破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第四話 深夜のテンションって怖いね

 

「いい加減にしろよお前ら! さっきから聞いてりゃあ、どいつもこいつも……!」

 

 

 

 

 

 オーブ、モルゲンレーテ本社の秘密ドック。開発主任のエリカさんをはじめ、名だたる技術者たちがズラリと並ぶ前で、俺はついに机を叩いて立ち上がった。

 

 

 

 

「お前らさぁ、最近俺のことを『便利なドラえもん』か何かと勘違いしてないか!? こっちは戦後の事後処理とコンパスの設立準備で、死ぬほど忙しいんだよ! なのに、何だその『次世代機の駆動系に行き詰まったのでユウナ様の閃きを……』みたいな相談メールの山は!」

 

 

 

 俺は端末に溜まった未読ログを突きつける。

 

 

 

 実は、これは一回や二回の騒ぎではなく、俺が前世の知識をポロッと漏らしたせいで、こいつらは味を占めやがったのだ。

 

 

 というか実際今ではオーブ宇宙軍の極秘プロジェクトとして、俺の適当な「こういうのが欲しい」という無茶振りを形にした新型機が開発中なせいで宇宙軍は色々騒がしくなってるし、コンパスの連携も含めそろそろドッズライフルの技術全面公開する羽目になってたりするがそれはそれとして!

 

 

 

 

「大体、技術者としてのプライドはどうしたんだ、プライドは! 何でもかんでも俺に答えを求めて……あっ」

 

 

 

 

 

 ……言い過ぎた。

 

 

 

 

 相手はオーブの国防を支える天才たちだ。本職の連中に「プライドがないのか」なんて、一線を越えた暴言を吐いてしまった。これ、もしエリカさんの逆鱗に触れたら、明日からの俺のコーヒーに何か盛られるんじゃ。

 

 

 

 

 

 背中に冷や汗が流れる。気まずい沈黙が数秒。俺が「……あ、いや、今のはその」とフォローを入れようとした、その時だった。

 

 

 

 

 

「いやぁ、だってユウナ様の意見の方が圧倒的に面白いですし」

 

 

 

 エリカさんが、事も無げに、しかも清々しい笑顔で言った。

 

 

 

 周りの技術者たちも、神妙な顔をするどころか、うんうんと深く頷いている。

 

 

 

 

「そうですよ。我々が理論の壁にぶつかっている時に、ユウナ様はそれを軽々と飛び越えて『こういう風にしたい』と仰る。それが理論的に可能だと計算で出た時の快感、わかりますか?」

 

 

 

「『ビームを回転させて貫通力を上げる』なんて発想、普通は正気じゃないですが、作ってみるとこれが実に美しい!」

 

 

 

「もはや我々の中では、ユウナ様の『無茶振り』をどう具現化するかが、技術者としての最大のプライドになってまして」

 

 

 

 ……ダメだ。こいつら、もう手遅れだ。技術者特有の「面白いものを作りたい」という業が、俺の余計な知識のせいで変な方向に進化しちまってる。

 

 

 

 AGE本編では毎回AGEシステムが作り出した技術を解析するせいで技術者達は色々とフラストレーションを抱えた様だがモルゲンレーテの連中は違う。自分達で好きなものを開発しつつ、目の前のオモチャ(俺だアスランじゃない)で更にエンジョイしてやがる。

 

 

 

 

「……お前ら、褒めても何も出ないぞ。というか、仕事が増えるのは俺の方なんだよ……」

 

 

 

 俺は頭を押さえて椅子に座りこむ、エリカさんはそんな俺を慈しむような(あるいは獲物を見るような)目で眺めながら、さらりと追撃を加えてくる。

 

 

 

「それでユウナ様。……先日仰っていた『ナスカ級をベースにした高速空母盾艦』ですが。……あれ、装甲パージ機能とか付けたらもっと面白くなりませんか?」

 

 

 

「…………ああもう、好きにしろ! ただし、予算の相談はカガリの機嫌がいい時にしろよな!」

 

 

 

 

 俺の怒鳴り声に、技術者たちは「承知いたしました!」と、今日一番の活気ある声で応える。だが、案の定こいつら俺を解放する気がねぇ!!

 

 

 

「……で、だ。その『ナスカ盾艦』の話はいいとして、今日は一体何の用なんだ? 貴重な俺の休憩時間を奪ってまで見せたいもんがあるんだろ?」

 

 

 

 俺が半眼で問い詰めると、エリカさんは待ってましたと言わんばかりに、ドックのさらに奥……厳重に電磁シールドが張られた区画を指差した。ちょっと待て!何さらっとそんなもん実現してんだよ!!

 

 

 

 

「ユウナ様、こちらを。……先日、アスラン・ザラ氏が退職祝い代わりに持ち帰った機体。セイバーです」

 

 

 

「……あ、ああ、これか」

 

 

 

 

 思わず狼狽しつつ俺はその真紅の機体を見上げる。本来の歴史……俺が知っている「ガンダムSEED DESTINY」の展開なら、カガリが泣いているのに側にいてやらないアスランにキレたキラの駆るフリーダムがバラバラに解体して消失していたはずの機体だ。

 

 

 

 

 だが、この世界ではオーブの無理な派兵もなくなり、アスランがキラと戦う理由もなかった。結果として、セイバーは五体満足なまま、デュランダルから退職祝いとして持ち帰ったアスランと共にオーブにやってきて……戦いそのものが終わったせいで、すっかり埃をかぶってニート生活を送っていたわけだ。

 

 

 

 

「これを……どうする気だ?」

 

 

 

「いじくり回していいという許可を、アスラン氏からは頂いています。……ですが、我々だけではどうにも普通の改修案しか出なくて。そこでユウナ様、何かこれに面白いギミックでも載せられませんか?」

 

 

 

 

 エリカさんの目が、技術者特有のギラついた光を放つ。周りの連中も「さあ!案を出せコラ!」と言わんばかりに、手に持ったタブレットを構えて俺を取り囲んでいる。俺一応君らの上司なんだけどな…。

 

 

 

 でもまぁ、今のままだとただの『可変する足の速い機体』でしかないし、コンパスで使うには少し決定力不足か?

 

 

 

 

 俺は腕を組み、不敵な表情(を作っただけの困り顔)で深紅の機体を見上げる。内心では、前世のガンダム知識をフル活用して何か、何かないかと記憶の海を泳ぎまくっている所だ。

 

 

 

 

 

 

 可変機、可変機か……。単純な強化なら「リ・ガズィ」みたいにBWSでも背負わせるか? いや、それじゃ使い捨て感が強くてオーブの予算的にカガリが白目を剥く。

 

 

 

 じゃあ、いっそ変形機構を複雑化してイージス系の改造機体を……いやダメだ、整備性が地獄になってエリカさんたちが徹夜で過労死する。

 

 

 

 なら、これ以上機体構造をいじらずに……「Zガンダム」みたいに巨大なハイパー・メガ・ランチャーでも持たせるか?

 

 

 確かに火力は上がるが、セイバーの売りである『機動性』を殺しちまう。あのアスランが乗っていた機体なんだ、ひらひらと舞うように敵を翻弄できなきゃ意味がない……。

 

 

 

「……ちなみに、こいつを仕上げる期限は?」

 

 

 

 

 

 俺が漏らした一言に、エリカさんが指を一本立てて、さらりと残酷な告知をした。

 

 

 

 

 

「そうね、コンパスの本格始動に合わせるなら、一年未満といったところかしら」

 

 

 

 

「一年未満……。まぁ、そうだよな。半年から一年で実用化に漕ぎ着けないと、ただのコレクションで終わっちまう」

 

 

 

 

 基本的に彼女たちが求めているのは、今ここにある技術の延長線上で、かつ即戦力になるものだ。

 

 

 

 他作品の超科学やミノフスキー粒子やらサクラダイトなんてものは存在しないし、この世界の物理法則――ニュートロンジャマーキャンセラーや核動力だの陽電子リフレクターだのこの世界の枠組みの中で、最大効率を叩き出さなきゃならない。

 

 

 

 俺は改めて、目の前の深紅の機体――セイバーをじっくりと観察した。

 

 

 

 ビームライフルにビームサーベル、そしてシールド。背負っている大出力のビーム砲を除けば、驚くほど基本に忠実で、ある意味では「シンプルすぎる」機体だ。

 

 

 

 

(……逆に言えば、素体としての完成度は高いんだ。余計な小細工が少ない分、弄る余地はいくらでもある。アスランみたいな変態的操縦技術があればこのままでも無双できるんだろうが、これからの戦場はもっと混沌とする。デストロイみたいな化け物がまた出てくるかもしれないし、物量で押し潰される可能性だってある。シンプルさを維持しつつ、どうやって『化けさせる』か……)

 

 

 

 

 そもそも誰が乗るかだ。アスランはターミナルに出向してる以上それ以外の腕の確かなベテランにこの機体を預けるしかない。真っ先に思い浮かんだのは、あの「不可能を可能にする男」だ。

 

 

 

 

 

「……というわけでさ、ムウ一佐?セイバーに乗るつもりはないかな?元からスカイグラスパーなんかを乗り回してた君の操縦技術なら、可変機のポテンシャルを最大限に引き出せると思うんだが」

 

 

 

『ははっ、そいつは光栄な話だ。……だが、せっかくの誘いだがパスさせてもらうぜ、ユウナ様』

 

 

 

 

 通信越しのムウは、申し訳なさそうに、だがはっきりとした口調で断ってきた。

 

 

 

『俺はアークエンジェルでムラサメ部隊の隊長をやる予定だろ? 全員が同じムラサメで揃ってるからこそ取れる連携ってのがある。俺一人だけ特別製で突っ込んじまったら、部下たちの足並みが狂う。……指揮官ってのは、背中を見せてナンボだからな』

 

 

 

 

「……なるほどな。チームの結束を優先するか。相変わらず現場の鑑だよ、君は」

 

 

 

 

 キラやシンの様に単騎で無双する方が似合うパイロットもそこそこいるが、カナードやムウのような部下を上手く扱えるパイロットは割と貴重だ。

 

 

 

 初代はあまり描写されてなかったが、ネオ時代にステラ達を上手く纏めていたムウならきっとムラサメ隊をまとめられるだろう。

 

 

 

 

『悪いな。……ま、その機体に相応しい「暴れ馬」なら、他にも心当たりがあるだろ?』

 

 

 

 

 ムウとの通信が切れる。俺は小さく息を吐き、ドックに鎮座するセイバーを見上げた。

 

 

 

 

 

「……ムウがパスか。なら、もうあいつしかいないな」

 

 

 

 

 俺の脳裏に、不敵な笑みを浮かべるカナードの顔が浮かびあがる。傭兵のあいつなら新型機を嫌がるどころか「俺を満足させるだけのパワーがあるのか?」と鼻で笑って扱いこなすだろう。

 

 

 最近、通常任務でのイータの使用禁止の通告が来て不機嫌になってたから、その謝罪もかねてセイバーを任せるか。

 

 

 

 

「……よし、カナード向けに調整する方針でいくか。あいつは繊細な操縦もできるし、それなら中途半端なバランスの良さはいらないよなぁ! カリッカリにチューンして、ロマンの塊を目指すぞ!!」

 

 

 

 

 俺がそう宣言した瞬間、ドック内の空気が爆発した。エリカさんを筆頭に、技術者たちの瞳に、ドロドロとした熱い情熱の火が灯る。

 

 

 

「……ユウナ様、今『ロマン』と仰いましたね? ならば、この大気圏内用主翼に、試作段階の新型ヴォワチュール・リュミエールを無理やり……!」

 

 

 

「いえ、それよりもドッズライフルの基部を三連装にして、バレルを高速回転させながらプラズマを……!」

 

 

 

 

 あーあ、止まらなくなっちまった。

 

 

 

 

 だが、俺も内心では最高にワクワクしている。エース専用機を、そのパイロットの特性に合わせて限界まで弄り倒す……。男として、これ以上の娯楽がこの世界にあるだろうか?

 

 

 

 

(……どんな無茶な出力を載せても、どれだけピーキーな操作系にしても、あのカナードなら『フン、この程度か』と鼻で笑いながら乗りこなしてくれる。その確信があるからこそ、俺も、この技術者たちも、ブレーキを壊してアクセルを踏み抜けるんだよなぁ!!)

 

 

 

 

 それから数時間。俺と技術者たちは、セイバーのホログラムモデルを囲んで、あーでもないこーでもないと、もはや戦時中より熱い議論を交わり過去最高に楽しむ時間を過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で? 何か言いたいことはあるか?」

 

 

「「「「ごめんなさい」」」」

 

 

 

 数週間後。

 

 

 

 俺とエリカさんを含む技術者一同は、秘密ドックの床に腕を組んでキレているカナードの前で「正座」する羽目になるのだった。

 

 

 

 

 

 やっぱ、超電磁スピンやゴットフリートガトリングはダメだったか……ちょっと俺もストレスでテンションがおかしくなってたな。うん。

 

 

 






 次回カナードへの謝罪タイム。

 戦後のコンパスに参加するシンとルナマリアについて。

  • 原作通り二人参加
  • 婿養子になりシン・ホークとなって参加
  • ルナマリアが妊娠して除隊しハイネが参加
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