破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 少し短めですが投稿です。


第六十三話 スーパー議長MarkII

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙への打ち上げ準備で殺気立つオーブの港に、極秘扱いのシャトルが滑り込んでくる。ハッチが開き、中から現れた人物を見た瞬間、俺の心臓は嫌な跳ね方をしてしまった。

 

 

 

 そこに立っていたのは、ピンク色の髪をなびかせた、ラクス・クラインととある一部分を除けば寸分違わぬ、瓜二つの「少女」の姿だ。

 

 

 

 顔立ちも、背丈も、その佇まいさえも、やたら豊かな胸以外はすぐ近くにいるはずのラクスと見紛うほどに瓜二つ。だが、その瞳には本物が持つ超然とした意志はなく、まるで迷子の子供のように、怯えた様子で周囲を伺っている。

 

 

 

 ……ミーア・キャンベル。

 

 

 デュランダル議長がプロデュースしたラクスの影武者であり、本来の歴史であれば、こちら側によって正体を暴露され、悲劇的な最後を迎える羽目になった少女だ。

 

 

 

「……ユウナ・ロマ・セイラン様……でしょうか……?」

 

 

 

 

 震える声で俺の名を呼ぶ彼女を見て、俺は思わず内心毒づく。クソ……このタイミングかよ。

 

 

 

 

(……あの野郎、本当に送り届けてきやがったか)

 

 

 

 

 脳裏に蘇るのは、オーブの迎賓館であの「種無し議長」と真正面から向き合った時の光景だ。椅子から立ち上がり、神官となって世界を改革しようとした男に指を突きつけながら俺は確かにこう言った。

 

 

『いらなくなったからって始末するような真似をしてみろ。……もしそんなことをしたら、俺が直々に、あんたのその整った前髪を一本残らずむしり取ってやるからな!』

 

 

 

『いらなくなったら俺の所に投げろ。ミーアの居場所くらい、このクソボンボンがいくらでも作ってやるよ』

 

 

 

 あの時、デュランダルは、「約束しよう」と言っていた。史実であれば使い古された「影」は暗殺の火の中に消える運命。だが、あの大真面目な理想主義者は、俺が必死に訴えた「味方殺しだけはやめろ」という願いを律儀に守り、彼女をオーブへの「譲渡」という形で返してきた。

 

 

 

 

 

 

 だが、これによって原作の決定的な「逆転劇」が消滅した。

 

 

 

 

 本来であればこの後、議長の支持を演説するミーアの通信に本物のラクスが割り込み、全世界の前で議長の欺瞞を暴くはずだったんだ。あの「ラクス対ラクス」の放送事故こそが、議長の政治的権威を失墜させる最大のポカだといえるだろう。

 

 

 それが、俺がミーアを保護したことで起こり得なくなった。議長は「偽物を使って大衆を欺いていた」という証拠を綺麗に隠滅し、非の打ち所のない聖人君子(冗談みたいな話だがマジでそんな扱いだ)としてデスティニープランを提示できる。

 

 

 俺がミーアを救ったせいで、皮肉にも議長の体制は磐石になり、俺たちはある意味プラントの史実以上の結束という原作以上の絶望的な状況に追い込まれたってわけだ。

 

 

「あ……あの、ユウナ様……?」

 

 

 

 俺が考え込んでいると、ミーアがさらに不安そうに声をかけてきた。そりゃ不安なはずだわ、訳もわからずプラントからつい数日前まで殺し合ってた戦地に送り込まれる事になったんだから。むしろ泣いて喚いて命乞いをしてもおかしくないと言うのに、ミーアさんよくやっている。

 

 

 まずは目の前の怯える少女に今後について話し合わなければ。何か議長から伝言もあるかもしれないからな。

 

 

 

 

「……怖がるな。アンタは今日からオーブの客人だ」

 

 

 

 俺は努めて穏やかな声で、彼女を安心させるように告げる。

 

 

「奥の部屋でラクス・クライン本人が待ってる。……アンタのことはもう全部話してあるし、あいつは自分の偽物がいたくらいで、怒るような器の小さい女じゃない。安心して会ってこい。お前だってラクスのファンなんだろ?」

 

 

 ミーアは驚いたように目を見開いたが、俺の言葉に嘘がないと悟ったのか、少しだけ強張っていた肩の力を抜いた。

 

 

 

さて、一人の少女は救った。だが、その代償に俺は「原作よりパワーアップしてしまった議長MarkII」を相手にする羽目になってしまったのだ。

 

 

 

(……冷静に考えると、これマジでやべぇな……)

 

 

 

今更ながら、背筋に冷たいものが走って震えが止まらなくなる。

 

 

 

原作において、ミーアが「偽物」だと全世界に露呈したあの放送事故の影響は、計り知れないほど大きかった。あれがあったからこそ、大衆の心に「議長は俺たちを騙している」という不信感の種が植え付けられたんだ。

 

 

 

一応、今回は代わりにレクイエムで超大型空母ゴンドワナが消し飛ぶという未曾有の事態が起きてはいるが、政治的・精神的なダメージで言えば、ミーアを救ったことが議長への「追い風」になりかねない。証拠隠滅を俺が手伝ったようなもんだからな。

 

 

 それでも、原作の彼女の末路を知っている身としては、やっぱり放っておけなかった。必死になって影武者の役目を果たした少女があんなクソみたいな最後を迎えるのを放っておけるわけねぇだろ。

 

 

「……なぁ、ミーア。議長は、アンタに最後に何て言ったんだ?」

 

 

 思わず気になって尋ねてみると、ミーアはおずおずと口を開いた。

 

 

「役目はもう十分に果たしてくれた、って……。それで、これからは『ミーア・キャンベル』として自由に生きてほしいと、多額の準備金と一緒にこのシャトルを……。オーブに行けば、ユウナ君が君を温かく迎えてくれるだろうから、そこで余生を過ごしなさい、って……」

 

 

 

……あの野郎本当に、完全に丸投げしてきやがった。

 

 

 そこには「始末してやる」という殺意もなければ、かつての愛着も見当たらない。ただ、俺との約束を事務的に、それでいて完璧にこなしただけだ。

 

 

 

「……あの浮気チンポ野郎……!」

 

 

 約束だけは律儀に守りやがって……だがこれで、議長にとっての政治的なスキャンダルは完全に消滅した。いっそ代わりに現役最強艦ミネルバのタリア・グラディス艦長と、元恋人で今も肉体関係があることでもバラしてやろうかとも一瞬考えたが……。

 

 

 

 

 

(……いや、あんな程度じゃ今の議長への支持は揺るがないし、何よりつまらなすぎる)

 

 

 

 

 それに、そんな泥仕合を始めたらグラディス艦長の息子さんの気持ちはどうなる?あの子に罪はない。そんな下世話な手札で勝負するなんて、俺のプライドが許さない。

 

 

 

 

 俺はできる限りのことはしたはずだ。

 

 

 

 

 艦隊にはギリギリまでムラサメを詰め込み、ムラサメ限定であるが全機にドッズライフルを配備した。オオヤマツミを核とした盾艦の運用訓練も、血の滲むような思いで現場に叩き込ませた。

 

 

 

 

 不安要素があるとすれば……人の方か。

 

 

 

 

 

 アスランはしばらく療養させていたが、果たしてメンタルは整っただろうか。原作以上に盤石となった議長の理想を前に、あいつがまた「正しさ」に迷ってふらつかないかだけが気がかりだ。とはいえ報連相の化身になることも無く原作よりいい具合に進んでると信じたい。

 

「……ま、なるようにしかならねぇか」

 

 

 

 

 

 

 自分に言い聞かせるように呟き、ドックの喧騒を見下ろす、全てを貫く矛と巨大な盾の群れ。これだけ揃えて、負けましたじゃ済まされない。

 

 

 

「――ユウナ様。準備はすべて整っております」

 

 

 

 背後から、低く落ち着いた声がする。振り返れば、そこにはある意味もっとも俺がこの国で信頼している男のトダカが静かに立っていた。

 

 

 その迷いのない眼差しが、わずかに揺れていた俺の心を、戦場の指揮官としてのそれへと繋ぎ止めてくれる。同時にあぁもう後戻りも出来ないんだなと焦燥感にも襲われるが。

 

 

 

 俺が努めて不敵な笑みを浮かべて見せると、トダカ一佐は直立不動のまま、鋭い眼光を俺に向けた。その空気の変化に、俺の背筋がわずかに伸びる。

 

 

「出撃を前に、オーブ軍将校を代表して、ユウナ様にどうしてもお伝えしておきたいことがございます」

 

 

 

「……改まってなんだよ。これから死地に命を懸けに行こうってんだ。そんなに固い話なら、景気づけに最高のやつを頼むぞ」

 

 

 

 俺が軽口を叩いて茶化そうとしても、トダカ一佐の表情は動かなかった。彼はただ、真っ直ぐに俺の目を見据え、一歩前に踏み出す。

 

 

 

「……失礼いたします」

 

 

 

 そう前置きした瞬間、トダカ一佐の動きは軍人らしい無駄のない速さだった。

 

 

 

 

 俺が異変に気づくより早く、脇腹に鋭い衝撃と熱が走る。

 

 

 

「ガ、ッ……!? あ、が……ッ!!」

 

 

 

 視界が激しく火花を散らし、膝から力が抜ける。意識が一瞬で吹き飛びそうになる中、あの野郎は右手にスタンガンを用意してやがる。密着した状態で放たれる高電圧が全身の神経を焼き、俺はその場に崩れ落ちた。

 

 

 痺れてまともに動かない舌を必死に回し、俺を見下ろすトダカを睨みつける。

 

 

 

「おい、トダカ……ァ!!……どういうことだ、これは……ッ!!」

 

 

 

「ユウナ様。我々オーブ軍将校、そしてオーブ国民は、貴方を失えばすべてが終わると確信しております」

 

 

 

 トダカ一佐は表情一つ変えずに冷静に言い放つ。それならカガリやラクスの方が優先順位は高いだろうが…!

 

 

 

「故に、反逆罪に問われることも、後で首を差し出すことも覚悟の上。貴方には今から、最も安全な場所で我々の戦いを見守っていただきます」

 

 

 

「ふざけんな……ッ! 今更、俺一人だけ逃げろって……言うのかよ……!?」

 

 

 

 怒りで熱くなった脳に、トダカの声が静かに、だが重く響く。

 

 

 

 

「逃げる、という表現は語弊がございますな。……戦いには参加していただきます。ですが、そこは『最も安全』であり、なおかつ『最も貴方の力が活かせる場所』です」

 

 

 

「……あ……?」

 

 

 

 俺の意識が混濁する中、トダカが傍らの兵士たちに合図を送る。すると何かが注射され、薄れゆく意識の中俺はこれからの未来を想像し、「覚えてやがれ…!」と三下のようなセリフと共に意識を失うのであった。

 

 





・スーパー議長MarkII

 原作におけるミーアの影武者バレイベントがユウナの手によって消えた結果、史実では多少はザフト内でも疑心暗鬼に陥っていたはずが、この世界ではミーアがオーブ入りしたせいで、徹底的なイベントガ起きない事に。たった一人の少女を救う代わりに相当議長に塩を送ってしまう事になりましたが果たして。

・プロパガンダ
 議長相手にミーアとラクスを並べて反議長プロパガンダという手もありますが、原作では影武者を本人が糾弾するというこの上ないシチュであったというのに。普通にミーアがオーブ入りした結果、仮にそれをやったとしても「二人揃って影武者なのでは」だとか「今更言われてもじゃあ本物は何していたんだ?」などと言われて効果は薄い上に、民間人であるミーアにヘイトが向く可能性なども含めて没に。原作は本当にタイミングが完璧だからこそ成立していたエピソードなんだなと改めて思いましたり



・本作執筆に影響を与えた作品。
 本作執筆において最も影響の与えた作品を宣伝がてらご紹介(紹介の許可を快諾させていただき作者のUMA大佐様にこの上ない感謝を)

「機動戦士ガンダムSEEDパトリックの野望」

https://syosetu.org/novel/212091/

 本作執筆前から私が最も好きなSEED二次創作であり、内容や構成も本作にかなり影響を与えた作品です。基本的にオリ主人公の無印SEEDの二次創作作品はプロローグや数話を得てアークエンジェルに同行する事で、原作の悲劇を防いだり、キャラとの交友を得て人間関係が変化していく様を楽しむシチュエーションが多いものです。

 しかし、本作は初期から宇宙世紀における「ザニー」ポジションの機体の開発から始まり複数の開発パートを得て前日譚を丁寧に行う事で少しずつ歴史が変化していき、もはやアークエンジェルが登場する頃には歴史は完全崩壊。当然キラ達の行動や思想にも影響を与えるなど「あぁ、こんな風にしてもいいのか…!」と感動。

 それが本作執筆にも少なからず影響しており。序盤での兵器の開発パートやそれによる情勢の変化。少しずつそんな積み重ねが歴史の流れに決定的な違いを見せるという作風につながるのでした。なおその作品でもアスランは割と迷走しており、最早アスランはそういうものなのかもしれません。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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