破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
その場の勢いで、しかし魂を直接揺さぶるような絶叫は、メサイア近海で死闘を繰り広げていた者たちの指先を凍りつかせた。
特に、シンの動揺は顕著だ。
「……無駄なことなんて、ない……? 自分の物語を、自分で綴る……?」
ユウナの叫びは、議長から与えられた「役割」を唯一の正解として縒り代にしていたシンの足元を、根本から崩し去ったのだ。
ルナマリアと笑い合った時間も、ステラを守ろうと足掻いた無様な姿も、そのすべてに価値があったのだと、かつて憎んでいたはずの国の男が全宇宙に向けて肯定している。
それを否定してしまえば自身の戦う意味も、アイデンティティも、思い出も全てを否定するも同然となる。
シンのデスティニーから、殺気が霧散した。命を削るように振り回していたアロンダイトの光刃が消え、対艦刀が虚空へと力なく放り出される。掌のパルマフィオキーナも、長射程ビーム砲も、もはや起動することはない。
機体は慣性に流されるまま、戦場の中心で静かに停止した。燃え尽きた。何を信じればいいのか、何を討てばいいのか。その羅針盤を失ったシンの精神は、真っ白な灰の様に全てが崩壊してしまったのだ。
「シン!?」
アスランのインフィニットジャスティスが、慌ててデスティニーに近づこうとした、その時だった。
「シン……! シン、応答して!!」
戦域を一直線に武器も持たずに駆け抜けてきた一機のモビルスーツ。そのパイロットはルナマリアのインパルスだ。彼女もまた、ユウナの演説に、そしてシンの異変に突き動かされるようにしてここに辿り着いた。
ルナマリアは、身動き一つ取らないデスティニーの正面に回り込み、その機体を抱きかかえるようにして静止させる。
「シン! もういい……もういいのよ、シン!」
「……ルナ……」
通信回路越しに聞こえてきたのは、かつての戦争を憎む怒りや、戦争を生み出す者達への憎悪、議長の尖兵としての鋭さも消え失せた、ただの少年の震える声だった。
「俺は……。俺は、どうすれば良かったんだ……ッ!!」
シンはコックピットの中で、子供のように声を上げて泣きじゃくった。
家族を失い、力を求め、ようやく手に入れた「世界を救う役割」。それがただの停滞であり、未来を殺すための鎖だったと突きつけられた今、彼の行き場のない悲しみが決壊する。更にルナマリアという自身を愛してくれた女性を切り捨てようとした事実はシンの心を引き裂かんとしている。
これまで自分の意志で引き金を引いてきたつもりだった。だが、ユウナに言わせればそれさえも「適性」という名のレールの上。負けたくなくて、誰かを守りたくて、必死に練習し、死線を潜り抜けてきた自分の過去さえも、DPというシステムに組み込まれた瞬間に「予定調和の無機質なデータ」に成り果ててしまうのだ。
「教えてくれよ、ルナ……! 俺は……僕は何を間違えたんだ!? 僕はただ、誰も泣かない世界に……みんなが笑える未来に、したかっただけなのに……ッ!!」
戦いたいわけじゃなかった。ただ、マユが死んだあの日のような絶望を、誰にも味わわせたくなかっただけなのだ。だが、そのために自分が否定しようとしたのは、他ならぬ「人が足掻き、選び、生きていく輝き」そのものだったのだから。
最早何もわからない。どこで間違えたのか、何処を悔やむべきなのか。自身のアイデンティティと戦う理由を失ったシンは最早戦士ではないただの少年だ。
慟哭するデスティニーを、インパルスが優しく包み込む。その光景を、アスランはただ静かに見守っていた。
かつて自分も迷い、道を見失った。
だが、ユウナという男が放った、あまりにも生々しく、自分勝手で、それでいて人間味に溢れた「生存本能」の叫びは、理想という名の呪縛に囚われていた少年を、ようやく呪いから解き放とうとしていた。
「大丈夫よ、シン……。また、始めればいいんだから。誰かに決められた未来じゃなくて、私たちが、自分たちで選ぶ未来を……」
ルナマリアの声もまた、震えていた。だが彼女は選んだのだ。遺伝子による平穏ではなく愛するものと歩む未来を。どれだけ困難であろうとシンとなら歩んでいけると。
「俺は…俺は…!」
ユウナの演説がもたらした「個の物語」の重みが、今、この戦場で最も傷ついた少年の心を溶かし、閉ざされていた明日への扉を、その涙と共に抉じ開けたのだ。
一方、メサイアへと続く最終防衛ラインでは、キラのストライクフリーダムとレイのレジェンドが、無数のドラグーンが飛び交う光の網の中で対峙していた。
ユウナの絶叫に近い演説は当然二人の耳にも流れ、キラはレジェンドの猛攻を回避しながら、通信を開いて問いかける。
「レイ! 君にはユウナさんの言葉が聞こえなかったのか!? 誰もが自分の物語を綴る権利があるんだ。たとえそれが無駄だと言われても、自分で選ぶことに意味があるんだって!」
「黙れ、キラ・ヤマト……!」
レイの声には、今までになかった激しい揺らぎが混じっていた。自らの出自、テロメアの短縮による死の運命。そんな自分に「役割」という救いを与えてくれたのは、ギルバート・デュランダルただ一人だった。
「物語など、俺には最初から無い! 未来という言葉に、俺は幾度裏切られたと思っている! ギルの示す道こそが、迷える人類を救う唯一のことわりなんだ! そのために俺は、俺という個を捨ててギルの剣となるッ!!」
レイは叫び、全ドラグーンを再展開。キラを全方位から包囲し、文字通り「個」を圧殺せんとする『数』による一斉掃射を仕掛けようとした。
だが、その光の檻が閉じようとした瞬間、戦域の外から飛来した強烈なプレッシャーを伴う紅い閃光が、レジェンドのドラグーンの一角を強引に撃ち抜いた。
「――なんだ!?」
レイが驚愕に目を見開く。レジェンドのドラグーンが形成していた包囲網の一角が、外部からの強襲によって文字通り粉砕されていた。爆炎を切り裂いて現れたのは、戦場を蹂躙しながらこの最前線まで単機で食い込んできた紅い閃光。
キラの兄。かつて『失敗作』と呼ばれた男。カナード・パルスが駆る「ドレッドノートイータ」であった。
「兄さん……!? どうしてここに!」
キラが驚きに声を上げる。カナードは機体を翻し、自らの弟の傍らへと鮮やかに滑り込んだ。
「フン、あのボンボンの生意気な演説が聞こえてな。やかましくて、虫唾が走って、聞くに耐えないが……。だが!あの手合いにそこまで言わせておいて、このザマは何だ。見ていられんぞ、キラ!」
カナードは機体の出力を最大まで引き上げ、巨大なビームランスを迷いなく構える。その視線の先には、運命という名の呪縛に縛られたまま、自らの存在を「プラン」という歯車の中に押し込めようとするレイがいた。
「おい、そこの分からず屋。お前の事情なんて知ったことか!だがな、自分の価値を他人に決めさせて満足してる奴の顔を拝むのは、ヘドが出るんだよ! 出来損ないだろうが成功作だろうが、俺たちは生きてるんだ。誰かの引いたレールの上を走るために生まれてきたわけじゃねぇんだ!!」
かつて「失敗作」というレッテルを突きつけられ、迷い足掻き、そしてプレアによって肯定され、自己を認められる様になった過去を持つカナードだからこそ、その言葉には冷徹なまでの説得力が宿っていた。
「さっさとこいつを黙らせて、全部終わらせるぞ、キラ!」
カナードの荒々しい激励に、キラは力強く頷く。本来ならば、このC.E.において並び立つはずのなかった、二つの「最強」。
黄金の翼を広げ、自由の象徴として輝くストライクフリーダム。
そして、紅い雷光を纏い、自らの手で運命を切り拓いたドレッドノートイータ。
二機のガンダムが、重なり合う双眸でレイのレジェンドを圧倒的な威圧感で見据える。
「……うん、行こう、兄さん!」
最強の兄弟が放つプレッシャーが、メサイアの最終防衛線を激しく震わせた。
「カナード・パルス……! お前は何故戦う!? 『スーパーコーディネイターの失敗作』として扱われ、その運命を呪っていたはずのお前が、何故今さらギルの示す平和を拒む!!」
レイはカナードに問いかける。当然デュランダルよりオーブの戦場で現れたドレッドノートイータのパイロットの存在をレイは聞かされていた。悲惨な過去を持ち、運命に呪われ、キラ・ヤマトの抹殺だけが生き甲斐だった男が何故、恨んでいるはずの男を弟と呼び、共に歩んでいるんだと。
レイの悲痛な叫びにカナードは鼻で笑い飛ばす。その瞳には一片の迷いもなく、皮肉混じりにレジェンドに肉薄しながら自身の雇い主が制作した『雷蛇』を構えて突撃する。
「失敗作? 運命? そんなカビの生えたメンデルやユーラシアのクズ共のレッテルをいつまでも、大事に抱えると思ってるのか!?俺は俺だ!誰かの台本通りに動く人形じゃねぇんだよ!」
しなやかに、かつ暴力的な軌道を描いた「雷蛇」が、レジェンドのドラグーンを次々と絡め取り、物理的な衝撃で握りつぶしていく。さらに、空いた左手でドッズライフルを構えると、高出力の回転ビームが残りのドラグーンを直線状にまとめて貫き、爆発の華を咲かせた。
「なっ……ドラグーンがこれほど容易く……!」
驚愕するレイ。ラウ・ル・クルーゼから受け継いだ空間認識能力によるオールレンジ攻撃。それを、たった一機の、それも自身と同じ「失敗作」と侮った男の力によって無力化された現実に、そのプライドは無残に打ち砕かれた。
「……これでは、これではギルに……! ならば、せめて刺し違えてでも……キラ・ヤマト、貴様だけはァッ!!」
狂乱に近い叫びを上げ、レジェンドがビームサーベルを抜き放ち、ストライクフリーダムへと特攻をかける。だが、その自暴自棄な一撃すらも、完璧な連携の前には届かない。
「逃がすかよ!」
カナードのドレッドノートイータが放った「雷蛇」が、レジェンドの右腕を絡め取り、強引にその軌道を逸らす。そこへキラのストライクフリーダムが、電光石火の速さで交差した。
「やめてくれ、レイ!!」
キラの放ったビームサーベルがレジェンドの左腕を切り飛ばし、続いてカナードのドッズライフルが精密な射撃でレジェンドの脚部を一本ずつ、丁寧に解体していく。
爆発に巻かれ、四肢を失い、ダルマ同然となったレジェンドが宇宙に漂う。それはまさに、戦闘ですらなく。C.Eが誇る二人の最強による慈悲なき解体作業であった。
「……っ、ギル……ごめんなさい……。俺はやはり……」
モニターが次々とブラックアウトしていく中、レイの力ない謝罪だけがコックピットに虚しく響く。キラは、漂うレジェンドを複雑な表情で見つめていた。
カナードの技量であれば、あの至近距離でコックピットを貫くことは容易だったはずだ。皮肉を言いながらも、彼はレイを殺さなかった。キラへの配慮か、それともユウナの演説にあった「物語を綴る」権利を、彼なりに認めたからなのか。
「……ありがとう、兄さん」
キラが通信越しにそっと告げると、カナードは鼻を鳴らし、不機嫌そうに機体をメサイアへと向けた。
「フン、勘違いするな。無駄に殺して時間を食うのが嫌だっただけだ。……行くぞ、さっさとあの元凶の顔を拝みにな!」
「……うん!」
二機のガンダムは並び立ち、光の翼とスラスターの閃光を引いて、崩壊を待つ要塞メサイアへと駆け出していく。
その背後には、動くことすら叶わず、ただ静かに「父親」への謝罪を呟き続ける少年の声だけが、冷たい宇宙に溶けていった。
・技量
今作のシンは純粋な技量であれば、序盤に一気に模擬戦などで経験値を稼げたもののオーブ戦以降は本人の気質ではない不殺などによって伸び悩み。最終的にはメンタルが終わっているので実の所アスランであれば原作以上に簡単に撃破出来ましたが……アスランの必死の説得とどこぞの無職の演説。そして、恋人の言葉によりようやく自分の手で戦いを止めることが出来ました。
レイに関しては原作以上にシンとルナが恋仲となる、ジブリール処刑などを見てしまい、キラの言葉に逆上するなど寧ろこちらは逆に強化。とはいえカナードとキラの連携の前によって撃破される事に。メサイアにたどり着く事も出来ずこのまま救援が来るまで宇宙を彷徨いながら『父親』に反省し続けているでしょう。
ハイネの技量はシン、キラ、アスラン未満とはいえ議長にデスティニーを渡される程度には強く想定的にはイザークレベル。じゃあ何故そんなハイネ相手にアカツキのババが戦えてたのかと言えば。対Gを経過する強化服によるパイロットの補助や薬物(特に興奮作用は無し)によるレッドアウト対策。プロペラントタンクの増設などと様々な理由があるとはいえ大体『忠義』です。あの世界は信念を曲げずに真っ直ぐに戦おうとするものほどなんか変なバフがありますから(特にアスランが分かりやすい)
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン