破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
長くなったので半分だけ投稿。アグネスは優秀なパイロットですし、この手の嫌味キャラにありがちな才能だけで全てを乗り切っているのではなく、才能に胡座をかかずに努力をしているという所は本当に素晴らしいと思います。
「ふんっ!見た!?これこそが私のエースとしての真の実力よ!!」
アーモリーワン攻防戦の「地獄」を突破するのに、アグネスは結局、30回以上の再試行と、シミュレーターのシートを汗でびしょ濡れにするほどの集中力を要した。
とはいえこのステージ1の難易度は最早鬼畜のソレであり、30数回程度でクリアするアグネスは曲がりなりにもザフトレッドに相応しいエースであることが窺える。才能と努力を併せ持つ彼女は自画自賛するに相応しい技量の持ち主である事は確かなのだ。
コンパス志望パイロットの中で最も早く攻略したアグネス。だが、クリアした瞬間の達成感と、自分こそがこの無理ゲーを制したのだという全能感は、彼女のプライドを再び天高くへと押し上げる。
流石は「月光のワルキューレ」を称される事だけのことはある。ハインラインが一切の容赦を捨てて構築したファーストステージを、彼女はその持ち前の執着心とセンスでねじ伏せたのだ。
そして、続く『ステージ2:ユニウスセブン破砕作業防衛ミッション』。
大気圏突入のタイムリミットが迫る中、テロリストのジン・ハイマニューバ2型を排除しつつ、メテオブレーカーを設置する友軍を守る防衛戦だ。
「なーんだ、さっきのが嘘みたい。敵が止まって見えるわ!」
アグネスの駆るインパルス(換装はお気に入りのソードだ)が、迫り来るジンを次々と一刀両断していく。周囲にはオーブのアストレイ部隊や、ザフトのジュール隊といった強力な友軍も展開しており、ターゲットが分散される分、アーモリーワンの時に比べれば格段に立ち回りが楽である。
アグニの光が飛び交う大規模乱戦にて、彼女はインパルスで駆け回る。それまでのストレス発散と言わんばかりにジンは次々と撃墜されて行くのであった。
「やっぱり最初のステージは設定ミスだったのよ。これ作った、ハインラインとかいう技術屋ってどこか計算を間違えたんじゃないかしら?」
彼女は鼻歌交じりに、画面端で苦戦しているルナマリアや、堅実に立ち回るレイの機体を確認して、フッと嘲笑を浮かべた。シミュレーター内の二人はログに基づいた動きをしているはずだが、今この瞬間の「スコア」において、自分は二人を圧倒している。
「ルナマリアは相変わらず射撃を外してばっかりだし、レイだって慎重すぎてスピード感がないわね!!やっぱりこの世代の主役は、私、アグネス・ギーベンラートで決まりだわ!!」
さりげなくルナマリアを盾にしながらジンを撃破し、高揚感と共に調子に乗るアグネス。
メテオブレーカーを狙う敵機を鮮やかな機動で撃墜し、アグネスは自画自賛を爆発させる。ステージ1で味わった「あの屈辱」は、すでに彼女の脳内では「難攻不落の要塞を落とした最高の伝説」へと書き換えられていたのであった。
なお、この後カオス、アビス、ガイアが戦場に乱入する事により撃墜され、罵詈雑言がコックピット内で埋め尽くされる事になるのは別の話である。
「うぉっ、マジか!? 出たのか、あのステージ1を初めてクリアした奴が!」
俺は思わず報告書をデスクに叩きつけ、横で端末を弄っているハインラインに身を乗り出した。あのハインラインが「90%の再現」という名の元に、物理法則と殺意を極限まで煮詰めたアーモリーワン・ステージを攻略したやつがプラントに出たらしい。
流石にアスランがカガリを乗せてザクに乗っている場面は色々な意味で再現されず、ハインラインは悔しがって難易度は少し上がっていたが……並のベテランですら10秒持たずに撃墜され、一部では「バグか嫌がらせだ」とまで言われていた代物だぞ!?
なお試験段階でこちらの精鋭にもプレイさせたがババは12回、ムウは5回、カナードは2回、キラはダメージを負いつつも1回でステージ1をクリアしたらしい。アイツの技量もおかしくないか…?
「登録名はアグネス・ギーベンラート。ザフトのアカデミーを優秀な成績で卒業し、現在は月光のワルキューレの異名で称されるエース候補の一人です。……もっとも、私に言わせれば『月光』などという非科学的な光学現象を二つ名に冠する時点で、自己顕示欲の過剰な発現でしかありませんが」
ハインラインは相変わらず辛辣だが、眼鏡の奥の瞳は、興味深いサンプルを見つけた学者のように細められている。
流石に月光云々は周りから付けられたネーミングだと思うし、個人的には『ソロモンの悪夢』だとか、『真紅の稲妻』のような二つ名好きとしては悪くないと思うが黙っておこう。
「へぇ、アグネス……ね。知らない名前だけど、プラントも広いんだなぁ……いや、でも流石だよ。あの地獄を突破するなんて、コンパスの補充要員候補ってのは伊達じゃないってやつか」
俺が素直に感心してそう言うと、ハインラインはフンと鼻を鳴らし、手元の端末に複雑なグラフを表示させた。
「……技量だけを見るならば、貴公の評価も一理あります。ですが副総裁、このログを精査してください。ステージ2における彼女の行動パターンですが、友軍機であるルナマリア機を、意図的に敵の射線上に配置し、自身が攻撃に転じるためのデコイとして利用している形跡が多々見受けられます。さらに撃墜スコアを稼ぐためだけに、防衛対象であるメテオブレーカーから必要以上に離脱する傾向もある」
ハインラインが赤いポインターで、アグネスの身勝手な機動の数々をなぞっていく。
「一言で言えば、協調性に致命的な欠陥がある。自己の戦果を最大化するために戦場の安定性を損なうその振る舞いは、組織的な運用が前提となるコンパスにおいては、むしろマイナスの変数になりかねません」
「……あー。なるほどねぇ……。典型的な『自分が一番』タイプか」
俺は思わず頭を掻く。というか自分が一番なんてまさに憑依前のユウナそのものじゃねぇか。女版ユウナとして女装した俺の姿をイメージして一瞬吐きそうになったが、端末で調べる限り見た目は普通に整っていて本当に良かった…。
まあ、エースなんてのは多かれ少なかれエゴイストなもんだが、ハインラインの目から見ても「欠陥」と言われるレベルなのは少し先が思いやられるな。
「まぁいいさ。ステージ2までは、それでも勝てちゃうレベルの設定だ。……でも、彼女が自分を『一番』だと思い込んだまま次のステージに行ったら、どうなるかな?」
ステージ1、2は実際の所何度もリトライした上で相応の技量であればクリア可能なレベルだ。まぁ相応のレベルが高過ぎて俺なんかはステージ1すらクリア出来ず諦めているけどなぁ!!!
とはいえステージ3は余りの鬼畜難易度に、あのカナードですら「やり過ぎだ」と呆れられているが……コンパスに所属するのなら出来ればクリアして欲しいステージだ。あのムウやカナードですら舌打ちを連発してクリアした極悪難易度を果たして、この子の精神は耐え切れるんだろうか…?
「……冗談でしょう!? コックピットをぶち抜かずに、メインカメラだけを破壊して戦闘不能にしろぉぉぉ!? そんなの、できるわけないでしょうがぁぁぁ!!!?」
シミュレーターのコクピット内に、アグネスの絶叫が木霊した。
始まった『ステージ3:オーブ領内・模擬戦』。
シンプルな名称のステージ名であり、対峙するのは、オーブ軍の主力MSムラサメ。それも九機という編隊だ。単機でこれだけの数を相手取るだけでも、回避と反撃にリソースを使い果たし、並のパイロットであれば喉から血が出るような極限状態になるだろう。
だというのに提示されたミッション・ノルマは「撃墜」ではなく、精密射撃による「無力化」。つまり不殺だ。機動兵器の運用思想を根本から無視したような鬼畜設定であり、少しでもポイントがずれてムラサメのコックピットを打ち抜けば即座に失敗扱い。ツッコミどころ満載と言える開発スタッフの悪意を感じさせる畜生ミッションだ。
「なんで! なんでそんな無駄なことしなきゃいけないのよ! 敵なんだから落とせばいいじゃない! コックピットを狙うのが一番確実で、一番効率的なのに!!」
怒り狂いながらトリガーを引くが、激しく機動するムラサメの、あの小さなメインカメラだけを撃ち抜くなんて神業をこの混乱する戦場でできるはずがない。
次々と減って行く残弾数。回避、防御、攻撃をコンマ一秒単位で予測しなければならない先読み能力。その上でコックピットを狙うなというふざけた設定。
数秒後、回避が間に合わず、ムラサメ隊の連携によるビームの奔流がアグネスの機体を飲み込んだ。
【MISSION FAILED】
「ふざけないでよ!!」
アグネスは悔しさに顔を歪ませ、荒い息を吐きながらコンソールをぶん殴る。予めユウナの意見によって台パン対策はしているが、怒りの余りにモニターやコンソールを殴るアグネスは最早シンへの殺意でいっぱいだ。
「絶対にデータの設定ミスよ! こんなの、システム上のフェイクに決まってるわ! あんな山猿に、こんな精密な真似ができるわけ……」
その言葉を証明しようと、彼女は「お手本」として登録されている当時の戦闘ログを、指を震わせながら再生するが……直後、彼女の瞳が驚愕に見開かれる。
画面の中のインパルスは、流れるような機動でムラサメの波を潜り抜けると、まるで吸い込まれるようにライフルを一射。狙い過たず、敵MSの頭部カメラだけを正確に粉砕してみせた。
一機、また一機。踊るようなスラスターワークの中で、インパルスが放つビームの先では、機体本体へのダメージを最小限に抑えられたムラサメたちが、次々と無力化されて墜落していく。
最小限の機動で敵の攻撃を回避し、メインカメラである頭部と背部のスラスターだけを撃ち抜くその姿は誰がどう見ても疑いようのない……エースの軌跡であったのだ。
「……ッ、フェイクよ! フェイク!! こんなの、ただのCG合成か何かでしょ!?」
アグネスは顔を真っ赤にして叫んだ。現実逃避気味で一瞬の錯乱状態に近く、脳内ではあれはリアルな映像ではなくフェイクそのものだと信じ込む。
自分が何度挑んでもカスりもしない精密射撃を、涼しい顔で、精鋭揃いと言われてるオーブの軍を相手にやってのけている『山猿』を認めてしまえば、それまでの自分の煌びやかな功績ですら『山猿』未満のものであると認めてしまう事になるのだから。
「そもそも、なんでそんな無駄なことを……殺さないなんて、甘っちょろいにも程があるわ! こんなの間違ってる! 私の戦い方こそが正しいのに!!」
否定しなければ、自分のプライドが消えてなくなる。アグネスは震える手でもう一度リトライのボタンを連打した。
その視界は怒りで滲んでいたが、脳裏には焼き付いて離れない。たった一発のライフルで「カメラだけ」を撃ち抜いた、あの忌々しいインパルスの残像が。
「……なぁ、ハインライン。あの『カメラだけ撃ち抜く』ミッション、いくらなんでもやりすぎだったんじゃないか?」
俺は端末に次々と表示される、アグネスの「リトライ」という真っ赤な文字を眺めながら苦笑いした。もう何十回目……いやそろそろ三桁行くぞ?意地でもクリアするまでやめる気がないらしいが本当に大丈夫なのか?
このミッションの鬼畜さは幾らでも並べられる。可変機であって空戦に特化したムラサメ相手に実質フォースインパルスで固定化される編成。模擬戦の為にとこちらが送り込んだ精鋭パイロット達の動きを再現した連携攻撃。更には一度のミスで全てが台無しとなる精密狙撃の強要など……あのカナードですら苦言を示すのは当然だろう。
実の所、狙撃ではなく近接でも構わないので高速で接近して頭部を切り裂くと難易度は下がるらしく、ムウやカナードもそれでクリアしている。しかし、お手本のシンの映像が全てライフル一つで敵を無力化していくものばかりなのが判断力を鈍らせる事に繋がるらしい。
「いいえ。完全再現こそがこのシミュレーターの意義です。コンパスが今後直面する任務において、『不殺』の選択肢を提示できる技量は不可欠と言えるでしょう」
ハインラインは眼鏡の奥の瞳を冷徹に光らせ、淡々と続けた。
「時として、我々はテロリストを五体満足で拘束しなければなりません。あるいは、爆弾を抱えて特攻しようとする暴徒の、その機体スラスターだけをピンポイントで撃ち抜いて無力化する……。そのコンマ数ミリの精度を欠けば、待っているのは最悪の結末です。今の彼女のログを見る限り、その精度は……残念ながら『散弾銃』レベルと言わざるを得ませんが」
「ハハ……言うねぇ。まぁ、あいつらにとっては、今まで教わってきた『必中必殺』のドクトリンを根底から否定されるようなもんだしな」
俺は背もたれに体を預け、絶え間なく更新されるアグネスのプレイログをじっと見つめた。
怒りで震え、乱れながらも、彼女は決して諦めていない。プライドが高いだけならとっくに「クソゲーだ」と投げ出しているはずだ。俺はあっさり諦めた。なのに誰よりも先に志願者の中で到達した彼女は、ボロボロになりながらもあの『主人公』の背中に食らいつこうとしている。
「……なんだかな。ここまで必死に食い下がられると、なんか応援したくなってきたな、このアグネスって子。頑張れよ、月光のワルキューレ。そこを越えないと、これからの戦場じゃ生きていけないんだからさ」
俺個人としても優しさではなく、出来る限りテロリストは生け取りにして法廷送りにしたいと思っているが、再度の失敗報告を聞きながらもガッツある彼女を称賛するのであった。
シン・アスカシミュレーターの鬼畜ミッション一覧!いやどれもクソみたいな難易度ですが、その中でも特に難易度が高いものをご紹介!
・アーモリーワン攻防戦
敵にミサイルをぶち当てた上で戦場でドッキングして一機を撤退に追い込むミッション。このミッションの最低な仕様としてコックピットからの発車シーケンスの後目の前にカオスが暴れてる場面から始まると言うもの。つまり、何もしなければカオスに特攻を仕掛ける事になるわ、回避をしてからミサイルをぶち込もうとするとカオスは普通に反撃してくるわとなっており。
最適なタイミングでミサイルを撃ってカオスにダメージを与えつつ、即座に三機の射程を予測して離脱しながら合体。その上でインパルスでエクステンデッドらしいGを無茶した動きをしてくる三機のうちの一体を撃破しろと言うもの。この時点でまともな人間は普通にやめます。
・オーブ模擬戦
ムラサメ九体を相手にしながら全員を撃破ではなく無力化しろと言うもの。コンパスとしてはテロリストを出来る限り拘束したいという思惑もあってある意味ここからが本番ではあるが、普段から不殺慣れしてるキラでもない限りそれまでの常識を覆す行動を余儀なくされて大体この辺りで、ふるいにかけられていく。
・ガルナハン攻防戦
毎回ランダムな洞窟内をコアスプレンダーで突破するステージ。直前のウィンダム×30+ザムザザーというステージが癒しに見えるその内容は、無茶なんてレベルではなくシュラが初めて失敗したのも大体この辺り。キラもこのステージで一度撃墜された後アスランに「正気なの?」と真顔で問い詰めたらしい。
・パリ郊外の戦い
ヘブンズベースの戦いとは違い単独でデストロイを撃破しろと言うミッション。カナードの狙撃もなく、フリーダムも援護してくれるが撃墜は全てインパルス頼りというある意味仮想ミッション。ここで慣れたプレイヤーが次のヘブンズベースの戦いで目が死ぬらしい。アグネスは大体劇場版の頃にはヘブンズベースあたりを繰り返しプレイして突破しようともがいている。
・オーブ解放戦
エタニティのビームガトリングガンの弾幕やドッズスナイパーライフルの弾幕を掻い潜り、味方部隊の損耗が一定になる前に第一ステージで防衛網の突破を行い。その後ボス戦としてドレッドノートイータとのバトル。なお全てのMSは不殺だよ!というおまけ付きでムウやババもこの辺りで無理とサジを投げたそうな。カナードが「イータが弱過ぎる。もっと強化しろ」とボンボンに詰め寄った所流石に止められた。(本人曰く絡め手が再現できてないらしい)
・メサイア攻防戦
最終決戦らしく敵の物量が凄まじいが、何より厄介なのはラスボスのインフィニットジャスティス。史実では攻撃を一切行わなかったが、シミュレーターではそんなこと知るかとアスランの戦闘データを入れている為にガンガン攻めてきており、合間にユウナの肉声付きの演説が流れているなか時間まで耐久するか撃破する必要がある。シュラがアスランを好敵手と認めたのもそれが理由。なお所詮はデータであり、本物のアスランとは比べものにならないらしくシンは二回目に種を割りながらクリアした。
・おまけモード
そして、全てを終えたパイロットにだけ隠しパスワードが表示され、全ステージをリトライ無しでプレイする高難易度モードも解放されるが、シュラはアスランを撃破した瞬間、満足した為出ていき知らなかったりする。恐らくアグネスは高難易度モードの開放を見た瞬間SANチェック1D10/1D100。は確定でしょう。
なあ近日キラのストライクモードが定期的に感想欄で話題となっていますが、あくまでパイロットの技量を高めつつ不殺の腕を高めるのが目的な為に今の所は制作予定はなし。もっと言えばストライクのパイロットについての情報は秘密なので色々デリケートなのです。
戦後のコンパスに参加するシンとルナマリアについて。
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