破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第三話 在野の天才

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……失礼いたします。本日付で着任いたしました、アレクセイ・コノエ大佐であります。以後、お見知りおきを」

 

 

 

 扉を開けて入ってきた男は、軍人というよりは、どこか隠居した学者のような、あるいはすべてを見透かしている老練な博打打ちのような、そんな得体の知れない余裕を纏っていた。

 

 

 

「ああ、コノエ艦長。遠路はるばるプラントからご苦労様。君の噂は聞いているよ、不沈艦長殿」

 

 

 俺は努めて「やり手の政治家」を装い、デスクの向こう側から彼を観察する。

 

 

 まぁぶっちゃけすぐにそんな化けの皮は剥がれる事になるが念には念を入れてだ。最初から好印象を稼いでおいて損はないさ。

 

「ははは、不沈、ですか。よしていただきたい。私はただ、計算が合わない戦い方を好まないだけですよ。……元は数学を教えておりましたのでね。一+一が二にならないような無茶は、教え子たちにも勧められません」

 

 

 コノエはそう言って、飄々とした態度で口角を上げた。その声は、深く、響き、重厚で、聞いているだけでこちらに安心感と「逆らってはいけない」という本能的な直感を抱かせる。

 

 

 

 

(……待て、待て待て。なんだこの声。渋すぎるだろ。……おいおい、開始三分どころか、声を聞いた瞬間に俺の中の採用ボタンは連打されてんぞ)

 

 

 

 

 

 俺は必死に顔のニヤけを抑えた。今程前世でサブカルに少なからず携わっていて良かったと思ったことはない。なんせ……この声だもんなぁ。

 

 

(だって、声が大塚芳忠さんなんだぞ!? こんなの声の説得力だけで全軍が統率できるレベルじゃないか。キラやシンがどれだけ暴れようが、この声で「落ち着きたまえ」とか「計算通りだよ」とか言われたら、あいつらだって『あ、はい』って大人しくなるに決まってる)

 

 

 

 

 ……声優ネタを現実に持ち込むのは、組織の人間としてはどうかと思う自分もいる。だが、実際にこれは馬鹿にできない要素なんだ。

 

 

 

 

 人間の受ける情報の何割かは聴覚によるものだって言うし、特に戦場という極限状態において、指揮官の声に「説得力」と「安心感」があるかどうかは、部下の生存率に直結する。

 

 

 

 何より、この大塚芳忠さんヴォイスの破壊力よ。軍人らしからぬ穏やかな口調、どこか緊張感に欠けた飄々とした態度……。普通なら「このおっさん、大丈夫か?」と疑うところだが、この声で喋られると、不思議と「ああ、この人は絶対に裏切らないし、この人の言う通りにしていれば死なないんだろうな」という謎の信頼感が爆速で積み上がっていく。

 

 

 

 

 声の重みが、そのまま人間としての器の証明になっちまってるんだ。メタ的に言えばネームドキャラに相応しい声と言うか、CV大塚芳忠キャラにも裏切り者なキャラは少なからず存在してるがこれは裏切らない!と雰囲気で納得できたのが何より信頼につながっている。

 

 

 俺があまりにジロジロと、というか恍惚とした表情で見ていたせいか、コノエ艦長が少し不思議そうに首を傾げた。

 

 

「おや……どうかいたしましたか? 私の顔に、何か付いてでも?」

 

 

 その、少しだけ語尾の上がる独特のイントネーション。これだ。この響きだけで白飯が食える。俺は我慢できずに口を開いた。

 

 

「いや、失礼。……コノエ艦長、君は自分の『声』を自覚したことはあるかい? 実に素晴らしい声だ。その声で指示を飛ばされれば、どんな絶望的な戦場でも兵士たちは正気を保てるだろう。……正直、その声だけで採用を決めたと言っても過言じゃない」

 

 

 

 一国の代表代行が初対面の軍人に言うセリフとしては相当トチ狂っている自覚はあったが、言わずにはいられなかった。対するコノエは、一瞬呆気に取られたような顔をしたが、すぐ飄々とした笑みを浮かべていた。

 

 

 

「ははは、声、ですか。……いやはや、そんなことを言われたのは生まれて初めてですが、悪い気はしませんな。……ありがとうございます、ユウナ様」

 

 

 

「いや、本心だよ。……君のような男が味方で良かった。コンパスの連中は、腕はいいが癖が強くてね。君のその……どっしりとした包容力のある声で、上手く手綱を握ってやってほしい」

 

 

 

 

「お任せください。……もっとも、私の声が枯れる前に、彼らが聞き分けてくれることを祈るばかりですがね」

 

 

 

 コノエはそう言って、肩をすくめて見せた。その仕草一つとっても、やはりどこか芝居がかっていて絵になる男だ。軍人特有の硬さがなく、かといって弛緩もしていない。

 

 

 この絶妙なバランスこそが、彼の指揮官としての余裕なのだろう。なんか内心で誉めてばっかだな今日は。

 

 

 

 

 俺は一度息をつき、去り際の後ろ姿に声をかけた。どうせなら彼に相談してみるか?

 

 

 

 

 

「……コノエ艦長、もう一つ相談に乗ってくれ。コンパスの別働隊となる傭兵部隊『X』について、君の意見を聞きたい」

 

 

 

「傭兵部隊『X』……。部隊名だけは聞き及んでおりますが、実態は寡聞にして存じません。どのような方々なのですかな?」

 

 

 

 

 コノエが足を止め、不思議そうに首を傾げた。俺は手元の端末を操作し、非公式の部隊データをホログラムで投影しながら説明を始めた。

 

 

 

「隊長はカナード・パルス。一見すると一匹狼の狂犬に見えるが、部下への面倒見がよくて信頼も勝ち取ってる。部隊の連携も軍の精鋭顔負けの練度を誇っている。……ただ、性格が苛烈でね。何より本人に『自分たちはあくまで傭兵だ』という強い矜持がある。正規兵とベタベタ馴れ合うのを嫌い、きっちりと線を引く律儀な男なんだ」

 

 

 

「なるほど。プロフェッショナルとしての自負が強い、誇り高い荒くれ者……といったところですか。扱いを間違えれば牙を剥くが、信頼を勝ち得ればこれほど頼もしい盾はない」

 

 

 

「まさにその通りだ。で、問題はその足回りでね。彼らは現在アガメムノン級を旗艦にしているが、これからのコンパスの任務……特に地上や大気圏内での運用を考えると、あれでは小回りが利かない。そこで彼らのために新しい艦を新造しようと思っているんだが、専門家の君から見て、どんな船が適していると思う?」

 

 

 

 俺は内心で、先日カナードと交わした会話を思い出して溜息をついた。

 

 

 

 

(……あの野郎、新型艦の要望を聞いた時は『ドレッドノートイータとムラサメが満足に運用できるならそれでいい。後は知らん』なんて吐き捨てやがったからな。要求が最小限過ぎて逆にこっちのセンスが問われてるんだよ)

 

 

 

 

 

 コノエ艦長は投影されたデータを細い目で見つめ、顎に手を当てて考え込む。我ながらダメ元でのヘルプだが果たしてどう答えるのかな?

 

 

 

「……カナード君の気性を考えれば、アークエンジェルのような耐え凌ぐ『不沈艦』を目指すのは間違いでしょうな。彼らに必要なのは、敵の懐へ最速で飛び込み、圧倒的な火力で殲滅して即座に離脱できる機動力。……例えば、ミネルバ級の火力を維持しつつ、艦体構造をスリム化して大気圏内での加速性能を極限まで高めた『強襲高速艦』……かつてのナスカ級の思想を、オーブの技術で昇華させたような艦はいかがです?」

 

 

 

 

「高速艦か……。なるほど、いいかもしれないな」

 

 

 

 俺はコノエの言葉を反芻しながら、思考を巡らせた。カナードたちは少数精鋭だ。正面切っての艦隊戦ではなく、電撃的な一撃離脱こそが彼らの真骨頂。ならば、船はその脚に全振りするくらいが丁度いい。

 

 

 

「火力は極論、捨ててもいいかもしれないな。その分、加速性能と旋回能力に回す。……そうだ、コノエ艦長。これを見てくれ」

 

 

 俺はデスクのホログラムを操作し、「盾艦」のコンセプトデータを展開した。武装を一切合切取り払い、艦全体は徹底的な簡略化によって無骨な外見。何より艦首に巨大な陽電子リフレクター発生装置を配置した異様なフォルムの艦艇だ。

 

 

 

「武装を捨て、防御と推力に特化して艦隊の盾となる。……陽電子リフレクターで艦を全て覆いつつ展開しながら突撃し、後続の艦を無傷で攻撃に集中させる。オーブの『不退転の意志』を形にしたような船だ」

 

 

 

 そのデータを見た瞬間、コノエ艦長が「ああ……」と、何とも言えない、少しばかり痛みをこらえたような遠い目をした。あの渋い声が、さらに一段低く響く。

 

 

 

「……これですか。メサイアの攻防戦では、この『盾』が重装歩兵のようにじりじりと、しかし確実にこちらの防衛線を押し潰しながら迫ってきましてね。……陽電子リフレクターの光が見えた時は、正直、生きた心地がしませんでしたよ。計算も策略も何もかもすべて無効化されるような、あの暴力的なまでの頑強さ……」

 

 

「ははは、あの時は災難だったな。だが、味方になればこれほど頼もしいものはないだろう?」

 

 

 

 俺は悪戯っぽく笑い、本題を切り出す。

 

 

 

「じゃあプラントから型落ちのナスカ級を一隻、譲り受けようかね。それの武装を一切合切ひっぺがして、このコンセプト通り、陽電子リフレクターと大推力スラスターを詰め込む……名付けて、高速空母型『盾艦』だ」

 

 

 

 その言葉に、コノエ艦長が意外そうに眉を上げた。

 

 

「……ナスカ級を、ですか? 私はてっきり、新造するかアガメムノン級をベースに改装する案で進むものと思っておりましたが……まさかザフトの艦を引っ張ってくるとは」

 

 

 

「新造するよりその方が早いだろ? それに、カナードたちの機動力を生かすならナスカの瞬発力が一番だ。アガメムノンを弄くり回すより、よっぽど安上がりで理想的な『鞘』になる。あくまで求めるのは矛でも盾でもなく鞘。流石に陽電子リフレクターを取っ払うのはやり過ぎだから入れておくけどな?」

 

 

 俺が淡々と、しかし確信を持って告げると、コノエは「おやおや」と肩をすくめて見せた。その表情は相変わらず飄々としていて、何を考えているのか読ませない。

 

 

 

「……ですが、ユウナ様。プラントも戦後の混乱期だ。ナスカ級は高速艦として彼らにとっても貴重な戦力。いくら型落ちとはいえ、そう簡単に首を縦に振るとは思えませんがね。何か確証でもおありで?」

 

 

 

 

 その問いに、俺は椅子の背もたれに深く寄りかかり、指を組んで不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

「ああ、心配ないさ。ラメント議長には、俺が直接『お話』してくるから。……なに、あちらさんにも貸しは山ほどある。ちょっとした『交渉』で、ナスカの一隻や二隻、喜んで差し出してくれるようになるさ」

 

 

 

 俺が目を細めてそう告げると、コノエ艦長は一瞬だけ絶句し、それから「……ふむ」と、どこか楽しげに口角を上げた。

 

 

 

「……その笑み。どうやら私が案じるまでもなく、答えはすでに出ていたようですね。……少しばかり、引かせていただきましたよ。平和のための外交というのも、なかなか血生臭いものですな」

 

 

 

「おい、人聞きが悪いな。ウィンウィンの関係を築くだけだよ」

 

 

 

「ええ、ええ。その『ウィン』がどちらに大きく傾いているかは、聞かないでおきましょう。……では、私は私の仕事に戻らせていただきます」

 

 

 コノエはそう言い残すと、優雅な所作で一礼し、部屋を後にした。あの重厚な声の余韻が消えた後、俺は一人でプラントへの通信回線を確保する作業に入った。

 

 

 

 

「さて……。陽電子リフレクターもそろそろ陳腐化するだろうし、どうにかしないとな……後はどんなツラして『ナスカ級ちょうだい』って言えば、一番効率よく毟り取れるかなぁ……」

 

 

 

 

 

 俺の独り言に、デスクの上の冷めたコーヒーが静かに波紋を立てた。

 

 

 





 声優ネタを現実に持ち込むのはどうかとユウナは思いつつも、優秀な経歴に加えてそのネームドキャラとしか言いようがない素敵な声で一気に信頼する事に。コノエ艦長からするとなんで…?と困惑するでしょうが内心「これ裏切らない方のCV 大塚芳忠ボイスだ!裏切る方はもっと、最低でもテイルズのテネブラエみたいな胡散臭い感じになるもん!」と勝利を確信していたそうな。

 

 戦後のコンパスに参加するシンとルナマリアについて。

  • 原作通り二人参加
  • 婿養子になりシン・ホークとなって参加
  • ルナマリアが妊娠して除隊しハイネが参加
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