破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 将来的に全然違うじゃねぇか!!と言われそうですがフリーダム強奪事件、始まります。


第十九話 フリーダム強奪事件解決RTA

 

 

 

 

 

 ユウナ達が議論をしてる同時刻、基地の一角にあるパイロット専用の控え室。テストフライトを終えたザフトのパイロット。レオナード・バルウェイは、火照った身体を冷ますように、片手に持った紙コップのジュースを喉に流し込んでいた。

 

 

 脳裏に焼き付いているのは、先ほどまで自分の手足として動いていたストライクフリーダムの、あの隔絶した機動力と全能感だ。

 

 

 

(……感謝するよ、アグネス)

 

 

 

 恋人であるアグネス・ギーベンラートが、自分のためにコネを片手に上層部へ執拗に掛け合ってくれたおかげで、この「最強」の座に座ることができた。彼女自身は今、コンパスへの参加の為の訓練で忙しく、ここには同行していないが、この機体で標的をねじ伏せ、空を駆ける瞬間の昂ぶりは、何物にも代えがたい。

 

 

 

 自分が選ばれた人間であるという確信。この機体さえあれば、どんな敵も抹消し、どんな運命も貫けると確信できる、得も言われぬ興奮が甘いジュースの味と共に、レオナードの心を満たしていた。

 

 

 

 その時、控え室の自動ドアが静かにスライドした。入ってきたのは、作業服に身を包んだ清掃員らしき男だ、

 

 

 

 レオナードは特に気にも留めず、視線を外に向けたままでいた。だが、男は掃除を始める様子もなく、まっすぐにレオナードの背後へと歩み寄る。

 

 

 

 

 不自然な静寂。

 

 

 

 背筋に走る、今まで感じたことのないような、冷徹で圧倒的な「重圧」。

 

 

 

 レオナードが違和感を覚えて振り向こうとした瞬間、清掃員の帽子を目深に被った男が、その冷淡な金色の瞳をレオナードを射貫くように向けた。

 

 

 男の唇が、呪詛のような、あるいは福音のような声音で小さく動く。

 

 

 

 

「闇に堕ちろ、レオナード・バルウェイ」

 

 

 

 

 その言葉が、レオナード・バルウェイが彼の人生で最後に見た光景になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――っ!? なんだ、この音は!」

 

 

 

 

 突如として、基地内に鼓膜を震わせるようなけたたましい緊急警報が鳴り響く。

 

 

 ラウンジの窓の外、先ほどまで穏やかだった青空に、幾筋もの黒煙が尾を引いて駆け抜ける。直後、凄まじい爆発音と共に基地の外縁部で火柱が上がった。

 

 

 

「テロだ! ミサイル接近! 総員、対空戦闘準備!!」

 

 

 

 スピーカーから悲鳴に近い怒号が響く。モニターに目を向ければ、レーダーを掻き乱す強力なジャミングの中、地平線の向こうから次々とMSの影が躍り出てくるのが見えた。地球連合の主力量産機、ウィンダムだ。

 

 

 

 それも一機や二機じゃない、優に1ダースは超える規模の部隊が、この正規軍の基地に向けて殺到していた。

 

 

 

 ……いやおかしいだろ!?ウィンダムだぞ!?連合の最新鋭機をここまで揃えるって何しやがったんだ!?

 

 

 

 

 

「……チッ、テロリスト共が! こんな真昼間に堂々と仕掛けてくるとは、正気か!?」

 

 

 

 イザークが憎々しげに吐き捨て、その瞳に戦士の鋭い光を宿す。隣のディアッカもまた、瞬時に公人の顔からパイロットの顔へと切り替わっていた。

 

 

 

「トダカ海将、セイラン副総裁! 俺たちは今から出撃します。お二人は急いで地下シェルターへ!」

 

 

 

 

 ディアッカが短く指示を飛ばし、二人は弾かれたようにハンガーへと走り出す。

 

 

 

 

 

(ウッソだろ!? こんなタイミングで!? 正規軍の基地に真っ向から襲いかかるなんて、どこのどいつだよ。馬鹿なんじゃねぇの!?)

 

 

 

 

 俺は内心で悪態をつきながら、震えそうになる膝を無理やり押さえつけた。

 

 

 

 「知識」にあるどの地獄とも違う、未知の展開。ここからいくつかの可能性を脳内で弾き出すが、一番大きいのはユウナ・ロマ・セイランの暗殺として基地ごと潰しに来たか、あるいは――ストフリの強奪だ。

 

 

 

 わざわざ俺たちが視察に来ているこの日を狙って仕掛けてくるなんて……これじゃあまるで、あの試作二号機強奪の再来じゃねえか!!なんで今更0083みたいな事やりだすんだよテロリスト共がよぉ!!

 

 

 

 MSデッキへ向かおうとするイザークとディアッカの背中に、俺はなりふり構わず声を張り上げた。

 

 

 

「ジュール中佐! エルスマン大尉! 待て、二人とも!」

 

 

 

 爆鳴が響き、建物の窓ガラスが悲鳴を上げて震える中、二人が足を止めて振り返る。その表情には、戦闘を前にした軍人の鋭さと共に「なぜ逃げないのか」という明らかな困惑が混じっていた。

 

 

 

「……正気ですか!? 副総裁は速やかに避難を! ここはもう、あんたのような文官がいていい場所じゃない!」

 

 

 

 イザークが苛立ちを隠さず怒鳴り返してくる。だが、俺は退かない。引けるわけがない。

 

 

 

 脳裏をよぎるのは、かつて見た『0083』の悪夢――最新鋭機が、最も警戒の緩んだ瞬間に奪い去られる、あの絶望的な光景だ。

 

 

 

 

「狙いは恐らく、俺の命か……さもなくば、あのストライクフリーダムだ! 奴らが本気で強奪を企んでいるなら、今シェルターに逃げ込むのは、逃げ場のない棺桶に入るのと変わらん!フルバーストで基地の人間全員殺す事くらいあの機体なら出来るんだよ!!」

 

 

 

「何を言っている!? 敵の主力はウィンダムだぞ。この基地を潰すつもりなら、もっと別のやり方があるはずだ!」

 

 

 

 

 イザークの言い分は正しい。最新鋭機体を強奪した挙句その機体で人員を皆殺しにする?ふざけた妄想だと言えるだろう。

 

 

 

 だが実際にはイザーク達が参加したG強奪といい、ファントムペインのセカンドシリーズの強奪と言いG兵器は大体奪われる。それはもう奪われる。ふざけてんのかってくらい奪われる。

 

 

 

 このタイミング、この戦力、そして「新型機のテスト中」というシチュエーション。役者が揃いすぎているんだ。だとするならシェルターに避難するよりは…!

 

 

 

 

「いいか、ジュール中佐。俺は司令部へ向かう!向かわせてもらう!そこで状況を把握し、現場の指揮系統に直接介入する許可を!俺に、ある程度の裁量を預けてくれ!」

 

 

 

「裁量だと!? 貴殿は自分が何を言っているのか分かっているのか! 軍の指揮に門外漢が――」

 

 

「後者の場合だ!」

 

 

 

 

 俺はイザークの言葉を遮るように叫んだ。なりふり構ってられん、外交問題という言葉が頭によぎるが最悪の事態を想定した上で必要ならどれだけ失礼で悪質な事だってやってやるさ!許せカガリ!

 

 

 

 

「もしストライクフリーダムが強奪された場合、こちらにはそれに対する『対処法』がある。だが、それはそちらの司令部の機材と権限がなければ行えないんだ。犠牲者を一人でも減らしたいなら、俺を信じてくれ!」

 

 

 

 俺の脳裏には、エリカさんに無理を言って、絶対に公にできない形で仕込んでおいた「保険」が浮かんでいた。というかここまで言った時点でイザークとディアッカには後で口止めしなきゃダメなんだから最悪だよ畜生がよぉ!!!

 

 

 俺が必死の形相で頭を下げると、イザークは「こいつ、本気で言っているのか?」という、正気な人間を疑うような冷ややかな、それでいて射貫くような視線を向けてきた。

 

 

 

 だが、皮肉にも直後に響いた地を揺るがす大爆発が、彼の逡巡を力ずくで終わらせるのであった。

 

 

 

 

 

「……チッ! 了解した。ただし、死なれては俺の首が飛ぶ。トダカ海将、副総裁を頼みます」

 

 

 

「心得ております。……ユウナ様、行きましょう!」

 

 

 

「……すまん!恩はいつか返す!死ぬなよ二人とも!」

 

 

 

「了解! あんたもな、副総裁殿!」

 

 

 

 

 

 二人が疾風のごとくMSデッキへと消えていくのを見送り、俺はトダカを促して司令部へと走り出す。

 

 

 というかトダカ速いな!?見た目的に中年のオッサンのはずだというのに明らかに俺より足が早く息一つ乱していない。寧ろ俺に合わせてくれるようで常に周りを警戒しながら彼は俺に付き従っていた。

 

 

 

 

 

「急げ、トダカ! ここを抜ければ司令部だ!」

 

 

 

 通路を駆け抜けながら叫ぶ。背後で凄まじい爆発音が響き、衝撃波が建物を揺らした。強化ガラス越しに見える外の景色は、もはや地獄絵図だ。

 

 

 

 空を埋め尽くすのは、地球連合の主力量産機であるはずのウィンダム。だが、その数は異常だ。こんなユーラシアの辺境にある、ストフリの調整のためだけに用意されたような小さな基地を落とすにしては、戦力が過剰すぎる。一二機どころか、増援も含めると二十は超える機影が見える。

 

 俺達が普段相手をしているのは寄せ集めのMS部隊でジンやレイスタといった混成部隊ばかり。だというのに貴重なウィンダムをこれだけ集めるあたり相当念入りに準備した襲撃なんだろうな畜生が!!!

 

 

 

「……ッ、ユウナ様! あそこのウィンダムを見てください。動きが良すぎます!」

 

 

 

 並走するトダカが、窓の外で宙を舞う機体を指差して鋭く指摘した。

 

 

 

 オーブ海軍のトップにまで上り詰めた男の目は誤魔化せない。俺も走りながらその機動を視界に捉え、背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 

 

 

(……ああ、分かってる。おかしいだろ、あんなの!)

 

 

 

 

 迎撃に出ているジュール隊の機体――ザクやグフが、数に押されているだけじゃない。個々のウィンダムが、まるで物理法則を無視したような、なりふり構わない動きで襲いかかっているのだ。

 

 

 

 嫌々ながらも俺がアカツキに乗り、ババと複座で戦場を駆けた時に感じたあの感覚。エースパイロットが機体性能を限界まで引き出す時の「鋭さ」とはまた違う。

 

 

 

 もっと不気味で、もっと機械的な……パイロットの肉体にかかるGを全く考慮していないかのような、破壊の渦を撒き散らす動き。そう、少し前に戦ったデストロイと似たような動きが…!

 

 

 

(……おいおい、嘘だろ。まさか、こいつら……!)

 

 

 

 俺の脳裏に、前世の知識が最悪の予測を弾き出す。

 連合の「強化人間」。薬漬けにして恐怖も痛みも忘れさせ、パイロットを使い潰す、あの不快極まりない技術。

 

 

 

 

「ブーステッドマン……!テロリストの連中、まだあんなもんを使ってやがるのか!」

 

 

 反吐が出る。清浄だの世直しだの何だと言いながら、裏ではまだあんな「使い捨ての部品」を戦場に放り込んでいるのか。

 

 

 

 コンパスで相手にしていた寄せ集めとは違う、薬物兵士とウィンダムの数の暴力。それは、明らかにテロリストが簡単に用意できる機材じゃない、だとするなら、この襲撃の「本気度」は俺の予想を遥かに超えている。

 

 

 ただの嫌がらせや牽制じゃない。連中は、何が何でもここでストライクフリーダムを奪うか、あるいはこの場所を俺ごと跡形もなく消し去るつもりだ。

 

 

 

「トダカ、急ぐぞ! 司令部まであと少しだ。モタモタしてたら、あの『化け物』共がストフリに辿り着いちまう!」

 

 

「はっ!」

 

 

 

 

 崩落しかけた天井を潜り抜け、俺たちは司令部の重厚な防壁扉へと飛び込んだ。

 

 

 扉が閉まる瞬間に見えた外の空は、ウィンダムの放つミサイルの煙で、どす黒く塗り潰されていた。

 

 

 

 司令部の中に滑り込むと、そこは怒号と電子音の渦だった。壁一面に広がるメインモニターには、基地を包囲するように四方八方から迫るウィンダムの輝点が溢れ、オペレーターたちが悲鳴のような報告を上げ続けている。

 

 

 俺は荒い息を整える間もなく、メインモニターの隅、格納庫のライブ映像を凝視した。

 

 

 

 そこには、外部電源の太いケーブルを強引に引きちぎり、不自然なほど滑らかに、そして殺意を隠そうともせずに立ち上がる、黄金の関節を持つ機体があった。

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、あれー、おかしいなートダカ君? あのストライクフリーダム動いてるよね? まだ出撃命令とか一文字も出てないよね? つまり、これって……」

 

 

 

 

 俺が引きつった笑顔のまま、現実逃避気味に問いかけると、隣に立つトダカは、いつも通りの冷静な……しかし、あまりにもストレートすぎて心に突き刺さる声音で即答した。

 

 

 

「……ユウナ様。あれは、強奪されてますね」

 

 

 

「頭ガトーかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 俺の魂の絶叫が、混乱の極致にあった司令部に響き渡った。

 

 

 

 ガトーか! テメェはガトーか!?あの「ソロモンよ、私は帰ってきた!」のノリで、わざわざ調整終わりの一番美味しいタイミングを狙って奪いやがったのか!

 

 

 というか、この世界のガンダムタイプは「強奪されないと死ぬ病」にでもかかっているのか!?

 

 

 

 

 ヘリオポリスでの初期G奪還、アーモリーワンでのセカンドシリーズ……。歴史は繰り返すというが、ここまでテンプレ通りに奪われてたまるか! これ、絶対に「中の人」が裏切るか「得体の知れない工作員」が入り込んでるパターンじゃないか!

 

 

 

「な、なんだと!? 何を言っているんだ、オーブの副総裁が!」

 

 

「いえ…えっ!?ストライクフリーダムが勝手に起動しているだと!? バカな、認証はどうなっている! バイオメトリクスも、量子暗号キーも通っていないはずだぞ!」

 

 

 

 俺たちのやり取りを聞いて、周囲のザフト兵たちがようやく「目の前の敵(ウィンダム)」ではなく「背後の牙(ストフリ)」の異変に気づき、モニターを凝視して凍りついた。

 

 

 

 無理もない。彼らにとってそれは、自分たちが守るべき至宝であり、コンパスに引渡される平和の象徴たる「最強の盾」だったはずだ。それが今、自分たちの喉元を切り裂こうとする「最凶の矛」へと変貌している。

 

 

「中座しているレオナード少尉を呼べ! 通信を繋げ! 何を遊んでいる!」

 

 

「ダメです、反応ありません! 予備回線も遮断、完全に外部からの制御を受け付けていません! OSのルート権限が……上書きされています! 書き換え速度が異常です、こんなの人間業じゃありません!」

 

 

 

 

 

 オペレーターの絶望的な叫び。その間にも、ストライクフリーダムは重厚な格納庫のハッチを、内側からの物理的な一撃……単なる格闘戦用のマニピュレーターによる殴打で、紙細工のように粉砕した。

 

 

 

 砕け散った装甲板が地面を削る音が、マイク越しに司令部へ響き暗い格納庫の中から、あの黄金に輝く関節が、闇を裂いて現れる。

 

 

 

 モニターに映し出されたその光景に、俺は心臓を冷たい手で掴まれたような感覚に陥った。

 

 

 瓦礫の山となった格納庫ハッチの向こう側。立ち昇る黒煙を背負い、静かに、だが圧倒的な威圧感をもって「それ」は現れた。

 

 

 

 左右に広げられたウイング、黄金に輝く関節、そして——かつてアラスカでフリーダムが降臨した時を彷彿とさせる、あの不吉なほど美しい「構え」。

 

 

 

 ビームライフルこそまだ手にしていないが、あいつには全身に内蔵兵器がある。カリドゥス複相ビーム砲、クスィフィアスだけでもどれだけ脅威になるか。

 

 

 

 あのマルチロックオン・システムが起動し、フルバーストが敢行されれば、この司令部どころか基地内にいる人間は一人残らず光の中に消えるだろう。

 

 

 

 

「……ッ、全員聞け!」

 

 

 俺は喉が張り裂けんばかりの声で、パニック寸前の司令官やオペレーターたちに向かって叫んだ。

 

 

 

「俺はコンパス副総裁、ユウナ・ロマ・セイランだ! 先ほどジュール中佐より、この場における一切の裁量を委任された! 異論は認めん!」

 

 

 

「な、何を……!? 副総裁、今はそれどころでは——」

 

 

 

 食ってかかろうとする基地司令の言葉を、俺は力ずくで遮る。あークソ!もうどうなってもいいや!!

 

 

「黙って聞け! 緊急事態だ! 今から五分間だけこの部屋にいる全員、ここから出ていけ! 急げ! 一刻を争うんだ!」

 

 

「なっ……ふざけるな! 敵に襲われている最中に、司令部を空けろだと!? 貴様、正気か!」

 

 

 

 当然の反応だ。外では味方が死んでいき、目の前では最新鋭機が奪われようとしている。その最中に「五分も全員出ていけ」なんて、正気の沙汰じゃない。

 

 

 だが、ふざけてるのはこっちの状況なんだよ!

 

 

 

「ふざけてるのは分かってんだよ!! だがな、あの機体が本気を出せば、ここにいても数秒後には塵になるんだ! 死にたくなければ今すぐ指示に従え!」

 

 

 

 俺が叫ぶのと同時に、隣にいたトダカが迷いなく腰の銃を抜き、司令官の鼻先に突きつけた。

 

 

 

「……トダカ海将!? 貴公まで何を!」

 

 

 

「ユウナ様の言葉は、オーブの、そしてコンパスの総意です。……司令、私は本気ですよ。ここで無意味に焼かれたくなければ、部下を連れて即座に退去してください。これは『脅迫』ではなく『命令』だ」

 

 

 

 トダカの、冷徹なまでに据わった眼光。戦場をくぐり抜けてきた本物の武人の放つ圧力に、司令官は言葉を失い、顔を青ざめさせた。

 

 

 ついでに俺も初めて見た本気の殺意を宿したトダカの言葉に一瞬ブルっとしてしまったが、もうそんな事を言ってる余裕もない。

 

 

 

「ここには機密に関わる『対抗策』がある! 他国の兵士に見せるわけにはいかないんだ! まとめて今すぐ、消えろぉ!!」

 

 

 

 俺の咆哮に押されるように、オペレーターたちが弾かれたように席を立ち、出口へと殺到し始めた。司令官もまた、苦渋に満ちた表情で「……っ、総員、退避だ!」と叫び、部屋を後にした。

 

 

 バタン、と重厚な防壁扉が閉まり、司令部の中は、電子音と俺の荒い呼吸音だけになった。

 

 

 

「あークソが!クソが!!クソがァ!!!どんだけこの後頭下げる羽目になるんだろうなコレ!!トダカ、扉をロックしろ。誰も入れるなよ!」

 

 

 

「了解しております。……急ぎましょう、ユウナ様。あの化け物が、狙いを定めています」

 

 

 俺は震える手で、メインコンソールの最深部へとアクセスを開始した。幸いにもオーブ製のモノと使い勝手は変わらない。もしこれがコーディネイター専用のクソ難しいコンソールなら今すぐ人員を呼び戻す羽目になっていたから幸運だ。

 

 

 

 画面の向こうでは、ストライクフリーダムの胸部砲が、不気味に明滅し始めている。

 

 

 

 メインモニターに映し出される光景は、もはや一方的な虐殺へのカウントダウンにしか見えなかった。

 

 

 空を支配するのは、黄金の関節を煌めかせ、自由の翼を広げた最強の機体――ストライクフリーダム。それに対峙するイザークのギャン・シュトロームとディアッカのゲルググメナースは、ザフトが誇る最新鋭機でありながら、その絶望的な火力差に防戦一方を強いられている。

 

 

 

「ええい、当たらんか! 貴様、レオナード少尉! 乱心したかッ!」

 

 

「中佐、深追いは無理だ! あの機体がNJC搭載機だってことを忘れるな! 弾幕の密度が……!」

 

 

 

 通信回線から漏れ聞こえる二人の叫びには、隠しきれない焦燥が混じっていた。

 

 

 無限に近いエネルギーを背景に、ストライクフリーダムはクスィフィアス3レール砲とカリドゥス複相ビーム砲を惜しみなく撒き散らしている。それはキラが見せる「不殺」の舞いなどではない。ただ標的を効率的に、冷徹に消滅させるための、純粋な破壊の嵐だ。

 

 

 仮にドラグーンまで使われてたら間違いなく俺は死んでたはずだ。地上でドラグーンが使えないという事実に感謝するしかない。下手に改良しようぜとか余計な事を言わなくて本当によかった…!

 

 

 

 

(……化け物め。あんなものを敵に回して、よく今まで誰も死んでないもんだよ!)

 

 

 

 俺は奥歯を噛み締め、震える指をコンソールの上で踊らせた。

 

 

 目の前の画面は、本来なら味方MSへ戦術データを送るための支援用インターフェースだ。俺はそこへ、エリカさんに無理を言って仕込ませた「バックドア」を無理やり割り込ませる。

 

 

 彼女は、このプログラムを組み込む際、酷く複雑な表情をしていた。

 

 

 

 

「ユウナ様、これは技術者としての誇りを捨てるようなものです。……これが使われないことを、切に願いますよ」

 

 

 

 あの時の彼女の言葉が脳裏をよぎる。だが、すまないエリカさん。今ここで、呪いを解き放たなきゃ、この基地の全員が灰になるんだ。

 

 

 

 ストライクフリーダムが、さらなる高高度へと急上昇を開始した。翼を最大限に広げ、全ての砲門がこの司令部を含む基地の中枢へと向けられる。マルチロックオンの赤いカーソルが、モニター上のあらゆる熱源を捉え、無慈悲に重なっていく。

 

 

 

「……悪いな、名前も知らんがレオナードとかいう少尉さん。……もしくはこいつを操ってる裏のどいつか!」

 

 

 

 俺はアドリブで、機密保持用の隠しコマンド入力欄を呼び出した。

 

 

 

 そこへ、収穫の時期を意味する、この「最強の矛」を叩き折るためのキーワードを叩き込む。

 

 

 

 

『ougon no aki』

 

 

 

 

 実りすぎた、過ぎた力という名の牙!俺達を殺そうとする殺意の刃になると言うのなら。それを今、根こそぎ刈り取らせてもらう!

 

 

 

 「Enter」キーを指が白くなるほどの力で叩きつける。その瞬間、暗号化されたパケットがストライクフリーダムのOS……その最深部、カーネル層へと一気になだれ込んだ。

 

 

 

 その瞬間だった。

 

 

 

「……!? なんだ、動きが……止まったのか!?」

 

 

 

 イザークの驚愕の声が司令部に響き渡る。空中で、黄金の輝きを放ちながら砲撃態勢に入っていたストライクフリーダムから、一瞬にしてすべての「生命感」が消え失せた。

 

 

 

 機体を覆っていた鮮やかなフェイズシフト装甲が電圧を失い、不気味な鈍色の灰色へと変貌していく。スラスターの光も、ビーム光も含め全てが文字通り死んだ瞬間だった。

 

 

「落ちろよぉ!!」

 

 

 俺の呟きと同期するように、最強の機体は推進力を完全に喪失。

 

 

 

 重力に引かれるまま、数瞬前まで神のごとく空に君臨していた鉄塊は、無様な姿で地表へと真っ逆さまに墜落していく。

 

 

 

 

 

 地を揺るがすような大質量衝突の轟音。

 

 

 

 立ち昇る巨大な土煙。

 

 

 

 静寂。司令部を包んでいたけたたましいアラート音すら、俺が全ての機能を遮断したことで止まっていた。

 

 

 

 俺は全身の力が抜けるのを感じ、汗ばんだ手をコンソールから離した。膝の震えが止まらない。

 

 

 

(……やった。本当に、止まりやがった……)

 

 

 

 モニターの向こう側、土煙の中に横たわる灰色の巨体を見て、俺はただ深く、長く、肺の中の空気をすべて吐き出した。死の淵から生還した実感というよりは、あまりの綱渡りっぷりに胃の腑がせり上がるような思いだ。

 

 

 

 

「トダカ、決めたぞ! 今度からMSのコックピットには全部、鍵をつける! それも物理的なやつだ! 南京錠でも何でもいい、アナログだなんだと笑う奴は叩き出す! 知るか、ガンダムってのはな、盗まれるために作られてるようなもんなんだよ!!」

 

 

 

 俺が半ばパニックに近いテンションで喚くと、トダカは呆れたような、だがどこか納得したような複雑な顔で頷いた。

 

 

 

 そう、この世界の高性能機は奪われる。ふざけてるのかってくらい奪われる。デジタルなセキュリティなんて、裏切り者かザフトレッドのエリートだのが出てきたら一瞬で紙屑だ。だったらもう、ガチガチの物理錠で物理的に入れないようにしてやるわっクソが!!!

 





 フリーダム強奪事件終了!

・レオナード
 劇場版特典小説に登場するアグネスの彼氏。
今作品ではストライクフリーダムのテスト及び運搬を行う予定であったが謎の人物(銀髪の金眼野郎)に洗脳されてしまい基地にて暴れる事になる完全な被害者です。彼がやろうとしていたことはストライクフリーダムのOSを書き換えてリミッターなども全部解除し、基地を最大火力で化し飛ばす為の行為。無理にOSを書き換えようとしているが為に脳が焼き切れんばかりに酷使されてそうですが、最終的には……。

・フリーダム強奪事件
 謎の人物の目的は基地がテロリストの襲撃(ブルーコスモス系のテロリストなどの機体を秘密裏に奪ってパイロットを洗脳状態にした上でブースデッドマンに改造して捨て駒として投入)の最中にストライクフリーダムが暴走を始め、それを近隣の『偶々』来ていたファウンデーションが撃墜する事でオーブとプラントに恩を売りつつ、戦力を確かめる目的。
実はユウナに関しては掴んでおらず、仮にユウナがいた場合最優先で謎の人物はユウナを直接排除していたでしょう。アコードの洗脳がどれ程までのモノなのか?は書籍などによって複数ありますが、今作では徹底的に至近距離から脳を弄り回された場合、ほぼ人形の様に従う様になるという設定に。下手すると原作より強化されてそうですが……

・パスワード
 実はこの辺りは最初期にユウナがちゃんと


「一つ目だ。モルゲンレーテが今後製造する全機体、特に次期主力の『ムラサメ』のOSに、僕だけがアクセスできるバックドアを仕込んでほしい。親父も、その背後の連中も、誰も知らない僕だけの『裏口』だ。いざという時、この国の技術が彼らの独裁のために使われるのを、僕の手で物理的に止められるようにね」

 とエリカさんに口にしており、現在ではムラサメどころかオーブ製のMS全てに停止ワードをインプットしており、それはプラントで製造されつつもオーブで最終調整を行ったストライクフリーダムなども含めてであって、それに当てはまらないのはカナードのドレッドノートイータくらいでしょう。

 ユウナが少し前に比喩抜きでハニトラをされた場合、下手をする時オーブが滅びると言った理由は、ユウナ(と設定したエリカ)だけがオーブ製MSを全て無力化できるパスワードを知っているが為だったりします。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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