破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 本日は終了!


第三十八話 蛇の毒

 

 

 

 東アジア共和国、上海近郊。

 

 

 

 

 

 かつて東洋の真珠と謳われたその都市は、今や「ユニウスセブン」の破片が降り注いだ『ブレイク・ザ・ワールド』の傷跡に喘いでいた。壊滅的な津波、隕石、震災、それに続く停電。共和国政府の統治能力は限界を迎え、治安は地獄の底まで叩き落とされている。

 

 

 

 

 その混乱を助長しているのが「ロゴス」だ。彼らは自分たちの利権を脅かすオーブの進出を阻むため、現地の不満分子やならず者に型落ちの『ストライクダガー』や武装を「横流し」し、間接的な嫌がらせを繰り返していた。

 

 

 

 

 

 だが、そんな泥沼の地でも、オーブ国際救援隊は着実に信頼を勝ち取っていた。現地政府との協議も進んでおり、より多くの人々を救う為に日々派遣部隊、派遣地域は増大しているのだ。

 

 

 

 

 瓦礫を撤去する『リビルド』、病魔と戦う『ホスピタル』。その献身的な姿は、絶望に沈む上海の民衆にとって唯一の光となっていた。

 

 

 

 

「……ケッ、飯の時間だ。野郎ども、オーブの物品を強奪するぞ!」

 

 

 

 廃墟の陰から現れたのは、ロゴスから横流しされたダガーや元国軍のMSに駆るテロリスト共だ。彼らは被災した同胞を助けるどころか、オーブが持ち込んだ支援物資を奪い、闇市で売り捌こうとする救いようのないクズ共だった。

 

 

 

 

「どけよ、オーブの偽善者ども! その食料も薬も、今日から俺たちのものだ!」

 

 

 

 

 

 ダガーが威嚇のために市民の頭上へビームを放とうとした、その瞬間。

 

 

 

 

「――どこの世界にも、火事場泥棒ってのは絶えないもんだな」

 

 

 

 

 

 

 空から降ってきたのは、鋭い嘲笑を帯びた通信。

 

 

 

 

 雲を切り裂き、7機の『ムラサメ』が超高速で地表へと肉薄した。

 

 

 

「隊長、ターゲット確認。……物資を狙うハイエナ共です。生かしておく価値もありませんが……」

 

 

 

「ああ、わかってる。……殺しちまえば楽だが、それじゃ『ボンボン』がうるさいからな……チッ!…!散開してさっさと排除しろ!」

 

 

 

 隊員から「隊長」と呼ばれる男――カナード・パルスは、コクピットで憎悪に近い苛立ちを爆発させていた。

 

 

 テストベッドとして徴用された母艦オルテュギアは、ユウナの手によって火砲をすべて剥ぎ取られ、代わりに不細工な追加シールドをベタベタと貼り付けられた「光るデカい的」に改造された。

 

 

 

 あの時の怒りは、今も細胞レベルで煮え繰り返っている。表面上は許してはいるが定期的に思い出してはこうしてイラついているのだ。

 

 

 

 だからこそ新兵装のテストには、ストレス発散には丁度いい。部下達が隊長の様子を見て苦笑しているとテロリストは吠えていた。

 

 

 

「なんだ、オーブの軍人か! 構わん、まとめてスクラップに――」

 

 

 

 テロリストが引き金を引くより早く、カナードのムラサメが空中で踊るように回避。左腕のバインダーから、赤熱化した銀色の筋が射出された。

 

 

 

 

 『電磁制圧縄・雷蛇(イカズチヘビ)』。

 

 

 

 

「な、なんだこの紐は!? ぎゃああああ!?」

 

 

 

 

 絡みついた瞬間に発動する高周波振動がダガーの関節を焼き付け、同時に強化型EMPバーストが機体回路を完全に沈黙させる。

 

 

 

 カナードはそのままムチを引き絞り、空中で機体を反転。遠心力を利用して、捕らえた敵機をゴミ袋のように別の敵機へ叩きつけた。

 

 

 

 

「おい、次だ! !逃げるなクズ共!まだテストは終わってない!!」

 

 

 

 逃走を図るダガーの脚を雷蛇で絡め取り、振り回してビルの残骸へ叩きつける。他の隊員たちも、隊長の苛烈な戦いぶりに当てられたかのように、容赦なく『雷蛇』を繰り出し、ダガーを次々と「捕縛」という名のリンチに処していく。

 

 

 

 わずか数十秒。

 

 

 

 略奪を楽しもうとしていた賊共は、一発の銃声も鳴らぬまま、無残にひしゃげ、複雑に絡まり合った「鉄のミノムシ」として地面に転がされた。

 

 

 

「……チッ、壊しすぎたか。おい、クズ。生きてるならさっさと投降しろ!死んでるならそのままゴミ箱に送ってやる!!」

 

 

 

 カナードはコクピットで荒い息を吐き、モニター越しに転がる残骸を見下ろした。

 

 

 

 これだけ暴れても、機体の核となる部分は生きている。鹵獲兵器としての性能は、癪だが認めざるを得ない。

 

 

 

 

「というか隊長、それを言うなら隊長だって以前、ニュートロンジャマーキャンセラーだの青ハイペリオンだのを強奪してたじゃないですか。今さら鹵獲の手段に文句言わなくても」

 

 

 

 隊員の一人が、回線越しにからかうような声を上げる。

 

 

 

「うるさい! それとこれとは話が別だ!」

 

 

 

 苛立ちを隠さないカナードに、隊員たちは(……なんだかんだで、あのボンボンのこと許してるくせに)と内心で苦笑した。

 

 

 

 あのオルテュギアの件で殺すと息巻いていた割には、こうしてユウナの持ってきた「新兵器」のテストを、誰よりも完璧にこなしているのだ。

 

 

 

 

 カナード自身、転がるダガーの山を見つめながら、かつての自分を思い出していた。

 

 

 

 

 かつて、彼は奪い続けた。執拗に、殺意を込めて。ハイペリオン2号機を完膚なきまでに叩き伏せ、引きずり出した。あの頃の彼にとって「奪う」とは、自らの渇きを癒やすための残酷な蹂躙でしかなかった。

 

 

 

「……時代が変わったな」

 

 

 

 ポツリと、カナードが独り言を漏らす。

 

 

 

 昔は機体を奪うために、装甲を紙のように引き裂き、パイロットをズタズタにする必要があった。だが、今の自分の手元にあるのは、ユウナという男が「物語」を知るがゆえに持ち込んだ、魔法のような捕縛の蛇。

 

 

 

 かつての自分が、プレアと出会い、あの絶望的な渇きから救われたように。

 

 

 

 今度は、この「雷蛇」という武器が、戦場のルールそのものを変えようとしている。

 

 

 

 

「こちらX。敵機の鹵獲に成功した、クズ共はここに転がしておく! ジャンク屋が来る前にさっさと回収しろ!」

 

 

 

 カナードは、相変わらず不遜な態度でユウナへの通信を切り上げた。

 

 

 

 モニター越しに見下ろすのは、先ほどまで略奪に明け暮れていたダガーの残骸――いや、厳密には「残骸」ですらない、ただ眠らされただけの沈黙した機体群だ。

 

 

 

 かつての彼はコクピットごとパイロットを焼き、機体を鉄クズの山に変えることでしか、勝利を証明できなかった。奪うとは、壊すことと同義だったからだ。

 

 

「……フン、本当に馬鹿げた『蛇』だ」

 

 

 

 カナードは自嘲気味に鼻を鳴らす。

 

 

 だが、その視線の先では、怯えていた上海の市民たちが、動かなくなったダガーを見ておずおずと顔を上げ始めていた。

 

 

 

 この無傷の機体たちは、ほどなくして救援隊の『リビルド』によって運び出されるだろう。使えない装甲や外装はスクラップとして引っ剥がされ、その強力な動力源や駆動系は、崩壊したインフラを蘇らせるための「心臓」や「手足」へと作り替えられる。

 

 

 かつては死を撒き散らすために作られた鋼鉄の巨人が、この場所では未来と復興への想いを繋ぐための重機として生まれ変わるのだ。

 

 

 

「人と人は、想いの力で繋がっている……か」

 

 

 カナードは、かつてプレアが遺した言葉を反芻する。

 

 

 

 あのアホなボンボンが、自らの命を危険に晒してまでテストさせた「盾」や、この「ムチ」。それらが守ろうとしているのは、単なるオーブの国益だけじゃない。

 

 

 

 壊さずに捕らえ、殺さずに活かす。

 

 

 

 この戦場の新しいルールが、やがてこの泥沼の世界すらも「リビルド」していくのかもしれない。

 

 

 

「おい、ぐずぐずするな! さっさと回収を始めろ。……この街には、まだ直さなきゃならない場所が山ほどあるんだからな」

 

 

 

 

 

 カナードは再びムラサメの翼を広げ、荒廃した上海の空へと舞い上がった。背後には、動かなくなった兵器と、それを取り囲んで歓喜に沸く人々の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『電磁制圧縄 雷蛇(イカズチヘビ)』

 

 

 

 ザフトのグフイグナイテッドに搭載されていた「スレイヤーウィップ」の技術をベースに、オーブが独自に開発・発展させた近接制圧用装備。ザフトの最新鋭機グフイグナイテッドがもたらした技術は、オーブ流の解釈によって全く別の価値を持つ兵装へと結実した。それは「敵を撃破する」ためではなく、混乱する世界各地の現場で「秩序を守り、暴力を無力化する」ための装備である。

 

 

• 開発コンセプト

 オーブが他国で行っている救助活動や復興支援において、最大の障害となるのは戦乱に乗じたテロリストや、武装した盗賊団(スカベンジャー)による略奪である。これらに対し「撃墜(殺害)」という手段を取れば、現地の民衆の反感を買う、トラウマを刺激して暴動に繋がるリスクがある。

 

 

 本兵装は、「敵機を破壊せず、パイロットを殺さず、機体を完品で鹵獲する」ことに特化した「捕縛兵器」として設計された。こうして、ザフトの最新鋭機グフイグナイテッドがもたらした技術は、オーブ流の解釈によって全く別の価値を持つ兵装へと結実した。

 

 

•高周波振動・微調整機能

 オリジナル同様、高周波振動で装甲を赤熱・切断する機能を持ちつつ、出力をより精密に制御。敵機のマニピュレーターや武装だけを焼き切る、あるいは関節部を焼き付かせて行動不能にするなど、外科手術的な制圧を可能にした。

 

• 強化型EMPバースト

本兵装の最大の特徴。敵機に巻き付いた瞬間、ムチ全体から高度に調整された電磁パルスを流し込む。これにより、コクピット内の電子機器やOSを一時的にフリーズさせ、パイロットを負傷させずに機体のみを沈黙させる。ムチ自体が高い引張強度を持っており、そのまま敵機を拘束・牽引することも可能。鹵獲した機体は後ほど技術解析に回したり、復興用の重機として転用するための貴重な資材となる。

 

 

• 配備と運用について

 当初は扱いが難しい「鞭」形状ゆえに難色を示されたが、カナード・パルス率いる傭兵部隊『X』が実戦テストを担当。彼らが被災地で見せた「敵機を傷つけずに絡め取る」効率的なデータ収集により、火器管制システム(FCS)による自動制御アシストが完成した。これにより一般パイロットでも運用が可能となり、さまざまな運用方法が模索された結果、最終的にはアストレイやムラサメの腕部に追加できる奇襲用のオプションパッケージとして、救助隊に同行する防衛部隊へ急速に普及した。

 

 この「イカズチヘビ」の導入により、オーブの救助活動の現場では、撃墜された敵機の残骸ではなく、無傷で並べられた「鹵獲機」が積み上がっていくことになる。それは武力を示しながらも、同時に命を救うという矛盾を抱えたオーブにとって、これ以上ないほど「らしい」解決策であった。

 

 

 ちなみに本武装を見たユウナ・ロマ・セイランが『海蛇?』と呟いたことが本武装の名称に繋がっており、前線においては「蛇」の愛称で末長く兵士に愛される事になる。

 

 

 

 

 

 

 






 基本的にミヤビ率いるオーブ国際救援隊は上海、北京を中心に東アジア共和国、ユーラシア連邦などの地域に救援部隊を派遣しており。復興が進みつつあるこの二つの地域はある意味リビルドの復興の象徴と言えるでしょう。

 雷蛇はイメージ的には殺傷能力を下げた代わりにMSを無力化する為の機能、能力に追求した特殊武装。見た目的にはハンブラビの海蛇に近いかもしれない。比較的安価な為本国の防衛部隊にも配備されており、この世界のアストレイの武装は雷蛇とドッズライフルが中心になるかも。


 ちなみに、この武装の情報を聞いて議長はそれはもう嬉しそうな顔していたそうな。特許問題に関してはどうなることやら…

 

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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