破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第五十話 アーサーやめろ!フラグを建てるな!

 

 

 

 

 オーブ国防軍が管理する厳重警戒区域の港。

 

 

 

 

 重厚なエンジン音を響かせ、ミネルバが接岸する。タラップが下りると同時に、数人のザフト兵を従えて、艦長のタリア・グラディスと副長のアーサー・トラインが姿を現した。

 

 

 タリアの視線は鋭い。以前、オーブ近海で彼女らに飛行装備を融通した際、ユウナは政治的な駆け引き抜きで彼女たちを助けた経緯がある。彼女はユウナという男の「食えなさ」を警戒しつつも、根底ではその決断力を認め、一定の信頼を寄せていた。

 

 

 

 

 

 タリアはユウナの前で足を止めると、軍人らしく隙のない敬礼を捧げた。

 

 

「……お久しぶりです、セイラン代表代行。この度は……我が国の要請に対し、これ以上ないほどの回答をいただいたこと、感謝いたします」

 

 

「艦長も、相変わらずのようで何よりです。……もっとも、再会がこんな劇物の受け渡しになるとは、お互い予想していなかったでしょうが」

 

 

 

 

 ユウナが指し示した先には、ストレッチャーに固定され、全身を拘束具で固められたジブリールが横たわっていた。強力な鎮静剤によって意識は完全に沈んでいるが、その存在自体が放つ不気味な重圧は隠しようもない。

 

 

 

「本当に、セイラン代表代行が独力で……いえ、オーブ軍だけで捕縛されたのですね。我々がヘブンズベースで取り逃がした、あのジブリールを」

 

 

 

 タリアは、信じがたいものを見る目でジブリールを見つめた。ザフトの精鋭をもってしても成し遂げられなかった大金星を、この若い代表代行は「不法入国者の取り締まり」という建前で、いとも容易くやってのけたのだ。

 

 

「オーブの沿岸警備を舐めてもらっては困りますよ。……さあ、鮮度が落ちないうちに収容を。こいつがうちにいる時間が長ければ長いほど、余計な火種が増えますから」

 

 

 ユウナが顎で促すと、タリアの背後にいたアーサーが、ようやく張り詰めていた空気を抜くように肩を回した。

 

 

「さすがはセイラン代表代行! 助かりますよ、本当に! これでようやくロゴスも御用ってわけだ。いやぁ、これでやっと戦争も終わって、平和が来るんですねぇ! 嬉しいなぁ!」

 

 

 

 

 アーサーのいつもの調子のいい声が、張り詰めた港に響く。だが、その楽観的な言葉を、ユウナの冷徹な一言が遮った。ユウナの内面としては「フラグ建てんじゃねぇよ!!!」と叫びたかった様だが。

 

 

 

 

「……平和、ですか。アーサー副長、少し気が早すぎるんじゃないかな」

 

 

「えっ……?」

 

 

 

 アーサーの顔から笑みが消える。ユウナはミネルバの艦橋越しに、遥か上空……月の輝く空を睨みつけた。

 

 

「確かに地上でのロゴスの組織力は壊滅したでしょう。だが、月面にはまだ連合軍の大部隊が健在だ。そして、ジブリールという『首を失った巨大な軍隊』が、最後に何を放ってくるか……。絶望した人間が、理性を保ったまま降伏してくれるなんて、俺はこれっぽっちも思っちゃいない」

 

 

 

 ユウナの視線がタリアに戻る。そこには、以前に少し見せたおどける様な「お坊ちゃん」然とした軽薄さは微塵もなかった。猫を被り続けるのをやめ、先の先を見続けてるであろうその表情は拘束されているジブリールより遥かに不気味に思えてくるほどだ。

 

 

「艦長。唯一残された連合の月面基地アルザッヘル基地、及びダイダロスへの警戒を、最大級に引き上げておいてください。追い詰められたネズミが最後に噛み付く先は、案外近いかもしれませんよ」

 

 

 タリアは息を呑み、その表情を戦慄に染めた。ユウナが何を危惧しているのか、かつてミネルバ隊に「翼」を授けた男の慧眼が、再び何かを見抜いていることを直感したからだ。

 

 

 

 

 

「……肝に銘じます、代表代行。……我々も、これより警戒を密にして捕虜の護送に当たります」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、眠れる厄災・ジブリールはミネルバへと収容された。去りゆくミネルバを見送りながら、ユウナは冷や汗で濡れた手のひらを握りしめる。

 

 

 

 

 歴史は変わった。だが、その変化が「レクイエム」という最悪の光を早めるのか、あるいは防ぐのか。勝負はここからが本番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミネルバが水平線の彼方へと消えていくのを見届けた後、俺はようやく自分の部屋へと戻った。

 

 

 

 重いスーツを脱ぎ捨て、そのままベッドに倒れ込む。ここ数週間、まともに眠った記憶がない。ロゴス崩壊に伴う経済の混乱、世界中に吹き荒れた反ロゴスの暴動……。

 

 

 それらがオーブに飛び火するのを防ぐため、俺は備蓄物資を惜しみなく放流し、軍と警察を総動員して、ほとんど戒厳令一歩手前の治安維持活動を強行してきた。その無理がようやく形になり、国内が落ち着きを見せ始めたところで、このジブリール捕縛劇だ。

 

 

 

「……はぁ。死ぬかと思った……」

 

 

 

 

 天井を見上げながら、深い、深い溜息をつく。死ぬかと思ったことなんて幾らでもあるが今回はマジで疲れた……正直、楽観視しているわけじゃない。だが、これだけは断言できる。

 

 

 俺自身の「死亡フラグ」は、これで概ねへし折ったはずだ。原作でユウナ・ロマ・セイランを破滅に追いやった「ジブリールを匿う」という最悪の選択を回避し、逆に「共通の敵を捕らえた英雄」の座にオーブを据えたんだ。

 

 

 

(……レクイエムは、まだ残ってるだろうけどな)

 

 

 

 

 月面基地ダイダロスには、依然として地球を焼く巨砲が鎮座している。だが、ジブリールを引き渡した以上、ここからはもう俺の知る「原作」とは違う物語だ。

 

 

 

 原作であの狂人がプラントに向けて直接ぶっ放したのは、追い詰められ、逃げ場を失った末の狂気だった。だが今回は、そのジブリール本人が既にザフトの檻の中にいる。

 

 

 

「……案外、残された連中も戦意を失って、そのまま武装解除に応じるんじゃないか?」

 

 

 

 心に、少しだけ余裕が生まれる。少なくとも、今のオーブがレクイエムの最優先ターゲットに選ばれる理由はどこにもない。

 

 

 

 それに、ジブリールがオーブの裏ルートで捕まったことを知っているのは、現場のミネルバ隊と報告を受けた議長周辺のごく一部だけだ。

 

 

 表向きには「オーブが迅速にテロリストの首魁を拘束し、即座にプラントへ引き渡した」というクリーンな外交成果として処理されている。

 

 

 

 

(議長がこの手柄をどう面白くなく思っていようが、今のオーブを叩く大義名分はあいつにはない……)

 

 

 

 

 心地よい疲労感が、まどろみとなって襲ってくる。まだレクイエムという不安要素は消えていないし、議長の「デスティニープラン」に向けた動きも止まってはいないだろう。だが、今日この瞬間だけは、勝利の余韻に浸ってもいいはずだ。

 

 

 

 

 

「……あとは、ミネルバが……上手くやってくれるさ……」

 

 

 

 

 とはいえ、喉の奥に小骨が刺さったような違和感はある。なぜジブリールは、ダイダロス基地に立て籠もってレクイエムをぶっ放すのではなく、わざわざオーブにやってきたのか。

 

 

 

 ぶっちゃけ、あいつに余計なことを言わせないために、会った瞬間に拘束して眠らせちまったから、真相は闇の中だ。そこだけが妙に不安ではある。原作のあいつの行動原理を思い出そうとしても、今のこの歪んだ状況じゃあてにならない。

 

 

 あいつは本気で、俺がウナトのように従うと信じていたのか? それとも、月へ行くことすらできないほど、今のザフトの包囲網が厳しかったのか……。

 

 

 

 意識が暗転しかけたその時、枕元の秘匿通信端末が、短く、だが鋭い電子音を鳴らした。

 

 

 

 重い瞼を押し上げ、表示されたコードを見る。

 

 

 

「……サーペントテールか」

 

 

 俺は這いずるように身を起こし、通信を繋いだ。画面に映ったのは、感情を削ぎ落としたような、鋼の光を宿す瞳の男。傭兵、叢雲劾だ。

 

 

 

「……深夜に失礼する。任務の報告だ」

 

 

 

 ガイの声は相変わらず低く、事務的だ。無駄な挨拶も、状況への私情も一切挟まない。それが彼のスタイルであり、信頼の証でもある。

 

 

 

 

 カナードを雇い入れてからしばらくして、俺はどうにかサーペントテールとのコンタクトに成功した。だが、正直に言えば彼を使いこなすのは怖かった。俺にはアストレイ関連の知識がスパロボとGジェネくらいで乏しいし、何よりこの『デスティニー』の裏側で、彼ら『アストレイ』の面々がどんな物語を紡いでいるのか、断片的にしか知らない。

 

 

 

 

 この民度最低で、誰もが指一本で引き金を引くようなコズミック・イラだ。下手に彼をカナードのように最前線の介入や新型MSのテスト運用に投入すれば、原作のシナリオに致命的な歪みを生み、それが巡り巡ってとんでもない悲劇に繋がるんじゃないか……そんな恐怖が俺にはあった。

 

 

 

 

 だからこそ、俺は彼に表立った戦場への介入は一切頼まなかった。代わりに、仕事の合間のサブミッションとして、極秘にある依頼を彼らに投げていたのだ。

 

 

 

「……そっちはどうだ。何か動きはあったか?」

 

 

 

「……お前が指定したポイントだが、ようやく『目星』がついた。現在はまだ観測データ上の不自然な揺らぎに過ぎないが、何かが存在する可能性は高い」

 

 

 

 

 

 ガイの報告は簡潔そのものだった。それが一体何なのか、俺自身も確信があるわけじゃない。ただ、もし仮に「それ」が将来的に牙を剥く存在になるのなら、その時は……現時点では願望に近い計画を俺は持っていた。

 

 

 

「そうか。……目星がついたのなら、今はそれでいい」

 

 

 

「……一つ言っておく。現在の俺たちの装備では、そこへの潜入や工作までは厳しい。これ以上の深追いは、それ相応の準備が必要だ」

 

 

 

 ガイの冷静な分析に、俺は小さく頷いた。俺の知る限り最強クラスの傭兵(カナードと比べるとどうなんだろうか?)に依頼を出してはいるものの、今の俺には彼をこれ以上使いこなす余裕も、その先を見通す力もない。ただ、いつか来るかもしれない「最悪」に備えて、小さな楔だけは打っておきたかった。それこそが俺の生存確率を1%でも上げると信じて。

 

 

「わかっている。……引き続き、監視を頼む。装備は望むだけ用意する。無理はするな」

 

 

 

 

 通信を切り、俺は再び暗い自室で一人になった。ジブリールをミネルバに引き渡し、ガイからの不透明な報告を受けた今、俺の心にある余裕は、風前の灯火のように揺れているのであった。

 

 

 





 今日はここまで。サーペントテールをサーペンテールと何度も誤字してその度に誤字報告を受けましたが本当に申し訳ございません。

 今回ミネルバ隊はジブリールの引き渡しを最優先でさっさと退散したのでシンなどの出番はなし。彼らにとってのアスランは相変わらず『あの』アスランです。

 ちなみにユウナにとってアーサーとの会話の最中「とでも思っていたのか?」「その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ」など某国民的有名アニメの劇場版の台詞がリフレインしており、「本当にそう言うのやめろ!!最終的に俺がデデーン!する前振りしてんじゃねぇ!!!」とブチギレていたりします。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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