破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第六話 ごめんねユウナぁ!憑依しちゃってさぁ!!

 

 

 

 

 深夜。自室の微かな灯りの中で、俺はペンを走らせながら「ある男」の軌跡を反芻していた。

 

 

 

 前世の記憶に刻まれた、もう一つの宇宙、もう一つのガンダムの歴史——。

 

 

 

「……フリット・アスノ。あのおじいちゃんのやり方は、今の俺にとって最高の教科書であり、同時に冷酷な警告だ」

 

 

 

 『機動戦士ガンダムAGE』の主人公、フリット・アスノ。彼は救世主として、そして復讐鬼として、数十年という果てしない歳月を戦い抜いた。彼は地球連邦軍の象徴的な英雄となり、総司令官という絶大な権力を手にした。そしてその裏で、誰にも悟られぬまま緻密かつ大胆なクーデターを成し遂げた。

 

 

 

 俺が最も参考にすべきは、その「完璧なまでの包囲網」だ。

 

 

 

 

 フリットはまず、敵であるヴェイガンと内通する腐敗の極致「中央議会」を物理的に隔離した。議場を完全に包囲し、逃げ場を失った閣僚たちの醜聞を全人類の前に白日の下にさらしたのだ。その際、彼は単に武力を使ったわけではない。

 

 

 

 

政府・総司令部の無力化

敵対する指導者層を一網打尽にし、指揮系統を完全に遮断。

 

 

 

•警察・通信網の掌握:

逆賊の汚名を着せるためのメディア戦略と、情報出口の封鎖。

 

 

• 交通・物流の遮断

反対勢力の物理的な連携や逃走を許さない。

 

 

 

• 法律と戒厳令:

平時のルールを一時的に停止させ、混乱を鎮めるという大義名分のもと、自分の意志を唯一の「正義」とする。

 

 

 

 尻尾を出さず、誰にも悟られぬままこれほどの準備を実行したフリットの胆力。だが、それほど完璧に立ち回った彼でさえ、連邦政府の深部に蔓延る膿を全て出し切ることはできなかった。数十年かけても、権力の腐敗とは、それほどまでに根深く再生し続けるものなのだ。

 

 

 

「……俺に残された時間は、一体どれくらいある?」

 

 

 

 

 一週間後か、明日か明後日か、それとも一ヶ月後か。

物語の起点となる『アーモリーワン』での強奪事件がいつ起きるのか、正確な日付までは思い出せない。だが、砂時計の砂は確実に、そして加速しながら落ちている。

 

 

 

 俺にはフリットのような数十年におよぶ根回しをする余裕はない。だが、彼がやった「情報の支配」と「物理的封鎖」のノウハウは盗める。

 

 

 

 

 ユニウスセブンという未曾有の破滅が降り注ぐその時、俺は「救世主」として、同時に「支配者」としてオーブの舵を強奪しなきゃいけないんだ。どうみても物語の悪役じゃねぇか畜生。

 

 

 

 

 焦燥感に突き動かされるようにモルゲンレーテを急かしたが、そこで俺は、この世界の「異常」を改めて思い知ることになった。

 

 

 

「……ねえ、シモンズ主任。まだ依頼してから一週間も経ってないよね? なんでリビルドとホスピタルのプロトタイプが、もう組み上がって目の前で動いてるの?」

 

 

 

 ドックに並ぶ、無骨な重機用アタッチメントを換装したアストレイと、白十字を冠した救援型機体。

 

 

 エリカさんは、少し目の下に隈を作りながらも、呆れたように、しかし誇らしげに淡々と答えた。

 

 

「オーブの技術力を侮らないでください。アストレイのフレームは既に量産体制にありますし、マルチワークシステムの換装は規格化されています。……それに、あなたの熱意(わがまま)に応えるために、現場は不眠不休で回っていますから」

 

 

 不眠不休、ね。それにしても早すぎる。

 

 

 

 前世の常識なら、設計図の承認だけで数ヶ月、試作機のロールアウトに数年はかかるはずだ。それがここでは、ほんの数日で「形」になり、テスト稼働までこぎつけている。

 

 

 

「……そういえば、以前聞いたことがあるな。今のモビルスーツ開発は、高度なコンピュータ・シミュレーションが主流だって」

 

 

 

 

 設計段階で、実物を作らなくても仮想空間上で何万回もの強度テストや挙動の合否判定を終わらせてしまう。合格したデータだけを即座に自動生産ラインへ流す。だからこそ、連合のストライクの型式番号が「105」なんていう、試作機としては異常な数字になっている……いや、そこらへんの裏設定は前世の記憶でもあやふやだけど。

 

 

 

 とにかく、この世界(コズミック・イラ)の技術発展スピードは狂っている。ニュートロンジャマーの影響で電波通信や核エネルギーが制限されたせいで、逆に「現場の物理的な解決能力」や「コンピュータによる超高速演算」が、生存本能に近いレベルで異常発達したのかもしれない。

 

 

 

 

「……まあいい。早い分には助かるよ。時間は金より貴重だからね」

 

 

 

 

 フリット・アスノのような「英雄としての数十年」という歳月が俺にはない。ならば、この世界の異常な技術速度と、俺の「予知」というカンニングペーパーを掛け合わせ、最短距離で突き進むしかない。

 

 

 

「フリットが憎しみで国を動かしたなら、俺は『生き残りたい』という執念でこの国をハックしてやる」

 

 

 

 

 

 たとえ、その先にすべての膿を出し切れない不完全な平和が待っていたとしても……。

 

 

 

 親父と一緒にロゴスの手先として歴史の闇に葬られる未来だけは、俺の代で叩き潰してやる。

 

 

 

 

 俺は手帳の最後に「救世主の皮を被った革命」と殴り書き、ペンを置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 窓の外、静まり返るオーブの夜景。

 

 

 

 

 

 この静寂を切り裂き、すべてを焼き尽くす「破片(ユニウスセブン)」が降るその時が、俺のクーデターのシグナルになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウナ、少し話がある。座りなさい」

 

 

 

 

 重厚な執務室。父ウナト・エマ・セイランの背後から漂うのは、高級な葉巻の香りと、隠しきれない威圧感だ。

 

 

 

 俺が最近、モルゲンレーテで勝手に予算を回し、得体の知れない「作業用アストレイ」を造らせていることは、当然親父の耳にも入っていた。

 

 

 

 

「……何かな、父上。僕、これからシモンズ主任と新型アタッチメントのテストを……」

 

 

 

「とぼけるな。ドリルに放水砲、挙句の果てには耕運機だと? 遊びにしても度が過ぎる。セイランの名を冠した予算が、あんな『ただの重機』に消えていくのは我が家の恥だぞ」

 

 

 

 

 

 親父の目が鋭く光る。ロゴスとの密約を進める冷徹な政治家にとって、息子の不可解な行動は「不確定要素」でしかない。

 

 

 

 

 ここで少しでも「正義」や「人道」なんて言葉を出せば、即座に計画を見抜かれる。

 

 

 

 

「……はぁ。父上は本当に、数字にしか興味がないんだから」

 

 

 

 俺はわざとらしく肩をすくめ、いかにも「浅はかな野心に燃えるバカ息子」の顔で笑ってみせた。

 

 

 

 

「いいですか、父上。あれはただの重機じゃない。『未来の利権の塊』なんですよ」

 

 

 

「利権だと?」

 

 

 

「そう。連合がプラントを叩き潰せば、その後の世界はどうなります? 焼け野原ですよ。そこを再建するのは誰です? オーブの、いや、セイランの息がかかった『復旧支援部隊』が世界中に派遣されたら……復興予算という名の膨大な外貨が、全部うちの裏口座に流れ込む。ね? 兵器を売るより、道路や橋を直す名目の方が、国際社会のウケもいいし、儲けも太い」

 

 

 

 俺はさらに声を潜め、下卑た笑みを浮かべて親父の耳元で囁いた。

 

 

「『平和を愛するオーブ』の仮面を被って、世界中の復興需要を独占する。そのための『デモンストレーション用のおもちゃ』です。ついでに、国民には『ユウナ様は慈悲深い』なんて思わせておけば、後の支持率にも響くでしょう?」

 

 

 

「……フン。復興ビジネスか」

 

 

 

 ウナトの表情から険が消えた。

 

 

 

 「利権」「独占」「支持率」。彼の大好きな単語を並べたことで、俺の「奇行」は、彼の理解できる範疇の「姑息な政治工作」へと格下げされたのだ。

 

 

 

「いいだろう。勝手にしろ。だが、ロゴスのジブリール氏に失礼のないようにな。あの方に目をつけられれば、お前の利権など一瞬で灰になる」

 

 

 

「わかってますよ、父上。僕は僕で、しっかり稼がせてもらいますから!」

 

 

 

 

 退出する間際、俺は深々と頭を下げた。

 

 

 

 

 顔を上げた時、その瞳には冷たい計算が宿っていた。

 

 

 

 

(……助かったよ、親父。あんたが俺を『自分と同じ穴のムジナ』だと思ってくれて)

 

 

 

 親父がロゴスに媚びを売っている間に、俺は「救世主」としての実働部隊を完成させる。このバカげた重機が、あんたの積み上げた汚い政治生命を文字通り「瓦礫」に変えるその日まで、精々高笑いしててくれ。

 

 

 

 

(……元々のユウナ・ロマ・セイランには、多少は悪いと思ってるよ)

 

 

 

 

 親父の部屋を出た後、俺は邸宅の長い廊下を歩きながら、ふと自分の掌を見つめた。

 

 

 

 この身体に元から宿っていた魂がどこへ行ったのかは知らない。俺は、自分にとっての「敵」でしかないウナトを騙し、彼が心血を注いできた政治基盤を根底から腐らせようとしている。元のユウナからすれば、見知らぬ他人に身体を乗っ取られた挙げ句、実の父親を破滅させられようとしているのだ。たまったもんじゃないだろう。

 

 

 

 だが、俺にはウナトに愛された記憶もなければ、彼に対する一欠片の愛着もない。あるのは「このままでは殺される」という生存本能と、彼が引き起こす最悪の結末に対する嫌悪感だけだ。

 

 

 

 

(悪いけど、原作通りに進ませるわけにはいかないんだ)

 

 

 

 もし俺が何もしなければ、この先オーブはどうなる?

 

 

 

 

 ウナトはロゴスとの癒着を強め、カガリを事実上の軟禁状態に追い込んで実権を奪う。そして、地球軍の要請に従ってオーブ軍を戦地へ派遣し、多くの若き兵士たちが無意味な死を遂げることになる。

 

 

 

 

 極めつけは、あの狂信者ロード・ジブリールをオーブに匿い、結果としてプラントの怒りを買って、国全体が焦土と化す可能性だ。レクイエムで国が焼かれなかったのは奇跡に近いのだから。

 

 

 

 

「……あんな無能な父親の傀儡として死ぬのは、俺も、この身体も御免だろ?」

 

 

 

 俺は小さく呟き、夜の闇に消えていく父の執務室を振り返った。

 

 

 

 元のユウナがどんな男だったにせよ、今この瞬間に未来を変えられるのは、前世の知識と介入する意志を持った俺だけだ。

 

 

 

 俺は自室に戻ると、エリカから届いていた暗号化済みの進捗レポートを開いた。

 

 

 

 

 画面には、リビルド・アストレイの機体調整終了の文字。

 

 

 

 

 そしてその下には、トダカ一佐から送られてきた「あるリスト」があった。

 

 

 

 

『救助部隊への転属希望者および、パイロット適性検査合格者リスト』

 

 

 

 

 そこには、かつてウズミ・ナラ・アスハが貫こうとした「オーブの理念」を信じながらも、セイラン家の台頭に居場所を失っていた骨のある兵士たちの名が連なっていた。

 

 

 

 

 

「……よし。役者は揃いつつあるな」

 

 

 

 俺は椅子に深く腰掛け、目を閉じた。

 

 

 

 

 時計の針が刻む音だけが、不気味に静かな夜に響いている。

 

 

 

 

 この一刻一刻が、世界をアーモリーワンの強奪事件へと、そして空が落ちる「あの日」へと近づけている。

 

 

(……来るなら来い。全部まとめて、俺の『実績』に変えてやる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日は、あまりにも唐突に訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 豪華な朝食のテーブル。ウナトが優雅に新聞を広げ、俺がいつものようにバカ息子の面をしてトーストを齧っていた時、テレビの速報チャイムが静寂を切り裂いた。

 

 






フリット・アスノのクーデターは本当に凄い。
改めてこの回を書くためにAGEを見ていましたがあそこまで鮮やかなクーデターを秘密裏に行えたのはもはや化け物ですよ。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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