破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 今日はここまで。侵攻部隊に関しては

・空母から発艦する機体は大西洋連邦主軸でザフトはバビ、ディンなど他上仕様が多め
・宇宙からの降下部隊はほぼザフト
・海からは混成部隊
この様なイメージでしょうか?ちなみにユーラシアと東アジアは空弁当で後方で弁当食って警備してる様です



第六十話 ただ生き残りたい

 

 

 

 

 ドレッドノートイータのカナードと、デスティニーのシンが激しいビームの応酬を繰り広げ、オーブの空が熱波で歪む。カナードの容赦ない連撃に対し、シンがアロンダイトを振りかざして応戦しようとしたその時、紅い閃光が両者の間に割って入った。

 

 

 

 インフィニットジャスティス。前大戦で戦場を駆け抜けた伝説の機体の後継機が、アスラン・ザラと共に今再びオーブに舞い戻る。

 

 

 

 

「アスラン……!?」

 

 

 

 シンの声が裏返る。そこにいたのは、自分を討ちに来た敵ではなく、奇妙な退職を経て軍を離れた男。そして、この世界において誰よりも慕うべき「先輩」の姿なのだから。

 

 

 

 シンとアスランの関係は原作とはまるで違う。良くも悪くもユウナのアドバイスが功を奏していた事もあって、根っこの性分が人懐こいシンは事前に寄り添うことを選んだアスランに丁寧に慕うよう誘導されており、二人の関係は決して悪いものではなかった。勿論多少過保護なくらい話しかけてくるアスランをウザがったりするのも少なくはなかったが。

 

 

 

 さらにアスランは原作と同じくザフトを離脱したが、議長の正式な許可を得て「挨拶回り」を経た上での退職だ。それは奇妙な退職騒ぎとしてミネルバクルーにとっては一種の伝説と化しているのだが、故にシンは最後にアスランを恨む理由も何一つなく、彼を裏切り者と糾弾することもできなかった。

 

 

 だからこそ、シンにはアスランが嫌えなかった。原作のような愛憎入り混じった感情ではなく、あのムラサメのパイロットの様に自身の事を心配してくれる人間が真正面から自身を否定する。それは最早シンの精神をどれだけ疲弊させる事に繋がるのだろうか?

 

 

 

「シン! やめるんだ! ここにはメイリンもいるんだぞ!?何しようとしているのか理解しているのか!?お前の力は、そんな事の為にあるのか!」

 

 

 

 アスランはそう叫ぶが、機体の武器は一切使用しない。ただ、デスティニーの猛攻を紙一重の回避とシールドだけで受け流し、まるで諭すように、舞い踊るようにシンの前に立ち塞がり続ける。アスランは戦うのではなく、シンを止める事だけに集中しているのだから。

 

 

「どいてくれアスラン! 俺は……俺はやらなきゃいけないんだ!」

 

 

「何をだ!?お前は何をやらなきゃいけないんだ!」

 

 

 

 

 シンは叫びながらデスティニーのビームライフルを目の前の紅い機体に合わせようとするが、トリガーにかかった指がどうしても動かない。手の震えと同時に胸元を掻きむしりたくなる衝動に襲われる中、それでもと恋人と親友を思い浮かべながら彼はオーブの空を舞う。

 

 

 

「っ……くそ、なんで……! なんで狙えないんだよ!」

 

 

 

 モニター越しに見えるジャスティスの姿が、かつて自分にドリンクを差し出し、笑い合ってくれたオーブの兵士たちの顔と重なってしまう。そして、不器用ながらも自分を導こうとしてくれたアスランの瞳が、シンの戦意を内側から食い散らしていく。

 

 

 

「お前が守りたいものは何だ! 本当にこの空を!この国を!この国の未来を焼くことなのか!」

 

 

 

「うる…さい…」

 

 

 

「トダカ一佐はお前を心配していたぞ!!今のお前は!トダカ一佐に胸を張って会う事が出来るのか!?」

 

 

 

「黙れぇ!!!」

 

 

 

 

 アスランの「説得」という名の、武器を持たぬ蹂躙。

その圧倒的な静のプレッシャーに、最強のデスティニーが、ついにその翼を震わせた。

 

 

 

 ドレッドノートイータを駆るカナードの目には、明らかにシンの動きが鈍ったのが見える。今なら確実に仕留められる。不意打ち気味に突撃してコックピットにサーベルを突き付ければ最優先ターゲットは沈黙するだろう。だが、割って入ったアスランの気迫と、シンのあまりの動揺ぶりに、カナードは鼻で笑って操縦桿を戻した。

 

 

 

「……ケッ、甘っちょろい茶番を…」

 

 

 

 カナードは、いまだレジェンドに足止めを食らっているキラのストライクフリーダムへと機首を向ける。互いに射撃特化、範囲攻撃特化。ある意味では似た様な機体であるが為千日手となっていた戦場に、イータが猛スピードで乱入する。

 

 

「こんな相手にダラダラしてんじゃねぇ! お前は完成品らしく、もっと効率的に片付けろ!」

 

 

 

 

 皮肉を叩きつけながらも、カナードは「ザスタバ・スティグマト」を連射してキラを狙うレジェンドの背後を銃撃し、その動きを鈍らせる。

 

 

 

 レジェンドも回避行動を行うがそれすら蔑む様にカナードの緩急を入り交ぜた射撃はレイに行動の余裕を失わせる事に繋がった。

 

 

 

「兄さん…ありがとう!」

 

 

 

 キラの弾んだ声が通信を抜ける。迷いつつも兄を慕うキラと、戦場を荒らすことに長けたカナード。二人のスーパーコーディネイターが並び立った瞬間、戦場の空気は一変する。本来共に歩むべき事のない二つの道が今ひとつに交わりオーブの空を駆け巡る。

 

 

 

 

 

 一方、レジェンドのコックピットでレイは戦慄していた。

 

 

(キラ・ヤマトの動きが変わった……!? それに、あのドレッドノート……!)

 

 

 

 カナードがビームランスを構えて荒々しく肉薄し、レイの回避行動を強引に制限する。そのわずかな隙を、キラのマルチロックオンによる精密射撃が、殺さぬように、だが確実にレジェンドの武装を一つずつ剥いでいく。

 

 

 

 カナードの暴力的な突撃と、キラの神業的な狙撃。この即席でありながら最悪の相性を持つコンビを前に、冷静沈着なレイも防戦一方に追い込まれていく。

 

 

 

 

「くっ……これほどまでの連携を……!」

 

 

 

 

 

 そこに通信回線に割り込むように、一人の少女の声が響き渡った。カガリ・ユラ・アスハの演説だ。

 

 

 オーブの獅子の末裔が敵味方問わずに全方位に通信を行い、オーブ軍士気は跳ね上がり、対するザフト、連合は彼女の報告に耳を塞ぎたくなる様な衝動に襲われるのであった。

 

 

 

 

「対ロゴス連合へ、告げる! 宇宙から降下したMS隊は、我がオーブ国防軍により全機撃墜、あるいは無力化・捕縛した! 空からの侵攻も、もはや成功の余地がないことは、貴様らも理解しているはずだ!」

 

 

 

 

 凛としたその声が、戦場を支配する熱気を一気に冷やしていく。

 

 

 

「これ以上の犠牲を、オーブは許容しない。速やかに撤退するのであれば、捕縛した兵士は中立国であるスカンジナビア王国を経由し、即座に返還することを約束する。……だが、もしこれ以上の抗戦を続けるというのなら」

 

 

 

 

 カガリの言葉に、ユウナはモニター越しにニヤリと笑みを深めた。

 

 

 

「再び、我が国の『切り札』を海より進撃させる。貴公らの艦艇は、一隻残らず海の藻屑と消えるだろう!」

 

 

 ヴォーテクスをはじめとするすべての水中適性MSを文字通り撲滅した謎の存在は、最早正義や大義すら飲み込む恐怖の象徴に進化した。

 

 

 しかし、リヴァイアサンはケーブルで繋がれているが為、既に後方に待機しつつある敵艦隊に攻撃を加えることは不可能だ。その余りにも高い別次元な性能と引き換えに現状では攻勢に出ることは不可能であった。

 

 

 だが、海の凄惨な光景をその目で見た指揮官クラスにとって、それは死の宣告に等しかったのだ。勝ち筋は完全に消失。対ロゴス連合の艦艇の多くは水上艦であるが為、ヘタをするとパニックにつながる恐れもある。この中継を見ていたギルバート・デュランダルは、肘を突いて椅子に深く沈み込み、ふっと息を漏らした。

 

 

 

 

「……手強いね、ユウナ君は。まさか、ここまでの戦力差の盤面をひっくり返すとは」

 

 

 

 

 議長の呟きと同時に、全部隊に撤退信号が発せられる。それはミネルバ隊も例外ではなかった。レイは、アスランの説得で精神を揺さぶられ、空中で静止しかけていたシンを強引に牽引し、離脱を開始するのであった。

 

 

 

 

 

「行くぞシン! ここは退くんだ!」

 

 

 

「あ、アスラン……俺は……!」

 

 

 

 

 離脱するレジェンドの背に向け、アスランが最後の問いを投げかける。

 

 

 

 

「レイ! お前も、本当にこんなことが正しいと思っているのか!? シンやルナマリアの幸せに、この光景が本当に繋がると本気で信じているのか!」

 

 

 

 

 その問いに、レイは表情を歪め、震える唇で絞り出した。

 

 

 

 

「……正しい。正しいんだ。それが……ギルの望む世界なら」

 

 

 無意識に震える声は、もはやレイ自身も自分を騙し切れていない証拠だ。デスティニーとレジェンド、そしてインパルスは、夕闇に染まり始めたオーブの空を、逃げるように去っていった。

 

 

 

 

 失ったものも多い。これからの課題は幾らでもある。しかし、オーブ軍は勝利した。それは束の間の勝利であるかもしれないが、全身の疲れをものともしないオーブ軍の将兵達は勝鬨の声をあげ、祖国を防衛したという事実を噛み締め合うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 殿のミネルバが完全に水平線の彼方へと消えたのを確認した瞬間、俺の身体から全ての力が抜け落ちた。

 

 

 

 

「ユウナ様!?」

 

 

 

 ガクン、と膝が折れた俺を、近くにいた一般兵が慌てて支える。身体が鉛のように重い。自分の『打算』のために、オーブの若い兵士たちが命を懸けて戦ったという重い現実。失われた命へのドス黒い罪悪感。

 

 

 だが、それ以上に……あの『原作』の通り、グフに踏み潰されて無様に、惨めに死ぬという最悪のシナリオを、自らの手で書き換えて生き延びたという強烈な安堵が、全身を駆け抜けていた。

 

 

 防衛計画の策定、 交渉、MSの増産指示……。ここ数ヶ月、睡眠時間を削りに削って、死の運命から逃げるために張り詰めていた精神の糸が、プツリと音を立てて切れた。

 

 

 

(あ……やばい。視界が真っ暗になる……俺、このまま死ぬのか……?)

 

 

 

「ユウナ!」

 

 

「ユウナ様、しっかりしてください!!」

 

 

 

 遠のいていく意識の縁で、カガリや周囲のスタッフが悲鳴のような声を上げているのが聞こえたが、それに応える力は一ミリも残っていなかった。俺の意識は、底なしの深い闇へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目が覚めたとき、視界に入ってきたのは清潔な病院の白い天井だった。

 

 

「……っ……」

 

 

 身体を動かそうとしたが、腕には何本もの点滴の管が繋がれ、全身がひどい筋肉痛のような倦怠感に包まれている。ふらつく足取りでベッドから立ち上がり、壁にある鏡の前に立つ。

 

 

 

 

 鏡に映っているのは、やつれてはいるが、確かに『ユウナ・ロマ・セイラン』の顔だ。

 

 

 

 

(……ああ、やっぱりか)

 

 

 

 運命を劇的に乗り越えたからといって、元のユウナの人格が復活して俺の意識が消えることも、ましてや現実世界に帰れるような奇跡も起きなかった。

 

 

 俺は、この世界で、この不人気キャラの皮を被ったまま、ユウナとしてこの狂った世界を生きていくしかない。

 

 

 

「…………」

 

 

 俺は鏡の中の自分をじっと見つめ、それから、ゆっくりと口角を吊り上げた。

 

 

「……よっしゃぁ……!! 生き延びたぞ……!」

 

 

 

 小さく、だが力強く。俺はガッツポーズを作った。どんなに泥を被っても、多くの人々の命を犠牲にしようが、どれだけ他人に『卑怯だ』と罵られても、俺はグフに踏み潰されて死ぬという運命を叩き潰したんだ。

 

 

 病院のベッドの上、点滴まみれの無様な姿。だが、その胸の内の、何物にも代えがたい勝利の味を今だけは俺も噛み締めるのであった。

 

 

 





 どうにか死の運命を乗り越えてオーブを防衛する事に成功したユウナ。しかし、世界は怒涛の勢いで時代を紡いでいく。再び敵対し合う大西洋連邦とプラント。新たなる来訪者。そして放たれる史実とは違うレクイエム……原作知識が崩壊しつつある中、未来を掴むためにユウナは生き延びようと足掻き続ける。

次回 第六十一話 『そんなオリキャラ出すんじゃねぇ!!!』をお待ちくださいませ。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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