破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
大西洋連邦とプラントは…ズッ友だよ!
「おかしいですよ…!」
オーブ近海に集いつつある対ロゴス連合。その実質的な最高戦力と言えるミネルバのブリッジで、副長であるアーサーが納得の出来ない様子でグラディス艦長に進言していた。
「……アーサー」
「セイラン代表代行はちゃんとジブリールを引き渡してくれたじゃないですか!それにミネルバの為にシュライク装備や模擬戦だって…!」
平時のグラディス艦長であれば彼を一喝して黙らせたのだろう。だが、グラディス艦長も彼の言葉を否定しようと言葉を口にしようとするも、喉元まで上がった叱責を口にすることが出来ない。
「こんなの…内政干渉じゃないですか…!セイラン代表代行はちゃんと責任を取るっていって財産も地位も捨てたのに…!」
アーサーは周囲から無能だと思われがちな人物だ。だが彼はどこまでも底抜けの善人であり、その言葉には正鵠を射ている事もある。
そもそもだ、そんな彼が正論を吐かざるを得ないこの状況はどれだけ異常事態なのだろうか?ミネルバのブリッジのメンバーは口にはしないが、内心ではアーサーに賛同している。
「……これ以上は貴方の責任になる。やめなさいアーサー」
まるで子供を諭す様にグラディス艦長は話す。ザフト及び大西洋連邦から参加した将兵達はユウナ・ロマ・セイランを捕らえろ、血祭りにしろと血気盛んだ。なぜ我々はそう狂う事も出来ないのだろうか?
こんな事になるのならオーブから支援を受けるべきではなかったと、思わず拳を握りしめるグラディス艦長に気付いたようでアーサーは最後にこう告げる。
「最近おかしいですよ……ザフトも…連合も……世界も…」
底抜けの善人の率直な言葉にミネルバのクルー達は、黙らざるを得ないのであった。彼らがどう思っていたのかは言うべきもない。だが彼らザフト……目の前の敵であるオーブを止める事が正義であり、貫き通すしか道は残されてはいなかった。
ギルバート・デュランダル議長が突きつけた「72時間」という猶予が、静かに、そして残酷に潰えた。オーブ側からの回答は変わることなく、ついに運命の刻が訪れる。
オーブ周辺海域を埋め尽くしたのは、プラントを中核とした「対ロゴス同盟軍」の圧倒的な大艦隊であった。水上艦、空母、揚陸艇に潜水艦と煌びやかな艦艇が並んでいる。これが大西洋連合とザフトの艦隊が主軸になっているのだから二年前に殺し合った将兵達は、一体何を思うのだろうか?デュランダル議長は極めて巧妙に、そして冷徹に盤面を操作していた。
最前線に配置されたのは、血気盛んで功を焦る大西洋連邦の艦隊である。彼らは「ロゴスを匿うオーブ」を叩くことで自らの潔白を証明せんと、勇み立って先陣を切った。自分たちが肉壁として扱われてる事に気づいてすらいないのはある意味彼らにとって幸運なのだろうか?
大西洋連邦は現在親ロゴスと反ロゴスで別れて紛糾しており、今回のオーブ攻撃に参加する事になったのは特に反ロゴスを掲げる部隊だ。
実の所ユーラシアや東アジアが主軸であった『史実』と比べても、その数は大西洋連邦単独であってもかなりの規模となっており、リビルドの存在やデュランダルによるジブリールの公開処刑も含めて大西洋連邦が史実以上に反ロゴスに傾いている影響が伺える。ユウナという異物の存在が少しずつ歴史を歪めた結果であると言えるだろう。
その結果が史実以上の不倶戴天の二国間の接近なのだから、皮肉にもオーブという国家の存在が生贄となり両国の関係の修復に繋がったのだ。そこにはオーブが反プラントを煽っていたジブリールを差し出した影響が最も高いのは当然の結果であると言えるかもしれない。
宇宙を見上げれば、降下準備を終えた膨大な数のMSが、主の号令を今か今かと待ち構えている。彼らはオーブの中枢区画を制圧する為に派遣されたプラントを中心とした部隊。とは言え降下作戦は犠牲者も多いが為、彼らの降下先を確保するための水上艦から発艦予定のウィンダムやグフイグナイテッドも甲板で時を待っている。
そして、全世界が見守る中、デュランダルの静かな声が響き渡った。
『――理を解さぬ同胞に、悲しみをもって剣を向けよう。各員進撃せよ!』
その言葉を合図に、正式な宣戦布告がなされた。四方から包囲の網が絞り込まれ、オーブは逃げ場のない死地へと追い詰められていくのであった。
だが、その完璧なはずの包囲網には、明らかな「歪み」が生じていた。
議長の意図に反し、ユーラシア連邦と東アジア共和国の艦隊は、露骨に戦意を欠いていたのである。彼らの部隊は明らかに数が少なく、進軍速度を遅らせることで自ら後方へと回っていた。
「……オーブには、してやられたね」
デュランダルの口から漏れたのは、苦笑混じりの呟きだった。彼らにとって、オーブは討つべき「悪の拠点」ではなかった。これまでユウナ・ロマ・セイランが送り込み続けたオーブ国際救援隊。彼らが各地で行った人道支援、リビルド・シリーズによる復興、そして医療支援の記憶が、前線の兵士たちの引き金を重くさせていたのだから。
ミヤビやアークエンジェルの活動は決して無駄ではなかった。各地を飛び回った大天使達の足跡は巡りに巡って絶体絶命の危機と化したオーブ本国に光を授けたのだ。
「恩を売っておく」というユウナの極めて私欲的な打算が、皮肉にも、国家間の大義名分を草の根のレベルで無力化し始めていたのである。彼らに前に出るように口にするのは簡単だ。しかし、対ロゴス連合の団結にヒビを入れるという行為は今は好ましくない。故にデュランダルは空弁当と化した両軍に後方の警備を頼むほかなかった。
しかし、それでも「戦争」は始まった。先鋒の大西洋連邦艦隊が猛然と加速し、オーブの領海へと侵入を開始する。
「撃て! ロゴスの傀儡、セイランを捕らえろ!」
怒号と共に無数の火蓋が切られ、ミサイルの軌跡がオーブの空を白く染める。だが、大西洋連邦やプラントの将兵たちが侵攻の完遂を確信したその瞬間、戦場の頭上から、不気味なほど無数の「影」が降り注いだ。
「上空に熱源多数! ムラサメ隊です! 迎撃……いえ、何かを散布してきます!」
レーダー手の悲鳴と同時に、艦隊の遥か上空で無数のコンテナが炸裂した。そこから放出されたのは、ユウナがかつて「効率的に敵を黙らせる」ためだけに開発させた広域制圧兵器――『ケイオス爆雷』の雨だ。
空中で弾けた爆雷は、戦域の空を埋め尽くすほどの高密度な「電磁タングステンニードル」を垂直に撒き散らす。上空で炸裂したため、艦艇に直撃する弾こそ少なかったが、その真の犠牲者は水平線の下に存在していた。
「な、なんだ!? 揚陸艇が、次々と……!」
上空から降り注ぐ超高速の「針」の雨は、装甲の薄い揚陸艇の上面やハッチ、エンジン部を無慈悲に穿っていったのである。紙細工のように外殻をズタズタにされた揚陸艇は、内部の兵士たちを乗せたまま、オーブの砂浜にたどり着く前に次々と力尽き、沈んでいく。
甲板で出撃を待っていたMSたちも、頭上から降り注ぐ破片の嵐にスラスターやカメラを破壊され、一歩も動けぬままズタズタに引き裂かれていった。
被害はそれだけに留まらない。降り注ぐ無数の針は、大型艦の急所である艦橋をも容赦なく襲った。防弾ガラスすら容易に貫通し、ブリッジ内部を蜂の巣に変えていく。悲鳴を上げる暇もなく、通信士や指揮官たちが血の海に沈み、艦隊の指揮系統は瞬時に消失していく。
空母の甲板もまた、地獄絵図と化していた。発艦直前のウィンダムやダガーLが、頭上から降り注ぐタングステンの雨を浴び、装甲を貫かれ、火を噴く。滑走路には無数の穴が開き、爆発するMSの残骸が道を塞ぐ。
勇ましく進軍していた兵士たちは、この目に見えない「音もなく降り注ぐ死」に、文字通り冷や水を浴びせられたように凍りついた。
「……なんだ、これは。俺たちは、何を相手にしているんだ……?」
戦う前に、戦う手段を奪われる。困惑と恐怖が広がる間もなく、オーブの空からムラサメ隊による「第二波」が降り注ぐ。
高高度から正確にバラ撒かれたケイオス爆雷は、さらなる密度の『電磁タングステンニードル』を戦域にぶちまけていく。四方からオーブを包囲し、一気に勝負を決めるはずだった各艦隊の先鋒の被害は、開戦数分で「壊滅的」という言葉が現実味を帯びるほどに膨れ上がっていく。
特に凄惨だったのは、侵攻の要であった西方方面艦隊だ。上空から音もなく降り注いだ「針」の奔流は、旗艦の防弾ガラスを紙のように切り裂き、ブリッジにいた指揮官たちを文字通りズタズタに粉砕した。旗艦としての機能を瞬時に喪失した艦隊は、行き場を失った鋼鉄の塊と化して海を漂う羽目となる。
大西洋連邦軍はパニックの中、ようやく「謎の投下物」の正体を捉え、迎撃機を緊急発進させた。だが、高高度のムラサメ隊は深追いなど微塵も考えていなかった。
彼らの目的は、この「針が詰まったナニカ」を敵の頭上に叩き落とすこと、ただ一点に集約されていたからだ。用を済ませたオーブの機体群は、嘲笑うかのように反転し、迎撃機が高度を稼ぐ前にオーブの防空圏へとさっさと引き返していく。
「リフレクターを展開せよ! 間に合わせろ!」
一部の部隊では、勇気あるゲルズゲーやザムザザーが咄嗟に陽電子リフレクターを起動し、死の雨を防ごうと試みた。しかし、重力に従って降り注ぐ針の物量は、リフレクターの保護範囲をあざ笑うかのように周囲へ散る。
リフレクターで正面を守っても、その後方の死角にあるスラスターや放熱板、微細なセンサー類に針が吸い込まれ、推進力を奪われた巨体が海面へ沈み、あるいは味方の艦艇へと衝突していった。
いかに「対ロゴス同盟軍」の物量がオーブを凌駕していようとも、兵士たちはもはや「正義の進軍」などという高揚感の中にいなかった。戦う前に戦友達の命を奪われる屈辱に怒りに身を震わせつつも『針』という原始的な兵器で串刺しにされる恐怖を兵士たちに植え付けていく。
「……これが、オーブのやり方か」
各国の混成部隊に、かつてない動揺が走り抜ける。圧倒的な数をもって蹂躙するはずだった戦場は、一人の男が「絶対に死にたくない」という一心で用意した、不気味なほど冷徹な殺戮の海へと変貌していた。
だが、この惨状を旗艦のブリッジから見つめるギルバート・デュランダルの瞳に、揺らぎはない。むしろ、その唇には深淵な、それでいてどこか慈しむような微笑が刻まれていた。
議長はもともとオーブの異常な軍備拡張を察知しており、この程度の抵抗は既に計算の内にあったのだ。頭上から降り注いだ「針の雨」についても、彼は即座にその限界を見抜いていた。第三波が来ないこと、そして役目を終えたムラサメ隊が即座に反転したという事実。
「……ふふ。なるほど、一手目は『盤面の攪乱』、そして通信・指揮系統の断絶というわけだね。見事なものだよ、ユウナくん」
デュランダルは、まるで愛しき教え子の成長を喜ぶ師のように、穏やかな、それでいて有無を言わせぬ響きを湛えた声を漏らしている。
彼らは揚陸艇や空母の飛行甲板を中心に打撃を与えており、これらの船は初手から離脱を余儀なくされる事になる。更に後方へ引き下がっていたユーラシアや東アジアの艦隊は無傷だと言うのだから、こちらに不審の種を植え付けるという副次的な効果もあるのかもしれない。
彼は動揺する全軍に対し、流れるような手際で部隊の再編を指示する。ズタズタになった大西洋連邦の先鋒を下げさせ、混乱した戦列を立て直しながら、彼は淀みなく次の一手を投じた。
「だが、これだけではない。当然君であれば更に多くの対策で我々を歓迎しようと用意してくれているはずだ……違うかな?」
混乱する海面に、無数の飛沫が上がる。発艦したのは、地球連合軍が誇る最強の水中専用機フォビドゥンヴォーテクス。そしてザフトのゾノ、グーン、アッシュといった水中専用MSの精鋭群であった。
空を制し、上空からの弾幕を敷いたユウナに対し、議長は「ならば下から穿とう」という、数の暴力による冷徹な回答を、静かに突きつけたのだ。
海面下では、無数の熱源がオーブの海岸線を目指して加速していく。それは「針」では止めることのできない、鋼鉄の牙を持った獣たちの群れ。空と海面の地獄を尻目に、水中部隊は着実にオーブの喉元へと迫る。
「さて、次はどう動くのかな?ユウナくん。君の育てたオーブがどれほどのものなのか見せてもらおうか」
デュランダルの指先が、空中のモニターに映る「オーブ」という名のキングを、慈しむように指し示す。
打算と知略。保身と理想。
二人の指導者による、世界の命運を賭けた「ゲーム」は、海面下という新たな戦場へとその舞台を移そうとしていた。
・それぞれの反応
ミネルバ隊→アーサーがまともなこと言い出すくらいの異常事態なのに周囲の部隊はそれに気づいてすらいない…もうやだ…
大西洋連邦→友軍が開戦と同時に見た事もない針の詰まった何かでボロボロになって旗艦も一つ沈んだ。こいつらなんなんだ…?
オーブ→海はまぁ確実に勝てるとして空から落ちてくる連中と迫ってくる連中はどうしようかな…
トダカ→タケミカヅチで戦闘。その迅速な指揮によって迅雷の異名をとることになるがオーブ海軍の多くは固まって実質対空砲台に。その理由は….
カガリ→出撃しようとして必死に止められて説得された。今作ではカガリは出撃しない模様をそりゃ原作とは状況も違うからね…
ユウナ→本当に頼む!せめて形式的な地位を!と頭を下げまくって略式なオブザーバーとして正式に認められる事に。とはいえ本人はアズラエルと同じじゃねぇか!!と叫びたくなったそうな。
そして、ケイオス爆雷もっと作っておけばよかった…と思ってたりします(リヴァイアサンやら盾艦やらエタニティでケイオス爆雷以外に金を使ってられない上、リヴァイアサンに相当金を注ぎ込みすぎた)
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン