破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
今回は独自設定が多めのお話でタグに独自設定を追加させて頂きました。少々長めですが楽しんでいただけると幸いです。
この世界に来てから、俺が密かに、かつ熱心に調査していたことがある。それは「サブカルチャー」の動向だ。
幸いなことに、ジャンプやサンデーといった雑誌は(掲載されているタイトルは違えど)健在だし、過去の歴史にある名作群もデジタルアーカイブを漁ればそれなりに楽しむことができる。文化の土壌そのものは、俺がいた世界とそう大きくは変わらない。
だが、決定的な一点において、この世界のサブカル史は俺の知るものと致命的に異なっていた。
この世界には……『機動戦士ガンダム』という作品、およびそれに類する「リアルロボットアニメ」の歴史が、綺麗さっぱり存在しないのだ。
もちろん、ロボットアニメというジャンル自体はある。だが、その主流は今も昔も「スーパーロボット」だ。ドリルが天を貫いたり、正義の心が一つになったりになったりする熱血活劇が王道。
人型兵器が戦略兵器として運用され、弾薬の残数を気にしながら泥臭い戦場を這い回る……そんな「リアル」を追求する概念そのものが、娯楽の世界には芽生えていなかった。
機動戦艦ナデシコは影も形も存在せず、実際に放送されたゲキ・ガンガー3がスパロボに参戦していると知った時は頭を抱えたくなった。
(……だからこそ、僕が持ち込んだ『知識』がこれほどまでに猛威を振るってしまうわけだ)
俺が提示する兵器思想が、エリカ・シモンズのような天才たちに「不可解かつ画期的」と評される理由。それは、この世界の人類が初めて直面した「見たこともないロジック」だからに他ならない。
現実の戦争に「ガンダム」が存在するのに、空想の世界には「ガンダム」が存在しないのだ。
それは本当に徹底しており、例えば、リヴァイアサンの開発に大いに影響を与えたIS〈インフィニット・ストラトス〉も、この世界には影も形も存在しない。
あのアニメも、各武装の名称やシステム構成に「ガンダム」的なリアルロボットの記号を内包していたからなのか、あるいは歴史の大きな分岐点に触れてしまったからなのか、とにかく存在していない。
(……惜しいよなぁ……ちなみに俺は更識楯無派だ。あぁいう余裕のあるイタズラ好きな包容力のある女の子が、絆されてデレるというのは実にいいものなんだ。あの扇子で煽られたかった……)
そんな個人的な嘆きはさておき、影響はもっと細かい部分にも及んでいる。
デジタルアーカイブで見つけた名作『NARUTO』。これも忍術の概念などは変わらないが、一部のキャラクターに異変が起きていた。
暁の一員である角都。
俺の記憶では、彼の技名は『地怨虞』の心臓ごとに「火遁・頭刻苦」だの「雷遁・偽暗」だのといったガンダムのMSから取られた名前だったはずだ。だが、この世界の角都は違う。
「火遁・武霊巣都馬安!」だとか「雷遁・超電磁竜巻!」だとか、完全にゲッターやマジンガー、コン・バトラーVといったスーパーロボット寄りのネーミングに改変されているのだ。試し読みしたがシリアスなシーンなのに、技名が出るたびにこっちは変な笑いが出そうになる。
「……リアルロボットという概念の欠如。それがこれほどまで世界に馴染んでいるとはね」
この世界の人間にとって、MSは「アニメの中の空想」を飛び越えていきなり現れた「未知の技術」なのだ。だからこそ、俺が前世の記憶から引き出す『理論』は、彼らにとって魔法のような独創性を持って響く。
そんな皮肉な捻じれを孕んだまま、俺の孤独な開発計画は次なるステージ――「国防宇宙軍」の再編へと向かっていく。
きっかけは突然だった。
ある日、俺が執務室でリヴァイアサンの最終調整と、カガリがいなくなった後の内政処理という名の書類山に忙殺されていた時のことだ。
「ユウナ様、少々よろしいでしょうか」
トダカが、いつになく言い難そうな顔で入ってきた。またカガリ関連の頭痛い報告か、あるいはムラサメ隊が何かやらかしたか……と身構えた俺に、彼は意外な言葉を口にした。
「国防宇宙軍の幹部から、少々……突き上げに近い陳情が届いておりまして」
「宇宙軍? 不満でも溜まってるのか? 予算なら削った覚えはないぞ」
「いえ、不満というわけではないのですが。その……羨ましがっているのです」
トダカの説明によると、こうだ。
空軍には、戦局を覆すレベルの『ケイオス爆雷』が配備された。
陸軍には、その防衛用モデルと、規格外の性能を誇る『エタニティ・アストレイ』が与えられた。
そして海軍には、今まさに『リヴァイアサン』という深海の怪物が爆誕しようとしている。
「自分たち宇宙軍だけ、ユウナ様からの技術提供がないではないか、と。彼らもプロですから表立って反抗はしませんが、視察に行くたびに現場の将校から『海や陸はいいですな』と嫌味を言われる私の身にもなっていただきたい」
一瞬、「お前ら子供か!?」と叫びそうになった。
「隣の家の子が新しいおもちゃ買ってもらったから僕も欲しい」みたいな理屈で国防の根幹を語るなよ! と。
だが、すぐに思い直す。
宇宙軍はこれまで、オーブの中でも一番苦労してきた連中だ。先の戦いでも真っ先に戦火に晒され、今もプラントや連合の動向を最前線で監視し続けている。予算だけじゃない、「お前らを見捨ててないぞ」という具体的な信頼(暴力)の形を求めているんだろう。
「……分かったよ。確かに、宇宙の守りが今のままじゃ片手落ちだ」
俺はペンを置き、椅子の背もたれに深く寄りかかった。
とはいえ、いきなり何か画期的な新技術を考えろと言われても、これがなかなか難しい。なんせここは、すでにMSが実用化され、空想上のロボットたちが好き放題に飛び回っているかのようなC.E.の世界だ。
一応、あのお星様になった中将から掠め取った艦艇データはあるが、今のオーブ宇宙軍の台所事情を考えると、扱える機材には偏りがある。
そう、今のオーブ宇宙軍は、どこを見ても「イズモ級」ばかりなのだ。
なぜ、これほどまでに艦種が偏っているのか。それには、前大戦でオーブが地球連合軍に占領された際の、苦渋の決断が背景にある。
当時、本土が蹂躙される中で宇宙軍は選択を迫られた。連合に投降して組織を残すか、無謀な徹底抗戦で散るか、あるいはどこかへ潜伏するか。
結論から言えば、彼らの大部分は「アメノミハシラ」へと避難し、ロンド・ギナ・サハクの庇護を受ける道を選んだ。
その際、宇宙軍は連合に対して痛烈な意地を見せている。持っていけない旧型艦や設備は、第一次世界大戦で敗北したドイツ帝国海軍がスカパ・フローで行った大自沈さながらに、連合の鼻先ですべて自沈・破壊して「再利用」を拒んだのだ。
そうして基地を放棄したと見せかけ、戦力として優秀な比較的新鋭の「イズモ級」だけを船籍偽造やカモフラージュによって密かにアメノミハシラへと逃がした。
「……つまり、今残ってる連中は、あの屈辱を耐え抜いて『オーブの牙』を隠し持っていた一番の武闘派ってわけだ。そんな奴らに、お茶を濁すような兵器は渡せないよなぁ」
俺は手元の端末に、イズモ級の三面図を表示させる。
この艦は確かに優秀だが、今やザフトのミネルバ級や連合の新型艦を相手にするには、正面からの打ち合いでは分が悪くなってきている。
しかも、彼らの背負っているものは単なる「敗北」だけじゃない。
アメノミハシラに逃れた後、彼らはロンド・ギナ・サハクの命令によってヤキン・ドゥーエの最終決戦への出撃を禁じられた。大部分が正規軍に復帰した今も、彼らはそれを「最大の恥」として刻んでいる。
カガリたちが傷つきながら世界を救っている間、自分たちは裏でぬくぬくと生き延びて終戦を迎えてしまったという、軍人としての苛烈な自責の念だ。
「二度と、あんな屈辱は味わいたくない――か」
だからこそ、今の宇宙軍の士気は異常なほどに高い。アスハへの忠誠心も、あの時の申し訳なさを埋めるかのように過熱している。
思えば『ブレイク・ザ・ワールド』の時もそうだった。俺が「カガリ様を迎えに行け」「ユニウスセブンを破壊して人々を救え」と出撃命令を下した時の彼らの狂喜乱舞ぶりといったらなかった。
落下する破片を砕くため、文字通り命を賭けて火中の栗を拾いにいったのは、あの「不戦の恥」を雪ぐためでもあったんだろう。
そんな熱量を秘めた連中が、指をくわえて陸・海・空の新型機を眺めていたわけだ。トダカが突き上げを食らうのも無理はない。
とはいえ、流石に俺も頭を抱えた。
このC.E.(コズミック・イラ)という世界は、設定を掘れば掘るほどナノマシンすら実用化されているような超技術の宝庫だ。これまでのようには、なかなか画期的な「未発見のロジック」が思いつかない。
「……うーん、これはボツ。SFに寄りすぎててオーブの現行技術じゃ理論が追いつかない。こっちもダメだ、実証試験だけで一年以上かかる。そんなに待ってたら大戦が終わっちまうよ」
デスクの上に広げたホログラム・ウィンドウには、書き殴っては消したアイデアの残骸が積み上がっている。
たとえば、空間そのものを湾曲させて射撃を逸らす「空間歪曲シールド」――今の段階では電力消費がバカげたことになり、艦隊ごと動けなくなる。というかそんなもん出来るわけないだろ無理な分は勇気で補えとか言われても困るわ。
あるいは、ナノマシンによる自己修復装甲――技術的には可能だが、制御を誤れば艦そのものがナノマシンの塊になって自壊するリスクがある。やだよ一足早い黄金の秋の到来なんて。
というか、今の状況で一番大事なのは「納期」だ。できれば既存のイズモ級をベースにして、工期を極限まで短縮できるような、馬鹿みたいにシンプルな機構の装備じゃないと、この大戦のスピード感には間に合わない。
「……安価で、量産性が高くて、宇宙での火力を補うもの……」
ふと、前世の記憶から「ボール」や「オッゴ」といった、丸っこいドラム缶に大砲を付けただけの急造兵器が頭をよぎる。……が、即座に首を振って却下した。
いくらなんでも、あんな「動く棺桶」でザクウォーリアやウィンダムに挑めなんて、パイロットに死ねと言っているようなものだ。いくら士気が高いとはいえ、俺は部下を無駄死にさせるために独裁者をやってるんじゃない。
冷静に考えてみろ。オーブは、仮想敵であるプラントや連合と比べて、人材も金も圧倒的に余裕がないんだ。
プラントはコーディネイターという超エリート集団の国だし、連合は単純な物量と資金力で俺たちを圧倒している。向こうが「10」の力を持っているなら、俺たちは「3」か「4」の資源でそれを上回る結果を出さなきゃいけない。
「MSの性能競争で正面から殴り合っても、結局は消耗戦で負ける。宇宙軍が持ってる『イズモ級』という大きな母体を、そのまま強力な暴力装置に変えるような……それでいて、構造は単純な……」
俺は腕を組み、再びイズモ級の構造図を見つめる。
豪華な新造艦を作る余裕はない。なら、今の艦艇に「ある極端な機能」を追加するだけで、戦場そのもののルールを書き換えられないか?
真っ先に俺の頭に浮かんだのは、あのお星様になった中将からパクったデータにある「陽電子リフレクター」だ。ビームも実弾もミサイルだって無効化するあの鉄壁の盾があれば、イズモ級の生存率は跳ね上がる。
「なあトダカ、イズモ級に陽電子リフレクターを積めないか?それも機体を全面で覆うって」
俺の問いに、トダカは表情を変えずに即答した。
「不可能です」
「……早っ。いや、検討くらいしてくれてもいいだろ」
「いえ、技術的には可能です。頂いたデータを元に、エリカ殿が既にシミュレート済みですので」
いや、早いな!? というかエリカさん、そういう大事な進捗は俺に真っ先に報告しろや! あの人、俺が「ロマンだ」とか言い出す前に、裏で着々と理論上の限界を見極めてやがる……。
「で、できるのに不可能っていうのはどういうことだ?」
「正面限定ならともかく、イズモ級を全面で陽電子リフレクターで覆うと、まともに戦闘できなくなるのですよ。何せ、あれは電力をバカ喰いします。展開中は艦内の全エネルギーをリフレクターに回すことになり、主砲も撃てず、エンジン出力も最低限……文字通り、ただ浮いているだけの『光る標的』になってしまうと」
俺は思わず天を仰いだ。
連合のデストロイが陽電子リフレクターを平然と使いこなせているのは、あの巨体そのものが「ほぼ戦艦サイズ」の巨大なジェネレーターの塊だからだ。
逆に言えば、戦艦並みの出力を誇るデストロイであっても、機体の一部を覆う程度のリフレクターを維持するのが精一杯。それなのに、デストロイより遥かに巨大なイズモ級の全身をリフレクターで包もうなんて……。
「……そうか。デストロイとイズモ級じゃ、そもそも体積が違いすぎるんだな」
俺は端末で両者のサイズを比較表示させてみた。
デストロイも大概バケモノじみた大きさだが、イズモ級は全長数百メートル。守らなきゃいけない面積が桁違いだ。デストロイの出力をさらに何倍も引き出さなきゃ、イズモ級をまるごと包むバリアなんて維持できるはずがない。
「つまり、イズモ級の出力では、全面展開した瞬間にエネルギー切れで漂流。運良く維持できても、自慢のゴットフリートを撃った瞬間にブレーカーが落ちてリフレクターが消える……。そんな不格好な機体、実戦じゃ使い物にならないか」
トダカは静かに頷く。
「左様です。盾を張るだけで手一杯。これでは宇宙軍の諸君が望む『牙』にはなり得ません。彼らが求めているのは、敵を一方的に蹂躙できる圧倒的なアドバンテージなのですから」
俺は腕を組み、唸る。防御に回せば攻撃ができず、攻撃に回せば脆いまま。まさに二律背反
「……待てよ。だったら、発想を逆転させればいいんじゃないか?」
俺の脳裏に、かつて見た「別の宇宙の戦争」の断片がよぎった。
「なあトダカ、君は『銀河英雄伝説』って作品を知っているか?」
「……随分と古典な作品を。もちろん、存じておりますよ。軍人、特に艦長職に就く者であの物語に憧れを抱かない者はいないでしょう。現実の戦争とは程遠い、美しき智略の応酬……空想の産物と分かっていても、惹かれるものがあります」
トダカは少しだけ懐かしむような目をしながら答えた。
地の文で補足しておくと、この世界において『銀英伝』はデジタルアーカイブに残る数少ない名作戦記ものの一つだ。
ガンダムのようなリアルロボットが存在しないこの世界では、宇宙戦争のイメージといえば、数万隻の艦隊が陣形を組み、互いにビームの奔流を浴びせ合う、この作品のような「大艦巨砲主義の極致」がスタンダードなのである。
「まぁ、個人的には『宇宙戦艦ヤマト』の方が、一隻の戦艦が逆境を跳ね返すカタルシスがあって好きですがね」
トダカがそんなマニアックな好みを漏らす中、俺はニヤリと笑って核心を切り出した。
「トダカ、この問題の解決策は『銀英伝』のリップシュタット戦役に鍵があるぞ?」
「……リップシュタット戦役?」
トダカは一瞬、記憶のアーカイブを検索するように目を細めた。そして、門閥貴族連合軍とラインハルト率いる新帝国軍が激突したあの内乱の推移を思い出し――目を見開いた。
「……まさか」
「そう、『盾艦』だ」
俺がそう告げると、トダカの表情に複雑な色が混ざった。
俺はさらに畳み掛ける。
「トダカ、嫌なら答えなくてもいい。海軍における小型艦艇の、決戦の際の一番の役割は何だと思う?」
トダカは少し嫌そうな顔をした。現場の叩き上げであり、部下を愛する彼にとって、それはあまりに非情な軍事の真理だからだ。だが、彼は逃げずに、絞り出すように答えた。
「……対空砲火などで防衛網を形成し、主力艦への攻撃を逸らすこと。そして……いざとなれば、身を挺して主力艦のための『盾』になることです」
その答えを聞きながら、俺は前世で読んだ第二次世界大戦の記録を思い出していた。
レイテ沖海戦における米軍の駆逐艦ジョンストン。あるいは日本軍の防空駆逐艦。彼らは巨大な戦艦や空母を守るため、圧倒的な火力を誇る敵艦隊の前に自らを晒し、盾となって散っていった。
だが、この世界に、俺が指揮するオーブに、そんな悲劇的な「盾」は必要ない。
「そう、今までの『盾』は、誰かの命と船を使い捨てにする前提だった。だが、俺がやりたいのはそんな英雄的自己犠牲じゃない。極限まで防御に特化した『物理的な壁』をイズモ級の前に置くことだ」
俺はホログラム上にイズモ級を映し出し、その艦首に巨大な、あまりに無骨な外装ユニットを書き加えた。
「陽電子リフレクターを使えば電力を食い潰して動けなくなる。攻撃もできない。なら発想を逆転させるんだ。その艦は『動くこと』も『撃つこと』も捨てて、ただひたすら艦隊の『盾』であることだけに特化させる」
俺が描いたのは、イズモ級の艦首を巨大な多重装甲板で覆い、その隙間から陽電子リフレクターを幾重にも展開する異形の姿だった。
「こいつは自力で戦わなくていい。強力なスラスターで艦隊の先頭に陣取り、リフレクターの出力を最大にして固定砲台のごとく立ち塞がる。イズモ級の全出力を防御一点に注ぎ込めば、連合の艦隊火力だって数時間は耐え抜けるはずだ。全面を覆うのはまた研究が進んでからだけどな?」
トダカが息を呑む。
この戦術の肝は、後ろに控える「普通の」イズモ級やムラサメの部隊にある。
「こいつがビームもミサイルも全部受け止めている間に、本隊はその後ろから悠々と接近し、敵の射程外から一方的に主砲を叩き込むんだ。リップシュタット戦役でラインハルト達の艦隊を足止めしたあの戦術を、C.E.の技術で再現する」
俺がそう断言すると、トダカの脳裏にもあの「銀河の戦史」の光景が浮かんだようだった。
ここで、この世界のアーカイブにも残る『盾艦』という概念について整理しておこう。
銀河帝国の貴族社会において、盾艦は決して単なる「使い捨ての肉壁」ではない。それは主君に対する絶対的な忠誠の証であり、主艦に付き従ってその身を盾にすることは、帝国騎士としての最高級の栄誉、あるいは「忠臣の華」とすら見なされていたのだ。
主君の盾となって散る。それは悲劇ではなく、一族の誇りとして語り継がれるべき献身――。
「……ユウナ様。まさか、あの帝国貴族たちの『精神性』まで再現しようというのですか?」
トダカが驚きを含んだ声で問いかけてくる。俺はニヤリと笑って、手元のホログラムを操作した。
「ああ、その通りだ。今、宇宙軍の連中が抱えているのは『守るべき時に守れなかった』という激しい自己嫌悪だ。彼らに必要なのは、カガリへの忠誠を具体的な形にするための『特等席』なんだよ。艦隊の先頭に立ち、全ての火線をその身に引き受け、アスハの艦をかすり傷一つ負わせずに勝利へ導く……。これ以上の栄誉が、今の彼らにあるか?」
陽電子リフレクターを艦首に集中配備した、イズモ級の改修案。
攻撃能力を削ぎ、機動力すら犠牲にして、「守ること」だけに全神経を研ぎ澄ませた鋼鉄の巨躯。
「いいか、トダカ。俺の作る『盾艦』は、単に効率がいいだけの人権無視の兵器じゃない。宇宙軍という、一度は誇りを失いかけた男たちの『忠義の器』だ。彼らが『俺たちが盾だ!』と胸を張って言えるだけの絶対的な強度と、それに見合うだけの戦場での存在感が必要なんだ」
俺が語る「忠臣の栄誉」という言葉に、トダカは沈黙した。
軍人にとって、死ぬことよりも辛いのは「守るべきものから遠ざけられること」だ。それを熟知しているからこそ、彼はこの一見非効率に見える特化案の正解を悟ったのだろう。
「……なるほど。貴族社会の悪習ではなく、その『献身の美学』だけを、オーブ国防軍の士気に変換するというわけですか。確かに、今の彼らなら……喜んでその最前線に、自らの艦を滑り込ませるでしょう」
トダカは深く頷いた。その目は、もはやこの「盾艦」をただの鉄クズだとは見ていない。
「とはいえ、MSに接近されれば意味がない。あくまで艦隊決戦、それも敵の正面火線を封じることに特化した運用に限定されるな」
俺は図面を眺めながら、ふと思いついて口にした。
「いっそ無人機にしようか? 危険な最前線だ、遠隔操作の巨大な盾を並べるほうが合理的だろ」
「ユウナ様、そこまで言って彼らにその選択を提示すれば、間違いなく宇宙軍は怒りますよ。『我らの覚悟を、アスハへの忠義を、機械の箱に代行させる気か!』とね」
トダカの苦笑混じりの忠告に、俺は「だよな」と肩をすくめた。あいつら、覚悟と忠誠心の塊だからな……オーブの軍人は凄いよ。本当に。
・オーブ国防宇宙軍
集団自沈などに関してはオリジナル設定。ヤキンドゥーエの戦いに参加せず、結構な規模なイズモ級がでてるが為このような設定に。故にブレイク・ザ・ワールドの際の彼らの献身はそんな裏事情があったのでした。
・サブカルチャー
なぜユウナのアイディアが高く評価されるのか?というアンサー。ガンダムシリーズが存在せず、ガンダムの影響を受けたリアルロボット作品などは全て消滅。その代わりスーパーロボット作品が基本的に主軸になっており、そんな世界観故にリアルロボット作品のアイディアはCE世界のエンジニアにとっては物珍しいものでした。
・盾艦
ちなみに原作ではドレイク級のような比較的小型な艦艇も陽電子リフレクターを搭載して正面を防御していますが、今作では完全な盾役、タンク役になる為に正面だけではなく全面を多い尽くそうとしています。それも長期間。一応オーブ版ザムザザーを生産する案も有りましたが、更に強化したいとオーブの『盾』として艦艇での試験が行われる事になりましたとさ。
カナードの船で。
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン