破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
著者は今作以外ではアズールレーンの二次創作も描いています(一つは完結、一つは連載中)そこでは女の子とのラブコメやなんならえっちぃ展開だって描いていたんですよ。
……改めて見ると可愛い女の子も沢山いるSEEDシリーズなのに……なぜこの作品は50話近く連載してヒロインポイントが高いのがカナード、トダカ、デュランダルと野郎ばかりなんだ…?
カガリが全世界に向けて「かかってこい! 相手になってやる!」と獅子の咆哮を上げている裏側で、俺は冷や汗を流しながら周囲の反応を伺っていた。
正直、客観的に見て「ユウナ一人をザフトに売ればオーブは焼かれずに済むんだから、さっさと差し出せよ」と言い出す軍人が続出してもおかしくない状況だ。
そもそも俺はさっきの放送で代表代行を辞任しちゃったし。ただの前科(予定)持ちの一般人だぞ?
だが、蓋を開けてみれば、国防本部の空気は驚くほど一丸となっていた。
「……まぁ、カガリ様があそこまで仰るのならな」
「トダカ一佐が、あのユウナ殿が裏で血の滲むような思いをしていたと保証してくださったんだ。信じるしかあるまい」
トダカ一佐とカガリによる凄まじい根回し……というか、二人の持つ「圧倒的な徳」が、俺という泥にまみれた存在を強引に正義の側に引き止めていた。
さらに驚いたのは、国外に派遣されているオーブ国際救援隊の反応だ。現場指揮を執っているミヤビが、俺の辞任声明の直後に「私たちは現場でユウナ殿の指示がどれほど多くの命を救ったか知っている。政治的なレッテル貼りに屈するな!」と、全隊員に向けて真っ先に支持を表明し、見事にフォローしてくれたらしい。
おかげで、もっとも混乱が予想された救援隊の離反も起きず、オーブ国内の士気は逆に「世界に喧嘩を売られた」という怒りで沸騰していた。
(うぉぉお!!! セイランはどうでもいいけどカガリ様ばんざーい! トダカ一佐ばんざーーい!!! ミヤビ様ばんざーーい!!)
そんな幻聴が、司令部の喧騒に混じって俺の耳に届く。
「……分かってたけどさぁ! 俺個人への信頼、本当に微塵もねぇんだなクソが!!チクショォォォ!!」
司令部で頭を抱えて吼える俺の隣で、キラが申し訳なさそうに、でもこれ以上なく優しい声でフォローを入れてくれた。
「あ、あの……ユウナさん。そんなことないですよ。僕は……リビルドの活躍や、あのホスピタルの運用を見て、ユウナさんがどれだけ必死に世界を救おうとしてきたか、ちゃんと分かってますし国民の人も見てくれてると思いますから…」
「キラ君……!!」
お前…お前はなんていい奴なんだ…!!世界中の誰もが俺を投石やギロチンでもてなそうとしている時に、この最強のスーパーコーディネイターだけは俺の「中身」が必死にやってきたことを見てくれていた。本当いい奴だよだれだよこの子が悟り開いてるだのなんと傲慢なのだろうとか言ってたやつ!?俺だ!
だが、救いはそれだけじゃなかった。
「そうですわ、ユウナ様」
鈴の鳴るような、だが有無を言わせぬ慈愛を湛えたラクスの声が司令室に響く。
彼女が俺に向ける視線は、以前のあの「血の通わぬ教祖様」の如き完璧な微笑みではなかった。どこか以前よりも柔らかく、人間味のある……それでいて、俺がかつて彼女に放った「打算」や「私欲」という言葉を飲み込み、血肉に変えた者だけが持つ、深く静かな眼差しだった。
(……待て、その目はやめろ! その『全てを分かっています』みたいな聖母モードは、俺の胃に悪いんだよ!)
かつて、俺は彼女に血の通ってない教祖だのと暴言を吐いた。その上で打算で動け、私欲で動け、お茶を飲むために戦えと。その結果、特に前者で彼女をガチ凹みさせ、慌てて謝り倒す羽目になった。
だが、今の彼女は、その「打算」こそが、俺が平和を希求するために選んだ泥臭い誠実さなのだと、とんでもないレベルで解釈をアップデートしてしまっていた。
「過去に手を汚してしまったとしても、それを悔い、必死に償おうとしてきた方を、どうして責めることができましょう。貴方はオーブを、そして世界を……人々の『安心』を守ろうとしてくださった。その真心、今この場にいる私たちが、決して疑うはずもありません」
(うわ、まぶしい……! あの日のガチ凹みが嘘みたいに、ラクシズのカリスマが『人間味』を帯びてパワーアップしてやがる!)
カガリが広めたトダカとの土下座エピソード。そしてラクス本人が俺から直接聞き出した「打算による平和論」。この二つが合流した結果、ラクス・クラインの中でのユウナ・ロマ・セイラン像は、「かつてロゴスの闇に身を置きながら、今は自分を殺し、打算的で自己中心的なオーブの闇を背負った嫌われ役の政治家を演じることで世界を『リビルド』しようとしている孤独な聖人」という、天元突破した美談に仕上がっていたのだ。うっそだろおい…。
「……ユウナさん。あなたが『私欲』で守ろうとしたこの世界を、今度は私たちが、私たちの『私欲』で守ってみせますわ。……皆様と、美味しいお茶を飲むために」
ラクスはそう言って、悪戯っぽく、けれどこれ以上なく凛とした笑顔を見せた。その隣で、キラもまた「守るべきもの」を見つけた顔で深く頷いている。
(あ、あああ……もうダメだ。この子たち、完全に俺を『守るべき善』として定義しちゃってる!)
俺はもう、恥ずかしさとプレッシャーでどうにかなりそうだった。逃げられるわけねぇよ!こんな状況で!!
だが、不思議と怖さはさっきより薄れていた。世界中に石を投げられても、この「コズミック・イラ最強の歌姫と騎士」が、俺のついた嘘や打算を「真実」として背負ってくれると言うのなら。
「……は、ハハ……。分かったよ、ラクス様。そこまで言われちゃ、今さら『偽物の覚悟でした』なんて口が裂けても言えねぇな!」
俺は照れ隠しに、ありったけの速さでキーボードを叩くしかなかった。仕事がね!代表代行じゃなくなった後も沢山あるの!おれ無職の一般人なんだけどなぁ!明らかにやってる事が業務の引き継ぎじゃなくないかこれ!
さて、宇宙へ逃げろとメールしたカナードはどうなったかと言えば……。
数分後、彼は文字通り「嵐」のように司令室へ現れた。そして俺の顔を見るなり、挨拶も、状況報告も、ましてや労いの言葉もなく、思いっ切り無言で俺の腹に拳を叩き込みやがった。
「グハッ……!? げ、ふっ……」
胃袋の中身が逆流しそうな衝撃に、俺は床に這いつくばって悶絶する。
トダカの愛のムチ(物理)も痛かったが、鍛え続けた傭兵の腹パンは、比喩じゃなく骨に響く。呼吸ができない。肺から息を出そうとしても痛みで息がうまくできん…!
「……代金が多過ぎる。あんな額、一生かかっても使いきれん」
カナードは、うずくまって震える俺を冷徹な目で見下ろし、吐き捨てるように続けた。
「端数分はもうしばらく働いて返してやる。……それだけだ」
言うだけ言って、彼は背を向けて歩き出した。ドレッドノートイータの最終整備に向かう背中は、いつになく殺気立っている。どうやら、俺の「給料没収予告」が相当カチンときたらしい。
その一連のバイオレンスなやり取りを、ラクスとキラは微笑ましく(?)見守っていた。……いや、微笑ましく見てる場合かよ! 俺今死にそうなんだぞ!?
「……ふふ、素敵なご友人ですわね」
「ど、どこがだよラクス……マジで内臓破裂したかと思ったんだけど……」
涙目で這い上がる俺に、キラが苦笑しながら手を貸してくれた。彼は去っていくカナードの背中を眩しそうに見つめながら、穏やかな口調で言った。
「ユウナさん。……兄さんのアレは、すごく怒ってるけど、同時に『絶対に見捨てない』って表明してくれてるんじゃないかな」
「……は?」
「あんなに怒るってことは、それだけユウナさんの言葉が彼に届いたってことですよ。お金のせいにしてるけど、本当はユウナさんが一人で全部背負って、お前は逃げろって言ったことが兄さんにとっては一番許せなかったんだと思うんです……不器用だけど、彼なりの信頼の形ですよ。たぶんですけど」
キラ曰く、あの拳には「勝手に契約を終わらせるな」という、彼なりの執着がこもっていたらしい。……いや、それにしたって痛すぎるだろ。
(……ったく、どいつもこいつも『行間』読み過ぎなんだよ!)
トダカ一佐の勘違い、カガリの涙、ラクスの聖母化、そしてカナードの鉄拳。
俺がついた「保身のための嘘」や「逃げるための準備」が、こいつらの手によって全部「不器用な愛国心」や「戦友への絆」に書き換えられていく。
(……誤解だ。恐ろしいほどの誤解が、この国を一つにしてやがる)
俺が内心で震えていると、トダカが重々しい足取りで、だがその眼差しには確かな闘志を宿してこちらへ歩み寄ってきた。
「元代表代行。プラントから最終通告が届きました」
「……最後通牒か」
「はい。『72時間以内にユウナ・ロマ・セイランの身柄を引き渡さなければ、即時対ロゴス連合は宣戦布告を行い、武力をもって直接捕獲する』と。……決戦の時は、もはや秒読みですな」
トダカの言葉に、司令室の空気が一気に張り詰める。72時間。議長も焦っているのか、あるいはこの勢いでオーブごと飲み込むつもりか。
「……なぁ、ところで一ついいか?」
だが俺は敢えて、ずっと喉に引っかかっていた「あまりにも真っ当な正論」を口にした。なんかもう余りにも自然にそれでいいだろって空気が作られてるけどさ……。
「その……俺さぁ。先日の放送で『全世界に向けて』すべての要職から辞任するって言ったよな? 全私財も返上した。つまり、今の俺はただの無職の金無しな一般人だ。その一般人が、なんでまだこのオーブ国防軍の最高機密が詰まった司令部で、リヴァイアサンだのエタニティだのと指揮系統に指をかけてるんだ? これ、法的に言っても国際感情的に言っても、めちゃくちゃマズくないか?」
そう、辞任したはずの男が、辞めた直後に軍を動かしている。これでは「辞任はパフォーマンスでした」と言っているようなものだ。ドミニオンのアズラエルみたいに一般人が軍に口出ししてる様なもんだろ、シビリアンコントロール云々ってレベルじゃなくないか?
「「「「……はっ?」」」」
俺が至極真っ当なツッコミを入れた瞬間。
隣にいたキラが、まるで「何を当たり前のことを……」というよりは、「不治の病の患者が、突然陽気なラップを歌い始めた」的な目で見るような、ひどく冷淡で、憐れみに満ちた、救いようのない眼差しを俺に向けた。
「ユウナさん……。今さら、何を言っているんですか?」
「え、いや、だって俺辞任したし……」
「そんな形式的なこと、今のこの状況で誰が気にするっていうんです? あなたがここにいて指揮を執る。それがオーブにとって、僕たちにとって、一番確かなことじゃないですか。……それとも、まだ『逃げる理由』を探しているんですか?」
「…………」
キラの目が怖い。というかよく見ると司令部の人間全員が何言ってんの?狂ったの?と言わんばかりの目で俺を見ている。えっ俺間違ったこと言ったの?
「今度こそ貴方を守らせてよね?ここから一歩も出るなよ? 逃がさないよ?」という無言の圧力が、スーパーコーディネイターの静かな瞳の奥で渦巻いている。
ラクスに至っては、相変わらず「ふふ、ユウナ様は本当に冗談がお好きですわね」と言わんばかりの、全肯定という名の拒絶スマイルを崩さない。
「……あ、そう。そうだよね。俺がいないと、このガチガチにカスタマイズした防衛システム、誰も使いこなせないもんね。はは、ハハハ……」
結局、俺は「元代表代行(という名の、逃げ場を失った最高責任者)」として、この椅子に座り続けるしかないらしい。
俺の正論は、オーブという名の巨大な「善意の暴走」によって、跡形もなく踏みつぶされた。
「……トダカ一佐。72時間なんて待ってやる必要はない。敵が来る前に、こっちの迎撃準備を100%まで引き上げろ! 正義に燃えてる連中に恐怖と絶望を叩き込んでやるんだよ!!」
俺は半ば自暴自棄になって、メインコンソールの全機能を解放する。
逃げられないなら、勝つ。それも、議長が二度とオーブに手出しをしたいと思わないくらいギッタギタのボッコボコにして痛めつけてやんよぉ!!ギャハハ!!!
「ユウナ様。三下の悪役のような笑みは皆の士気に響きますので、やめて下さいな」
あっごめんなさいラクスさん…。
現在のユウナは全ての権限と財産をオーブに引き渡している無職の元代表代行。ですが「えっ?形式的なもんだろお前も働け」と言わんばかりに屋敷での謹慎や牢屋送りにされるのではなく司令部に拉致監禁される羽目に。まるでキオ編のフリットみたいな状況ですが皆がそれを望んで同調圧力をかけてくるのはある意味それを超えてる状況。
本人は「いいのか?アズラエルみたいなもんだろこの状況」と焦ってますが?あきらめましょう。なお、カナードの腹パンは「オーブとは無関係の無職が雇用した傭兵と仲良くしてた」と解釈してるそうですよ。さすがアスハのお家芸だな!
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン