな。エリカさんに『水を機体の一部にしろ』なんて無茶振りした時は、流石の彼女も正気を疑うような顔をしてたけど」
だが、天才は本当に形にしてしまった。
全身を覆う「アクティブ・スケイル・システム(A.S.S.)」によって機体表面の磁場を制御し、周囲の海水を分子レベルで操る。
連合が「水の抵抗を消す」ことで高速移動を実現したのに対し、こいつの思想はその真逆。「海を支配し、海そのものを武器にする」ことにある。
周囲の海水を磁場で超高圧に圧縮して形成する「水流防壁」は、フォノンメーザー砲すら屈折させ、実体弾を水圧で粉砕する。
そして攻撃。螺旋状に収束させた高圧水流で敵を圧殺する「水流破砕」や、キャビテーション現象を至近距離で叩きつける「キャビテーション・ニードル」。
これらは連合の『ゲシュマイディッヒ・パンツァー』による力場干渉すら、物理的な質量と衝撃で強引に食い破る。
「100ノットで突っ込んでくるヴォーテクスに対して、そいつの進路上の海水を一瞬で『鋼鉄』に変えてやるんだ。自慢の加速で自爆する敵を見るのは、さぞかし気分がいいだろうね」
この「海水の直接制御」というデタラメな出力を支えるのは、海底に敷設された電力グリッドから供給される無限に近いエネルギーだ。まさにオーブ近海における「絶対的な支配者」。
かつての「水中の不公平」を技術的な暴力で塗り替える、深海の怪物。
そこまで一人で格好良く浸っていた俺だったが、ふと我に返ってモニターに映る完成予想図を指差し、壁を突き破らんばかりの勢いで絶叫した。
「なのにさぁ! これのどこがアストレイなんだよぉぉぉぉ!!!」
俺の咆哮が虚しく響く。
なるほど、確かに細部を見れば、頭部のセンサー配置や装甲の端々に「アストレイ」の面影はある。開発チームの、せめてもの意地のようなものは感じられる。
しかし、デカい。マジでデカい。
MSとしてのサイズを完全に逸脱している。その全高はサイコガンダムはおろか、これから戦うことになるであろうデストロイガンダムに匹敵、あるいはそれ以上に巨大だ。
リヴァイアサンというより、もはや動く海底要塞である。実質レベル4のレベル5モンスターじゃねぇよ!レベル8の大要塞なクジラさんぜよバーカ!!!
「ねえエリカさん、俺の記憶が正しければ、アストレイってもっとこう……シュッとしてて、軽快な人型機体だったはずだよね!? なんで海に浮いてる氷山みたいなサイズになってんの!? これ、もはやMSじゃなくて『MA』じゃん!!」
モニターの中の怪物は、海水制御デバイスを詰め込みすぎた結果、MSというよりは深海に潜む甲殻類と巨人を悪魔合体させたような、威圧感の塊と化していた。おかしい書類的にはMSだったはず。
「……ユウナ様。磁気流体制御鱗(A.S.S.)を全身に配置し、かつ水流防壁を維持するための大出力ジェネレーターを積んだ結果、フレームの剛性を保つにはこのサイズが限界だったのです。それに、名前がアストレイであれば、予算申請も『改修機』として通しやすいですし……」
遠隔モニター越しに、どこか遠い目をしたエリカ・シモンズが事務的に答える。
嘘だ。絶対この人、後半は「面白そうだから」って理由で技術を盛り盛りにしたな!?
「『改修機』で通るかこんなバケモノ!! 連合の偵察衛星が見たら『オーブが海からデストロイ生やした』ってパニックになるだろ!!」
俺は叫びながら、ふと前世の記憶の片隅にある「黒い巨大なガンダム」を思い出した。そういえば、あっちの世界の『サイコガンダム』だって、中身はただの巨大な怪物なのに「ガンダム」という名前を冠することで予算を分捕ったって設定があった気がする。
……え、何? オーブの連中ってそんなにチョロいの?
「アストレイ」か「カガリ様」に関係する名前さえ付いていれば、中身が深海のクトゥルフみたいなバケモノでも「ああ、新型のアストレイね! よし通せ!」ってなっちゃうの? 盲目すぎるだろ国民性!
「……ユウナ様、別にアストレイのフレーム構造にこだわる必要はありません。そもそもユウナ様が提示された『巨大MA(デストロイ)』のスペックデータ……あれに対抗するためには、MSの枠組みに収めておく方が非効率的です」
エリカさんは遠い目をしたまま、さらりと恐ろしいことを口にした。
そう。俺は以前、未来知識を「予測シミュレーション」と偽って、デストロイガンダムの推定スペックや武装、陽電子リフレクターの特性を技術部に叩きつけていたのだ。
「あれだけの化け物を正面から、それも水中から一方的にねじ伏せる。そのための出力を計算すれば、自ずとこのサイズに収束します。……それに、アストレイは『王道ではないもの』という意味。この異形こそ、ある意味では最もアストレイらしいと言えるのではありませんか?」
「詭弁だ! 圧倒的な詭弁だよエリカさん!! それ言えば何でもアストレイになっちゃうだろ!!」
俺は机を叩いて抗議したが、エリカさんは「では、テストを続行します。リヴァイアサン、注水開始」と無慈悲に通信を切った。
モニターの中では、アストレイ(自称)の巨大な質量が、ドックを満たす海水に沈んでいく。その姿は、守護神というよりは、獲物を待つ捕食者のそれだ。
「A.S.S.、起動」
エリカさんの淡々とした号令とともに、モニターの中の巨体が微かに震えた――ように見えた。だが、おかしい。水中だぞ? あれだけの巨体が起動したなら、普通はもっとボコボコと泡が吹いたり、駆動音がマイクを突き抜けたりするはずだろ。
「ねえ、本当に動いてるの? 泡の一つも出ないし、無音なんだけど」
「……ユウナ様、静粛性は水中機において最も優先されるべき性能です」
エリカさんが呆れたように補足する。
「海の中では、敵は目視よりもソナーを頼りにこちらを探ります。アクティブ・スケイル・システムによって周囲の海水を分子レベルで制御している本機にとって、水の抵抗によるノイズなど存在しないも同義。文字通り、海に溶けているのです」
なるほど、海そのものが機体の一部なんだから、動いても「水が動いた」としか検知されないわけか。ステルス性能の極致だな。
「……って、それにしたって不気味すぎるだろ。デストロイサイズのバケモノが、深海を無音で迫ってくるなんて、完全に深海パニック映画のクリーチャーだよ。で、肝心の機動性はどうなんだ? 流石にあのヴォーテクスに追いかけっこで勝てるとは思わないけど、どれくらい動ける?」
俺の問いに、エリカさんは少しだけ言いにくそうに視線を逸らした。
「……正直なところ、純粋な巡航速度や旋回性能だけで言えば、グーンに毛が生えた程度とお考えください」
「は!? グーン!? あの太ったセミみたいなやつに毛が生えた程度なの!?」
「ええ。そもそもこの巨体です。さらに言えば、先ほど説明した大出力アンビリカル・ケーブルによる電力供給が前提の設計ですから、あまり広範囲を縦横無尽に駆け回ることはできません。文字通り、拠点防衛に特化した『動く要塞』なのです」
俺はガクッと肩を落とした。
なんだよ、最強のステルス性能を持ちながら、移動距離は「コードの届く範囲内」かよ! 掃除機かお前は!
「ユウナ様。モビルスーツという兵器が普及してからというもの、世の中には『万能』だの『マルチロール』だのという言葉が溢れすぎているとは思いませんか?」
エリカさんは急に、哲学的なトーンで語り始めた。
「空も飛べて、地上も走れて、宇宙でも戦える。そんな器用貧乏な設計では、本当の意味での『絶対的な暴力』には届きません。このリヴァイアサンは、機動性を捨て、汎用性を捨て、ただ『海そのものを支配する』という一点にのみ、全リソースを注ぎ込んだ結果なのです。これこそが、特化型兵器の極致と言えるでしょう」
「……いや、いいこと言ってる風だけど、要は『重すぎて動けないから固定砲台にした』ってことだよね?」
「言葉の綾です」
エリカさんは平然と言い放った。
なるほど、オーブ近海なら最強。だが一歩外に出れば、ただの巨大な鉄クズ。実に極端だ。実にオーブらしいというか、エリカさんらしいというか。
(……でも、こういう機体は嫌いじゃない。シグルブレイドによる接近戦特化のヴェイガンのゼイダルスみたいに、一つのことに全振りして『特定の条件下では無敵』って方が、ロマンがあるし兵器としての説得力があるよな)
もちろん、そんな前世のアニメ知識を口にするほど俺も馬鹿じゃない。内心の興奮を抑えつつ、俺はエリカさんに向けて、もっともらしい称賛の言葉を選んで口にした。
「……いいよエリカさん。何でもかんでも詰め込んで中途半端な器用貧乏になるより、一つの目的のために全てを切り捨てる潔さは、兵器として正しい進化だ。俺はそういう特化型の思想、高く評価するよ」
俺の言葉に、エリカさんは「ご理解いただけて光栄です」と、少しだけ満足げに口角を上げた。
「ではユウナ様、その『特化』の真髄を確認しましょう。システムの最終試験に移ります。A.S.S.による海水の密度固定、およびキャビテーション・ニードルの連動テストです」
モニターの中で、リヴァイアサンがゆっくりと、だが確実に「海」を支配下に置き始める。
注水されたドックの中で、機体周辺の海水が磁気流体制御によって波紋一つ立てずに凝縮されていく。まるで機体の周りだけ、空間そのものが結晶化したかのような視覚効果だ。
「……すごいな。本当に『水』が物理的な盾として機能してる」
「これこそが、ユウナ様が仰っていた『水を機体の一部とする』回答です。周囲の水を磁場によって瞬時に超高圧状態へ固定。物理的な衝撃はすべてこの水流防壁が拡散し、減衰させます。内部のフレームには一切の負荷をかけません」
さらに、機体の指先に高周波振動が収束される。
直後、ソナーの波形が狂ったように跳ね上がった。目視では何も起きていないように見えるが、指先の極小範囲において海水が「沸騰」し、真空の穴が発生――次の瞬間、周囲の海水がその「穴」を埋めようと猛烈な勢いで流れ込み、凄まじい衝撃波を発生させた。
キャビテーション現象の局所的発生と、その制御。
「……完璧だ。これなら、どんなに分厚い装甲を持った潜水艦も、ヴォーテクスのような特殊な力場を持つ機体も、等しく引き裂ける」
俺は満足げに頷いた。行動半径や射程に関してはまだまだかもしれないが、今後に期待しておこう。
この一ヶ月、寝る間も惜しんでエリカさんたちと(主に俺の無茶振りのせいで)開発してきた甲斐があった。
カガリがオーブを離れ、アークエンジェルが外の荒波に揉まれている今、俺にできるのはこの「絶対防衛の盾」を完成させることだ。
「よし、試験継続。各データのフィードバックを急いでくれ。カガリたちがいつ戻ってきてもいいように、この海を世界で一番安全な場所に作り変えるぞ」
俺はモニター越しの「深海の怪物」を見つめながら、独りごちた。
たとえ俺自身がその怪物の産みの親として、後世の歴史家に「狂気の独裁者」と書き立てられることになったとしても、この結果だけは譲るつもりはない。
・AA隊
内容としては少しずつ伏線を挟みつつ最後に収束して一気に真相を!となる予定が、コメント欄を見る限りこれ大丈夫かな?とめちゃくちゃ怖くなってたり。まぁここまできたらやり切ります
・リヴァイアサン
結果的にはサイコガンダムやデストロイクラスの大きさになる事に。最初から一般機体サイズのリヴァイアサンを並べるよりは大きなサイズのリヴァイアサンをオーブの要衝各地に配備する事で、近づく的に粉砕する防衛兵器となりそうです。モビルアーマーというよりはモビルフォートレス(要塞)って下手すると呼ばれそう?
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン