破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
ストックしていた後日談の1話が完成したので初投稿です。
第一話 舞い降りた剣のその後
「……ねぇ、エリカさん。本気で言ってる?」
俺はオーブ・モルゲンレーテ社の地下深く、巨大な格納庫を見上げて呆然と立ち尽くしていた。目の前には、あの何度もテレビで見返した「舞い降りる剣」だ。
史実なら、シンのインパルスにバラバラにされて、湖の底に沈んでたはずの機体であったが、エンジェルダウン作戦でバラバラにもならず、ピカピカの状態で温存されてしまったフリーダムが鎮座していた。
「本気も何も、ユウナ様。この機体の処遇を最終的に決定していただきたいのです。これは現在、オーブにとっても、そして設立準備中の『コンパス』にとっても、非常に扱いの難しい『遺物』なのですから」
エリカ・シモンズがタブレットを片手に、事務的に、だが逃げ場を塞ぐような手際で俺を追い詰める。
「処遇ねぇ……。正直に言うとさ、俺、メサイア攻防戦の時にこれの『使い道』、もう一つ考えてたんだよね」
俺はかつてキラ・ヤマトが座ったコックピットを見上げて、小さく息を吐いた。
「もし、サーペントテールによるネオ・ジェネシスの妨害工作が失敗してたらさ。最悪、キラやカナードたちエース部隊で無理やり道をこじ開けて、第1次大戦のジャスティスみたいに、こいつをメサイアの心臓部で自爆させて無力化する……なんて副案も頭をよぎったんだ」
「自爆、ですか。この機体を?」
「ああ。そうすりゃ、ヤバい核エンジン搭載機を処分できて、おまけにメサイアも黙らせられる。一石二鳥だろ? でも、結果的にサーペントテールの連中が完璧に仕事してくれたおかげで、そんな野蛮な作戦を実行せずに済んじまった」
平和を願って介入したはずなのに、そのせいで「爆破処理されるはずだった核の塊」が手元に残るなんて、皮肉な話だ。
「……で、残っちゃったわけだ。爆発もせず、撃墜もされず。どうするのさ、これ」
俺は額を押さえて、目の前の巨大な「政治的火種」を見上げた。オーブは現在、ユニウス条約の締結国ではない。
だから法的にどうこう言われる筋合いはないんだが、だからといってNJC搭載機を堂々と振り回せば、プラントや大西洋連邦といった周辺諸国を激しく刺激するのは目に見えている。
「ただでさえ設立準備中の『コンパス』じゃ、平時のNJC機体の運用は見送る方向で調整してるんだぞ。そんな中で、この核エンジンの塊をどこに置けってんだよ。居場所がないんだよ、こいつには」
エリカさんは、困ったように肩をすくめる。
「そう。解体してしまえば楽なのですが……キラ様にはお話を?」
「聞いたよ。あいつ、自分の愛機がバラバラにされるかもしれないって聞いて、ものすごく悲しそうな顔してたぜ。捨てられた子犬みたいな目でさ……」
脳裏に、さっきのキラの顔が浮かぶ。残ったフリーダムの処遇について相談した所、彼は寂しげに微笑んで、こう言ったんだ。
『……そうですね……もうフリーダムも戦う必要はない。ユウナさんにお任せします。あなたが決めたことなら、僕は信じますから』
「……信頼の重さがエグいんだよ! あのキラ・ヤマトに『お任せします』なんて言われて、はいそうですか、スクラップです、なんて言えるわけないだろ!」
俺は八つ当たり気味に叫んだ。これがただの兵器なら、合理的に判断して終わりだ。だが、この機体は俺が「本来の運命」を捻じ曲げて守ってしまった、いわば俺の足掻きの証でもある。
何よりガンダム好きとしてはやはり何度も脳を焼かれたこの機体をただスクラップにするのは余りにも惜しい。
「信頼、ね。……それで、どうされるのです? 放置すれば維持費でオーブの予算がガリガリ削られ、解体すれば英雄の心を折り、隠し持てば国際問題となるこの機体を」
エリカさんは愉しげに、俺に最後通牒を突きつける。
「……何かこう、いい感じに平和利用できないもんかね。この無駄に余ってる高出力をさ」
俺は腕を組んで、フリーダムの巨大な脚部を見上げる。たとえばリビルドみたいに、大型の工具やクレーンをごちゃごちゃ付けて「災害復興用MS」に改造する……なんて案も一瞬浮かんだが、即座に自分で却下した。
「復興用にするにしても、やっぱり核エンジンがネックだよなぁ。瓦礫を撤去してる現場で『万が一の放射線漏れ』なんて噂が立ったら、復興どころかパニックだろ。第一、そんな繊細な作業にあんな高機動スラスターはいらないし」
「そうですね。オーブの技術力のアピールにはなりますが、作業現場に核エンジンを持ち込むのは、コストもリスクも釣り合いません」
エリカさんは冷静に俺の妄想を切り捨てる。
「じゃあ、いっそ博物館送りか? 『世界を救った自由の翼、ここに眠る』的な。平和の象徴として展示するだけなら、中身を抜いて抜け殻にすればいいし、一番角が立たない」
そう口にしてみたが、胸の奥に妙な引っかかりが残る。
あのキラ・ヤマトが、すべてを任せると言ってくれた機体だ。それをただの「置物」にして、マニアがかしゃかしゃとカメラを回す姿を眺めるのが、本当に正解なのか?
「……博物館ね。それも一つの手ですが、ユウナ様。この機体は、まだ『死んで』はいませんわ。OSも動力も、いつでも空に舞い上がれる状態で維持されています。それをただの標本にするのは、技術者としても、そしてあのパイロットの友人としても、少々忍びないとは思いませんこと?」
「……それを言うなよ。俺だって、あいつの悲しそうな顔を思い出すと胃が痛いんだから」
俺はふぅ、と長い溜息を吐いた。平和利用。核動力。キラの信頼。国際問題。
それらすべてを解決しつつ、この「自由」に新しい居場所をやる方法。
「……ねぇ、エリカさん。これさ、『発電機』にできない?」
「は? 発電機、ですか?」
「そう。オーブの秘密ドックの奥底で、有事の際の予備電力供給源として居座らせるんだ。普段はコンパスのシミュレーターや、このモルゲンレーテの施設の電力をこっそり賄う。名目は『高出力MSを用いた大規模施設へのエネルギー供給実験』。……これなら動力が核である正当な理由になるし、表立って空を飛ばなきゃ周辺諸国も文句は言いにくいだろ?」
俺は自分でも「なんてセコい再利用だ」と思いつつ、ニヤリと笑った。
「で、万が一の時は、キラが飛び乗ってそのまま戦える。普段はインフラ、有事は守護神。……これぞ『平和のための自由』ってやつじゃない?」
俺は自分でも「名案すぎるだろ」と確信し、最高に決まったドヤ顔でニヤリと笑ってみせた。これならエリカさんも「流石はユウナ様!」と膝を打つはず――。
「却下ですわ」
「……はい?」
エリカさんは眉ひとつ動かさず、冷淡に、かつ即座にグフの四肢換装システムの時の様に切り捨てた。
「え、なんで? 核エンジンの平和利用だよ?究極のエコじゃん」
「ユウナ様。その『高出力MSを用いた拠点への電力供給案』ですが……現在、ストライクフリーダムが実質的にその役割を担っておりますから」
「えっ!? ストフリ、もう発電機になってんの!?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。キラの最新鋭機、あの最強のガンダムが、今この瞬間もコンパス準備室かどこかの電子レンジやエアコンの電力を支えてるってのか?
「ええ。オーブの極秘ドックの電力系統に接続済みですわ。……それだけではありません。インパルス、デスティニー、さらにはレジェンドも、我が社で極秘裏に回収し、接続を完了しております」
「おい待てぇぇぇ!! 報連相はどうなってんだ、報連相は!?」
俺は格納庫に響き渡る声でツッコんだ。
「レジェンドも!? メサイアでボロボロになったはずのやつらを回収したのか? 誰が許可したんだよ、そんな国際問題の火種を!」
「ユウナ様が『後のことは任せる』とおっしゃったではありませんか。ですので、モルゲンレーテの研究用兼、将来的なコンパスの戦力拡充のための『技術実証機』として、地下で修復を進めておりますの。もちろん、表向きは『廃棄済み』ですわ」
エリカさんは、まるでおやつを買ってきた程度の気軽さで、とんでもない軍機密をさらけ出した。
「お前……マジか……。じゃあ何、この地下には今、前大戦の主役機たちが勢揃いして、仲良くオーブの電気代を浮かせるためにコンセントに繋がれてるってわけ?」
「左様です。ですから、今さらフリーダム一機が増えたところで、電力供給過多になるだけですわ。もっと別の、独創的な『居場所』を考えていただかないと」
俺は膝から崩れ落ちそうになった。俺が「どうしよう、どうしよう」と胃を痛めていた裏で、この技術者たちは着々と「ガンダム発電所」を建設していたのだ。
というかよくこれプラントに怒られねぇな!?浮気チンポ野郎なら嬉々として開戦理由にしかねないだろうに…!
「……トダカの野郎も知ってんのか、これ」
「ええ。一佐からは『副総裁にバレたらうるさいから、形になるまで黙っておこう』と。何でもかんでもあの人は全部任せるといってるせいでそれなら好きにしてもいいと」
「あの脳筋軍人ぉぉぉ!! 信頼っていうのはな! 隠し事がないことを言うんだよ!!」
俺は、ピカピカのフリーダムを見上げた。こいつも近いうちに、デスティニーたちの隣で「コンパス館・第4発電機」として登録される運命なのだろうか。
……いや、待てよ。それならいっそ、この地下を「最強のガンダムが動かすテーマパーク」にでもした方が、まだ建設的じゃないか?
「……で、エリカさん。その『ガンダム発電所計画』、誰が許可したんだよ。責任者の顔が見てみたいね」
俺が死んだ魚のような目で問い詰めると、エリカさんは平然とタブレットをスワイプしている。この野郎若干面倒くさくなってきたな?
「デスティニーやレジェンドの回収・保管に関しては、カガリ様を含めた閣僚や将校の上層部ではすでに承認済みです。ご安心ください」
「報連相がちゃんとしているなぁ!!?俺に報告届いてない所を除いてだけどなぁ!!!!」
俺は格納庫に響き渡る声でツッコんだ。なんなんだよ、この疎外感。俺、一応この国の代表代行(だった男)で、次期コンパス副総裁候補だぞ?
国際問題になりそうな極秘事項が、俺の知らないところで「ご安心ください」の一言で片付いてるってどういうことだ。
「プラント側はどうしたんだよ! 自分の国の最新鋭機が、勝手に隣国のコンセントに繋がれてるんだぞ。キレて第二、第三のメサイアがジェネシス片手に飛んできたらどうすんだ!」
「それに関しては、カガリ様たちがすでにプラントに釘を刺してありますわ。『オーブ侵攻やデスティニープランの強行で、どれだけ我が国に迷惑をかけたと思っているのか』と。……そう指摘されたら、あちらも黙認せざるを得なかったようですわね。先の終戦交渉でプラントからの賠償金が『程々』で済んだのも、このあたりの機体譲渡も含めた相当な裏取引があったからですし」
「……も?もってお前…俺がロゴス関係で第三者機関に缶詰めになって、指紋が消えるまで書類に判子押させられてる間に、あんたらいったい何してんの……?」
俺はがっくりと膝をついた。俺が「法律だ、第三者機関だ、潔白の証明だ」と真面目に物理的に濡れたズボンを履き替えながら頑張っていた裏で、カガリやトダカ一佐たちは、プラントを相手に「迷惑料としてそのガンダム置いてけ泥棒」という、実にオーブらしい強気な外交を展開していたわけだ。
カガリがなんか覚醒とか一皮剥けた所の騒ぎじゃなくなってない?いきなりワープ進化してるじゃねぇか。お父様の裏切り者って叫んでたあの姿を返せや!
「お疲れのようですわね、ユウナ様。ですが、これで話は早いですわ。ストフリが発電機、デスティニーとレジェンドが予備電源。……さて、このフリーダム〜どういたしましょう? まさか『第4発電機』にするほど、我が社も電力には困っておりませんの」
エリカさんの視線が、再び俺を刺す。周りは全員知っていて、俺だけが知らなかった「ガンダムの再就職先」。
このピカピカの自由だけが、履歴書を握りしめたまま、採用合否を待つ新卒のような顔で俺を見ている。
「……はぁ。どいつもこいつも、俺をのけ者にしてガンダムの有効活用に勤しみやがって」
俺は額を指で揉みほぐしながら、唸った。エリカさんの「広報用」という案も悪くない。だが、俺の「ユウナ・ロマ・セイラン」としての歪んだ政治脳が、もっと別の、ドス黒い活用法を囁き始める。
「……ねぇ、エリカさん。さっきの救助用だの云々ってのは一旦置いといてだ。他にもいくつか『居場所』を考えてみたんだけど」
「伺いましょう」
俺はフリーダムの翼を指差した。クソっやっぱカッコいいなぁ…!
「一つ目は……さっきも言ったけど、こいつを『動く自爆装置』として保持し続けることだ。実質的な核兵器だよ。オーブのドックには、いつでもどこへでも飛ばせて、拠点を吹き飛ばせる『自由』という名の核弾頭が眠っている。……この事実そのものが、周辺諸国に対する最大級の抑止力になる。使わないに越したことはないが、持っているだけで意味があるやつだ」
エリカさんは表情を変えない。政治的には極めて正しい、だが最も血なまぐさい案だ。まぁこの世界は既に核による抑止力はほぼ崩壊しているんだけどな。
「二つ目は、こいつのNJCと高出力を活かして、『巨大砲台のコア』にすることだ。ミーティアなんてレベルじゃなく、フリーダムを砲座に固定して、そのエネルギーを全部一つの砲身に回す。ジェネシスやレクイエムほどじゃなくても、並の要塞なら一撃で沈める超長距離砲台の心臓部。……これならモビルスーツとして運用しなくていいから、パイロットを危険に晒すこともない。どうだ?」
我ながら、救助用なんて抜かしてたさっきの自分はどこへ行ったんだと言いたくなるような、物騒な代案だ。
核兵器として温存するか、固定砲台の電池にするか「自由」という名を冠した機体を、最も不自由な方法で縛り付ける選択。
「……どちらも、ユウナ様らしい毒が含まれていますわね。リビルドの開発の際にOSを弄って戦闘用に出来ると言ってたのを思い出します」
エリカさんがタブレットを操作しながら、冷ややかに、だが期待を込めたような視線で俺を見る。確かミヤビとエリカさんにそのことを伝えた時はゴミを見る様な目でドン引きしてたな…。
とは言えリビルドは全世界に派遣されているが、あれを全て回収してドッズライフルを持たせれば、それだけでザムザザー程度なら一瞬で火だるまになる戦力が完成する。リビルドを現在でも全世界に新型を送り続けているのはそんな裏事情もあったりするんだ。
「兵器として飼い殺すか、あるいはさっき言ったように『救急車』として看板にするか……。あーあ、どっちにしても、これをキラが見たら『ユウナさん、それはちょっと……』って、あの困ったような、でも真っ直ぐな目で俺を見てくるんだろうなぁ」
脳裏に浮かぶのは、アスランの説教でもカガリの怒鳴り声でもない、ただ、自分を信じると言ってくれたキラの顔だった。
自分に全幅の信頼を寄せてくれてるという事実は嬉しいがやはり重いな…。とはいえあの目で見られるとなんとかしてやりたい!って気持ちになるんだから不思議なもんだ。
「……くっ、あいつの信頼が一番の重石だよ。エリカさん、やっぱり俺、もう一度考え直していい? 英雄の愛機を、核弾頭とか電池にするのは、俺のメンタルが持たないわ」
俺は情けなく、巨大な足元に手をついて項垂れた。この「自由」をどうするか。俺が守っちまった「運命」のツケは、あまりにも重くて、あまりにもややこしい。
……いや、待てよ。なんで俺がこんなに必死になって「再就職先」を探してやらなきゃいけないんだ?
俺は「中身」はただの一般人なんだぞ。国家の最終兵器の処遇なんて、もっとこう、専門家に丸投げすべき案件じゃないか?
「……よし! 決めた! エリカさん、俺、もう丸投げするわ!」
俺はパンッと手を叩いて立ち上がった。
「丸投げ、ですか? あれほど悩み抜いておいて?」
「そうだよ。餅は餅屋、核動力は核動力屋だ。エリカさん、今すぐD.S.S.D(深宇宙探査開発機構)に連絡してくれ。『フリーダム、一機要りませんか?』ってな」
エリカさんは少し驚いたように目を見開いた。
「D.S.S.D……。確かにあそこなら、既にヴォワチュール・リュミエールだかの実験機……スターゲイザーとかいう核動力機の運用ノウハウは持っているはずですけれど」
「だろ? あいつら、軍だの政治だのの枠組みから外れて、ひたすら宇宙の果てを目指してる変態……いや、探究者の集まりだ。このフリーダムの過剰な推力も、高出力の核エンジンも、宇宙探査やデブリ回収の母機としてなら『最高のスペック』に化けるはずだ」
俺は調子に乗って指を立てた。
「プラントも大西洋連邦も、D.S.S.Dに寄贈するって言えば、表立って軍事利用を疑いにくい。それに、あそこならキラの『平和のために使ってほしい』って願いも、一番純粋な形で叶えられるだろ? 火星だの木星だのの調査に使われるなら、こいつも本望だろうよ」
「……なるほど。オーブの手元に置いておくから火種になる。ならば、中立な研究機関に『平和利用のサンプル』として放り出す、というわけですわね」
エリカさんは感心したように頷き、手元の端末にメモを走らせた。やっとタブレットからこちらを見てくれる様になったが、その目は爛々と輝いている。
「いいですわね。D.S.S.Dなら、NJCの技術も、未知の領域の探査に役立てると喜ぶでしょう。……ふふ、まさか戦争を止めた剣が一気に宇宙探査機への転身とは」
「だろ? これで俺の肩の荷も下りるってもんだ。……あー、せいせいした。これで心置きなく休暇を…」
「あ、ユウナ様。D.S.S.Dへの寄贈に伴う、国際的な技術供与の手続きと、プラントへの説明書類。……副総裁候補として、すべて目を通しておいてくださいね。明日までに」
「……結局仕事が増えてんじゃねぇかぁぁぁ!! 誰だ丸投げしたって言ったやつ! 俺だよ!! 畜生ぉぉぉ!!」
俺の絶叫が、今度こそ地下格納庫の隅々まで響き渡った。
フリーダムのカメラアイが、心なしか「頑張れよ」と笑っているように見えたのは、きっと疲れのせいだと思いたい。
書類の山と格闘し、エリカさんとの「ガンダム発電所問答」でボロボロになった俺は、その足でキラの元へ向かう。
オーブのどこまでも青い空の下、キラは穏やかな顔で海を眺めていた。これからまた新しい戦い――「コンパス」という名の平和への挑戦――に身を投じる男の背中にしては、どこかあどけなさすら残っている。
「キラ君……フリーダムの就職先、決まったぞ」
俺が声をかけると、キラは少し驚いたように、そして少し不安そうに振り返った。
「ユウナさん。……それで、あの子はどうなるんですか? やっぱり、解体されることに……?」
「バカ言え。俺がそんなもったいないことするかよ」
俺は隣に並び、彼と同じ海を見つめた。あの子ねぇ……そりゃキラからしたらラクスに託された剣。嫌な思い出もあるだろうがそれ以上に戦場を駆け抜けた相棒扱いにもなるんだろう。ピカチュウとサトシみたいな信頼関係がな。
「D.S.S.D(深宇宙探査開発機構)に寄贈することにした。あいつの持つ力は、もう誰かを撃つためじゃなく、人類がまだ見ぬ宇宙の果てを目指すための『翼』になる。……アラスカで戦場を止めるために舞い降りた剣が、巡り巡って、今度は人類を未知の世界へ導くための杖になるってわけだ」
キラの瞳が、一瞬で輝きを帯びた。
「宇宙の、果て……」
「ああ。核エンジンもNJCも、あそこなら最高の研究対象だ。……もしかしたらさ、あいつの脚で宇宙の深淵まで行けば、いつかまた見つかるかもしれないだろ? あの『宇宙クジラ』みたいな、人類がまだ知らない隣人の姿が。あいつには、そういう『希望』を探す仕事が似合ってると思ってな」
かつて、エヴィデンス01が見つかった時のように。あるいはそれ以上の、本当の意味での「人類の夜明け」を、あの自由の翼が探しに行く。
それを聞いたキラは、俺がこれまで見た中で、最も晴れやかな、一点の曇りもない笑顔を浮かべた。
「……そっか。……嬉しいです。フリーダムが、戦うための道具じゃなくて、みんなの未来を探しに行ってくれるなんて。 ありがとう、ユウナさん。やっぱり、あなたに任せて良かった」
「よせよ。俺はただ、核エンジンの処分に困って押し付けただけなんだからな」
照れ隠しに鼻を鳴らす俺の横で、キラは本当に幸せそうに、遠い宇宙(そら)を見上げていた。
かつては俺を殺しに来たかもしれない最強の兵器が、俺の手によって、最も平和な物語の一部になる。……まあ、そのおかげで俺は「寄贈に伴う膨大な政治調整」という名の地獄に、再び引きずり戻されることになったわけだが。
「ねぇ、ユウナさん。いつかフリーダムが宇宙クジラやそれに近い何かを見つけて戻ってきたら、その時はまた、僕たちで迎えに行きましょうね。」
キラのそのあまりに純粋で、戦いなんて無縁の十代の少年らしい笑顔に、俺の良心がチクリと痛んだ。いや、良心なんて上等なもんじゃないな。ただの気まずさだ。
「……ま、そうだな。あの子もまさか、メサイアの心臓部でドカンとやられる直前だったなんて思ってないだろうしな」
ボソッと、本当にただの独り言のつもりで、俺の本音が漏れる。あっしまった…!
「……え?」
キラの動きが止まった。穏やかに細められていた瞳が、ゆっくりと、しかし確実に見開かれていく。
「ユウナさん……今、なんて……? 自爆、って言わなかった?」
「あ、いや。……いやぁ、ほら。もしあの時、サーペントテールの妨害が失敗してたらさ、最終手段も必要だろ? 最強の核動力を積んだフリーダムを突っ込ませて、一気にメサイアごと――」
俺が説明すればするほど、キラの表情から「少年らしい微笑み」が消えていく。キラは一歩、スッと後ろに下がった。
その目は、さっきまでの晴れやかさが嘘のように、まるで理解不能な深海の怪物を見るような、冷ややかで、なおかつ「ドン引き」した光景を映していた。
「……ユウナさん。……本気で、そんなこと考えてたんですか?」
「え、いや、合理的だろ? ほら、核エンジンも処分できるし、敵の本拠地も叩けるし。……キラ?」
「…………最低じゃないですか?僕がフリーダムどれだけ大切に思ってるか、知ってるはずなのに……」
「ま、待て! 結果的にやってないだろ! 宇宙の果てに行けることになったんだから、結果オーライじゃないか!」
「……信じてたのに。……あの時の信頼を返してほしいです……」
キラは、まるで「触れてはいけない汚物」を見るような目で俺を一瞥すると、そのまま一言も発さずに、早足で立ち去っていった。その背中からは「信じて損した」というオーラが、物理的な圧力となって漂っている。
「……おい、キラ! 待てよ! 現実を見ろよ! 戦争だぞ!? ……あー、クソッ、これだからヒーローってやつはよぉ!!」
俺は頭を抱えて砂浜に座り込んだ。せっかく「いい話」で終わりそうだったのに、最後の最後で口を滑らせるのが俺という男の限界らしい。
その後、D.S.S.Dに引き渡されたフリーダムは、外装を白一色に塗り替えられ、追加ブースターを装備した「深宇宙探査仕様」へと生まれ変わる事になる。
後世の記録では「平和の使者」として称えられることになるその機体の裏に、あわや「史上最大の特攻兵器」にされかけたという黒歴史があることは、俺とエリカさん。そして数日間の間、俺を冷たい目で見るようになったキラ・ヤマトだけの秘密だ。
「……あーあ。これ、コンパスに入った後のチームワークに響きそうだなぁ……」
俺の溜息は、波音にかき消されて消えていった。
ちなみにキラはその後、美人のお姉さんとその助手の元特殊部隊パイロットから色々感謝の連絡をされてユウナさんを許したそうな。
流石に疲れたのでしばらく惰眠を貪ります!
戦後のコンパスに参加するシンとルナマリアについて。
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原作通り二人参加
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婿養子になりシン・ホークとなって参加
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ルナマリアが妊娠して除隊しハイネが参加