破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

40 / 159
第四十話 帝愛グループを参考にしよう!

 

 

『ロゴス』。

 

 

 

 

 前世の俺が知るスパロボやアニメの中では、彼らはティターンズと並ぶ「悪の組織」の代名詞だった。戦争を裏で操り、人々の憎しみを煽って武器を売る。

 

 

 実際、その所業は否定できないし、彼らが行ってきた数々の非人道的行為は「カス同然の死の商人」と断じられても文句は言えないだろう。

 

 

 

(……だが、実際にこの国を動かし、世界の構造を覗き込んでみると、あいつらを単なる『悪役』と呼ぶにはあまりに規模がデカすぎる)

 

 

 

 

 ロゴスという存在の本質――。

 

 

 

 

 

 それは、原作のデュランダルが唱えた「平和を阻害する真の敵」という単純な構図には収まらない。デュランダルは彼らを「倒すべき巨悪」として定義し、人々の怒りをそこに向けさせたが、それは極めて巧妙な政治的誘導だ。

 

 

 

 

 実のところ、彼らはブルーコスモスのような狂信的な差別主義者ではない。差別すらも市場をコントロールするためのツールに過ぎないのだ。

 

 

 

 ロゴスの正体、それは「地球圏における巨大な資本そのもの」である。

 

 

 

 有史以前より連綿と続いてきた彼らの影響力は、軍事に留まらない。金融、科学、医療、そして食品。世界中の主要企業の背後には必ずロゴスの影があり、彼らの出資がなければ地球の社会基盤そのものが一日たりとも維持できない。

 

 

 

 

 現実の世界で言えば、APECや欧州投資家連盟といった巨大な国際資本組織が、裏で糸を引いているようなものだ。

 

 

 

 

「つまり……ロゴスを潰すということは、地球の経済インフラそのものをぶっ壊すということだ」

 

 

 

 

 

 俺は深くため息をついた。

 

 

 

 軍事という「血管」だけでなく、民間インフラという「臓器」まで彼らが提供する既得権益の中に組み込まれている。だからこそ、ロゴスが世界を掌握し続けてきたのは、単に武力があったからではない。「彼らがいなくなれば、世界中の人々が明日のパンすら買えなくなる」という、あまりに巨大で残酷な依存関係が成立しているからだ。

 

 

 

 

 

 いいか、冷静に考えてみろ。ロゴスという巨大な資本のネットワークが、ある日突然、煙のように消えてなくなったらどうなると思う?

 

 

 

 ……答えは、全世界規模の致命的な大混乱だ。

 

 

 

 

 そりゃそうだろう。この世界の大企業や銀行で、ロゴスの影響を受けていないところなんて、歴史の浅い新興国であるプラントくらいなものだ。それ以外の……大西洋連邦もユーラシアも東アジアも、経済の根幹はロゴスの出資と流通網で維持されている。

 

 

 

 原作(アニメ)での、あの展開。デュランダルに煽られた民衆による「ロゴス討伐」という名の魔女狩り。

 

 

 

 

 あれは確かに、積年の恨みを晴らすカタルシスはあったかもしれない。だが、その後の世界はどうなった? 支配階級を物理的に抹殺したところで、彼らが支えていた経済システムや供給網まで消えてしまえば、後に残るのは飢えと失業、そして機能不全に陥った無力な国家だけだ。

 

 

 

 

 憎しみに任せて中枢を叩き潰した結果、世界中の物流が止まり、医療品が届かなくなり、エネルギー供給が途絶える。……それは「正義」の名を借りた、世界規模の自殺行為に他ならない。

 

 

 

 デュランダルはあえてそれをやり、混乱の果てに「デスティニープラン」という管理社会を救世主として提示しようとしたわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……あいつ、本当に性格悪いよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 俺は椅子に深く寄りかかり、天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 ロゴスは確かにカスだ。だが、この世界という不恰好な巨体を支える「骨格」になってしまっているのもまた、紛れもない事実なんだ。

 

 

 

 

 俺は自室のモニターを見つめながら、改めてその歪な構造に戦慄を覚える。

 

 

 

 

 彼らを庇うつもりなんて毛頭ない。だが、その社会的な役割まで無視して「はい、悪の組織だから滅ぼしましょう」と動くのは、あまりに無責任だ。デュランダルが焚き付けた、あの熱狂的な魔女狩り――ロゴス幹部を物理的に排除し、その施設を民衆が襲撃する光景。

 

 

 

 

 

 あれを「支持」するなんて、俺には到底できない。

 

 

 

 

 もしロゴスが完全に消滅すれば、全世界で確実に天文学的な損失が発生する。株価の暴落なんて可愛いレベルじゃない。物流が止まり、銀行の決済が死に、最先端医療のサプライチェーンが崩壊する。

 

 

 

 飢餓と疫病、そして失業者の群れ……。あとに残るのは、正義を成し遂げたという満足感だけで、腹を満たすパンさえない地獄絵図だ。

 

 

 

 

「……デュランダルは、その『混乱』すらも織り込み済みだったわけだ」

 

 

 

 

 奴はロゴスを排除することで世界を一度経済的な死に追い込み、人々の口から「誰でもいいから助けてくれ」という悲鳴を引き出そうとした。その悲鳴への答えとして「デスティニープラン」を提示する。まさにマッチポンプの極致だ。

 

 

 

 

 

「……本当に救いようがないな」

 

 

 

 

 

 俺は冷え切ったコーヒーを喉に流し込み、込み上げてくる吐き気を飲み下した。

 

 

 

 

 この世界に憑依し、ユウナ・ロマ・セイランという立場を使い、実際に政治の泥沼にどっぷりと浸かることで、ようやく気づいてしまった。目を背け続けてきた「真実」という名の、あまりにどす黒い闇に。

 

 

 

 

 

 ロゴスを排除して世界を一度死なせ、絶望の果てに「デスティニープラン」という名の管理社会を救済として差し出す。デュランダルが描いているのは、人類という種そのものの意志を去勢する、巨大なマッチポンプだ。

 

 

 

 

 

 『ブレイク・ザ・ワールド』で数億人が死に、デストロイやレクイエムで都市が焼かれる。それらは確かに地獄だが、デュランダルがやろうとしていることは、それらさえ「可愛らしく」見えるほどの、精神的な絶滅政策に他ならない。

 

 

 

 

「……そして、俺にはそれを今すぐ止める手段がない」

 

 

 

 

 

 答えは分かっている。今すぐ暗殺者を送ってギルバート・デュランダルを殺せば、プランは阻止できるかもしれない。だが、そんなことをすればどうなる?

 

 

 

 

 カリスマを失ったプラントは暴走し、連合との全面核戦争に突入するか、あるいはロゴスという「古い病理」が再び世界を覆い尽くすだけだ。それはそれで、あの紫唇の男が好き放題に荒らした挙句の、救いのないバッドエンドでしかない。

 

 

 

 

 そもそも、善悪云々の次元じゃないんだ。ロゴスという巨大な資本の柱がへし折られた時点で、全世界は「確定した大混乱」に陥る。株価は紙屑になり、年金は消え、供給網(サプライチェーン)は断絶する。

 

 

 

 その後でデスティニープランを止めようが止めまいが、その混乱による死者は、戦争の犠牲者を遥かに上回るだろう。

 

 

 

 

「……結局、あいつデュランダルは世界を一度『死』の淵まで突き落として、唯一の蘇生薬としてプランを差し出そうとしている」

 

 

 

 

 俺がこの世界で政治に関わり、経済の裏側を覗き込んでしまったからこそ見える地獄だ。アニメを観ていた時は「ロゴスを倒せばハッピーエンド」だとどこかで思っていた。だが、現実はロゴスが滅びた瞬間に、世界中のATMが止まり、スーパーから食料が消える。

 

 

 

 

 デュランダルはその「断末魔」をわざと引き起こそうとしているんだ。ロゴスという魔女を焼き、その灰の中から新しい神として君臨するために。

 

 

 

 

 

 

「……あの種無し浮気チンポ野郎、本当に性格が悪すぎるだろ…」

 

 

 

 

 俺は執務室の窓を叩く雨音を聞きながら、思わずそう毒づいた。口が悪い? いや、これくらいの悪態をつかなきゃやっていられない。

 

 

 

 

 アイツ――ギルバート・デュランダルは、世界を一度経済的にブチ壊した後に、デスティニープランという究極の処方箋で問題を「解決」しようとしていた。あいつはあいつなりに本気で、神官の役目に徹して人類を救おうとしていたんだ。それは認めなきゃならない。

 

 

 

 

 アイツなら、あの地獄のような混乱をプランの力で強引に収束させ、平和な家畜小屋を作り上げることはできただろう。

 

 

 

 だが、俺にはどうしようもないんだ。

 

 

 

 

 アイツの野望を止めて、物理的に牢屋に放り込んだところで、ロゴスが滅んだという事実は消えない。支柱を失った世界経済はどのみち崩壊する。アイツを止めた後に残るのは、救世主(プラン)さえ現れない、ただの「終わった世界」だ。

 

 

 

 

「……はは、考えるだけで泣きそうになってきたな」

 

 

 

 

 

 

 

 俺は乾いた笑いを漏らした。

 

 

 

 

 

 皮肉なもんだ。物語の主人公たちのように「自由を!」と叫んで巨悪を討つ。それ自体は素晴らしい。だが、その翌日に銀行から金が下りず、物流が止まって、病院に薬が届かなくなった時、俺は「自由になれて良かったね」なんて笑えるほど強くない。

 

 

 

 

 世界はある意味、本当の意味でこれから壊れるんだ。デストロイの暴威なんて、これから来る「システム崩壊」という地獄の、ほんの前奏曲に過ぎない。

 

 

 

 

 

 俺は冷徹なまでの事務作業に没頭しながら、独りごちた。ロゴスが滅び、世界経済が心停止を起こすその瞬間に向けて、俺が今やっていることは「独裁」という名の「買い占め」だ。

 

 

 

 

 

 オーブの全予算、全外交ルートを総動員して、全世界からありとあらゆる物資をかき集めるよう命令を下した。食料、燃料、レアメタル……それだけじゃない。マイナーな難病のための特殊な薬品から、高度な精密機器のスペアパーツに至るまで、とにかく「ロゴスの供給網が死んだら二度と手に入らなくなるもの」を優先して、オーブの倉庫に叩き込んでいる。

 

 

 

 

「……まるで、カイジに出てきた帝愛グループだな」

 

 

 

 

 

 ふと、そんな自嘲が口をついて出た。

 

 

 

 

 兵藤会長が、世界が崩壊した後の「王国」を作るために地下シェルターに金と物資を溜め込んでいた、あの狂気。今の俺は、まさにそれと同じことをやっている。

 

 

 

 

 違いがあるとすれば、俺は自分一人が生き残るためじゃなく、この世界規模の破綻(バッドエンド)の衝撃を少しでも和らげるための「緩衝材」を作ろうとしていることくらいか。

 

 

 

 

「いざという時、この備蓄を国民に、そして海外に少しずつ流す。それが、システム崩壊後の世界で人々が絶望に飲み込まれないための、唯一の延命装置になるはずだ」

 

 

 

 

 

 それと同時に、国民には「国外の混乱」を理由に、最低でも数ヶ月分、できれば半年以上の家庭内備蓄を強く推奨している。

 

 

 

 

 

 「カガリ様がいない間に、オーブを貯蔵庫(サイロ)に変える気か」なんて重臣たちには白い目で見られているが、構うもんか。

 

 

 

 ロゴスが死んで全世界のスーパーから物が消えた時、俺を「ケチな独裁者」と呼んだ連中は、俺の溜め込んだパンを泣きながら食べることになるんだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モニターの端で、ユーラシアを焼き払いながら進むデストロイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あいつが物理的に街を壊すなら、俺はその後ろ側で「崩壊する世界経済」というもっと巨大な怪物から、一人でも多くの人間を救い出すための箱舟を作っておく。

 

 

 

 

「……笑えよ、カナード。俺は今、お前の機体の弾一発の値段と、子供の風邪薬一瓶の価値を天秤にかけてるんだ。本当に、嫌な仕事だよ」

 

 

 

 

 

 いよいよ始まった世界崩壊の前奏曲、『ブリュッセルを滅ぼし、パリへと進撃する』デストロイの進撃を見ながら俺は震える手で、最新の輸入リストに承認印を押した。

 

 

 

 世界が壊れるその秒読みは、もう始まっている。

 

 

 






 ロゴスが滅んだ後の混乱はもう想像したくもないですね。そりゃ原作でデスティニープランを受け入れる土壌も出来ますよ。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。