破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
まず一言。ミナ様好きな方は申し訳ございません。
『緊急速報です! プラントの軍事工廠アーモリーワンにおいて、正体不明の武装集団による新型MS強奪事件が発生! 現在、現場は戦闘状態にあり、多数の死傷者が出ている模様です!』
「……っ!」
心臓が跳ね上がる。ついに、賽は投げられた。
ウナトは「やれやれ、プラントも管理が甘いな」と鼻で笑っているが、俺にはその余裕はない。この混乱こそが、俺が待ち望んでいた、そして最も恐れていた「最初のチャンス」だ。
「ち、父上! 大変だ、カガリが……カガリは今、極秘でプラントとの会談に向かっていたはずじゃ……!」
俺は椅子を蹴り飛ばさんばかりの勢いで立ち上がり、真っ青な顔をして見せた。これは演技半分、本気半分だ。
「落ち着け、ユウナ。アスハ代表のことだ、ザフトが守るだろう」
「そんなの信用できるか! もし彼女に万が一のことがあったら、セイランの面目は丸潰れだ! すぐに、すぐに確認させます!」
俺はウナトの制止を振り切り、震える手で端末を操作して部屋を飛び出した。
廊下に出た瞬間、俺の表情から「怯え」が消える。
「……トダカ一佐、俺だ。聞こえるか」
直通の秘匿回線。トダカの声は、既に緊張に満ちていた。
『ユウナ様、ニュースをご覧に?』
「ああ。いいか、一佐。今すぐ国防宇宙軍に連絡を入れろ。セイランの名による直命だ。『アーモリーワンにおいて、我が国のカガリ・ユラ・アスハ代表がテロに巻き込まれた可能性が極めて高い。直ちに救助部隊を派遣し、代表を確保・保護せよ』とな」
『……! しかし、他国の領海、ましてやプラントの軍事拠点に独断で軍を送るのは国際問題に……』
「そんなものは後で俺が……いや、セイラン家が握りつぶしてやる! 今この瞬間、オーブの国家元首を救えるのは、現場に近い我が国の宇宙軍だけだと言い張れ。これは『オーブの誇り』の問題だ。一刻を争う、今すぐやれ!」
俺の声には、自分でも驚くほどの熱がこもっていた、他国への越境軍事行動。本来なら大問題だが、「テロに巻き込まれた自国の代表を救う」という大義名分を、事件発生直後の混乱の中でブチ上げれば、誰も即座には止められない。
「いいか、トダカ一佐。ザフトに主導権を握らせるな。カガリ様を最初に確保するのは、オーブ軍でなければならないんだ」
もし原作通りなら、カガリはミネルバに保護され、そのままデュランダルの掌の上で転がされることになる。それを防ぎ、オーブの自律性を保つためには、こちらが先に「救助」という名の介入を果たす必要がある。
『……承知いたしました。ユウナ様のご決断、全責任をもって各部隊へ伝達します。国防宇宙軍、発進させます!』
トダカが通信を切ろうとしたその寸前、俺は「待て!」と鋭く声を上げた。
「追加だ、一佐。倉庫に眠っている『アグニ』……あれを、持ち出せるだけ持ち出せ。確か以前試験運用した時に30丁ほどコピー生産してた筈……出撃する宇宙軍の機体に強引にでも懸架させるんだ」
『……アグニ、ですか? 320mm超高インパルス砲…かつて連合のストライクが装備していた、あの対艦攻撃用の?』
トダカの声に困惑が混じる。
アグニは、かつてのヘリオポリスで開発されたGATシリーズの武装だ。圧倒的な破壊力を誇るが、ナチュラルのMSではエネルギー消費が激しすぎ、取り回しも最悪。今のオーブ軍の制式装備からは外れ、予備兵装として死蔵されている代物だ。
こんなもんを大量によくコピーしたなと思ったが、やはり戦艦をぶち抜ける火砲と言うものに魅力を感じたようで……まぁ、取り回しの悪さと消費問題の解決は難しかったようだが。改めてアグニクラスの火砲をぶちまけるNJC搭載機はチートだよチート。
「そうだ。テロリストが強奪したのはザフトの新型だろう? 並の武装じゃ太刀打ちできない。代表を守るためには、条約ギリギリの過剰火力が要る。それにザフトの新造艦…ミネルバだっけ?それが万が一要求に応じない場合はアグニを向けて「お話」する必要もあるからな」
もちろん、それは建前だ。
俺がアグニを持ち出させる本当の理由は、対MS戦のためじゃない。これから落ちてくるユニウスセブンの巨大な破片を、宇宙空間で少しでも多く、確実に粉砕するためには、MSが携行できる最大級の「打撃力」が必要なのだ。
被害を防ぐ事は不可能に近い、しかしオーブ宇宙軍を動員し、咄嗟に思いついたアグニを使えば…クソッ、もっと早く計画を練るべきだった…!
『しかしユウナ様、あれほどの大型兵装を今のM1に持たせれば、機動性が著しく低下します。それにエネルギーの問題も……』
「細かいことは現場で何とかさせろ! バッテリーパックを増設してでも持っていくんだ。最悪戦艦につなげてもいい!アークエンジェルは、そうして運用したと記録で見た!これは代表の命、ひいてはオーブの命運がかかった命令だぞ!」
俺は語気を強めて押し切った。
アグニの直撃なら、小規模な破片なら蒸発させられるし、大きな破片も軌道を変えるきっかけになる。
『……わかりました。独断での兵装持ち出し、受理しました。これより国防宇宙軍、全速でアーモリーワン宙域へ向かわせます!』
今度こそ通信が切れた。確かオーブ宇宙軍にはイズモ級が結構な数量産されていたはず、機体を強奪されて気が立っているというのに、アグニを手にした彼らに取り込まれる事になるミネルバには哀悼の意を表したい。
俺は荒い息をつきながら、冷え切った手のひらを握りしめる。アグニは重く、扱いにくい「呪い」のような兵器だ。だが、これこそが歴史を塗り替えるための、俺の「槍」になる。
国防宇宙軍への指示を終えた俺は、息つく暇もなく次の「カード」を切った。
相手は、オーブ五大氏族の一角でありながら、宇宙要塞『アメノミハシラ』を拠点に独自勢力を築きつつある「影の支配者」——ロンド・ミナ・サハクだ。
彼女は今、ジャンク屋のロウ・ギュールらとの出会いを経て、「国とは場所ではなく民である」という思想に辿り着きつつある。だが、その現状はかの有名な「天空の宣言」は行われておらず、オーブ本国から高度な技術と機密を持ち出し、天空から世界を見下ろす「独立君主」そのものだ。
俺は端末を操作し、さらに秘匿性の高い回線を開いた。
「……お久しぶりです、ミナ様。お美しさは相変わらずのようで」
モニターに映し出されたのは、黒いドレスを纏い、冷徹な美貌を湛えたロンド・ミナ・サハクだった。彼女は露骨に不快そうな視線を向けてくる。
『……ユウナ・ロマ・セイラン。不作法な呼び出しだな。お前の相手をしているほど、私は暇ではないのだが?』
「そう言わずに。アーモリーワンでの強奪騒ぎ……既にご存知でしょう? あそこに、我らがアスハ代表——カガリ様が巻き込まれ、現在行方不明です」
『……それがどうしたというの? アスハの失態を、セイランが軍を私物化してまで拭おうというのか?俗物が愛に狂ったのか?』
ミナの言葉には、隠しきれない蔑みが混じる。だが、俺の中の焦燥感が、その高慢な態度に牙を剥いた。これから空が落ちてくるんだ。お前の悠長な「自分探し」に付き合っている暇はない。
「……おい、ミナ」
俺はネクタイを乱暴に緩め、モニターを睨みつけた。声音から敬語が消え、剥き出しの「毒」が漏れる。
『……呼び捨て? お前、自分が誰に――』
「うるせえよ。お前がその城を拠点に、いずれ『天空の宣言』だか何だかぶち上げて、オーブから独立しようと企んでんのはお見通しなんだよ。ロウとかいうジャンク屋とつるんで『国とは民のことだ』なんて悟りを開いたつもりか? 結局やってることは、オーブの私物を持ってトンズラした独立君主の真似事じゃねえか」
ミナの表情が凍りついた。まだ胸の内に秘めているはずの思想と、交流関係を、この「俗物」が断定したのだ。
「オーブの技術と資源をタダで持ち出したんだ。その分、最低限の仕事くらいしろや、このクソアマ。いいか、今すぐセンサーを全開にしろ。カガリを乗せた搭乗艦らしき座標、それとテロリストの逃走ルートだ。一秒でも遅れたら、お前の計画を今すぐ親父と連合の耳に叩き込んで、その小綺麗な城を焼き払ってやるからな。……わかったか?」
モニター越しの沈黙。ミナ・サハクの瞳に宿ったのは、怒りを超えた戦慄。そして、自分以上に「ドス黒い何か」を腹に抱えた怪物への、深い興味だった。
『…………ふふ。ふふふ、あはははは!』
ミナが、艶然と笑い声を上げた。
『……驚いた。セイランの血に混じっていたのは毒どころか、狂気か。良いだろう、ユウナ・ロマ・セイラン。お前のその不作法、今はその「狂気」に免じて貸しにしてやろう。データをお前の端末へ転送する』
「……最初からそうしろ。頼んだぞ」
通信を叩き切る。途端に膝の力が抜け、俺はその場にへたり込んだ。
(……やっちまった。あのロンド・ミナ・サハクをクソアマ呼ばわりして脅迫するなんて……だが、これで『宇宙の目』は確保した)
俺は震える手で汗を拭い、再び「バカなユウナ君」の顔を貼り付けた。さて、次は激昂して廊下を歩いてくる、親父の足音に応対しなきゃならない。
(……ふぅ、流石に心臓に悪い)
通信を切った後、俺は乱れた呼吸を整えながら、思考を整理した。
前世の知識があるとはいえ、俺が知っているのは「天空の宣言」という彼女のターニングポイントまでだ。それ以降、彼女がどう動き、オーブの歴史にどう干渉していくのか……その詳細は霧の中にある。
(俺が歴史に介入したせいで、本来起きるはずのない歪みが生まれている)
その最たるものが、傭兵部隊の扱いだ。
ミナの協力を取り付けたことで、宇宙の「目」は確保した。だが、今後扱いが難しいのは主役級の傭兵部隊『サーペントテール』だ。もし俺が彼らをこのままオーブの都合で抱え込み続ければ、本来彼らが解決すべきはずだった外伝の事件……「とんでもない何か」が、世界のどこかで手遅れになるかもしれない。
「……サーペントテールを使うのは、本当に詰んだ時だけだ。今はまだ、彼らを深追いさせるわけにはいかない」
だからこそ、俺が今一番に頼りにしているのは、独自のルートで接触を図っているカナード・パルス率いる『傭兵部隊X』だ。彼らなら、正規軍が動けない汚れ仕事も、災害時の超高難度救助もこなせる。
だが、肝心の彼らからはまだ、正式な返答が届いていない。
(カナード……あの気難しい男が、俺の「救世主ごっこ」に乗ってくれるかどうか)
不穏な予感だけが胸の中に澱(おり)のように溜まっていく。そんな俺の焦燥を切り裂くように、廊下から重々しい、そして怒りに満ちた足音が近づいてきた。
「ユウナ! 貴様、何という真似を……!」
部屋のドアが乱暴に開け放たれる。そこには、顔を真っ赤にして激昂した親父、ウナト・ロマ・セイランが立っていた。
「……あ、父上! 大変ですよ、カガリが、カガリがプラントのテロに!」
俺はコンマ数秒で「猛毒の革命家」から「取り乱したバカ息子」へと切り替わった。椅子から転げ落ちるように立ち上がり、震える手で親父の袖に縋り付く。
「国防宇宙軍には僕から言っておきました! セイランの名にかけて、代表を、僕の婚約者を今すぐ連れ戻せって! 予算なんてどうでもいい、とにかく一刻も早く、全速で向かわせるようにって!」
「この愚か者が……! 国際問題を何だと思っている! 独断で軍を動かすなど、ロゴスのジブリール氏に何と釈明するつもりだ!」
「釈明? 父上、何を言ってるんですか! カガリをザフトの手から一番に助け出せば、オーブの主導権は完全に僕たちのものだ! 命の恩人として、彼女に言うことを聞かせる絶好のチャンスじゃないですか!」
親父の動きが止まる。俺はさらに声を張り上げ、必死な顔で「強欲な利権屋」の論理を叩きつけた。
「ザフトに恩を売らせちゃダメだ! 僕たちが助けて、僕たちが保護する。そうすればアスハの派閥も黙る。ロゴスだって、『オーブを完全に掌握した』僕たちの手腕を高く評価してくれますよ!」
「……む、むう。それは、一理あるが……。しかし、あまりにも性急すぎるぞ」
ウナトの怒りの炎が、急速に「計算」の冷気で鎮められていくのが分かった。
よし、かかった。
親父は、自分の理解できる「強欲」や「権力欲」という物差しで測れるものなら、たとえそれが息子の独断であっても飲み込む男だ。俺はさらに追い打ちをかけるように、いかにも「世間知らずな御曹司」らしい、好奇心と不安が混ざったような声を出す。
「それにしても父上、一体何があったんでしょうね? テロリストが新型MSを奪うなんて……。プラントの警備はどうなってるんですか。あー怖い怖い。父上は、何か聞いてるんですか?」
俺は、縋り付いた手を震わせながら、上目遣いで親父の顔を覗き込んだ。
ウナトは鼻で笑い、少しだけ勝ち誇ったような顔で口を開いた。
「ふん、プラントも所詮はコーディネイターの集まりだ。脆いものよ。今回の件はな、青き清浄なる世界を願う者たちが、不遜なザフトの牙を抜くために仕掛けた『必要な儀式』なのだよ」
「えっ……儀式? じゃあ、父上、テロリストが来るって知ってたんですか! すごいや父上! 予言者みたいだ!」
わざとらしく目を輝かせて煽ると、親父は気を良くしたのか、聞いてもいないことまでベラベラと喋り始めた。好都合だ。
「知っていたも何も、ロゴスのジブリール氏からは事前に、アーモリーワンで『面白いショー』が始まると示唆されていた。ザフトの最新鋭機をこちら側……いや、正しき組織の手に移すだけのことだ。カガリがそこに居合わせたのは想定外だったがな」
…………。
(……うっわ、こいつマジかよ)
俺は内心で、猛烈な嫌悪感に吐き気を催していた。
強奪騒ぎの裏側どころか、それがロゴスの仕業であることまで、この親父は知っていて黙認していたのだ。オーブの代表がその場にいると分かっていながら、自分の利権のために見捨てようとしていた。
だが、俺の胸元のポケットには、高感度の超小型録音機が忍ばせてある。
(……しっかり録らせてもらったぞ、親父)
ウナト・エマ・セイラン、あんたのその口が、自分自身の死刑執行書を今書き上げているんだ。この音声データがあれば、クーデターの際、親父を「ロゴスと内通して国家を危険に晒した売国奴」として、一瞬で政治の表舞台から葬り去ることができる。
「へぇー、ロゴスってすごいんですね! じゃあ、カガリを助け出せば、ロゴスの人達にも『よくやった』って褒めてくれますよね!」
「ああ、そうだとも。だからユウナ、軍の指揮はトダカに任せて、お前はここで大人しく朗報を待っていろ。……フン、お前もようやく、セイランの人間らしい考え方ができるようになってきたな」
ウナトは満足げに俺の肩を叩き、部屋を出て行った。
ドアが閉まった瞬間、俺の顔から笑顔が消える。録音を停止し、データをクラウドの多重暗号化フォルダへ飛ばす。
「……フリット・アスノの言う通りだ。膿を全部出し切るのは難しいかもしれないが、まずは目の前の特大の膿から、力ずくで引きずり出してやるよ」
俺は再び端末を手に取り、ミナから届いた宇宙のリアルタイム・データを確認した。
そこには、オーブの国防宇宙軍が、カガリを乗せたザフトの新造艦ミネルバに肉薄していく光景が映し出されていた。
・ロンド・ミナ・サハク
外伝アストレイに登場する女傑。彼女の存在を知らなくでゲームで大体高性能なアストレイゴールドフレーム天ミナの存在を知ってる人はそこそこ多いはず。今作ではイラっとして焦ったユウナにクソアマ扱いされてますが、正確には天空の宣言は別に独立宣言でもありませんし、本人もイズモ級でブレイク・ザ・ワールドの時に行動してオーブを救おうとするなど、経験によってかなりの人格者(とはいえ過去にやらかした事は事実ですが…)
なのでユウナ視点では
ミナの表情が凍りついた。まだ胸の内に秘めているはずの思想と、交流関係を、この「俗物」が断定したのだ。
なんて描いてますが実際にはカガリはサハクの動きは黙認して貰っていたり、独立君主ムーブしつつオーブを守ろうと影の軍神として動いてくれていますので、少しユウナの考えはズレていたりします。これも全部アストレイ知識が精々スパロボくらいしかないのが悪いんだ…
それでも骨のあるやつとミナ様が協力を申し出てくれた結果、本編もまた違った歴史を辿る事に……
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン