破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
今日はここまで。恐らく後4話運命編は完結します!
「ユウナ様ッ! 見てください、あの勝利の光を! 貴方様の掲げた理想が、ついに要塞をこじ開けましたぞッ!!」
ババ一尉が歓喜の咆哮を上げ、アカツキを加速させる。しかし、背後の複座シートで翻弄されるユウナに、そんな感慨に浸る余裕など一ミリもなかった。
「理想じゃねぇ! 物理的な暴力だろぉぉ! 止まれ! 揺らすな! 吐く、吐くからああああ!!」
メサイアの攻略ならキラがやってくれる。レクイエムだってアスランやカナードに任せておけばいいはずだ。自分たちは安全な後方で戦果だけを待つつもりだったのに、どうしてこうなったとユウナは頭を抱える。
おまけに、先ほど通信越しに聞こえてきた「不可能を可能にする男」というあのセリフだ。
(思い出したのかよおっさん! このタイミングで、しかもあんな無茶な方法で!? もう原作知識もクソもねぇ、やりたい放題じゃねぇか!!)
頭を抱え、崩壊したプロットと己の不運を呪ってダメ元で補給の為に一旦何処かの船に着艦しろとババに命令を下そうとする……その時だった。
「……あのアカツキってなんなの!? あの動き……ただの護衛じゃない……エース!?」
戦域を離脱しようとする「薄紫の金ピカ」の機動を、フォースインパルスのセンサーが鋭く捉えていた。ルナマリア・ホークは、メサイアの外壁をこじ開ける起点となったその機体に強烈な危機感を抱く。
「悪いけど、シンの邪魔はさせない……! 落ちなさいッ!!」
ルナマリアが操縦桿を押し込む。愛する恋人から受け継いだフォースインパルスが瞬時に加速し、対艦刀「エクスカリバー」を手に薄紫のアカツキの退路を断つように突撃するのであった。
一方、その「獲物」にされている側のコックピットでは。
「うぷ……お、おいババ、あっちの方はどうなってる……。キラやアスランが適当に片付けてくれてるよな……?」
強烈なGに脳を揺さぶられながら、俺は必死にモニターを凝視する。遠方では、デスティニーとレジェンドが、キラのストライクフリーダムやアスランのインフィニットジャスティスと激突しているようだ。
もはや人間業とは思えない光の奔流と残像の嵐。あんな化け物たちの宴の中に突っ込んでいったら、俺の命なんて何個あっても足りない。
(よし、いいぞ。主役たちはあっちで盛り上がってろ。俺はレクイエムの端っこの方で「いやー、防衛部隊が強くて近寄れませんでしたわー」って言い訳を……)
まぁババは聞いてくれないんだろうけどなぁ!!なんだよこいつ!!ドッズライフルを使い尽くして補給しろといったら即座に撃墜された味方のドッズライフルを拾ってきて使い始めるわ、こんなバカみたいな機動しておいてスラスターの残量はまだまだ余裕がありやがる!
つまりコイツはバカスカスラスターを吹かしてた訳ではなく、こんな狂人ムーブの裏で慣性を利用した移動や、敵を攻撃した際の衝撃なども織り交ぜて調整して節約してたって事だ。
本当なんなんだよコイツ!ババって一話限りのモブみたいな奴だがこんなに強かったかなぁ!?
そして、どうにか俺がババに本格的な補給をと迫る中。その打算を打ち砕くように、アラートが鼓膜を突き刺した。
「……えっ、待て。何だ、あっちから来るのは……。あれ、インパルスか!? おい、ちょっ……アイツ、なんでエクスカリバー構えてこっちに突っ込んできてんだよ!!」
モニターに映るのは、抜き身の巨大な剣を構え、鬼気迫る勢いで加速するインパルスの姿だ。その剣先は、間違いなくこの薄紫のアカツキのコックピット――つまり俺の腹を狙っている。
「分かりましたユウナ様ッ! 敵は刺し違えてでも貴方様を討つ構え……ならばこちらにも考えがあります! 迎撃し!!そして!!貴方のために粉砕いたしますッ!!」
ババが狂ったような笑顔でスロットルを最大に入れた。シートに叩きつけられ、視界が真っ白に染まる。
「やめろぉぉぉーー!! 迎撃とかいいから! 交戦すんな! 死にたくなーーい!! まだ俺は死にたくなぁぁぁい!! 助けてくれぇぇぇ!!」
俺の意志など一ミリも反映されないまま、薄紫のアカツキは殺意の塊と化したフォースインパルスに向けて真正面から突っ込んでいく。
「くっそぉぉ!! インパルス対アカツキなんて、本編じゃなかった夢の対決じゃねぇか! 畜生!! 自分が当事者になってなけりゃ大興奮のシチュエーションだよ!! ババ君頑張れ!! 超頑張れ! でも絶対に殺すなよ!! 絶対だぞ!!」
「おお、敵の命にも寛容なのですな! 慈悲深きユウナ様ッ!!」
「慈悲じゃねぇ、保身だ! あのインパルスのパイロットはデスティニーの恋人なんだよ! 下手に撃破なんてしてみろ、あの運命野郎がマッハでブチギレて飛んでくるから本当に勘弁してくれババ!!」
俺が喉を枯らして叫んでいる間にも、宇宙では信じられないような超絶機動の格闘戦が展開されていた。
幸いなことに、俺のこの無様な叫びは秘匿回線でババにしか届いていない。ルナマリア側から見れば、薄紫の金ピカは不気味なほど無言で、鋭利な刃物のような動きで迫りくる「恐怖のエース」に映っているはずだ。
「はっはあ! おお、いい動きだ! だが、ユウナ様の御前を汚させはせんッ!!」
ババが吠え、アカツキがエクスカリバーの刺突を紙一重のロールで回避する。モニター一杯に巨大な対艦刀の刀身が映り、金属が擦れ合う火花が視界を埋め尽くす。
そのままババは、回避の勢いを利用してインパルスの懐へ潜り込んだ。ビームサーベルを抜かず、あえて装甲の厚い盾を叩きつけ、インパルスの姿勢を強引に崩す。
「いけぇ! そうだ、それでいい! 斬らなくていいから、どっか遠くに突き飛ばせ!!」
「承知ッ!!」
アカツキが空いた左拳でインパルスの胸部を殴打し、反動で距離を取る。直後、ルナマリアのインパルスが体勢を立て直し、すぐさまビームライフルを連射してきた。ヤタノカガミがそれを弾き、戦域に黄金の火花が散る。
「……すげぇ、本当にアカツキとインパルスが格闘戦を……。当事者じゃなければポップコーン片手に眺めてたい名シーンなのに、なんで俺はこんなに吐きそうな思いをしてるんだ!!」
俺の胃袋が限界を訴える中、戦闘はさらに激化していく。本来、一般兵相手ならビームをヤタノカガミで反射して終わりか、反射に驚いて固まった隙を叩けば済む話だ。だが、相手は腐ってもミネルバ隊のエース、ルナマリア・ホーク。
彼女はビームが弾かれたことなど想定内と言わんばかりに、即座にフォースシルエットを吹かして肉薄。エクスカリバーの連撃でアカツキのヤタノカガミを「面」ではなく「点」で削り取ろうと仕掛けてくる。それをババが紙一重の旋回とシールドの打突で強引に押し返すという、一進一退の攻防が続いていた。
「ヒッ、ひぎぃぃ……! 脳が、脳が揺れるぅ……!」
視界が真っ赤に染まるレッドアウト寸前の衝撃が何度も襲う。俺は意識を保つのが精一杯で、縋るような思いで後席のババを振り返った。だが、そこで目にした光景に俺の血の気は引いた。それはもうドン引きした。
(こ、こいつ……ウォーモンガーか何かなのか!?)
ババは恐怖など微塵も感じさせず、むしろ獲物を追い詰める猛獣のような、あるいは極上の悦楽に浸る狂信者のような、凄まじい興奮を顔に浮かべていた。戦場という死地に心酔するその表情は、正直言って敵のインパルスより何倍も怖かった。
その時、激戦のノイズを突き破って、オーブ軍の全軍放送が響き渡った。
『レクイエム中枢の制圧、および機能停止に成功! 繰り返す、レクイエムは沈黙したッ!!』
「よ、よし! よっしゃぁぁぁ!! 勝った! これで俺の余生は守られたんだぁぁ!!」
絶望的な状況下での吉報に、俺は思わず拳を握りしめる。もはや戦う理由はなくなった。あとはこのままスマートに離脱するだけだ!
だが、現実はそう甘くない。
ババが「ならば逃しはせんッ!」とばかりに放った蹴撃が、ルナマリアの構えていたエクスカリバーを豪快に蹴り飛ばした。姿勢を崩し、無防備になるインパルス。ババがビームサーベルを抜き、引導を渡そうとしたその刹那。
「ルナマリア! 下がれ! ここは俺が!」
空間を切り裂き、爆発的な加速と共に割り込んできたのは、戦場の硝煙さえ焼き尽くさんばかりの鮮烈なオレンジ色の残光だった。
それは、かつて「ミネルバ」に配備されるはずだったもう一機の「運命」。シンの機体とは対照的な、燃え盛る炎のようなオレンジの装甲が、メサイアの爆炎に照らされて不気味なほどに輝いている。
背部から展開された「光の翼」は、大気を、そして宇宙の静寂を震わせ、見る者を圧倒するプレッシャーを放っていた。
「チッ、手間をかけさせやがったな、オーブの金ピカさんよぉ!」
通信機越しに響くその軽妙、かつ自信に満ちた声。戦士としての完成度と、場にそぐわぬ余裕を感じさせるそのトーンを、俺が――前世でこの作品を親しんだ視聴者が聞き間違えるはずがなかった。
「……えっ? 嘘、だろ……? なんで……なんでアイツがそこに……?」
俺はモニターに映し出されたオレンジ色の死神を凝視し、戦慄した。
(待て、待て待て待て! なんでアイツが生きてる!? なんでデスティニーに乗ってるんだよ!?)
脳内を猛烈な勢いで後悔と分析が駆け巡る。
俺がクーデターを起こしてウナトたち親連邦派を追放し、オーブの実権を握る。そのせいで地球連合との同盟も、ザフトを討つための「オーブ軍派遣」もすべて白紙になった。
当然、戦場をかき乱すアークエンジェル隊も、あの場にいたはずのムラサメ隊も介入しなかった。彼らはリビルドを片手に世界を駆け巡るボランティア騎士団になっていたんだからな。
……つまり、アイツがフリーダムの乱入に気を取られ、ガイアに真っ二つにされるという「死の機会」そのものを、俺がこの手で消滅させてしまったんだ!
「じゃあ、なんであの日、あいつはオーブに派遣されてこなかったんだ……?」
考えれば考えるほど、最悪なパズルのピースが噛み合っていく。あの時の議長は、FAITHの中でも選りすぐりの精鋭による特殊部隊「コンクルーダーズ」を結成しようとしていたはずだ。その準備のために、アイツは前線からプラント本国に呼び戻されていたんだろう。
「そんな……そんな嫌なフラグ回収があるかよ!」
俺が保身のために「原作の悲劇」を回避させたツケが、巡り巡って「生存し、より強化された最強の敵」として、今まさに俺を殺しにやってきた。
インパルスが離脱して行く中、オレンジ色のデスティニーが放つプレッシャーは、シンのそれよりも遥かに洗練され、容赦がない。アロンダイトの切っ先がモニター越しに俺の心臓を貫かんばかりに迫る。
俺は、自分の首を絞めることになった過去の「自身の選択」を呪いながら、涙目で宇宙の果てまで届かんばかりの絶叫を上げた。
「どぼじでハイネがいぎでるんだよぉぉぉぉぉ!!!!」
世界が俺を殺そうとしていた。
・ハイネ専用デスティニー
実はこれまでも伏線はあり、議長がザクに乗ってレイと共にオーブにやってくる中もう一人同行していたり。レイが議長にパリ郊外の戦いについて話す際に、ルナマリアとアスランは陽動を叩きにいってシンはデストロイと交戦していましたが本人はどうしていたのかを口にしていない(実際の所アスランとルナの様にグフに乗ったハイネと一緒にファントムペインと交戦していた)など、細かい部分でそれっぽいフラグは隠していました。ミネルバ隊の描写が意図的に少なくされていたのもその辺りが理由、いわばハイネは月島さんやシドニー・マンソンと化していました。
議長が割と余裕があったのもこのせい。本来であれば彼はイレギュラーであるカナードを撃破する為に参戦する予定でしたが、戦場で死ぬほど目立つ薄紫色の金ピカ野郎がルナマリアを追い詰めているのを見て参戦。その結果、最後の最後で『グフに踏み潰されない様に』と足掻いた男が、『グフのパイロットを勤めたエース』と出逢っちゃったのです。
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン