破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 本作は本編とは違うIFルート。もしもオーブ軍に復帰したアスランが報連相の化身のままであればどうなるのか?を途中まで描いた作品となります。

 本編にはあまり関係ありませんのであり得たかもしれないIFとしてご覧ください。


IFルート 番外編 もしもアスランが報連相の化身のままだったら?

 

 

 

 

「……あいつ、どうしてあぁなっちまったんだろうな」

 

 

 

 

 俺は執務室で、最近アスランがかけ始めた「メガネ」のブリッジを押し上げる仕草を思い出し、深い溜息をついた。

 

 

 

 

 いや、わかってる。あいつ、地力で視力2.0はあるはずだ。論理的で知的なコンプライアンスの怪物を演出するための小道具だろうが、そのレンズ越しに「ユウナ様、具体的にはここですね」と報告書の微細なミスを指摘してくる姿は、もはやホラーの域なんだよ。流石にユウナ様は辞めさせたが。

 

 

 

 何より俺の一番の誤算は、そこまでいうのならとアスランを士官学校の特別講師に放り込んだことだ。

 

 

 

 

 

 結果は……ある意味では大成功なんだが、俺の胃には致命的だった。

 

 

 

 

 まず、受講した生徒の2割が「アスラン教官の要求する情報密度に脳が耐えられない」とリタイアし、泣きながら除隊願を出した。 だが、恐ろしいのはここからだ。残りの7割は、なんと「報連相」の概念が骨の髄まで根付いた。

 

 

 おかげで士官学校卒業前の候補生たちの事務処理能力は、コーディネイター主体のザフトの3倍に跳ね上がり、物流から弾薬管理まで一切の淀みがなくなった。これだけなら、俺の「計算通り」だったんだが……。

 

 

 

 問題は、残りの1割だ。

 

 

 

 

 

 こいつらは、完全に「アスランクローン」と化しちまった。

 

 

 

 廊下を歩けば、実習中のその1割の連中に捕まる。

 

 

 

「ユウナ様、おはようございます。本日の体調は10点満点中8点、朝食の栄養バランスは以下の通りです。付きましては本日午後の戦術実習の効率について、具体的には……」

 

 

 

「ユウナ様、失礼いたします。廊下の電球が切れかかっているのを確認しました。これによる視認性の低下と転倒リスク、および交換に伴う予算執行の優先順位について、具体的には……」

 

 

 

「具体的にはって言うな!! 具体的に俺の精神が削れるんだよ!!」

 

 

 

 

 軍紀は完璧だが、その無機質で丁寧すぎる正論の波は何なんだ!あと毎回グラフ出して説明してんじゃねぇよ!!!

 

 

 

 あいつら、挨拶一つするのに「今、挨拶しても業務の邪魔にならないか」の事前確認から入りやがる…!!

 

 

 

「ユウナ様、失礼いたします。現在お時間はよろしいでしょうか。具体的には、30秒ほど挨拶と日次報告のお時間を頂戴したいのですが、可否のご判断を――」

 

 

 

「その確認をしてる時間ですでに挨拶終わってんだよ! 許可するからとっとと話せ!」

 

 

 

 

 俺が絶叫しても、あいつらはアスラン直伝の「メガネをクイッと押し上げる仕草」を真似しながら、「承知いたしました。迅速な意思決定に感謝します。具体的には……」と、さらに続けてきやがる。

 

 

 

 

 そんな「具体的には地獄」の元凶、アスラン・ザラは今、俺の目の前で視力2.0の瞳を無駄にメガネの奥で光らせて立っている。話し方はかつての彼そのものだが、中身が「組織の鬼」に変貌していた。

 

 

 

 

「ユウナ。士官候補生たちの習熟度は極めて高い。彼らの能力を最大限に活かすなら、次のヘブンズベース戦において、補給・通信のバックアップに回すべきだ。具体的には、ミスの確率を7.25%も抑えられるという試算が出ている」

 

 

 

「……あ、そう。よかったな、アスラン」

 

 

 

 

「ただ、カナード。君のドレッドノートイータの出力安定性については、随時俺に状況を共有してくれ。相談なしの単独突破は認めない。俺が求めているのは独りよがりの強さじゃない。組織としての確実な勝利だ。具体的には、5分ごとの定時連絡と――」

 

 

 

「…………おい、クソボンボン。俺はこの部屋にあと五分いたら、ロゴスより先にこの『メガネ野郎』を叩き割る。というかさっさとドレッドノートを出す許可を具体的に出せ。今すぐだ」

 

 

 

 カナードが般若の面相で、俺に「殺人の許可」を報連相してきやがる。というかカナードもイラつきつつ、具体的にはって言い出してるし怖ぇよアスラン…!

 

 

 

 キラはキラで、アスランの変貌ぶりに「アスランが……アスランが、理論とレンズの化け物になっちゃった……」とサンドイッチを喉に詰まらせている。

 

 

 

 

 俺は新しい胃薬を口に放り込み、悟った。

 

 

 

 

 ジブリール。お前の相手は、不機嫌な最強の兄と、悩める最強の弟……そして、「逃げ場のない正論で相手を窒息死させる、具体性至上主義の怪物」だ。

 

 

 

 お前の罪状も、具体的に、論理的に、1000ページの報告書にして叩きつけてやるからな。

 

 

 

 まあ…その前に俺にはやるべきことが一つあるわけで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……というわけだ。本当にすまない、カガリ! 俺の忠告があいつをあんなコンプライアンスの魔神に変えちまうなんて思わなかったんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はカガリの執務室の床に、額がめり込むほどの勢いで土下座していた。地面をぐりぐりと擦り付け、必死に謝罪する。

 

 

 

 

 

「アスランを、あんな……視力2.0のくせにメガネをかけて『具体的には』を連呼する男にしてしまったのは俺の責任だ! 婚約者として、あいつと一生『具体的』な話をさせられるお前の苦労を思うと……!!」

 

 

 

 

「よせ、ユウナ! 頭を上げてくれ!」

 

 

 

 

 カガリが慌てて俺の肩を掴む。その顔は、意外にも穏やか……というか、どこか悟りを開いたような慈愛に満ちていた。

 

 

 

 

「自分も悪かったと思っているんだ。あいつを一人でザフトへ行かせ、迷わせてしまったからな。だが……今のあいつを見ていろ。あれがアスラン・ザラだ。迷いを断ち切り、自分の信じる『正しさ』――報連相というやつか?――に全力を注いでいる。あんなに活き活きとしたあいつを見るのは初めてだ」

 

 

 

 

「カガリ……お前、本気で言ってるのか?」

 

 

 

 

「ああ。それに、あいつはちゃんと言ってくれたぞ。私を最高のパートナーとして信頼していると。……まぁ、その後に私の寝癖のパターンを統計化した100ページの報告書を渡された時は流石に膝から崩れ落ちたが、あれもあいつなりの『愛』と『報連相』なんだろう」

 

 

 

 

 カガリはフッと微笑み、遠くを見るような目で続けた。

 

 

 

 

「あいつは、これまで以上に頼もしい。あんなに『具体的に』世界を守ろうとしている男は他にいないだろう? 私は、あのアスランを誇りに思っている」

 

 

 

「……愛の力ってすげえな。いや、毒され始めてるのか?」

 

 

 

 俺が戦慄していると、背後のドアが「失礼します」という、定規で測ったような完璧な角度のノック音と共に開いた。

 

 

 

 

 

「ユウナ、カガリ。……相談がある。具体的には、次のヘブンズベース戦におけるアークエンジェルの備品管理についてだが、箸の予備が7膳足りない可能性が出てきた。これはキラが夜食を食べる際の予備リソースとして致命的な欠陥だ。具体的には――」

 

 

 

 

「アスラン!! お前さぁ!?今カガリが良い話をしてたんだぞ!!」

 

 

 

 

 俺の絶叫も空しく、アスランはクイッとメガネを上げ、1.0mmの狂いもない視線で俺たちを射抜いた。

 

 

 

 

 

「……ユウナ。感情論は後にしてくれ。今は箸の在庫報告が最優先だ」

 

 

 

 俺は新しい胃薬を口に放り込み、カガリを見た。彼女は「……な? 頼もしいだろう?」と、頬を引きつらせながら親指を立てていた。中指でもいいんだぞカガリ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、ドアの先では「うわあああああああん!!」という、かつてのフレイを失った時か、あるいはイージスと刺し違えた後の時並みの慟哭が廊下響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キラ・ヤマトは泣いていた。

 

 

 

 

 

 なんだかんだで幼馴染で、親友だと思っていた男が、再会したら視力2.0の癖に伊達メガネを光らせながら「キラ、お前の昨日の睡眠時間は、具体的には32分不足している。自己管理の甘さを相談なしに放置するのは、パイロットとしてのコンプライアンス違反だ」と理詰めで説教してくる怪物に変貌していたのだ。どんな顔すりゃいいんだろうね。笑おうとしても引き攣って笑えねぇよ綾波。

 

 

 

「キラ! 泣くんじゃない! 具体的な改善案がない涙は、現状の打開に寄与しないどころか、脱水症状によるパフォーマンス低下を招くぞ!」

 

 

 

 

「そういうところが嫌なんだよアスラン!! 昔の……昔の、もっと煮え切らなくて、悩んでて、勝手にいなくなるけど最後には助けてくれるアスランに戻ってよ!!」

 

 

 

 

 キラは床を叩いて泣きじゃくっている。その姿は、ある意味で戦場よりも悲惨だった。

 

 

 

 そんなキラを見て、不機嫌の化身であるカナードが、ついに箸をバキリとへし折って立ち上がった。

 

 

 

「……おい、ユウナ。こいつら(キラとアスラン)を俺と同じ空母に乗せるのは、戦略的ミスだ。具体的には、俺の精神がヘブンズベースに着く前に消滅する。いいか? 次の戦場では俺が一番に出る。後ろで『具体的には』とか『報連相』とか抜かす奴がいたら、ロゴスと一緒にドレッドノートイータで焼き払ってやるからな」

 

 

 

 

「カナード、機材の損壊は事前に備品管理部に報告を――」

 

 

 

 

 

「黙れヅラメガネ!!」

 

 

「ヅラメガネではないアスラン・ザラだ。ほら、この統計を見ろ。俺の父上を見る限り具体的には───」

 

 

 

 

 

 カナードの怒号とキラの泣き声が、オーブ国防本部に響き渡る。

 

 

 

 カガリは「頼もしいだろう?」と言いながらも、すでに目は慈母のように変化しており、無意識に自分の寝癖を直していた。アスランの「具体的寝癖レポート」の恐怖が体に染み付いているようだ。

 

 

 

 

 俺は、もはや薬では効かない胃の痛みを感じながら、窓の外の青い空を見上げた。

 

 

 

 

「……なぁ、アスラン。お前、ザフトを去る時に『円満退職だ』って言ったよな? 嘘だろ。お前、正論で議長とレイを窒息させかけて、追い出されるようにして帰ってきたんだろ?」

 

 

 

「失礼な。俺は丁寧な挨拶と、今後のキャリア形成について相談した上で――」

 

 

 

 

「わかった! 具体的にもう喋るな!!あとカナード!銃を下ろせ!!!!」

 

 

 

 

 俺はアスランの口を封じ、泣き崩れるキラを立たせ、般若のような顔のカナードをなだめすかしながら、地獄のヘブンズベース遠征艦隊の編成を強行する羽目になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在。旗艦タケミカヅチで激しさを増すヘブンズベースの戦況をモニター越しに凝視していた。

 

 

 

「……あいつら、本当に人間か?」

 

 

 

 俺の口から漏れたのは、感嘆ではなく戦慄だった。

 

 

 

 

 本来、中立国であるオーブが他国の拠点攻略に参加するなど、理念に照らせば言語道断だ。だが、今回はロゴス討伐という大義名分のもと、国際社会からの「協力しないならオーブもロゴスの仲間か?」という、具体的には極めて悪質な同調圧力に屈せざるを得なかった。

 

 

 

 俺だって馬鹿じゃない。ここで高名なアークエンジェルを貸し出せば、戦後の発言権を、具体的には……。

 

 

 

「……ッ!! まただ! また俺の思考に『具体的』が混ざりやがった!!」

 

 

 

 自分のこめかみを拳で叩き、アスラン菌を追い出す。カガリは国家元首として本国で睨みを利かせているが、現場の地獄は俺が引き受けなきゃならない。

 

 

 

 

 

 モニターには、フリーダム、ドレッドノートイータ、そしてセイバーの3機を中心に、3機のムラサメが完璧な陣形で敵陣を切り裂く様子が映し出されていた。

 

 

 

 特にあのムラサメ隊だ。あいつら、士官学校でアスランの「具体的には地獄」を生き残り、上位1割の「クローン」と化した連中だ。

 

 

 

 

 

『こちらムラサメ1。アスラン教官、敵防衛ラインの第3層を突破。具体的には、次のデストロイ砲撃まで45秒の猶予があると推測されます。予備弾薬の共有を申請、相談願います!』

 

 

 

 

 通信が入るたびに、俺の胃はギリギリと悲鳴を上げる。

 

 

 

 あいつら、戦場の極限状態でも「報告・連絡・相談」を1秒たりとも怠らない。

 

 

 

 

 普通、編隊飛行ってのは長機の背中を見て阿吽の呼吸で飛ぶもんだろ? なのにあいつらは、一挙手一投足に「具体的には」という注釈を添えなきゃ気が済まない体質になっちまってる。

 

 

 

 

 キラはキラで、親友だったはずの男が「キラ、今の機動はコンマ2秒遅い。具体的には慣性制御の……」と無線でずっと説教してくるもんだから、半泣きでハイマット・フルバーストを叩き込んでやがる。

 

 

 

 

 カナードに至っては、アスランへの殺意をロゴスにぶつけることで、本来の3割増しの火力を叩き出している。

 

 

 

 

「……これが、アスラン・ザラの作り上げた『最強の組織』ってわけか」

 

 

 

 

 伊達メガネを光らせて、視力2.0の目で戦場すべてを「コンプライアンス違反」として査定していくアスラン。

 

 

 

 

 その指示に従い、一糸乱れぬ動きで敵を窒息させていくムラサメ隊。

 

 

 

 あいつらのせいで、ロゴス軍はパニックに陥っている。「敵の動きが論理的すぎて、どこにも隙がない」と絶望的な通信を垂れ流しているのが聞こえてくる。

 

 

 

 俺は新しい胃薬を口に放り込み、モニターを睨みつけた。ジブリール。お前の負けだ。お前はただの悪党だが、こっちには「相手の精神を論理的に削り取る怪物」がいる。

 

 

 

 

「……おい、通信兵。アスランに伝えろ。具体的には……もう一秒でも早く終わらせて帰ってこい、とな」

 

 

 

 

 俺の「具体的」な指示を乗せて、オーブ軍の無機質な正論がヘブンズベースを焼き尽くしていく。敵味方もう地獄だろと感じつつ、一分一秒でもこの戦場からさっさと離脱したいとこれまで以上に具体的に……だからやめろ!!!思考まで具体的に染まるんじゃねぇよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、この凄惨な戦場を、別の視点から見つめる者たちがいた。

 

 

 

 

 ロゴス討伐という目的で、戦域が重なったザフトの最新鋭艦ミネルバ。そのモビルスーツ隊もまた、オーブ軍の異様な戦いぶりに、得体の知れない恐怖を感じていた。

 

 

 

 

「レイ……あれ、本当にオーブ軍なの? なんか動きが気持ち悪いんだけど……」

 

 

 

 

 

 インパルスのコクピットで、ルナマリアが引きつった声を上げた。

 

 

 

 かつてのアスランなら、セイバーで戦場を縦横無尽に駆け巡り、騎士道精神すら感じさせる華麗な剣筋を見せていたはずだ。

 

 

 

 だが、今のセイバーは違う。

 

 

 

 

 三機のムラサメを完璧な幾何学模様のように従え、まるでチェスの駒を動かすかのような冷徹さで敵の防衛線を「詰ませて」いる。敵が少しでも陣形を崩せば、即座に無線で『貴軍の防衛プランには、具体的には以下の3点の欠陥があります』と全周波で送りつけながら、その弱点をミリ単位で精密に撃ち抜いていくのだ。

 

 

 

「……アスラン・ザラか。相変わらず、理解不能な男だ」

 

 

 

 

 

 

 レジェンドから大量のビームを放ち、レイ・ザ・バレルが苦々しく呟いた。

 

 

 レイの目から見ても、オーブ軍の連携は異常だった。一機が撃たれれば即座に『損傷報告:左主翼、稼働率15%低下。代替機動プランBへの移行を提案。具体的には――』と、流れるような報連相が通信回線を埋め尽くしている。

 

 

 感情に任せた叫びなど一つもない。あるのは、最適化された殺戮と、それを支える膨大な情報の共有のみ。

 

 

 

 

「な、なんなんだよ! あんな性格じゃなかっただろアスランはぁ!!」

 

 

 

 デスティニーのコクピットで、シン・アスカは悲鳴のような叫び声を上げながらアロンダイトを振り下ろした。目の前のウィンダムを両断しても、ちっとも気分が晴れない。それどころか、隣の空域から流れてくる「声」のせいで、シンの血管は今にも千切れそうだった。

 

 

『その機体、シンか!? 良いところに気づいた。援護に感謝する』

 

 

 通信ウィンドウに、かつての隊長であるアスラン・ザラが映し出される。だが、その顔には「伊達メガネ」が鎮座し、瞳は冷徹なまでの具体性に満ちていた。

 

 

 

 

『今の切り込みだが、シン。具体的には角度が3度甘い。それによるエネルギーロスと、敵機爆発時の破片による自機損傷リスクの推移を考えたことはあるか? 俺に相談もなしに、そんな粗い機動を続けるつもりか!』

 

 

 

「う、うるさい!! 今は戦争中だぞ! いちいち角度だの相談だの言ってられるかよ!!」

 

 

 

 シンの絶叫を、アスランはクイッとメガネを押し上げる仕草一つで切り捨てた。

 

 

 

 

『戦争だからこそ、情報の共有と正確な現状報告が必要なんだ。お前はいつも感情が先行して、事後報告すら疎かにする。具体的には、俺が円満退職する四日前の戦闘ログでも……』

 

 

 

「ああもう! 昔のあんたはもっと、こう……寄り添って優しくそばにいてくれたというか!!なんでそんなに理屈っぽくなってんだよ! 気持ち悪いんだよ!!」

 

 

 

 シンは半泣きでデスティニーを急加速させた。だが、アスランのセイバーは恐るべき精度でその後ろを追尾してくる。

 

 

 

『シン、加速の事前連絡がない。周囲の味方機、具体的には右後方に展開中のムラサメ3機に衝突リスクの再計算を強いることになった。連絡・相談を怠るなと、あれほど言ったはずだぞ』

 

 

「あいつら(ムラサメ隊)もあいつらだ! 『了解、回避プランCを具体的に実行します!』なんて、ロボットみたいに返事しやがって!!」

 

 

 

 シンは、ロゴスの防衛線を突破する快感よりも、背後から飛んでくる「具体的すぎるダメ出し」のストレスで精神が限界に達していた。

 

 

 

 レイがレジェンドで無数のビームで敵を焼き払いながら苦々しく呟く。

 

 

 

 

 

「……シン、関わるな。今のアスラン・ザラは、倫理という名の狂気に憑りつかれている。もはや言葉を交わすだけ時間の無駄だ。具体的には、我々の士気が下がるだけだ」

 

 

 

 

 

「レイまで『具体的には』って言ったぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 絶叫するシン。

 

 

 

 戦場はもはや、ロゴス対ザフト・オーブ連合軍ではなく、「アスラン・ザラの報連相」対「それに耐えられない人類すべて」の様相を呈し始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう絶対にあいつは出撃させん!!! 次からは絶対に、絶対にだ!! アスランは書類の山に埋めて一生事務させてやる!!」

 

 

 

 

 

 俺は旗艦タケミカズチのブリッジで、机を叩きながら絶叫した。

 

 

 

 

 ブリッジ内の空気は、もはや戦場の緊張感というよりは、葬儀会場のそれに近い。

 

 

 

 

 通信回線からは、もはや言語化不能なキラの嗚咽が漏れ聞こえてくる。

 

 

 

 

 

『うっ……ひぐっ……、落とす……落とさなきゃいけないんだ……具体的に……効率……うわぁぁぁん!!』

 

 

 

 

 泣きじゃくり、呼吸を乱しながらも、フリーダムのマルチロックは寸分の狂いもなく敵MSを「無効化」していく。殺さないが、徹底的に戦力を削ぎ落とすその精密さは、もはや慈悲ではなく、植え付けられた「論理」への恐怖が生んだ執念に見えた。

 

 

 

 

 対照的に、カナードは完全にキレていた。いや発狂していた、

 

 

 

 

 

 

『ははははは!! 黙って見ていろメガネ!! 俺とプレアのドレッドノートイータは無敵だ!! 相談だと? 報告だと? 知るか!! 破壊に事前の手続きなんて必要ねえんだよ!!行くぞプレア!!!」

 

 

 

 

 

 アスランの指示を完全に遮断し、高笑いしながら光の奔流を撒き散らすカナード。だが、その暴走を止めるべきアスランの返答が『……了解した。君の独断専行のリスクは、俺とムラサメ隊でカバーする。具体的に――』と冷静に返ってくるたびに、ブリッジの通信士たちの顔色はさらに青ざめ、お通夜の雰囲気は深まっていく。

 

 

 

 

「おい、聞け!!」

 

 

 

 俺はブリッジ全員を指差し、ドスの利いた声で告げた。

 

 

「以後、このブリッジで『具体的には』なんて口にした奴がいたら、階級に関わらず即座に牢屋にぶち込むからな! いいか、二度とあいつの言葉を使うな!!」

 

 

 

 

 俺達は現実逃避するようにアスラン菌の汚染から物理的に距離を置き、モニターに映る「現実」に目を向けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 続かない。

 

 

 

 





 今日はここまで。以後メイリンも含めてどんどん周囲がアスランの様になり、キラは号泣して、カナードは壊れた様に爆笑して、カガリは悟りを開いて、ラクスは必要な時以外無言となってユウナは完全にアスランの濃さに負けて空気になってしまうのでした。没になるに決まったんだろこんなの。

 本当はこれを肉付けしていって色々と描写する予定でしたが、冷静になった結果没に。これ以上書くと著者の精神もぶっ壊れます。では次回は今回のお話を踏まえた上で本編ではどうなるのか?もお楽しみくださいませ。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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