破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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最終話 泥臭い未来へ

 

 

 

 

 あれから数週間が過ぎた。

 

 

 

 戦火が収まった後の処理は、吐き気がするほど多忙だったが、俺は今、オーブではなくプラントの管理下にある特別な収容施設に足を運んでいた。

 

 

 

「……牢獄っていうから、もっとジメジメした石造りの部屋を想像してたんだけどなぁ」

 

 

 案内された面会室を見て、思わず頬を引きつらせるそこは「牢獄」という言葉が似つかわしくない、清潔で品のあるスイートルームのような場所だ。調度品は洗練され、壁際のリカーキャビネットにはワインセラーまで完備されている。てかほぼホテルじゃないか、これ。

 

 

 

 その部屋の主、ギルバート・デュランダルは、以前と変わらぬ穏やかな、しかしどこか憑き物が落ちたような表情でソファーに腰掛けていた。

 

 

 

 

 

 

「やあ、ユウナ君。わざわざこんな場所にくるとは……酔狂なことだ」

 

 

 

 案内された面会室で、デュランダルは以前と変わらぬ穏やかな、しかしどこか憑き物が落ちたような表情でソファーに腰掛けていた。

 

 

 

「酔狂で来られるほど、こっちは暇じゃないんだよ。トダカの野郎に、首根っこ掴まれて放り込まれたんだ」

 

 

 

 俺は溜息をつきながら、彼の向かいに座った。あのメサイア攻防戦の後、議長は自ら宣言した通り、一歩も動かずにキラたちの拘束を受け入れた。

 

 

 世界をプランという名の停滞に引き込もうとし、混乱を広げた責任を問われ、彼は今、国際法廷の被告人となっている。キラの顔を見る限り原作の様なやり取りはしていないらしく弁明もしなかった様だ。

 

 

 

 本人は、自らの「物語」の終着点として死刑すら覚悟しているらしい。だが、彼を失うことによるプラント内の混乱を恐れる勢力や、ジブリールの捕縛、今回の潔い降伏を評価する声もあり、その判決がどう転ぶかはまだ誰にもわからなかった。

 

 

 

「ワインでもどうだい? お気に入りの私物だ。ここでの生活は、思っていたよりも……自由でね」

 

 

 

「……結構。俺って酒を飲むと、あの演説の時の嫌な記憶――主に股間の冷たさとか――を思い出して、うなされそうなんだよ」

 

 

 俺のタメ口に、デュランダルは眉を動かすこともなく、低く、楽しそうに笑った。実際の所は酒を飲むと酔った拍子に憑依転生の事まで口走る可能性がある以上、俺は一生何があっても酒は飲まないつもりだ。この秘密は墓まで持っていくと決めている。

 

 

 

 

「君の演説は、実に……非論理的で、下俗で、それでいて強烈だった。私のプランには、君のような『不確定要素』を組み込む余地はなかった。完敗だよ、ユウナ君」

 

 

 

「完敗も何もさ。結局あんたは自分が一番プランに適合してなかったんだろ? 結局、グラディス艦長のことが忘れられなくて、心を殺そうとしたのに最後の最後にダメで……端的に言わせてもらうけどな」

 

 

 

 俺は身を乗り出し、優雅にワイングラスを傾ける「神官」を指差した。

 

 

 

 

「あんたはさ、神官になりきれなかったんだ。ただの種無し浮気チンポ野郎だったってわけだ」

 

 

 

 

 そのあまりにも身も蓋もない、そして品性の欠片もない罵倒に、デュランダルの動きが止まった。数秒の静寂の後、彼は困ったように眉を下げて、苦笑いを浮かべている。

 

 

 ザマァ見ろ。というかお前そんな顔できたのかよ……本当に神秘的というか胡散臭いというかあの独特の空気から一気に変わっちまったな。良くも悪くも。

 

 

「……ユウナ君。その言い方は、流石に私でも少し傷つくね」

 

 

「傷ついてろよ。あんたに振り回されたこっちは、心も肉体もボロボロなんだからな」

 

 

 

 俺は鼻を鳴らし、ふんぞり返った。この男がやろうとしたことは、確かに狂気だったのかもしれない。だが、独房で一人、ワインを眺めながら自分の人生という物語を振り返る彼の姿は、どこか寂しげで、同時にようやく一人の「男」に、「人間」に戻れたようにも見えた。

 

 

 まぁ俺も身体はあんな無茶な操縦をされたせいで数日入院したけどなぁ!トダカには三発、ババには二発で許したがババに関しては戦後はハイネと交流を始めたらしく、無二の親友になりそうだ。原作からすると考えられねぇな。

 

 

 

「ま、報告がてら寄ってやったんだ。俺はついさっきまで、入院したかと思えば退院した瞬間、オーブの第三者機関で閉じ込められて、ロゴスとの繋がりを徹底的に調査されてたんだよ。お陰で指の指紋がなくなるくらい書類を書かされたが、一応潔白が証明されて解放されたけどな」

 

 

 

 

  俺はわざとらしく、やれやれと首を振ってみせる。まぁ簡単に言えばウナトがスケープゴートにされたそうだ。結局アイツやその妻、つまりユウナの母親とはクーデター騒ぎの後は一度も会ってないし、今後も生涯会う予定はない。

 

 

 何かの拍子でボロが出ることを防ぐ打算ってのもあるし、息子の精神をどこぞの知らない野郎に乗っ取られているという現状への俺の罪悪感。結局俺は『ユウナ』になる事はできず『異物』のまま、この世界を生きていくことになりそうだ。

 

 

 

 

「一応釈放って形だが、もう無職だよ、無職。こんなスキャンダラスな男、どこも雇っちゃくれないだろ? 今後の就職は相当厳しいだろうな。……あーあ、実家の資産で食い繋ぐしかねぇか。あっもう実家の資産もねぇんだけどな」

 

 

 冗談めかして笑う俺に、デュランダルはどこか意外そうな、それでいて興味深そうな視線を送ってきた。

 

 

 

「ほう。……だが、私の耳に届いている噂では、君の処遇を巡って国内外から凄まじい数の陳情書が送られてきたと聞いているがね?」

 

 

「ああ、それな。カガリを筆頭に、オーブの国民やらユーラシアや東アジア一部やらから、もう笑っちゃうくらいの山が届いたらしい……で、その内容のどれもが『ユウナを代表代行に即刻復帰させろ!』だ。……本当、勝手な連中だよ。俺の平和な無職ライフを邪魔しようとしやがって」

 

 

 

 俺は大きく溜息をつき、椅子の背もたれを指で叩いた。なんで俺が全力で金や権力を捨てようとしてるのに、国側が全力でそれを阻止しようとしてるんだろうね……普通逆だろ。

 

 

 ミヤビが一筆書いただけでも驚きなのに、あのサハクからもそれとなく手紙が届いた時は、なんで!?と絶叫したのも懐かしい。

 

 

 

「ま、第三者機関の連中が、その手の『権力と民意』という名の圧力に負けずに、法に則ってちゃんと判決してくれたのが救いだよ。お陰で俺は、晴れて自由なニートになれたってわけだ」

 

 

 

 

「……君は、本当に欲がないのか、それとも途方もない野心家なのか。今の君なら、オーブの最高権力の座すら容易く手に入るだろうに」

 

 

 

 

「勘弁してくれよ。あんな命を削るような演説、二度と御免だ。俺はただ、綺麗な年上の乳のデカい姉ちゃんとイチャラブして、適当に人生を浪費したいだけなんだよ」

 

 

 具体的にはISの楯無的なユーモアもあって自分を引っ張ってくれる女性が理想だがと、内心を隠しつつそう言って笑う俺の顔を見て、デュランダルは静かに、そして少しだけ羨ましそうにワイングラスを傾けた。

 

 

「……ユウナ君、無職になった君に、一つ頼まれてほしいことがあるんだ。これは私の、最後かもしれない我儘なのだが――」

 

 

 

「断る」

 

 

 

 俺は食い気味に、そして冷淡に言い放った。デュランダルは意外そうに目をしばたたかせ、差し出そうとした言葉を飲み込む。

 

 

 

「……まだ、内容も言っていないのだがね」

 

 

 

「どうせレイや艦長の今後のことだろ? そんなもん、俺じゃなくて本人に直接言えよ。あんたがこの部屋に閉じこもって、レイやグラディス艦長の面会を頑なに拒絶し続けてんのは知ってんだよ」

 

 

 

 俺の言葉に、デュランダルは視線を落とし、琥珀色の液体を見つめている。気持ちは分からなくもないがケジメは自分の手でつけさせないとな。

 

 

 

 

「……今の私に、彼らと合わせる顔などない。私は彼らの物語を奪い、都合の良い歯車にしようとしたのだから」

 

 

 

「ハッ、何が『合わせる顔がない』だ。散々、未亡人のグラディス艦長に手を出しておいて、今更何をカッコつけてんだよ。あんたはもう、やりたいことは全部やったんだろ? だったら最後くらい、その身勝手な愛を本人にぶつけてこいよ。男だろ?」

 

 

 

 鼻で笑いながら投げかけた俺の言葉。だが、それを聞いたデュランダルの顔から、余裕の笑みが完全に消えた。

 

 

 

 彼はワイングラスを握る手を止め、信じられないものを見るような目で俺を凝視した。

 

 

 

 

「……今、何と言ったかね? ユウナ君」

 

 

 

 

「あ? だから、未亡人の艦長に手を出しておいて――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タリアが……未亡人だと……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デュランダルは、まるで作戦室に核弾頭が撃ち込まれたかのような驚愕の表情を浮かべ、椅子から立ち上がった。その拍子に、高級そうなソファーが不快な音を立てる。

 

 

「……え、何その顔。……まさか、知らなかったのか? 彼女、あんたと別れた後、別の男と結婚して、旦那を亡くして、今は一人息子を育ててるシングルマザーだぞ」

 

 

 

 

 デュランダルは、まるで地面が消えて奈落に落ちていくような顔をして、震える手で頭を押さえた。神官のような冷静沈着さはどこへやら、そこにはただ、元カノの衝撃的な近況を今さら知らされた「情けない男」が一人。

 

 

 

「お前……マジか……」

 

 

 

 俺は、呆れを通り越して戦慄した。

 

 

 

 デスティニープランなんて全人類の適性を把握しようとした男が、一番大事な女の家庭環境すら把握してなかったのかよ。

 

 

 

 

(そういや、元々の歴史――俺がいた世界の知識だと、タリアがメサイアで死んだ後、息子のウィリアム君は副長のアーサーに引き取られるんだったな。既に父親も祖父母も亡くしていて、あの子は一人ぼっちになるはずだった……。つまりだ。)

 

 

 

 

「あんた……グラディス艦長が既に夫を亡くして未亡人になってることすら知らずに肉体関係続けてたのか? その上で未練たらたらに、挙句の果てに『遺伝子がー』とか言って世界を巻き込んだのかよ……お前…マジか…?」

 

 

 

 俺の言葉が、デュランダルの心臓を直接突き刺したようだった。確かにネタで浮気チンポ野郎とは言いまくったが、それにしたって未亡人に手を出す生々しさへの嫌悪感やら、語感の良さで浮気扱いしていたが……実際にはウィリアム君の内面を別にすればセフレの様な関係だったろうに。

 

 

 彼はガタガタと震える手で、空になったワイングラスを握りしめている。ミネルバの艦長をしてる以上、議長はグラディス艦長のプロフィールにも目を通してたと思ったが……既に知っているからとスルーしたのか、それともミネルバが各地で転戦していたせいで艦長も自身のプロフィールの更新をしている暇がなかったのか。

 

 

 ……まさか最後の最後にあのデュランダルとタリアの現場猫案件が見られるとは思わなかった。ある意味で生き延びてよかったと思える瞬間だ。

 

 

 

 

「タリアが、独りだと……? 夫を亡くし、子供を抱えて……。私は……私は、彼女には守るべき『家庭』という名の幸福が既にあると、そう思い込んで……。いや、そう思い込むことで、略奪する罪悪感から逃げ、プランの正当性を自分に言い聞かせていたのか……?」

 

 

 

「勝手に悲劇のヒーローやってんじゃねぇよ。あんたが『俺たちは遺伝子的に無理なんだ』ってメソメソしてる間、彼女は現実の荒波の中で必死に子供育ててたんだぜ? 挙句の果てに、あんたが始めたこの戦争のせいで、彼女はまた息子を一人ぼっちにさせるところだったんだ。……副長のアーサーが後見人になるのを見たいのか? あ?」

 

 

 

 それはそれで、アーサーなら良い父親になれそうだけどな。個人的にはこの世界であれだけの善性をもってるあいつはある意味では尊敬に値するからな。

 

 

 デュランダルの顔色は、もはや青白いを通り越して土気色だ。

 

 

 

 全人類の「運命」を決定づけようとした男が、最愛の女性の「現在」という最も重要なデータを見落としていた。それも、恐らく。無意識に自分を正当化するために。

 

 

 

「……私は、何という……。なんて、度し難い愚か者だったんだ……」

 

 

 

 震える声で呟き、デュランダルは力なくソファーに崩れ落ちた。全人類の適性を統べる「デスティニープラン」の提唱者が、自分の愛した女の戸籍抄本一枚を正確に把握できていなかったという事実。

 

 

 それは彼が積み上げてきた論理の城を、根底から腐らせるに十分な衝撃だった。

 

 

 

「その……なんだ? 頼む、ユウナ君……。この面会が終わったら、真っ先にグラディス艦長と……タリアとレイに、面会させてほしい。今すぐに、私の手で……」

 

 

 

「わかった、わかったから! そんな捨てられた子犬みたいな顔すんなって!」

 

 

 

 

 流石にここまでメンタルがボロボロになった彼を見ると、少しだけ可哀想になってきた。とはいえ正直、彼女が未亡人だと知っていたからといって、この男がプランを止めたかは怪しい。

 

 

 自分の弱さを正当化するために、より強固な絶望を欲したかもしれないからだ。だが、憑き物が落ちた今の彼にとって、それは「取り返しのつかない取りこぼし」として、あまりにも重くのしかかっているようだった。

 

 

 それはそれで彼にとっては生きる別の意味での目的ができるのだから悪くはないのかもしれないな。うん。

 

 

 

 その後、俺たちはしばらく話し合う事になる。いや、帰ってもよかったけど!!こんな調子のデュランダルを放っておける訳ねぇもん!なんで俺は自分を殺しかけたラスボス相手に気を遣ってんだ…?

 

 

 

「レイはどうするつもりかね?」

 

 

「あいつはMSの操縦しか取り柄がないって言ってたから。そのままパイロットを続けるらしいぜ。ただし、もう誰かの身代わりじゃなく、自分の意志で、だ」

 

 

 

「そうか……。シンとルナマリアは?」

 

 

 

「あいつらなら近々籍を入れるらしいぞ。戦後の混乱で式どころじゃないだろうけど、幸せそうにやってるよ」

 

 

 

「……ミーアはどうした。君に全てを任せたがまさか……」

 

 

 

 

「下世話な事はしてねぇよ!アイツなら今は療養してるが、ラクスのカバー歌手になる為の下準備で頑張ってるよ。もちろん批判も多いだろうが……あの子なりに決めた道なんだ。曲ができたら今度お前も聞いてやれよ」

 

 

 

 

 俺が語る「プランのない世界の、なんてことない日常」の話を、デュランダルは一言も漏らさぬよう、噛みしめるように聞いていた。その横顔は、もはや野望に燃える政治家ではなく、ただ知人に近況を尋ねる隠居した男のようでもあった。

 

 

 

 

 

 

面会時間の終了を告げるアラートが小さく鳴る。そろそろかと俺は椅子から立ち上がり、ジャケットの埃を払った。

 

 

 

「じゃあな、元議長。次は死刑台じゃなくて、せめて面会室越しでまた会えるといいな」

 

 

 

 扉に向かって歩き出し、俺はふと足を止めた。しかし、背を向けたまま、俺は何かを思い出したように、喉元まで出かかった「ある言葉」を口にしようとして――。

 

 

 

「……あ、そうだ。最後に一つ、聞かなきゃいけないことがあったんだ」

 

 

 俺は扉に手をかけたまま、振り返った。

 

 

 

「なんでニュートロンスタンピーダーを使わなかったんだ? あれさえぶっ放してりゃ、核エンジン積んでるキラもアスランもカナードも、まとめて爆死してたはずだ。その後でデスティニーとレジェンドを起動してりゃ、今頃この汚いベッドで寝てるのは俺の方だったんじゃねぇのか?」

 

 

 

 内心では(いや、その展開なら俺はハイネに真っ二つにされてたろうけど)と思いつつも、そこがずっと引っかかっていた。

 

 

 

 史実と違い、今回はカナードの狙撃やジュール隊の獅子奮迅の活躍で、核攻撃隊「クルセイダーズ」はプラントを焼く前に壊滅した。つまり、プラント側には対核兵器用のニュートロンスタンピーダーがほぼ無傷で、しかもフルセットで温存されていたはずなんだ。メサイアにもそのための機材は搬入されていた。

 

 

 

 

 なのに、あんたは最後まであれを使わなかった。

 

 

 

 

 デュランダルは、空になったグラスを机に置き、穏やかに、だがどこか誇らしげに目を細めた。

 

 

 

「そのことか。……確かに、あれを起動していれば、私の勝利は確定していたかもしれない。だがね、ユウナ君。それをやるのは『フェア』ではないと思ったのだよ」

 

 

 

「はぁ? フェア? どの口が言ってんだよ」

 

 

 

「君にだよ、ユウナ君。君は私があの『写真』をばら撒いた時も。反ロゴス連合としてオーブを叩いた後も……アスランが持ち出したデスティニープランのデータを公開して世論を煽ることもなかった。それに、君が保護したミーアと本物のラクス・クラインを並べて『ミーアは議長の放った影武者だ!』と大々的に暴露することもしなかっただろう?」

 

 

 

 デュランダルは立ち上がり、ゆっくりと俺の方へ歩み寄ってきた。

 

 

 

 

「君は、私が用意した謀略の土俵には乗らなかった。あくまで『人間としての言葉』で、真っ向から私の理想を否定しに来た。ならば、私もまた、絡め手ではなく、私が信じる最高の力――二つのデスティニーとレジェンドという『翼』で、君たちの意志に応えねばならないと思ったのだ。最後の最後でね」

 

 

 

 

「……バカじゃねぇの。散々好き放題して、大西洋連邦やザフトの兵士を盾にして……戦争にフェアもクソもあるかよ」

 

 

「最初に私に後ろから味方を撃つなと言ったのは君の方だろう?その通りにレクイエムもネオ・ジェネシスもどちらも友軍を撃つ事は最後までしなかった」

 

 

 

「……そうだったな。お陰でアンタの裁判で有利に働きそうなんだから俺に感謝しろよ。ギルバート」

 

 

 

「あぁ…感謝するよユウナ君。お陰でレイ達と会う決心もついた」

 

 

 

 満足気なデュランダルに俺は思わず悪態をついたが、胸の奥が少しだけ熱くなるのを感じた。思う所はある、きっと、この男は許されてはいけない男なんだろう。怨嗟を受けるべき悪人なのだろう。

 

 

 しかし、彼は「神官」であろうとする中で役割を全うし、最後の最後で友軍殺しという最悪の行為を行わなかった。原作と違い最後の一線だけは越える事が無かったのは喜ばしい事だと思っておこうかね。

 

 

 

「……ま、お陰で俺の首は繋がったよ。じゃあな、議長。次は……そうだな、タリア艦長とウィリアム君と、三人でピクニックにでも行けるように、精々いい弁護士でも雇うんだな」

 

 

 

 

 俺は今度こそ、振り返らずに部屋を出た。重厚な電子ロックが閉まる音。その向こうで、かつて世界を支配しようとした男が、どんな顔で笑っているのか。それを確かめる必要は、もうなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウ……君は私をどう思う?君への土産話を増やすために、もう少しだけ生き続けてみるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーブの穏やかな波音が、足元を優しく洗う。俺は浜辺の砂の上に座り込み、沈みゆく夕日をただ眺めていた。

 

 

 

 

「……生き延びた。本当に、生き延びちまったんだな、俺」

 

 

 

 

 ユウナ・ロマ・セイランという、本来なら無様にグフに踏み潰されて終わるはずだった男の体に憑依してからそろそろ一年だろうか。

 

 

 

 

 

 あの凄惨な最期だけは御免だと、無様に足掻いて、泣いて、恥をさらして。挙句の果てに宇宙でしょんべん漏らして絶叫マシーンに揺られて。

 

 

 

 結果、地位も名誉も、セイラン家の莫大な資産も綺麗さっぱり消えてなくなった。

 

 

 だが、それでも。

 

 

 

「……命だけは、残ったからな」

 

 

 

 それで十分だ。俺はあらかじめ、トダカの野郎にこっそり頼んでおいたんだ。スカンジナビアへの旅券と、新しい戸籍の手配を。

 

 

 

 これからは顔でもちょいと整形して、誰も俺を知らない北の国で、別人として静かに、ダラダラと余生を送る。それこそが俺が望んだ「物語」の終着駅だ。

 

 

 

 正直な話もっと償いもするべきだとは考えていたが……これ以上、俺がオーブにいる事自体が混乱を招くと理解している。出来ることやすべき事はこの数週間で可能な限りは全て終えたし、ちゃんと全員に報告もしている。

 

 

 そもそも地位もないのにオーブ防衛戦からここまでノンストップに突っ走っていた事がおかしかったんだ。カナードにも手紙は書いておいた。そんで自分はいなくなればおれの奇妙な物語は完結だ。

 

 

 トダカとババを数発ぶん殴って二人揃って独房で反省させ、今後のドッズライフルの対策の青写真もいくつか提案できた。あとは、迎えの船に乗るだけ――そう思って立ち上がった瞬間、懐の端末がけたたましく鳴り響いた。

 

 

 

 

 画面には「カガリ・ユラ・アスハ」の文字。嫌な予感がするから無視してもいいかなぁ!?

 

 

 

「……げっ。……いや、無視だ。俺はもう死んだも同然なんだよ」

 

 

 

 だが、最新鋭端末は空気を読まずに自動でホログラムを展開しやがった。映し出されたカガリは、なんだか見たこともないほどキリッとした表情で、とんでもないことを口走りはじめる。

 

 

 

「……は? 世界平和監視機構……コンパス(C.O.M.P.S.)? なんだよそれ、コンパスって。文房具の親戚か何かか?」

 

 

 

 キラやラクスが中心になって、国家間の紛争を武力で即時鎮圧する超国家的組織を作る?いやちょっと待てや!そんな国家単位のソレスタルビーイングじみた事してもいいのか!?

 

 

 そんな不穏な組織なんぞ絶対に関わりたくねぇよ!?ましてやカナードまで参加するって……キラとカナードがあの連携で暴れ回る組織なんて、地獄の特等席じゃねぇか!!

 

 

 

 だが、カガリの言葉は止まらない。熱のこもった表情でマシンガンの様に言葉を乱射する。おかしい、カガリには真っ先に退職届や今後についての相談もしたし、その時はカガリは納得してる様にみえたんだけどなぁ!!

 

 

 

 曰く、ラクス・クラインが総裁に就任する。そして、政治的実務と各国の調整を担う「副総裁」のポストには、あのメサイアで世界を黙らせた「言葉の力」を持つ男が必要だ、と。

 

 

 

「いや待て! 待て待て待て! !?副総裁!? なんで俺なんだよ! 俺は今から亡命して、可愛い女の子と付き合ってベリーでも食べながらトナカイと戯れて北欧で余生を……!」

 

 

 

 

 しかし、カガリは俺の叫びを完全にスルーした。なんなら後ろでアスランも腕を組んで後方保護者面してるのが腹立つ…!

 

 

『詳細はトダカから聞け。今後は宣伝のためにまたババと複座で戦場を渡り歩く事になるかもしれないが……期待しているぞ、セイラン副総裁』

 

 

 なんて自分勝手にそれだけ言い残して、通信は一方的に切断された。待てや!!本人の意思とか第三者機関の調査の後裁きを受けた後、そんな地位になったら世間から大ブーイングに決まってんだろ!!!というかババも来るんですかぁ!?

 

 

「……話を聞けよぉぉぉ!! 誰が副総裁だ! 誰がまた戦火の真ん中に行くって言ったんだよ!!」

 

 

 

 

 俺は砂浜に端末を叩きつけようとして、その値段の高さゆえに思いとどまりつつ頭を抱えた。それこそ転生した直後以上になぁ!!!

 

 

 

 世界を救った英雄?獅子の意思を継いだ男? ふざけるな!!俺はただ、静かに、安らかに、働かずに寝ていたいだけなんだ!!!!

 

 

 

 

「俺を!!いい加減!!休ませろやぁぁぁぁぁ!!! 畜生がよぉぉぉ!!!俺の平和はどこにあるんだよぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 夕日に向かって吠える俺の背後に忍びよる影、頬が少し(物理的に)赤くなっているトダカ一佐と、あのクソボケウォーモンガーなババがこれ以上ないほど「良い笑顔」で立っていた。

 

 

 

「……ユウナ様。迎えが来ましたぞ。……『コンパス』へ」

 

 

 

「オーブ軍を除隊してスカウトされました……これからも貴方様に忠義を尽くさせて頂きます!!」

 

 

 

「来るな! 寄るな! !カナードォォォォ!!助けてくれぇぇぇ!!!

 

 

 

 

 

 俺の二度目の人生、どうやら平穏への道のりは、まだ光年単位で遠いようだった。

 

 

 






 議長に投げつけられた最後の最後の爆弾。実は議長目線ではタリアが未亡人であると確定したような描写もなく。タリアがわざわざそんな事を言う必要もないか議長なら知ってるだろと思ってしまい。

 最後の最後に議長が現場猫に全力でぶん殴られる結果となるのでした。とはいえあくまでユウナ達の影響によって憑き物が落ちてしまった結果クリティカルヒットしましたのでアニメ本編では知った所で止まらないはずですが。


 というわけで三週間以上に渡って続いた本作はこれでお終いです!読者の皆様への多大なる感謝と共に今までお疲れ様でした!!


 となるはずも無く、次回からは劇場版SEED編が始まります。とはいえこちらと違い本格的なプロットは完成しておらず、そもそも劇場版SEED編と名乗りつつも、カナード辺りとイチャコラしながら途中に離脱して色々別口からお仕事をするのでアコード達との絡みなどもかなり少なくなると思いますが……それでも構わなければお付き合いして頂けると幸いです。

 流石に食事も睡眠も削りまくったこちらと違って、アズレン側の連載と並行したりして、投稿スピードはかなりゆったりとなりますのでご了承下さいませ。戦後のオーブのコンパス設立前のパートを中心とした短編集を投稿させて頂きます。気長にお待ちください。

 戦後のコンパスに参加するシンとルナマリアについて。

  • 原作通り二人参加
  • 婿養子になりシン・ホークとなって参加
  • ルナマリアが妊娠して除隊しハイネが参加
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