破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 今日はここまで。恐らく今週中に本編は完結できそうです。


第六十八話 退行する戦場

 

 

 

 

 

 後にメサイア攻防戦と呼ばれることになる戦いの火蓋が切られた瞬間、ザフト軍は反DP同盟を瞬時に消し飛ばさんとする絶望の火網を形成していた。

 

 

 

 

 

 ナスカ級、ローラシア級から放たれる無数のビームと実弾が、宇宙という黒いキャンバスに死の光条を幾重にも描き出す。ゴンドワナ級は喪失したものの、メサイアがMS母艦の代わりを務めており、密集したMS部隊の練度と数はまさに脅威としか言いようがない。

 

 

 

 

 

 

「各艦、集中砲火だ! オーブの連中をふざけた理念ごと塵に変えてやれ!」

 

 

 

 

 ザフト指揮官の咆哮と共に、艦隊の主砲が一斉に火を吹いた。漆黒の闇を切り裂き、巨大な熱線の束がオーブ艦隊へと突き進む。だが、その光が艦隊を飲み込もうとした刹那、異様な巨躯が味方を護らんと前に立ちはだかった。

 

 

 

 

 イズモ級の優雅な曲線を廃し、装甲の継ぎ目すら剥き出しにしたような無骨なブロック構造。武装を一切持たず、ただ「守る」ためだけに設計された鋼鉄の化け物――盾艦「オオヤマツミ」である。

 

 

 

 

「八重垣戦術、展開ッ! 我らが一歩も退かぬ限り、この壁は破れん!」

 

 

 

 

 

 オーブ軍の艦長の絶叫と同時に、艦首の超大型ハニカム構造装甲板から、まばゆいエメラルドグリーンの光が溢れ出した。陽電子リフレクター、それも艦の全エネルギーを防御に注ぎ込み、全面を覆ったその姿はザムザザーやデストロイとは比べ物にならない絶対無敵の巨大な生きる盾だ。

 

 

 

 数隻のオオヤマツミがオーバーラップさせ展開したリフレクターは、艦隊の前面に巨大な光の城壁を構築した。

 

 

 

 

 轟音なき衝撃。ザフトの主砲斉射が一斉に光の壁に激突し、激しい火花を散らして霧散する。直撃を受ければ一撃で轟沈するはずの巨砲のエネルギーが、エメラルドグリーンの膜に触れた瞬間、何事もなかったかのように宇宙へと霧散していくのだ。

 

 

 

「馬鹿な……!? 主砲が防がれただと!? 敵艦に損傷は……損傷は全くないのか!」

 

 

 ザフトのブリッジに走る驚愕。モニターには、業火に焼かれながらも悠然と踏み止まる、無傷のオオヤマツミの姿が映し出されていた。

 

 

 主砲も副砲も、対空砲すら持たないその艦は、ただ重装歩兵が盾を構えて前進するように、大型スラスターを唸らせて敵陣へと距離を詰めてくる。

 

 

「撃てぇ! 盾を信じろ!」

 

 

 

 

 その「聖域」の背後から、イズモ級やアガメムノン級が姿を現した。盾艦が作り出した一方的な安全圏。そこから放たれる砲火を相手にするザフト軍は反撃不能だ。

 

 

 盾を抜こうと接近を試みるザクやグフの部隊も、リフレクターの合間から正確に放たれるMS隊の迎撃に遭い、一方的に撃墜されていく。

 

 

 

 

 銀河英雄伝説における盾艦とは貴族社会における歪みであり、主君を守るための犠牲と帝国貴族の狂気を示した象徴であった。

 

 だが、この艦は違う。ユウナ・ロマ・セイランが提示したコンセプトは、「搭乗員を一人も死なせず、勝利を確定させる」という、狂気じみたまでに合理的な生存の執念だ。

 

 

 

「当たらない……! 攻撃が通じないぞ!! 奴らは不死身か!?」

 

 

 

 ザフト兵の悲鳴が虚しく響く。エメラルドグリーンの光の壁が戦線を押し上げ、ザフトの防衛網は紙細工のように無惨に引き裂かれていく。その光景は、最新鋭の兵器が飛び交う宇宙戦場でありながら、どこか遠い過去の、泥臭くも冷徹な「古の戦場」を彷彿とさせていた。

 

 

 

「前進! 隊列を乱すな! リフレクターの重複を確認しつつ、着実に敵陣を削れ!」

 

 

 

 

 

 盾艦「オオヤマツミ」の艦長たちの号令は、もはや近代軍のそれではない。それは巨大な盾を隙間なく並べ、一歩ずつ足並みを揃えて進む重装歩兵団のファランクスそのものだった。

 

 

 一切の牙を持たぬ代わりに、いかなる打撃も通さぬ絶対の防壁。その鉄壁の守護に守られ、後方に控えるイズモ級やアガメムノン級は、もはや戦艦というよりは巨大な「投石機」の群れと化していた。

 

 

 

 かつての戦場において、盾の隙間から放たれる矢が敵を戦慄させたように、オオヤマツミの影から放たれるMS隊によるビームやマシンガンの斉射が、無防備なザフト艦の装甲を一方的に穿つ。

 

 

 防御に一切のエネルギーを割く必要のない攻撃特化艦たちは、ただひたすらに「投石」を繰り返す機械のように、効率的に敵陣を崩していく。

 

 

 

「……まるで、旧世紀の攻城戦だな」

 

 

 

 戦場を俯瞰していたとあるザフトの艦長が、戦慄と共に呟いた。後に彼はあの戦場だけは二度と経験したくないと愚痴る様に語ったと言う。

 

 

 

 盾艦という動く城壁(ファランクス)に守られ、その後ろからは弓兵(MS部隊)が飛び出し、一撃を加えては再び盾の影へと滑り込む。

 

 

 

 ザフトのザクやグフが必死の突撃を敢行しても、エメラルドグリーンの壁に阻まれ、跳ね返されたところを背後の「弓兵」たちに、文字通りハチの巣にされるだけだ。

 

 

 

 

 

「なんだ……!? 奴らは戦い方を知らないのか! こんな……こんな野蛮な戦法に我々が負けるだと!?」

 

 

 

 

 オーブ軍の提示したこの光景は、騎士道や英雄譚といった甘い幻想を一切排除し、ただ「勝つこと」と「生き残ること」だけを煮詰めた、冷徹なまでのシステム。

 

 

 

 

 

 この光景こそが戦史の皮肉を煮詰めた結末なのだろうか?

 

 

 

 

 かつて、プラントがモビルスーツ「ジン」を戦場に投入した時、プラントの技術者達はそれを「革命」と呼んだ。ボタン一つ、ミサイル一発で巨大な艦艇が沈む「遠距離からの死の押し付け合い」だった戦場を、ジンの登場は再び、個の技量と鋼鉄の衝突が支配する「近接戦闘」の時代へと引き戻したのだ。

 

 

 

 しかし、今ここで起きているのは、その革命のさらに先を行く「退行という名の進化」であった。

 

 

 

 

 

 陽電子リフレクターにオーブの技術の粋を集めた高出力コンデンサ。最新技術を惜しげもなく注ぎ込み、オーブが創り出したのは、あろうことか古代の重装歩兵による泥臭い「陣形戦」だったのだ。

 

 

 

「馬鹿な……我々は最新のMSを駆使しているはずだぞ! なぜ、あんな石壁のような連中に押し潰されねばならんのだ!!!」

 

 

 ザフトのパイロットが絶叫する。彼らが信奉する、高機動で戦場を舞い、一撃離脱で敵を翻弄する「洗練された現代戦」は、ただ黙々と盾を並べて前進する「オオヤマツミ」の群れを前に、全くの無意味と化していた。

 

 

 華麗な機動も、高性能なセンサーも、古代の戦術を現代の技術で再現した、信頼された歴史の暴力の前では、ただの無駄な足掻きに過ぎない。

 

 

 どんなに優れた剣技(MSの機動)を持っていようと、圧倒的な質量と防壁(ファランクス)をもって押し寄せる軍勢の前には、一介の戦士など踏み潰される運命にある。

 

 MSを世界で最初に開発し、戦場に個の英雄主義を復活させたはずのザフト軍が、今、そのMSが最も苦手とする「原始的な集団蹂躙」によって駆逐されていく。新たなる人類を自称するコーディネイターたちが、最新技術で再現された古代の戦法によってすり潰されていくのは、なんという皮肉なのだろうか。

 

 

 ユウナ・ロマ・セイランが提示したこのシステムは、戦場のロマンを徹底的に剥ぎ取っていた。そこにあるのは騎士道精神でも、エースパイロットによる一騎打ちでもない。ただ、巨大な盾の背後で安全を確保し、作業的に敵を排除していくという「戦争の効率化」だ。

 

 

 

『自軍の損失は最小限に。そして敵には最大の損害を』

 

 

 

 

 かつてブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルが渇望したその身勝手な理想が、皮肉にも彼が侮っていた「中立国オーブ」の手によって、最悪の形で実現した瞬間であった。

 

 

 メールシュトローム作戦は、なおもその速度を上げて継続されていく。

 

 

 

 

 

 史実――あるいは別の可能性の未来であれば、ザフトはこの状況を「ネオ・ジェネシス」の一撃で覆すこともできたはずだ。いかに少艦隊が複数に分散して突撃してこようとも、その全てを光の奔流で薙ぎ払い、戦場を沈黙させることは可能だった。

 

 

 しかし、現実は残酷であった。

 

 

 

 

 作戦開始の瞬間に、潜入したサーペントテールによってネオ・ジェネシスは中枢から破壊され、今やただの巨大な残骸と化している。そして残されたもう一つの牙「レクイエム」も、ザフトは温存せざるを得なかった。

 

 

 

 レクイエムは決して連射できる代物ではない。莫大な電力が必要であるがため一発ごとにチャージをする必要があるのだ。今ここで、目前の艦隊を払うためにその一撃を使ってしまえば、最後の手札である「オーブ本国への報復」という選択肢が消える。それはすなわち、オーブ軍の進軍を止めるための唯一の抑止力を失うことを意味していた。

 

 

「……歯痒いな。」

 

 

 

 

 メサイアの司令室で、デュランダル議長は静かに、しかし苦渋に満ちた声を漏らした。

 

 

 本来の予定――彼が描いていた「台本」であれば、戦力比は圧倒的にプラントが上回っていたはずだった。ロゴスを討ち、世界の秩序を再編する旗印はザフトが独占しているはずだったのだ。

 

 

 

 だが、現実はどうだ。

 

 

 

 目の前のモニターに映し出されているのは、大西洋連邦の残存艦隊だけではない。ユーラシア、東アジア……世界各地から集った志願兵たちの部隊までもが、オーブの旗の下に集結している。

 

 

 

 ザフトには、もはや戦場を一掃する「ネオ・ジェネシス」はない。残されたレクイエムを目の前の艦隊に使えば、オーブ本国への牽制を失う。温存すれば、このまま押し潰される。乱戦中に味方ごと撃つのは陣形によって被害が最小限に抑えられる羽目となり、何よりデュランダルはユウナとの約束を絶対に違えなかった。

 

 

 

 

 

 今のザフトに残された最後の拠り所は、コーディネイターとしての優れた身体能力を持つパイロットたちと、最強を自負するミネルバ隊の奮戦のみ。

 

 

 

 戦線は一見、拮抗しているように見える。だが、その均衡は旧世紀の暴力によって、音を立てて崩れ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その超人たちの列に混じり、ひときわ異彩を放って暴れまわる「薄紫の金ピカ」だ。

 

 

 

 

 ババ一尉の狂信的な操縦と、ヤタノカガミの反射が合わさり重なるたびに、ザフトのベテランパイロットたちが駆るザクやグフのシグナルが、一つ、また一つとモニターから消え去っていく。

 

 

 

 

「これが、君が作り上げたモノなのか?ユウナ君」

 

 

 

 

 拮抗していた天秤は、その均衡を保つための重りを一つずつ削ぎ落とされ、今、決定的な崩壊の瞬間へと向かって傾き始めていた。

 

 





・盾艦
 戦闘能力を持たない代わりに防御に全振りした結果、戦場はもはや完全に銃も持たない旧世紀の戦場へと逆戻りしており、新人類のプライドごと根こそぎ押し潰します。ただ、ドッズライフルの解析に成功さえしていれば逆にこの盤面で盾艦が虐殺される羽目になったので実はオーブ軍も「ザフトはドッズライフルを使い始めると俺たちは全滅するな…」と諦めていたり。故に盾艦の今後の課題は対連合でも、対ザフトでもなく。対ドッズライフルとして研究を進められる事になるでしょう。

・戦力差
史実だとプラントに劣るくらいでしたが今作では互角程度には反DP同盟もまとまっています。とはいえ指揮系統が違っていたり、練度の差なども含めるてザフトが優勢。それに加えてネオジェネシスまであったのですから議長は油断をしていたのではなく、確実に勝てると判断していましたが……ネオジェネシスの失敗と大量破壊兵器へのメタ陣形。なにより盾艦による「退化した戦場」が徐々にその優位性を失わせる事になるのでした。

 進化するガンダムが一番好きな男が最終的に旧世紀の戦場をつくりだすのは、別の意味で皮肉かもしれません。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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