破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第三十三話 オーブの歴史がまた1ページ 後半

 

 

 

 

 

「ただこれさ……イズモ級をわざわざドックに入れて改装するより、いっそ『盾』として新造したほうが安上がりじゃないか? 構造は単純でいい。面積を極限まで大きくして、陽電子リフレクター発生装置と、姿勢制御に必要な最低限のスラスターだけを積む。武装は皆無で居住性も二の次だ。ザムザザーを作る案だって悪くない。……うーん、悩ましいな」

 

 

 

 

 

 

 既存艦の有効活用か、特化型の新造か。軍全体の予算と工期を天秤にかけて唸る。だが、どちらにせよまずは「戦艦クラスの陽電子リフレクター運用データ」が不可欠だ。

 

 

 

 

 

「よし、まずは実証テストだ。データがないことにはエリカさん達も設計図を引けないだろう」

 

 

 

 

 

 

「……その、テスト機はどうされるおつもりで?」

 

 

 

 

 

 

 トダカの予感めいた問いに、俺は手元のリストから、一番「適当な」船を選んで指差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――一週間後。

 

 

 

 

 

 愛艦『オルテュギア』から、自慢の武装も対空砲も、果ては不要な内装に至るまで、文字通り「全部」ひっぺがされた男が一人。

 

 

 

 代わりに艦首へ、不釣り合いなほど巨大な陽電子リフレクター発生装置をガムテープで止めたかのような(実際には精密固定だが)無骨な姿にされた艦を見て、カナード・パルスはかつてないほどブチギレたという。

 

 

 

 

 

「こぉのぉ!!クソボンボン!!!!!貴様ァ!!俺の艦を『不細工な光るデカい的』にするとはどういうつもりだッ!!?」

 

 

 

 

 通信モニターが割れんばかりの怒号が響く。画面の向こうでは、パイロットスーツを着たカナードが般若のような形相で拳を震わせていた。

 

 

 

 

「いや、ごめんて。ちゃんと『次期新造艦のテストベッドとして、君の艦をテストに貸してほしい』って、事前に連絡は入れただろ?」

 

 

 

 

「ふっざけんなァ!! 『テストに貸せ』とは聞いたが、『武装を全部もぎ取ってハリボテのバリア発生器を括り付けろ』なんて一言も聞いてねえぞ! 今のオルテュギアはな!!?ただの重たい鉄クズなんだよ!!」

 

 

 

 

 確かに、今のオルテュギアに積まれているのは、戦艦クラスの出力を強引にリフレクターへ回すための試作型大容量コンデンサと、艦首を覆う巨大な発生器だけだ。主砲もなければ、接近するミサイルを落とす対空砲すらない。

 

 

 

「いや本当ごめん、望むなら後で……いや、テストが終わったら即座に、元通りどころか最新鋭の装備にアップデートして戻すから! な?」

 

 

 

 

 俺が必死に手を合わせると、モニター越しのカナードは、もはや怒りを通り越して血管がはち切れそうな形相で吠えた。

 

 

 

「当たり前だ、このクソボンボンが!! これがもしドレッドノートイータだったらお前を今すぐプレアの所に送ってやるところだぞッ!!?!?」

 

 

 

 

 通信回線が割れんばかりの怒号。もし視線で人が殺せるなら、俺は今ごろ細胞レベルで分解されて宇宙の塵になっているだろう。

 

 

 

 なお、本人は本気でブチギレているのだが、背後に映る『オルテュギア』のブリッジ要員や部下たちは、この光景を実におもしろそうに眺めていた。

 

 

 

 

「いやぁ、隊長があんなに感情を爆発させるなんて珍しいですねぇ」

 

 

 

「普段はニヒルを気取ってるからなぁ。いいんじゃない? 毒出しになって」

 

 

 

 中には『お、今の隊長のキレ具合、10点満点中8点くらいかな?』とか採点してる奴までいやがる始末だ。

 

 

 

 

 ……カナード、お前、部下に愛されてるな。

 

 

 

 

 これほど隊長がブチギレているのに、部下たちが比較的平然としているのには理由がある。

 

 

 

 一つは、俺が保証したオーブの破格の待遇。そしてもう一つは、彼らの中にガチの『銀英伝』ファンが混じっていたことだ。

 

 

 

 

「いやぁ、まさか本当に『盾艦』の運用をこの目で見られるとは。胸が熱くなりますね」

 

 

 

「これ、データを取った後にシステムを小型化して、元に戻ったオルテュギアに内蔵できませんかね? ほら、この辺の配線とか……」

 

 

 

 なんて、カナードの部下たちはエリカさんの連れてきた技術者と仲良く議論を始めていたりする。

 

 

 

 彼ら傭兵としての視点からすれば、この「盾」というシステムは極めて合理的だ。

 

 

 

 戦場において、確実に一撃を防げるという保証があるのは、生存率に直結する。特に、少数の精鋭で立ち回る彼らにとって、この技術が将来的に自分たちの機体や艦にフィードバックされるなら、これほど心強い話はない。

 

 

 

 

 そんな傭兵たちの楽しげな視線を背中に感じながら、カナードはさらに過酷なテストに直面していた。

 

 

 

 今度は、宇宙軍のアストレイ部隊、つまり量産型アストレイであるM1アストレイが複数機、ビームライフル、マシンガン、ミサイル、更にはグレネードまでありとあらゆる装備を携えてオルテュギアに襲いかかったのだ。流石にドッズライフルはないけどね。

 

 

 

 

 ヒュンッ! ヒュンッ! ドガガガガッ!

 

 

 

 

 

 

 ビームが、実体弾が、オルテュギアの艦首から全面に展開されたリフレクターへと集中する。M1アストレイのパイロットたちは、まるで巨大な的に向かって全力で射撃訓練をするかのように、遠慮なく攻撃を叩き込む。

 

 

 

 

 

「この野郎ども!お前達の武装を全部使い切らせてやるぞ!」

 

 

 

 

 

 カナードの怒号が響き渡る中、オルテュギアは一切の反撃をせず、ただその巨大な盾を掲げ続ける。その操艦は既に神業の域に達していた。幾重にも押し寄せる攻撃の波を、リフレクターの角度をミリ単位で調整して受け流し、衝撃を最小限に抑え込む。

 

 

 

 

 

 標的機やMSの波状攻撃をしのぎ切ったオルテュギアの前に、真打ちが登場する。

 

 

 

 

 遠方に陣取ったイズモ級の主砲「ゴットフリート」、さらにはアストレイ用超高インパルス砲「アグニ」が複数門、その銃口をかつての戦友に向ける。

 

 

 

 

極めつけは、本来なら戦艦を一撃で両断する「ローエングリン」のチャージが始まったことだ。

 

 

 

「……おい、カナード!!?冗談抜きで下手すると死ぬぞ!?ローエングリンは流石にリフレクターでも反動が未知数だ!!隊員は全員、今すぐ退艦させてシャトルに移せ!!」

 

 

 

 

 まさか退避しないのか!?事前の取り決めで言ったよな!?俺の言葉に、通信越しにカナードが鼻で笑った。

 

 

 

 

 

「寝ぼけたこと言ってんじゃねえ、クソボンボン! 俺の部下に逃げ腰の腰抜けはいないんだよ!」

 

 

 

 

「そうですとも、ユウナ様! 盾艦の運用試験をブリッジで見届けなくて、何が傭兵ですか!」

 

 

 

 

「隊長の背中を信じられないなら、とっくに辞めてますよ!」

 

 

 

 

 部下たちの威勢のいい声がブリッジに響く。カナードは相変わらず「このクソボンボンが、後で絶対に殴る……!」と俺を罵倒し続けていたが、その手は微動だにせず、リフレクターの出力を極限まで引き上げている。

 

 

 

「……いいだろう。全エネルギー、リフレクターへ! ――来いッ!!」

 

 

 

 直後、宇宙を焼き尽くすような閃光が奔った。

 

 

 

 

 ゴットフリートの緑色の輝き、アグニの破壊の光、そして空間を歪めるローエングリンの赤い奔流。それらが一点――オルテュギアの艦首へと収束する。

 

 

 

 

 

 物理的な音がしないはずの真空を、凄まじい衝撃波が駆け抜けた。

 

 

 観測モニターはホワイトアウトし、あまりのエネルギー量に各種センサーが悲鳴を上げる。

 

 

 

 

「……沈んだか?」

 

 

 

 誰かがポツリと漏らした。だが、光が収まった先に浮いていたのは、ボロボロになりながらも、依然として毅然とそこに留まるオルテュギアの姿だった。

 

 

 

 艦首の発生器は真っ赤に焼け、装甲のあちこちから火花が散っている。だが、艦体は一歩も退いていない。

 

 

 

 

 

「……っ、成功だ! テスト成功!! ローエングリンを完全に防ぎきったぞッ!!」

 

 

 

 観測していた宇宙軍の士官たちが、これまでの劣等感を吹き飛ばすような大歓声を上げる。トダカも静かに、だが力強く拳を握りしめていた。

 

 

 

 だが、その狂喜乱舞する司令室の中で、俺一人だけが腰を抜かさんばかりに震えていた。

 

 

 

「あ、あっぶっっねぇぇぇぇ!!! おい、今リフレクターの限界値コンマ数秒超えてただろ! 死ぬ! 普通に死ぬってあんなの!!?」

 

 

 

 

 冷や汗が滝のように流れ落ちる。モニターに表示された熱量はレッドゾーンを突き抜け、オルテュギアの内部回路は半分近くが焼き切れる寸前だった。銀英伝のロマンだなんだと言っていたが、一歩間違えればカナードごと宇宙のチリになるところだったのだ。

 

 

 

 すると、沈黙していたオルテュギアから通信が入る。モニターに映し出されたカナードは――。

 

 

 

 

「…………ククッ、ハハハハハッ!!」

 

 

 

 

 

 かつて彼が、自らの最高傑作である『スーパーハイペリオン』を手にし、その絶対的な力に酔い痴れて狂乱していた時のような、暗く、そして鋭い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「……おい、クソボンボン。聞いたぞ? 今、リフレクターが『限界を超えてた』って言ったな?」

 

 

 

 

 カナードの瞳が、獲物を狙う猛獣のように細められる。その笑みは、明らかに「無事に帰還した喜び」ではなく「殺害予告」のそれだった。

 

 

 

 

「……待て、カナード。あれは不可抗力というか、エリカさんのシミュレートがですね……」

 

 

 

 

「言い訳は、あの世でプレアに直接言うんだな。……ユウナ・ロマ・セイラン。帰ったら、わかってるな?」

 

 

 

 

 

 その声音のあまりの低さに、俺の背筋に氷の柱が突き刺さる。

 

 

 

 ああ、これだ。あの男、死線を越えすぎて逆にテンションが一周回って「殺戮モード」に入ってやがる。

 

 

 

 

「……あ、俺、死んだわ」

 

 

 

 

 

 勝利の歓声が響き渡るオルテュギアとモルゲンレーテの一室と比べ、俺は自分の墓標に刻む文字を真剣に考え始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦種名:盾艦 「オオヤマツミ」

 

 

 

・本艦は、地球連合軍より奪取した陽電子リフレクター技術を、オーブの艦隊防衛思想に基づいて再構築した新概念の艦艇である。日本神話において山を司り、強固な守護を象徴する神「オオヤマツミ」の名を冠している。

 

 

 

 

・従来、陽電子リフレクターは莫大な電力を消費するため、黎明期のオーブ軍においては戦艦クラスへの搭載は「展開中は移動も攻撃も不可能になる」という致命的な欠陥を抱えていた。これに対し、ユウナ・ロマ・セイランは古の戦記物『銀河英雄伝説』に登場する、主君を守るための犠牲を前提とした「盾艦」から着想を得つつ、それを現代の技術で「生存のための合理的システム」へと昇華させる案を提示。傭兵カナード・パルスが駆る「オルテュギア」を実験機(テストベッド)とし、武装を全撤廃してリフレクター維持に全出力を回すという極限環境下での実証テストを実施。

 

 

 ローエングリンを含む重火器の斉射を無傷で耐え抜くという驚異的なデータを叩き出し、正式採用に至るのであった。製造工程の迅速化とコスト削減のため、イズモ級の基本フレームを流用しつつも、内部構造を徹底的に簡略化した。外観は曲線を廃した無骨なブロック構造であり、艦首部分には全面に陽電子リフレクターを安定展開させるための超大型ハニカム構造装甲板を装備している。

 

 

 

 

・陽電子リフレクター・システムを搭載しており艦全体のエネルギーを、艦首に集中配置された3基の大型発生器に供給。これにより、単艦で艦隊の前面を完全にカバーする「エメラルドグリーンの光の壁」を形成する。なおカラーはカナード・パルスの希望により設定された。

 

 

 

・本艦には主砲、副砲、対空砲に至るまで一切の武装が搭載されていない。全ての容積と重量は、リフレクターの冷却ユニット、大容量コンデンサ、および衝撃を吸収するための強化装甲に充てられている。また、敵の猛攻を受けながらも艦隊の先頭に踏み止まるため、直進推力と姿勢維持に特化した外部式大型スラスターを増設。旋回性能は極めて低いが、重装歩兵が盾を構えて前進するかのような強固な進軍を可能にしている。

 

 

 

・八重垣(ヤエガキ)戦術

「オオヤマツミ」数隻を艦隊の最前面に配置し、リフレクターをオーバーラップさせて展開することで、物理・光学双方の攻撃を完全に遮断する「聖域」を構築する。

後方に配置された攻撃特化艦やMS部隊は、この「動く城壁」の背後から安全に、かつ一方的に敵陣へ火力を叩き込むことができる。かつての貴族社会における「命を賭した盾」としての名誉を重んじつつも、高度な技術によって「搭乗員を一人も死なせず、勝利を確定させる」というオーブ軍の新たな誇りを象徴する艦艇である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうだトダカ。この徹底的に無駄を削ぎ落とした『鉄の塊』こそ、宇宙軍が求めていた答えだろ?」

 

 

 

 

 俺は一人、完成した報告書を満足げに眺める。

 

 

 

 

 だが、その背後の自動ドアが、今、人知を超えた筋力と憎悪によって物理的にこじ開けられようとしていた。

 

 

 

 

 

「……あ。そうだ、仕様書に『搭乗員は死ぬほど怖い思いをするが、命の保証はされている』って書き忘れてたな」

 

 

 

 

 

 目の前には、スパナを握りしめ、かつての狂気を宿した目で笑うカナード・パルスが立っていた。

 

 

 

 

 

「……ユウナ、覚悟はできてるな?」

 

 

 

 

 

 

 俺のオーブ国防宇宙軍再建計画は、今、身内によって最大の危機を迎えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 この後全治一週間程の怪我をしたが、ユウナは「寧ろ久々にぐっすり眠れた!」とさっぱりしておりトダカをドン引きさせたという。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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