破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第五話 ロマンMSは戦場の華

 

 

 

 

 

 

 俺たちの目の前には、腕を組み、額に青筋を浮かべ、今にもドレッドノートイータのビームを叩き込みそうな形相のカナードが立っている。

 

 

 やらかした……言い訳をさせてもらえるのなら、比較的仕事が落ち着いてきた時期に好き放題MSを弄ってもいいと言われて少し前世も無関係でロボオタの血が騒いだんだ。その結果がこのザマだ。

 

 

「……俺は確かに、『満足に動くならそれでいい』と言った。……だがな」

 

 

 

 

 カナードが、整備ドックに無残にバラされ、原型を留めないほどに「何か」を詰め込まれつつある元・セイバーを指差した。

 

 

 

 

 

「……なんだ、あの『変形時にドッズ効果を乗せた螺旋突進をかます』という設計案は。……俺を、機体ごと回転させて敵艦に突っ込ませるつもりか?」

 

 

 

「い、いやぁ、カナード。お前の凄まじい反射神経なら、慣性移動中に機体を自転させてドリルアタックするとかお茶の子さいさいかなって……」

 

 

 

 俺は冷や汗を流しながら、精一杯の愛想笑いで弁明した。いや、言い訳させてくれ。昨晩、たまたま執務室のモニターで流れていた往年のスーパーロボットアニメ『コン・バトラーV』のリマスター再放送を見たのが運の尽きだったんだ。

 

 

(……超電磁スピンで加速しながら、螺旋の勢いそのままに戦艦やMSにぶち当たる……。あれ、今の技術ならいけるんじゃね? ってエリカさんたちと盛り上がりすぎちまったんだよ!)

 

 回転アタックはやり過ぎだ。というかパイロットがシェイクされるのもカナードなら耐え切れるとなってまず形にしようぜうぇーい!とテンションが上がり過ぎたが何やってたんだろ俺ら…。

 

 

 

 

 だが、カナードの怒りはそれだけでは収まらなかった。彼は次に、セイバーの横に置かれた「巨大な塊」を、親の仇でも見るような目で指差した。

 

 

 

 

 

 

「……百歩譲って回転はいい。だが、このふざけた装備は何だ。……なんでイズモ級の主砲(225cm連装高エネルギー収束火線砲「ゴットフリートMk.71」)を丸ごと片手で持てる仕様にしてる?しかもガトリング砲になってないか?」

 

 

 

「あ、それ? ほら、やっぱり火力は大事だろ? ちょうどイズモ級の改修で余ってたやつを、グリップ付けて取り回し良くしてみたんだ。名付けて『ゴットフリート・ガトリングガン』!」

 

 

 

「ふざけるな!」

 

 

 

 

 ドック内にカナードの怒号が響き渡る。そりゃそうだわ!こんなもん使える訳ねぇもん!!

 

 

「俺にこんなクソ重いものを背負わせて、どうやって高速戦闘をしろと言うんだ! 慣性制御が死ぬぞ! 旋回するたびに機体フレームが悲鳴を上げているのが見えないのか!」

 

 

 

 

 

「い、いや、そこは貴方の腕でカバーして……」

 

 

 

 

「できるかぁ!!物理法則を気合でねじ伏せろと言っているのか、お前は!」

 

 

 

 エリカさんのフォローにキレたカナードが俺の胸ぐらを掴みながら勢いで詰め寄ってくる。こうしてみると少しだけキラには似てるがカガリとはどうなんだろ?なんて馬鹿みたいなことを考えてしまうがそれはそれだ。

 

 

 

 隣で正座していた技術者の一人が「……あ、あの、実はその主砲、銃身をドッズ化して回転させることで、さらに貫通力を……」と余計な補足をしようとしたが、カナードの「殺すぞ」という視線一発で沈黙した。

 

 

 

 

「いいか、ユウナ。そもそもセイバーの持ち味を活かすプランを考えておけと言ったはずだ。シンプルに特化しろという意味で言ったんだぞ? なのに何だ、この超電磁な回転だの、戦艦の主砲(ゴットフリート)を無理やり持たせるだの……お前らは馬鹿か! というか何故パイロットである俺の意見を聞かない!!?」

 

 

 

「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」

 

 

 

 

 

 俺は地面に額がつきそうな勢いで謝り倒す。エリカさんたちも、流石にカナードの正論パンチに言葉を失い、借りてきた猫のように静まり返っている。

 

 

 

 ……ようやくカナードの肩の力が抜け、溜息と共に胸ぐらを離してくれた。どうにか生きて明日を迎えられそうだ。

 

 

 

 

 だが、ここで黙って引き下がる俺じゃない。俺は震える手で端末を操作し、別のホログラムを展開した。

 

 

 

「……え、ええと。今の『プランA(超電磁スピン再現しようぜプラン)』と『プランB(戦艦の主砲ガトリングにしようぜプラン)』は、まぁ、その、忘れてくれ。実は本命として、個人的に考えてた『プランC』があるんだ」

 

 

 

 

 

 カナードが不機嫌そうに鼻を鳴らしながら、そのホログラムを睨みつける。

 

 

 

 俺が提示したのは、前世の記憶にある『ガンダムAGE』のクランシェカスタムを参考にした、徹底的な「高速高機動戦闘」に特化した改装案だ。

 

 

 

 プログラムをあーでもないこーでもないと弄ってみるのはなかなか楽しかったが、正直机上の空論に過ぎないのでどう思われるのやら。

 

 

 

 

「……こいつがプランCだ。徹底的に機動性と空力特性を突き詰めて、あわよくば次世代型の量産モデルに出来ないか?って思ってな」

 

 

 

 俺はホログラムを操作し、詳細データを展開する。まず目を引くのは両肩。セイバー本来のバインダーを廃し、クランシェカスタムを彷彿とさせる大型の「ツインドッズキャノン」を装備。

 

 

 さらに頭部のブレードアンテナは通信能力と索敵精度の向上のために大型化し、側頭部には近接防御用のビームバルカンを増設した。

 

 

 

 

 

 

 

「最大の特徴はこれだ。新型のドッズライフル。今までのアストレイが使っていたドッズライフルは、あくまで既存の銃身を流用した『後付け』だったが、こいつは違う。飛行形態では胸部に接続されて機首となる設計で、二枚板のバレル構成にしている」

 

 

 

 俺は二枚の板状バレルが重なり合う投影図を指さした。一応何度かデータ内でテストをした所不可能ではないと結論が出ている。というかズブの素人でも多少学べばデータ上でシミュレーターとして運用できるあたりすげぇなC.E.。

 

 

 

「この二枚板の隙間は、単なるデザインじゃない。射撃時にはこの上下二枚の板の間で超高密度のプラズマを強力な磁場で拘束・固定する。バレルの内部で粒子を回転させる旧来の方式と違い、内部の磁界そのものをプログラム制御で超高速回転させることで、ドッズ効果――ビームへのスピン付与を発生させているんだ。これにより、ビームの拡散を極限まで抑え、従来のドッズライフルの数倍近い貫通力と有効射程を叩き出す計算になる」

 

 

 

 

 俺は熱を帯びた口調で続ける。エリカさんや技術者たちは、俺の「前世知識の翻訳」を漏らさぬよう、食い入るようにホログラム投影された構造図を……クランシェカスタムの設計思想をコズミック・イラ流に解釈したものを見つめている。

 

 

 

「さらに、ライフルをこのフラットな板状にすることで、飛行形態(MA)時には完璧な機首カウルとして機能する。大気圏内での超音速巡航において発生する衝撃波を効率よく左右に逃がし、空力抵抗を劇的に軽減できるんだ。これによりセイバー本来の加速性能を殺さず、むしろ向上させることができる。そしてこの二枚板のバレルは独立可動式だ。状況に応じてバレルの間隔を調整し、近接戦用の広域拡散射撃モードと、対艦用の長距離貫通狙撃モードを瞬時に切り替えることが可能。おまけに、MA形態のままこのバレル自体を巨大なビームサーベルの基部として機能させ、敵陣へ突撃しながら引き裂く『螺旋の槍』としても運用できる……文字通りの一撃必殺だ」

 

 

 早口で言い切ったので少しだけ喉が乾いた。言ってみればクランシェカスタムに部分的にF91の簡易ヴェスバー的な役割を与えつつ、突っ込むだけで回転して貫通力を増した巨大ビームサーベルで突っ込む通称スイカバーを可能にしたお子様ランチ大盛りセットみたいな機体だ。

 

 

 とはいえそんなドリルスイカバー展開は出来ればやって欲しくないけどな。どっちかと言えばスイカバーというかマイトガインの轟龍に近いか?まぁ俺はドリルは好きだけどな。

 

 

 あれもこれもやれる事ができると気づいてやり過ぎたが実際の所はこれら全てが出来るかどうかは分からん。燃費だとか、パイロットの技量だとかも含めて所詮は素人の作った机上の空論。例えるならマイクラで家を建てる事ができたとしてそれを現実でそのまま応用できるのか?といえば別物なのと同じだろう。

 

 

 

 

 カナードがじっとホログラムを見つめ、無言でその「理屈」を咀嚼しているのがわかる。前世の『ガンダムAGE』において、あの「戦場のホームズ」ことセリック・アビスが愛用したクランシェカスタムは、量産機の枠を超えた高機動性と、大型機体すら貫くツインドッズキャノンの火力が売りだった。

 

 

 

 それを今、この世界のエース専用機として昇華させている。正直前世の知識でカンニングしつつも一人でプログラムを組んで見せつけるのは初めてなので少し緊張するが、それでもいくつかの機能をオミットしたとしてもシンプルなセイバーの持ち味を生かしつつ強化するならとできる限りの事はしたつもりだ。

 

 

 当然コストや整備性、製作難易度に関しては分からん。特に出来る限り今ある技術で短期的に数を揃えるというオーブ技術部の理念的には新型ライフルやヴェスバーを果たして短期間に揃えられるかどうか…。グフの時の様にエリカさんにダメ出しされるかもしれないと内心怯えつつもカナードへのPRは続けていく。

 

 

 

 

「お前の反射神経なら、この超高速域でのドッグファイトを完全に制御できるはずだ。取り回しを強化した最新型の『雷蛇』を腕部に、脚部には敵のセンサーを欺く多機能スモークグレネードを数門。……どうだ、カナード。ピーキーだが、お前を乗せる器としては、これ以上の正解はないと俺は自負してる。次世代高機動量産機の雛形としても、こいつはオーブの至宝になるはずだ」

 

 

 

 俺がそう締めくくると、ドックにはしばしの沈黙が流れた。

 

 

 二枚板のバレルが放つ、無機質だが機能美に溢れたシルエット。それでいてヴェスバーやドッズランスなどといった新機能の技術をじっと眺めつつも、最後にカナードはゆっくりと腕を組み、ふっと短く息を吐いた。

 

 

「……フン。一年だ。一年で形にしろ。……その代わり、少しでもスペックに狂いがあれば、その時は覚悟しておけ」

 

 

 

 

 カナードはそう言い残し、どこか満足げな足取りでドックを去っていった。どうにか首の皮一つ繋がった……とはいえ一年未満に開発できるのかどうかは別な事もあってしばらくはムラサメに乗ってもらう事になりそうだが。

 

 

 

 

 

 

 

「――ユウナ様ぁ!! そんな良い案を隠し持ってたなら、最初から出してくださいよ!!」

 

 

 

「『プランA』とか『B』の茶番に付き合わされた俺たちのワクワクを返せ!!」

 

 

 

 

 

 嵐が去った……と思ったのも束の間。背後から、正座を解いた技術者たちの凄まじい怒号が飛んできた。

 

 

 

 いや、お前らもノリノリでコンバトラーVとか言ってたじゃねえか! と言い返したかったが、彼らの「技術者魂」を弄んだ罪は重いらしく、結局しばらくの間、袋叩きに近い形での説教を食らう羽目になった。

 

 

 

 だがそれはまだ可愛い反応と言えるだろう。ふと隣を見ると、開発主任のエリカさんは輪に入らず、ホログラムを凝視したまま動かなくなって……あっやべぇぞコレは…!

 

 

「……面白い。バレル間隔の調整で収束率を変える……この、いわば『可変速機能』とも呼べるシステム。磁界制御によってビームの貫通力と攻撃範囲を自在に制御するのか……。これってジェネレーターからの電力配分をコンマ1秒単位で制御して、攻撃の瞬間に全エネルギーをバレルへ叩き込めば、理論上の貫通力はまだ数パーセント……いえ、十数パーセントは上乗せできる……ふふ、ふふふ……」

 

 

 

 エリカさんはヴェスバーなんて名前もデータも知らないはずだが、俺が提示した「二枚板」の構造から、その本質を瞬時に見抜いてしまったらしい。

 

 

 

 彼女の指先がタブレット内の数式を恐ろしい速度で書き換えていく。目が爛々と輝いてるが、なんか光り輝いて見えて威圧感が凄い…!!

 

 

 

「ユウナ様、これを見て。敵の攻撃を受ける瞬間、あるいは自分が撃つ瞬間のコンマ1秒単位で機体全体の電力配分を最適化させて……低速で撃てば敵の装甲を焼灼し、高速で撃てば複数の盾艦すら並べて強引にブチ抜く……。素晴らしいわ、これまでのセイバーの器用貧乏な設計思想が、この二枚の板と電力制御一つで、全て破壊的な最適解にアップデートされる……!」

 

 

 

「……エリカさん? 顔!顔が怖いし独り言が長すぎますよ?あと、それ無理やり実現するとOS担当が死にますよ?」

 

 

 

 丁寧語で思わず指摘するが、俺の声なんて耳に入っていないようだ。彼女は完全に「天才技術者」のスイッチが入っており、その目は獲物を解剖する捕食者のそれだ。

 

 

 と言うか多分OS担当の代わりに自分が手を出すんじゃないかこのコーディネイター。かつてアスランが自由自在に動かしたセイバーの機動性に、この「電力全振りの殺意」が加わるとなると……クランシェカスタムどころの騒ぎじゃなくなりそうだ。

 

 

 

 

 

「よし、総員! ユウナ様への説教は終わりよ! 今から半年、寝る間も惜しんでこの『二枚板』と『新型電力制御回路』を具現化するわよ!! 物理法則が邪魔をするなら、数式を書き換えてでも通しなさい!!」

 

 

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

 

 

 エリカさんの狂気交じりの号令一過、ドック内は先程までの怒号が嘘のように、取り憑かれたような活気に包まれた。

 

 

 

 

「……さて。地獄の釜は開いたかな?俺もあの中に混ざってたら命がいくつあっても足りん」

 

 

 

 

 

 俺は一人、静かにドックを抜け出した。カナードの期待、技術者たちの狂気、そしてエリカさんの飽くなき探究心。それらすべてを詰め込んだコイツが完成する頃には、コズミック・イラの戦場は一体どうなっていることやら。

 

 

 

 

(ふぅ……。今のうちに逃げて、カガリに予算の相談(言い訳)でもしに行くか)

 

 

 

 

 なんてキメ顔をしつつも、嫌な予感を感じつつ早足で、それはもう足早にエントランスへ向かおうとした、その時だった。

 

 

 

 

「――逃がしませんよ、ユウナ様ッ!!」

 

 

 

「待てぇ! 逃げるなぁ!!逃げるなドラえもん! まだ四次元ポケットにアイデアが詰まってるはずだ!!」

 

 

 

 

 

 背後から地響きのような足音が迫る。振り返れば、そこには血走った目をしたモルゲンレーテの技術者たちが、ラグビーのタックルでもかますような勢いでこちらに突進してきていた。

 

 

 というか副総裁だとこいつら忘れてない!?ペンチはまだわかるがスタンガンにアサルトライフルまで持ち出すんじゃねぇよ!!!そんなもん気軽に使える様な場所に設置してんじゃ……いやコズミックイラ的にはアリなのか?

 

 

 

 

「わっ、ちょ、待て! 今日はもう終……っ、うわあああああ!?」

 

 

 

 

 

 多勢に無勢。俺の抵抗も虚しく、俺は物理的に担ぎ上げられ、再び狂気のドックへと強制送還だ。

 

 

 

 

 そこからは、まさに地獄だった。

 

 

 

 

 

 「ここの出力配分をコンマ05秒に縮めるなら、OSの記述はどうすべきか!」「二枚板バレルの間隔は1ミリ単位でどっちが美しいと思う!?」などと、エリカさんを含めた面々による徹底的な討論会がスタート。

 

 

 

 

「ユウナ様、ここの磁界ローリングのアルゴリズムですが、貴方の直感ではどっちが『ロマン』を感じます?」

 

 

 

 

「知るか! どっちでもいいから寝かせてくれ!!」

 

 

 

 

「ダメです! 貴方が言い出した『プランC』でしょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 結局、休日もへったくれもなかった。

 

 

 エリカさんと技術者たちの熱すぎる夜(徹底的な理論武装と二枚板式ライフルの構造に関する怒号飛び交う口論)に朝まで付き合わされ、一睡もできなかった俺の目の下には、パンダも驚くほど立派なクマが刻まれたのだった。

 

 

 

 





 今回はユウナはやり過ぎじゃないか?と思われる様な描写ですが、実際の所はコストや開発期間、整備性などを度外視(一応本人なりにグフの失敗から考えてますがそれでも素人青写真)で出来る限りの技術をシミュレーターで動かして多分行けるんじゃないか?と組み込んだのがこの新型セイバーのプランC案。


 いってみれば作中でもシミュレーターでPストを動かしたりしていたりと、似た様な事もあるらしくユウナ的にはマイクラなどに近い感覚ですが、ここからの実機視点なども含めると一年以内に出来るかどうか?もなかなかシビアだったりします。とはいえ、エリカさんは更にそこから発想を肥大化させたりと現存のMS開発技術の延長でエンジョイしてるそうですが……果たしてこのセイバーは開発するのやら?


 次回はいよいよドッズライフルの公開編です。

 戦後のコンパスに参加するシンとルナマリアについて。

  • 原作通り二人参加
  • 婿養子になりシン・ホークとなって参加
  • ルナマリアが妊娠して除隊しハイネが参加
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