破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
「……容赦なしかよ、クソがぁ……ッ!」
司令部のメインコンソールに叩きつけた俺の拳が、鈍い音を立てながら周囲に響き渡る。これまでは完璧だった。ケイオス爆雷で出鼻をくじき、リヴァイアサンで海を掌握する。そこまでは作戦通り、降下部隊を除けば俺やオーブ軍が四苦八苦しながら盤面に引いたラインを敵は一歩も越えられなかったはずなんだ。
「アイツらチートかよ!? エタニティがどんどんシグナルロストしていくって……嘘だろ!? あの弾幕だぞ!? 実質無限のエネルギーに陽電子リフレクターだぞ!?」
モニターの中で、デスティニーが真っ赤な光の翼を広げ、残像を引き連れながらエタニティ隊を「解体」していく。殺さないのが逆にタチが悪い。壊された機体が遮蔽物になりやがって、後続の射線を塞いでやがる。さすが主人公様だよ! マジで手が付けられねえ……!
よく見りゃレジェンドもインパルスも、わざわざ不殺を貫いているのかエタニティやムラサメを、精密機械の様に無慈悲にバラバラに解体して黙らせていく。
シンがオーブと戦えないように、事前にトダカと会わせたり、性格の良さそうなオーブ兵との模擬戦をこれでもかと企画したりして、あの手この手で「戦う理由」を削いで弱体化させようとした俺の作戦は、周囲を巻き込んで確かに成功したはずだった。
……成功して、戦意を鈍らせてこれかよ。
「笑えねぇ……。パイロットが殺されないだけマシだが、戦線に穴が空いたのは確かだ。これだからCE世界の戦争は嫌なんだよ!あと大破したエタニティ組をさっさと避難させろ!アイツらオーブの捕虜なんているかよとか言い出すぞ!!」
一応陽電子リフレクターがある以上流れ弾はどうにかなるが、ケーブルが破損した箇所があるので興奮した敵兵がそこに攻め寄せる可能性がある。速やかに避難させなければ原作の虐殺を見る羽目になるぞ…!
どんなにガチガチの防衛網を組もうが、どんなに万全の対策を講じていようが、トップエースがたった一人いれば、鬼神の如き突破力で全てを無に帰される。数や常識だとか、そういう理屈が一切通用しない「個の暴力」。
「ええい、出し惜しみしてる場合か! 繋げ! キラ君、すぐにストライクフリーダムに乗り換えてくれ! それからカナード、ドレッドノートイータを出すんだ!」
俺はモニターに映る紅い光の翼を睨みつけ、通信を繋いだ。最低限味方の突破口を開くために暴れてるようだがこれ以上放置すればマジで全滅まで直行しかねない。
「キラ君、カナード! 頼む、ミネルバ隊を止めてくれ! 特にあのデスティニーだ!あいつをこれ以上暴れさせるな!」
デスティニー、レジェンド、インパルス。彼らは不殺を貫いているからこそ防衛線はどうにかまだ食い止められているんだ。俺は思わず原作における三人の活躍を幻視しつつ、願わくば生き残った兵士たちには逃げ延びてほしいと祈るしかなかった。
「キラ・ヤマト!ストライクフリーダム!行きます!!」
キラの声が通信機越しに響くと同時に、オーブ国防本部直結の緊急発進ゲートが跳ね上がる。黄金のフレームを露わに、ドラグーンを満載した翼を広げたストライクフリーダム。
そして、その隣には――。
「カナード・パルス!ドレッドノートイータ!出るぞ!」
かつて運命に抗い、プレア・レヴェリーからその機体と共に「想い」を受け継いだ男がいた。
ドレッドノートイータ。
背部に装備された巨大なバックパックユニット「イータユニット」が、その名の通りギリシャ文字の「η」を思わせる独特のシルエットを形成している。左右に張り出したアームドユニットは、あらゆる間合いで敵を屠るために最適化された正にカナード専用のガンダムタイプと化していた。
機体各所に配置された、プレアから受け継いだあのドラグーン・システムの面影を残しながらも、カナードの苛烈な戦い方に合わせて再設計されたその姿は、まさに戦場を支配する「ドレッドノート(怖いもの知らず)」だ。
二機の「スーパーコーディネイター」専用機が、オーブの青い空へと並んで突き抜ける
「……ふん。クソボンボンの野郎……ガタガタうるせえんだよ。あの程度のガキ一人が止められねえのか」
カナード・パルスは、相変わらず不遜で攻撃的な、だがどこか楽しげな口調で吐き捨てた。プレアから受け継いだその力を示せと言わんばかりに、ドレッドノートイータの出力を一気に跳ね上げ、紅い残像を引くデスティニーへと狙いを定める。
「やらなきゃ……。アスランの分まで、僕が……!」
隣を飛ぶストライクフリーダムのコックピットで、キラは悲壮な決意を口にしていた。だが、その声には隠しきれない焦燥が混じっている。病床に伏せった友の姿、そして目の前で次々と解体されていく自軍の惨状が、スーパーコーディネイターの心を波立たせていた。
「おい」
通信越しに、カナードの低く、不機嫌そうな声が割り込む。
「他人のことを考えてる暇があるのか? お前は『完成品』らしく、目の前の敵にだけ集中しろ。余計な雑念を戦場に持ち込むな」
それは、兄として、そして同じ「造られた存在」としての皮肉めいた忠告だった。不器用な言葉の裏にある、カナードなりの「しっかりしろ」という叱咤。かつては憎むべき『完成品』として殺そうとしていた過去のカナードが今この光景を目にすると何を思うのだろうか?
キラは一瞬、驚いたように目を丸くする。自分が一人で背負おうとしていた重圧を、この男はあっさりと切り捨ててみせたのだから。カナードはこれまでキラの周りにいないタイプの人間ではあるが今のキラにとってはそれが何よりも頼もしかった。
「……そうだね。ありがとう、兄さん」
キラの瞳から迷いが消え、透き通った集中力が戻ってくる。視界が広がり、自由を掴む為の新たなる力がこのオーブの戦場にて顕現するのだ。
「ふん、礼を言われる筋合いはねえよ……行くぞ、キラ!」
ドレッドノートイータが殺気立つように展開し、ストライクフリーダムが黄金の輝きを放ちながら加速する。オーブの空を切り裂く二筋の閃光。
それは、ユウナが必死に手繰り寄せた、史実では交わることのない「未来を変える可能性」が、ついに戦場の神話を終わらせるために放たれた瞬間だった。
一方で、紅い翼を広げるデスティニーのコックピットで、シン・アスカは激しい葛藤に引き裂かれていた。
(本当に……本当にこれでいいのか!?)
ユウナ・ロマ・セイランは、議長が言っていたような卑劣な男ではなかった。彼は約束通りロード・ジブリールを捕縛してこちらへ送り届け、シンたちに対してもオーブでの便宜を惜しみなく図ってくれた。
リビルドとホスピタルを全世界に派遣して多くの人々の命を救っている今のオーブは、シンが守りたかった「あの日の平和」を体現しているようにさえ見えた。
その時、迷いの中で回避行動を続けていたシンの前に、ムラサメが立ちはだかった。
「その動き……シンか!? シン・アスカなのか!」
不意に通信回路に飛び込んできた声に、シンの心臓が大きく跳ねる。
「え……その声、まさか!」
忘れるはずもない。忘れた事もない。それは、かつてオーブに滞在していた際、不貞腐れていたシンを「エース様」と気さくに呼び、喉を鳴らす彼にドリンクを差し出してくれた、あの気のいいオーブのパイロットの一人だったのだから。
(あいつらだ……。俺に親切にしてくれた、オーブの連中だ……!)
戦う理由が、音を立てて崩れていく。彼らはジブリールを匿っている悪人でもなければ、戦争を望む狂信者でもない。ただ自分たちの国と、泥を被ってでもそれを守ろうとする「あのセイラン」を信じて飛んでいるのだ。
「どいてくれ……! 撃ちたくないんだ、あんたたちを!」
叫ぶシンに対し、ムラサメのパイロットは通信越しに、魂を揺さぶるような怒号を叩きつける。
「迷ってるなら、じゃあ撃つな! 今すぐ帰れ! お前は、今の自分を正しいと胸を張って言えるのか!?この街を!この光景を見ても!!」
眼下を見渡せばオーブの各地で火の手があがり、少なくない数のビルが倒壊している。
シェルター付近では片手を失ったリビルドが旧式のビームライフルを片手に必死に抵抗しており、辺りには連合やザフトのMSだけではなくオーブのMSが……あの日オーブを守ろうとしたM1アストレイやブレイク・ザ・ワールドの被災地に光を届けていたリビルドがその役目を終えたかの様に沈黙している。
自分達は侵略者だ。
(違う…違う!!オーブが拒絶したから!!セイランを引き渡せばこんな事には…!!)
脳裏にはマユ達の姿が嫌でも頭に過ぎる。二年前に故郷を焼いた大西洋連邦と肩を並べてオーブを攻撃しているという事実に、シンは思わず胸に手をやる。現実逃避するかの様にぜぇ…ぜぇ…と荒い息を吐きながら目の前の『敵』に集中して正気を保とうとする姿は痛ましい。
直後、ムラサメがドッズライフルを構え、引き金を引いた。「ズゥンッ!」という、大気を震わせるあの奇妙な重低音が響き、一筋の鋭利な光弾がデスティニーの装甲をかすめる。ザムザザーやゲルスゲーといった巨体を一撃で沈める、ドッズライフルの一撃だ。
だが、その攻撃は殺意に満ちたものではなかった。彼らはシンのデスティニーの武器や手足、戦闘能力だけを正確に狙い、必死に問いかけ続けている。
「シン! この光景をお前は見たくてここに来たのか!? ユウナ様は確かにジブリールと関わっていたかもしれない。だが、それでもあの人は……今のあの人は、このオーブのためにどれだけ尽くして……!」
その言葉が、シンの胸に突き刺さる。
眼下に広がるオーブの街は、自分たちの攻撃によって再び炎に包まれようとしている。それを守っているのは、自分にドリンクをくれた「親切な隣人」たちで、壊しているのは自分だ。
「俺は……俺は……ッ!」
シンの視界が爆ぜるようにクリアになった。脳内で何かが弾け、機体は手足の様に動いていく。だが、その力はいつものような研ぎ澄まされた怒りの意志ではなく、引き裂かれそうな絶望への叫びとなって溢れ出した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
狂ったように叫びながら、シンはデスティニーを加速させる。これ以上、この声を聞きたくない。自分を否定する言葉を振り切るように、ムラサメのメインカメラを潰そうと突き進む。だが、相手もまたオーブの空を背負う騎士だった。
「逃げるな……答えろシン!!」
ムラサメのパイロットは、デスティニーの猛攻を前に一歩も引かなかった。片腕を犠牲にして強引に機体をぶつけ、火花を散らす至近距離で、再び生々しい問いかけをコックピットに叩きつけてくる。
だが、その執念を冷徹な光が切り裂いた。
「迷うな、シン! ここで迷えば、お前もルナマリアも死ぬぞ!」
レイの叫びと共に、レジェンドのビームライフルが正確にムラサメの手足を即座に撃ち抜く。爆風に煽られ、自分にドリンクをくれた男の機体が、炎を吹きながら地上へとゆっくりと墜落していった。
「っ……ルナ……レイ……!」
モニターの端には、必死に戦うルナマリアのインパルスの姿が表示されている。ステラを失い、ボロボロになっていた自分をその身で慰め、公私に渡って支えてきてくれた最愛の恋人の姿が。
そして、彼女と同じく戦いづらいはずの武装ながらも、精鋭のオーブ軍相手に、ルナマリアと同じくシンの迷いを汲んで不殺を貫き、懸命にオーブ軍の機体を解体し続けるレイの姿もまた、シンの網膜と脳に強制的に刻みつけられる。
二人の献身が、シンの荒れ狂う心をかろうじて戦場に繋ぎ止めた。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ! 俺は……やるしかないんだ……ッ!」
涙を拭う暇もなく、シンは再び戦線へと機首を戻す。だが、その行く手を遮るように、天空から二つの絶対的なプレッシャーが降り立つ。
黄金のフレームがオーブの陽光を反射して輝くストライクフリーダム。
そして、巨大なイータユニットを背負い、プレアの遺志をカナード流の牙に変えたドレッドノートイータ。
「誰であろうと知るかよ!!!ユウナ・ロマ・セイランを捕縛して!戦いを終わらせるんだ!今日!!ここで!!」
悲しき戦士の絶叫は故郷のオーブに寂しげに木霊するのであった。
唐突に始まるキャラの会話の執筆難易度ランキング!こうでもしないと重い空気に耐えきれない!
三位カナード!チンピラ同然の様に見えて孤高さや面倒見の良さや割と真面目な感じも交わり合って難しい!
二位デュランダル!!原作のあの神秘すら感じさせる言葉遣いはマジで難しい!一応今作ではユウナという好敵手であり、理解者と巡り合いつつ神官であると称された言葉の責務を果たそうとしている的な会話を心がけているがどうしても原作より悪役っぽくなる!
一位ミナ様!!エアプかよだの、全然違うだの感想欄に寄せられて割と心が折れそうになった人!おかげで本来はミナ様はもう少し登場する予定であったが難易度の高さから断念という裏事情も!高貴さと気高さとやや傲慢なところも含めて全部マッチしたセリフの難易度が高すぎた!
EX!報連相アスラン!
描きやすさ云々より、これ以上書く精神が削られてトチ狂いそうになるのでマジで勘弁してください。
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン