破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 戦闘シーンは難しい…。


第一三話 コンパス初出撃

 

 

 オーブ国内にて、行政区の地下に存在するコンパス専用のブリーフィング室には、かつて「アークエンジェル」を支えた面々が顔を揃えていた。マリュー、ムウ、そしてキラ。さらにはババに加えて「ドム・トルーパー」を駆るヒルダたちドムトルーパー隊も控えている。

 

 

 一騎当千の英雄達や歴戦の艦長。本来であれば心強いはずの顔ぶれだが、ゲンドウポーズで机に座っているユウナは、なんとも言えない苦い顔を隠せずにいた。

 

 

 

「……さて。これより『コンパス』設立に向けた、我がオーブ管轄下における初任務の説明を行う」

 

 

 コンパスはまだ本格的に設立しておらず、今回集まったメンツは全員コンパスに参加する予定のオーブ所属の軍人、及び絶滅戦争の阻止を旗印にした秘密組織ターミナルに所属する者達だ。ザフト及び連合は足並みや準備に手間取っておりしばらくは不参加となっている。

 

 

 

 ユウナはホログラムの海図を展開した。そこに映し出されたのは、L4付近に浮遊する小惑星基地だ。

 

 

 

「相手は、いわゆる宇宙海賊だ。……と言っても、タダのゴロツキじゃない。先の対戦でアルザッヘル基地やダイダロス基地から逃亡した、ブルーコスモス派の連合残党兵による武装勢力だ」

 

 

 その言葉に、キラたちの表情が険しくなる。前大戦のどさくさに紛れて逃亡したミケール大佐を中心としたブルーコスモスの過激派連中の厄介さは当然理解しているのであろう。

 

 

「彼らはいまだに戦力を保持し、最新鋭機すら有している。最近では、プラントからの輸送船が問答無用で沈められる被害が多発しており、放置すればまた戦争の火種になりかねん。故に、今回の任務はこの小惑星拠点の完全無力化だ」

 

 

 勿論兵士たちは大西洋連合が主軸であるとされているが、ユーラシアや東アジアなどからも参加者が続出しているなどロゴス崩壊による社会不安や民族紛争の影響は今もなお傷は深く残っており、その火消し役としての仕事が今回の初任務に至ったのだ。

 

 

 ヒルダがニヤリと好戦的な笑みを浮かべる。今回はラクスは不参加であるが幸いにもユウナの指揮下に入る事に戸惑いや嫌悪感はないらしい。

 

 

 

「なるほどねぇ。連合のレイシストがプラントに嫌がらせをしてるってわけか。私たちのドムに丁度いい獲物じゃない」

 

 

「ああ。ザフト系の戦力は、本国との調整がつかなかったシンたちはまだ間に合わない。今回は君達三人が頼みの綱だ」

 

 

 

 ユウナは一呼吸置くと、居並ぶ面々を見渡した。マリューはいつもの沈着冷静な眼差しで、ムウはどこか余裕すら感じさせる不敵な笑みで、そしてキラは静かに覚悟を決めたような瞳で、ユウナの指示を待っている。

 

 

 ババに関しては敢えて見ない。言葉を発していないが例えるのなら雰囲気そのものが五月蝿いのだ。ユウナ様が主導する組織に私がと興奮している様子だが、その雰囲気に気づくのはユウナしかいない。故に見ない。見ないのである。

 

 

 

「……正直、この顔ぶれを動員するには些かショボい相手だと思うかもしれないがな。だが、今回はオーブが主導する新組織の初陣だ。失敗は許されんし、犠牲も最小限で抑えたい」

 

 

 

 ユウナはそこで一度言葉を切り、少しだけ言いにくそうに視線をヒルダたちドム・トルーパー隊向けた。

 

 

 

 

「……それから、ヒルダ大尉。君達のドム・トルーパーについてだが、あの機体にはミラージュコロイド技術が転用されている。今の国際情勢下では非常にデリケートな機体だ……今回は調整の時間がなかったからそのまま乗ってもらうが、次回の任務からは機体を乗り換えてもらうことになる。ザクか、グフ……どちらがいい?」

 

 

 

 実の所ユウナは、半壊したNダガーNの現物を戦後のどさくさで入手しているなど、その気になればミラージュコロイド搭載機によるカウンターテロも行える立場だ。

 

 

 とはいえコンパスの理念を考えれば、やはり正面切ってテロリストを駆逐することが望ましい。自分たちの組織のアピールを国内外に示しつつ、テロリストに恐怖を与える為に。故にユウナは乗りたくもないアカツキに再び乗る羽目になったのだから。

 

 

 

 

 ドムについて語られたヒルダは自信在りげに腕を組み、フンと鼻を鳴らした。

 

 

 

 

「せっかく馴染んできたところだけどねぇ。まぁ、あのアークエンジェルにいた頃から、整備性の問題はつきまとってたしね」

 

 

 

 仕方ないと納得する彼女は隣のヘルベルトやマーズと視線を交わしつつ、しばしのやり取りを終えると代表して答える。

 

 

 

「グフで頼むよ。ザクはウィザードシステムの換装ありきだろ? 戦場に毎回専用の換装パーツ一式を持ち込むのも大変だし、整備側の負担も大きい。その点、グフなら単体での完成度が高いし、取り回しが楽だからね。……それに、シンがデスティニーでアロンダイトを振り回すのを見てたら、あんな格闘戦も悪くないって思えてきたのさ」

 

 

「わかった。だが、現在ザフトでも新型を開発中らしいから、本命が来るまではそれで我慢してくれ。……ああ、それと、どの機体になっても『ドッズライフル』だけは使えるようにアタッチメントを調整しておくよ」

 

 

 ユウナがそう締めくくると、ヒルダは満足げに頷いて部屋を後にした。

 

 

 

 隊員たちが次々と出撃準備のために退室していく中、ユウナは残ったキラに視線を向ける。

 

 

 

「……キラ君。すまないが、少し話がある。来てくれるか」

 

 

 

 どこか改まったユウナの様子に、キラは静かに頷き、その背中を追って部屋を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この任務は、単なる海賊退治ではない。その実態は、先の戦乱が生んだ負の遺産との決別だった。

 

 

 

 

 

 史実と異なり、この世界ではミケール大佐がジブリールの死後から執拗に裏で立ち回っている。その影響で、ゲリラ化した元連合兵の数は膨れ上がり、彼らは「正義」の名の下に無差別な略奪を繰り返し、その被害は日が経つにつれて増していく事になる。

 

 

 

 

 特にプラント系の船に対しては、民間人であろうと問答無用で殺戮を尽くすという、狂信的な選民思想に染まった集団へと変貌していた。

 

 

 

 

 ターゲットとなる小惑星基地には、そんな彼らの中でも組織化された一翼が陣取っている。彼らは正規軍の統制から外れているというのに「部隊」を自称し、一種のテロネットワークを構築して運用を最適化していた。

 

 

 

 戦力はアガメムノン級1隻、ドレイク級2隻を基幹とし、拿捕した民間船を改造した武装艦も数知れず。さらに、裏ルートで買い叩いたレイスタやシビリアンアストレイ、さらには戦場で拾い集めて継ぎ接ぎ改修を施したザクウォーリアまでもが配備されていたのだ。

 

 

 

 

「青き清浄なる世界の為に! 我らの行いこそが、堕落した地球連合に代わり、化け物どもに裁きを下す正義の鉄槌である!!」

 

 

 

 

 小惑星の影に潜むアガメムノン級のブリッジでは、指揮官が狂信的な陶酔と共に叫んでいた。

 

 

 彼らのモニターに映るのは、罪なき民間船団の熱源反応。それを「狩る」直前の、捕食者特有の傲慢な沈黙が支配する。

 

 

 だが、その歪んだ静寂を、一筋の金色の輝きが強引に切り裂いた。

 

 

「所属不明MSが接近!いや…これは…オーブ軍です!!」

 

 

 漆黒の宇宙(そら)に躍り出たのは、コンパスのシンボルであるエムブレムをその肩にペイントした薄紫混じりの黄金の機体――「アカツキ」。鏡面処理された装甲が星々の光を跳ね返し、まるでそれ自体が一個の恒星であるかのような威圧感を放っている。

 

 

 

 

 直後、広域オープンチャンネルに、物理的な振動を伴うほどの重厚な音声が叩きつけられた。

 

 

 

 

 

『こちら世界平和監視機構、通称【コンパス】。……初めまして、野蛮なクソネズミ野郎の諸君。私はコンパス副総裁、ユウナ・ロマ・セイランだ』

 

 

 

 テロリストたちの拠点が、その声の主が放つ威圧に一瞬凍りつく。先の大戦にてメサイア攻防戦で大規模な演説を決めてザフト兵達の士気を根こそぎ奪ったユウナの名はテロリスト達の中でも有名である。

 

 

 

 しかし、現在のその声はあの日の熱い演説とは真逆の冷徹な算盤を弾き続ける政治家の温度のない、事務的な言葉として放たれている。

 

 

 

『通告する。君たちの行為は、現在国際社会が定義するいかなる軍事行動にも該当しない。ただの公海略奪、及び虐殺行為だ。よって、本時刻を以て君たちを「不正規武装集団」と断定する。もっと君達の頭でも、わかる様にいえば『テロリストのクズ野郎』と言ってやるよ」

 

 

 

 困惑する彼らを尻目にユウナの声は、淡々と事務的に、逃げ場のない現実を突きつけていく。

 

 

 

『……正義? 裁き? そんな聞こえの良い言葉で、己の無能と逃亡を飾り立てる必要はない。君たちが今すべきなのは、武器を捨て、速やかに投降し、原隊へと復帰することだ。軍籍を剥奪されている者は、該当する国際法廷の管轄下へ入れ。……繰り返す、速やかに武器を捨てろ』

 

 

 

 ユウナは一度言葉を切ると、アカツキのセンサーを、隠れている戦艦のブリッジへと正確に向けさせた。

 

 

 

 

『さもなくば――テメェらはここで「掃除」されることになる。無価値な残骸としてな』

 

 

 

 

 

 ユウナの最後通牒が冷徹に響き渡ると同時に、背後に控えていたアークエンジェルからまばゆい光と共に次々とMS部隊が発艦していく

 

 

 それは、はなから敵に撃たせてからなんて大義名分を作るつもりもなく。一切の慈悲もなく、叩き潰してやるという最後通牒であったのだ。

 

 

 

 

 

 

「コーディネイターの犬に成り下がったクズが……! あのふざけた色のMSごと、宇宙の塵にしてくれるわ!!」

 

 

 

 

 

 逆上した海賊側の指揮官が、通信機が壊れんばかりに怒鳴り散らした。この世界において、もはや縋るべき神など存在しない。宗教界が失墜した今、彼らを突き動かしているのは「自分たちこそが正当な人類である」という歪んだ特権意識と、剥き出しの憎悪だけだった。

 

 

 

 小惑星の陰から、ウィンダムやダガーLだけでなく、不気味な迷彩を施されたレイスタや継ぎ接ぎだらけのザク、シビリアンアストレイといった混成部隊が、殺意を撒き散らしながら飛び出してくる。

 

 

 

 

 

「やれやれ、相変わらず言葉の通じない連中だ。……野郎ども! 訓練通りにやるぞ!」

 

 

 

 

 アークエンジェルから真っ先に飛び出したのは、ムウ・ラ・フラガ率いるムラサメ隊だ。コンパス仕様に再塗装された四機のムラサメが、青いスラスター光を引いて宇宙を駆ける。

 

 

 

「隊長! 敵機の種類はバラバラな動きですが数は多数!あいつら本当にテロリストなんですか!?」

 

 

「慌てるな。連携を崩さなきゃ当たる相手じゃないさ!あの鬼畜なシミュレーターに比べりゃ、止まってるのも同然だ!」

 

 

 

 ムウは機体を滑らかにロールさせながら、正面から突っ込んできた海賊側のザクを瞬時にロック。ビームライフルの一射で頭部メインカメラを正確に撃ち抜いてしまう。

 

 

「……おっと、訓練の癖で精密射撃になっちまったか。まぁいい、次、左から来るぞ!」

 

 

 

 ムウは隊長として部下たちの動きに気を配りつつ、自身はシールドで敵の散漫な射撃を完璧にいなしていく。かつて「エンデュミオンの鷹」と呼ばれたその技量は、量産機であるムラサメに乗っても健在どころか、シミュレーターでの反復練習を経てさらに研ぎ澄まされていた。

 

 

 彼らは通称『無理ゲー』と称されたシン・アスカ体験シミュレーターにてあの地獄のステージ3で好成績を残したパイロットも多く、ムウに至ってはステージ3のクリアに成功している。故に彼らにとってメインカメラの狙撃は『最早鬼畜難易度のクソゲーと比べれば』気楽であると全体的な能力の向上に繋がったのだ。

 

 

 

「ほらよっ! お次はどいつだ?」

 

 

 

 変形機構を駆使し、一糸乱れぬ連携を見せるムラサメ隊。その波状攻撃の前に、烏合の衆である海賊のMSたちは次々と沈黙していく。それは、ユウナが冷徹に告げた「掃除」という言葉を体現する、あまりにも一方的な蹂躙の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ムラサメ隊が鮮やかに戦場を切り開く中、その背後から三つの巨大なスラスターの光が急速に迫る。

 

 

 

「さて、私たちも行くよ! これがドムでの最後の花道になるかもしれないんだ。派手に決めるよ!」

 

 

 

 

 ヒルダの声と共に、三機のドム・トルーパーが漆黒の宇宙を滑るように進撃を開始した。

 

 

 彼女たちもまた、あの狂気じみたシミュレーターを叩き込まれたパイロットだ。特に「動く目標のカメラだけを抜く」という精密操作の反復は、彼女たちの技量を更なる高みへと押し上げていた。

 

 

 そこには、ラクスへの狂信とも言える忠誠心が関わっているのは言うまでもないだろう。一歩間違えれば危険思想になりかねないそれは、テロリストへの怒りの剣先として猟犬のように襲いかかっていく。

 

 

「ヘルベルト、マーズ! 連携を崩すんじゃないよ!」

 

 

 

 三機はジェット・ストリーム・アタックの陣形を組み、敵の防衛線へと突っ込む。接近してくるレイスタやゲイツRに対し、彼女たちが抜いたのはヒートサーベルではない。オーブが対MS無力化用に開発した特殊電磁ムチ――スレイヤーウィップ『雷蛇』だ。

 

 

 

「はぁっ!」

 

 

 

 ヒルダが放った『雷蛇』が、まるで生き物のように敵機の四肢を絡め取る。高圧電流が機体回路を焼き、パイロットを殺さずに機体だけを沈黙させていく。

 

 

 次々と「案山子」に変えられていく敵MS群。しかし、彼女たちの真骨頂はここからだった。

 

 

 

「次はあのでかいのだ。ドッズライフルの出力調整は完了したね?」

 

 

 三機のドムが同時に、背部にマウントされたドッズライフルを構える。狙うは前方で回避行動を取るドレイク級護衛艦。普通なら艦ごと沈めるべき目標だが、彼女たちの狙いはさらに精密だ。

 

 

 

「……そこだ!」

 

 

 

 三条の螺旋を描くビームが放たれる。それはドレイク級の装甲を貫くのではなく、突き出た主砲の砲身や後部スラスターのみを、ヤスリで削り取るかのようにかすめて通り過ぎた。

 

 

 熱によって主砲がひしゃげ、スラスターも使い物にならなくなった戦艦は、もはや牙を抜かれた獣も同然であった。

 

 

 

「主砲無力化、完了さ。……ふん、あのシミュレーターに比べりゃ、戦艦の砲身なんて止まっているマトも同然だね!」

 

 

 

 ヒルダは不敵に笑い、次なる標的へと機体を躍らせた。ユウナが求めた精密射撃を、彼女たちは実戦という最高難度の舞台で、証明してみせたのだ。

 

 

 

 

 全てはラクスへの忠誠の為に。黒き三つの連星は神に捧げる供物の如く中域に戦闘不能機体を次々と量産していくのであった。

 

 

 





 原作とのコンパスの相違点

・全てのオーブ製MSは『雷蛇』が装備されており敵の無力化に適したそれで、接近戦を仕掛けるパイロットが多数。

・パイロット達はシン・アスカシミュレーターのステージ3までのクリア、もしくは半数のムラサメの無力化を求められており、必然的に不殺率は上がって、捕虜にしたテロリストの尋問なども積極的。とはいえ、副総裁も含めてコンパス側のパイロットの生存を第一としている為口酸っぱく無理にするなと言い張っている。(それでも無視するのは技量の高さなどもあるが大体シンのせい)

・初期のためにミレニアムは完成されておらず、ミネルバはザフト軍の旗艦として運用される予定な為、今回はアークエンジェル主体による少数精鋭。カナード達は新たな母艦を得ており今回の戦いには参加しないが、周囲の海域の警戒などを行っており基本的にキラとカナードが顔を合わせることはコンパス内では少ない。

・原作ではユーラシアとの紛争を引き起こすために国境中心にテロを行っていたが、本作では大西洋連邦の流出や組織的なミケールを中心にした元大西洋連邦のパイロット達の離脱によって宇宙での海賊行為も起きている。


 次回は、原作にはなかったキラwithセイバーガンダム回。お待ちくださいませ。

 戦後のコンパスに参加するシンとルナマリアについて。

  • 原作通り二人参加
  • 婿養子になりシン・ホークとなって参加
  • ルナマリアが妊娠して除隊しハイネが参加
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