破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第二十話 ナチュラルを無礼るな

 

 

 

 

 

 

 俺は荒い息を吐きながら、急いで司令部の端末を操作する。今使った「コード」の入力履歴、そしてバックドアの痕跡。これらをザフトの連中に見られるわけにはいかない。

 

 

 

 証拠隠滅を……と必死に指を動かそうとしたが、画面には「Task Completed / Logs Purged」の文字が。

 

 

 

 

「……流石だな、エリカさん」

 

 

 

 一度使えば自動的に形跡を抹消する。そこまで含めてが彼女の仕事だったらしい。予想以上の仕事っぷりに安堵の息を吐く。

 

 

 

 この「緊急停止コマンド」は俺がこの世界に転生して以来、土木用MS『リビルド』や医療用『ホスピタルアストレイ』の開発に携わっていた頃から、密かに、かつ執拗にエリカ・シモンズに提案し続けてきたものだ。

 

 

 

 勿論最初はドン引きされた。民間用MSのOSをコードひとつで即座に戦闘用にする。悪用されれば間違いなく戦火が広がりねない上に救助用MSを戦闘用に戦時は移行するなど理念に中指を立てる様なモノだ。

 

 

 結果的にオーブ防衛戦では役に立ったとはいえ、出来る限りリビルドを戦闘にはもう出したくないけどな。被害も多く結果的にはリターンも大きいが損害も多かったのだから。

 

 

「有事の際にはバックドアを通じて民間用OSを戦闘用に書き換える? ユウナ様、それは倫理的に……」

 

 

 

 だと言うのにそんな彼女の正論を押し切り、俺が搭載させたのはさらに悪辣なシステムだった。特定のコードを受信した瞬間、オーブ製のOSを使っている機体は、その全てが「死ぬ」。

 

 

 単なる電源オフではない。OSのカーネル層、つまりシステムの根幹そのものを瞬時に自己崩壊・削除させるコマンドだ。

 

 

 理屈は巧妙に隠蔽されており、外部から見れば致命的なシステムエラーにしか見えないが、実際には人間で言えば脳みそと神経網が全て焼き切られるに等しい処置だ。

 

 

 

 俺が「ユウナ・ロマ・セイラン」に転生した以上、いつかキラやアスラン、あの「主役級」の化物共と敵対する可能性は常に考えていた。あいつらが正義の名の下に俺を討ちにくる日が来た時、せめて足掻くための、あるいは心中するための毒物を仕込んでおく。それはこの世界で生き残るための、俺なりの執念だった。

 

 

 このコードを知っているのは、開発者のエリカさんと俺のみ。トダカもシステムの存在こそ知っているが、発動キーまでは知らない。

 

 

 

 コード名は『ougon no aki(黄金の秋)』。

 

 

 

 前世で見た、あるガンダム作品の最終話のタイトル。

 全てを塵に還す月光蝶のように、過ぎた力という実りを強制的に終わらせ、冬へ、無へと叩き落とすための言葉だ。

 

 

 

「……さて、後片付けだ」

 

 

 

 

 司令部の防壁扉が解錠され、怪訝な顔をしたザフト兵たちがゾロゾロと戻ってくる。彼らの視線の先、メインモニターの中では、ストライクフリーダムという目的を失ったことでウィンダム部隊が目に見えて混乱し、イザークたちの猛攻によって次々と撃破されていく様子が映し出されていた。

 

 

 

 そして、地表に無様に横たわる灰色のストライクフリーダムを、イザークのギャンがまるで見張るようにその傍らに着陸させる。

 

 

 

 「強奪」という最悪のテンプレは、俺が仕掛けた「最悪の保険」によって、ひとまず泥沼の中に沈んだ。だが、本当の地獄はここからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後。基地内の、ひどく冷え切った一室。

 

 

 俺、トダカ、そして戦闘を終えたばかりのイザークとディアッカの四人が顔を揃えていた。

 

 

 

 

「……まず、謝罪をさせてくれ。一時的なものとは言え我が隊の者が、あのような……」

 

 

 

 

 イザークが絞り出すような声で口を開いた。あのプライドの高い男が、屈辱に震えながら頭を下げている。だが、報告の内容は謝罪以上に最悪なものだった。

 

 

 

 襲撃してきたウィンダム部隊――テロリストを自称する連中は、機体の多くは撃墜。中には大破させられ、パイロットを確保も狙っていたものもあるが、直前に、全員が即座に自決。それも、迷いなく自分の頭を銃で撃ち抜くという徹底ぶりだ。

 

 

 

 そして、ストライクフリーダムを強奪したレオナード・バルウェイ少尉もまた、機体が停止した直後、コックピット内で自ら命を絶っていた。

 

 

 

 

「あり得ない……信じられねぇよこんなこと」

 

 

 

 

 ディアッカが頭を抱え、吐き捨てるように言い放つ。

 

 

 

「レオナード少尉は、ザフトレッドの中でも優秀なパイロットだ。思想検査だって何度もパスしている。あいつはどちらかと言えばナチュラル軽視の傾向があった。間違っても、ブルーコスモスの残党なんかに協力するようなタマじゃないんだ。金で動くような奴でもない」

 

 ディアッカの言い分はもっともだ。コーディネイター至上主義に近い人間が、自分たちを「排除されるべき種」と定義するブルーコスモスと手を組む。明らかに論理的に破綻している。

 

 

(……だが、論理が通じない「やり方」はこの世界に、いや、前世の知識にはいくらでもある)

 

 

 

 俺は内心で、前世でプレイした『マブラヴ オルタネイティヴ』という作品の、あまりにも救いのない設定を反芻していた。

 

 

 

 人類がBETAと呼ばれる異種生命体に蹂躙され、種としての存亡を懸けて狂気に手を染めた絶望の世界。そこでは兵士を効率的に運用し、あるいは機密保持のために口を封じるべく、個人の尊厳など欠片もない「意志の書き換え」が日常的に行われていた。

 

 

 例えば、特定の指向性を持たせた蛋白質(プロテイン)を脳内に注入し、物理的に神経回路を再構築することで、本人の意識とは無関係に身体を駆動させる手法。あるいは、深層心理への強力な催眠暗示と薬物による精神改竄、果ては脳内に埋め込んだチップによる神経信号への直接干渉。

 

 

 それは単なる「命令への服従」ではない。本人の人格や倫理観、さらには生物としての生存本能さえも演算上のノイズとして切り捨て、脳そのものを機体制御の一部――すなわち、代替可能な「生きた部品」へと変貌させる事すら可能な外道な技術だ。

 

 

 あんな人間離れしたOSの並列書き換え速度。そして、機体が停止した瞬間に躊躇なく引き金を引き、己の脳を吹き飛ばしたあの機械的な自決。それらは教育や思想といった、本人の理性や感情に訴えかける生温い「洗脳」の範疇を遥かに逸脱している。

 

 

 何らかの手段で脳の深層意識を完全にジャックし、個人の尊厳も未来もすべてを強制的に上書きして、文字通り「使い捨ての演算ユニット」や「自爆装置」へと変える不快極まりない技術。それがこの世界でも、既に実用化され、現実の脅威として牙を剥いているんじゃないか――。

 

 

 そんな、背筋を氷が這うような、心臓が冷えていくような戦慄が俺を襲う。

 

 

 

 

 冷え切った沈黙が流れる中、俺は震えを押し殺し、絞り出すように言葉を繋いだ。

 

 

 

 

「……荒唐無稽な話に聞こえるかもしれないが、聞いてくれ。薬物、催眠、あるいは脳への物理的な干渉……そういう『意志そのものを上書きする技術』が使われた可能性はないか?」

 

 

 

 俺の言葉は、静まり返った室内で不気味なほど重く響いた。トダカは表情を険しくさせ、微かに眉を寄せて頷く。

 

 

 

 隣のイザークとディアッカは、信じがたいものを見るような目で俺を見つめた後、その言葉の持つ重圧に耐えかねたように深く息を呑んだ。

 

 

 

「連合にはかつて、ブーステッドマンやエクステンデッドといった『強化人間』の技術があった。……もし、その延長線上で、他人の精神を強制的に操り、死ぬまで人形として使い潰すような『何か』が完成しているとしたら? 思想検査なんてものは、脳そのものを物理的に書き換えられちまえば、何の役にも立たない、ただの紙屑だぞ」

 

 

 

 

 俺の仮説は、数多の激戦を潜り抜け、戦場の現実を知り尽くしてきた彼らにとっても、容易には受け入れがたい「悍ましさ」に満ちていた。人間を人間として扱わない、その徹底した効率性と非人道性。

 

 

 

 だが、目の前で起きた「優秀なザフト兵が最新鋭機を強奪し、理由も語らず即座に自決する」というあり得ない現実を説明するには、それほどまでに不条理で、おぞましい理由が必要だった。

 

 

 

 

「……セイラン副総裁。貴殿のその『推測』、荒唐無稽だと笑い飛ばせればどれほど良かったか……」

 

 

 

 

 イザークが低く、地を這うような声で言った。その拳は白くなるほど強く握りしめられ、微かに震えている。

 

 

 

 誇り高きザフトの赤服が、自らの意志を剥奪され、得体の知れない何者かの「部品」として使い捨てられた。その屈辱と憤怒という可能性に彼の瞳に鋭い殺意を宿らせていた。

 

 

 

 

「だが、あの少尉の死に様を見れば……否定はできないか。奴らは、俺達の誇りすらも泥靴で踏みにじるつもりなのか?」

 

 

 

 ディアッカもまた、いつもの軽口を完全に封じ、暗い表情でモニターに映るストフリの残骸を見つめている。俺は心臓の鼓動が速まるのを感じながら、確信していた。

 

 

 この強奪劇は、単なる機体奪取が目的ではない。もっと根深く、もっと邪悪な「何か」が、この世界の水面下で蠢き始めている。

 

 

 

 

「……だが、水掛け論に過ぎませんな。確証を得るのは極めて困難でしょう」

 

 

 

 重苦しい空気を切り裂くように、トダカが冷静な、しかしどこか突き放すような口調で言いきる。

 

 

 

「単純にレオナード少尉が隠れブルーコスモス……あるいはザラ派とは別の過激派閥であった可能性も捨てきれません。動機も、手口も、本人が物言わぬ屍となった以上、真相は闇の中です。副総裁の仰るような荒唐無稽な技術が実在したとしても、立証する手だてがなければ、それはただの空想で終わってしまう」

 

 

 

 トダカの指摘は痛いほど正論だった。物的証拠も、犯行声明もない。この混乱の中で、誰が、どうやって、何のために――その答えに辿り着くための糸口が、あまりにも少なすぎる。

 

 

 だが、そこでイザークが、苦虫を噛み潰したような顔でポツリと漏らした。

 

 

 

 

「……一つ、懸念材料がある」

 

 

「何だ、イザーク。出し惜しみしてる場合じゃないぞ」

 

 

 

 

 ディアッカの促しに、イザークはモニターにユーラシア大陸の北東部、この基地からそれほど遠くない地点を指し示した。

 

 

 

 

「現在、この近隣にファウンデーション王国の使者が滞在している。護衛として自国のMSを随伴させてな」

 

 

 

 

(……はい、黒ーーー!! 絶対黒! 確定演出入りましたぁ!! 99.9%黒幕じゃねぇか!)

 

 

 

 

 俺は内心で、前世で培った「悪役の嗅覚」がビンビンに反応するのを感じていた。原作では聞いたこともない国名だが、そんな新興勢力がこんなタイミングで、こんな場所に、MSまで連れて現れる? 出来すぎてやがる。

 

 

 

「ファウンデーションが?ユーラシアから独立して死ぬ程仲悪いはずだろうに……なぜユーラシアにファウンデーションの使者が?」

 

 

「独立に伴う諸問題の解決、あるいは支援の要請……という建前で、周辺諸国と接触を図っているようだ。自国のMSを護衛につけているのは、自衛のため、というのが彼らの主張だが」

 

 

 

 

 イザークの話を聞きながら、俺は冷や汗が止まらなかった。

 

 

 下手をしなくても、黒幕はこいつらだ。なんかもうガンダム世界の他の知識云々ではなく、明らかに怪し過ぎる。なんらかの介入を狙って、この混乱を「演出」したんじゃないのか?と確信できる程度には。

 

 

 

「……もし、そのファウンデーションが裏で糸を引いていたとしたら? ストフリを奪わせることで、ザフトと連合、あるいはオーブの間に決定的な亀裂を入れようとしたんじゃないか?」

 

 

 

 俺がそう食い下がると、トダカは相変わらずのポーカーフェイスで肩をすくめた。

 

 

 

「それこそ、水掛け論ですな。全く確証がありません。……それを言うのであれば、失礼ながら一番怪しいのは『我々』も同じですから」

 

 

 

「我々、だと?」

 

 

 

「ええ。オーブがプラントに恥をかかせ、外交上の譲歩を引き出すために、機体に細工をして暴走させた……。今回の騒動で、マッチポンプ的に得をしたのは誰か。そう疑われれば、我々もまた有力な容疑者の一人と言えるでしょう」

 

 

 

 トダカの冷徹な分析に、俺は言葉を失った。

 

 

 

 そうか、俺がさっきやった「強制停止」さえも、裏を返せば「最初から止める準備をしていた」という疑念に繋がるのか。

 

 

 

 この戦場は、ビームライフルやレールガンの応酬だけで終わるほど単純じゃない。政治と、謀略と、そして得体の知れない「精神への干渉」。

 

 

 

(もし……もし相手が、本当に脳を直接書き換えるような催眠や洗脳を仕掛けてくる連中だとしたら。俺みたいな『中身』が特殊な人間なんて、真っ先に狙われる標的じゃないか)

 

 

 

 俺は奥歯を噛み締め、決断を下した。この世界で生き残るために、そしてオーブという国を守るために、俺はもう暫くの間、表舞台から姿を消すしかない。

 

 

 

 脳裏に、先ほど入力した『ougon no aki』の文字が浮かぶ。

 

 

 

 あのコードを使えば、オーブ製のOSを積んだMSはすべて停止する。文字通り、すべてだ。だからこそ、その存在も、キーワードも、俺以外の誰にも知られてはならない。知られたが最後、オーブの国防は一瞬で崩壊し、国は滅びる。

 

 

 

 

(『黄金の秋』……。前世で見たあの物語の終わりと同じだ。すべてを塵に還し、文明を冬へと眠らせる月光蝶……せめて、あんな穏やかな最終回を迎えたいもんだがどうなるやら)

 

 

 

 

「……いいか、ジュール中佐、エルスマン大尉。ここからは軍ではなく、情報部としての仕事だ。本国に戻り、徹底的に調査を進めてくれ」

 

 

 

 俺は二人を真っ直ぐに見据え、声音を落とした。

 

 

 

「敵のスパイがどこに潜んでいるか分からん以上、堂々と動くのは避けるべきだ。……俺は、もう外を出歩かん。オーブの隠れ家か、完成予定の新造艦に引き籠もる!真相が明らかになるまで、俺という存在を安全圏に隔離しなければ、オーブそのものが滅びかねないんだ」

 

 

 

 大袈裟に聞こえるかもしれないが、俺の「知識」と「権限」は、今やそれほどまでに危険な火種だ。黄金の秋を使いこなせるのは俺だけでいい。俺だけがこの言葉を独占していなければこれまでの苦労が水の泡だ。

 

 これで出撃する事も恐らくなくなるだろう。相手がMS越しから洗脳なんかをしてくる可能性がある以上、最早アカツキに乗ることは不可能だ。ババにはムラサメ辺りを運用して貰えばいい。複座で乗り回す事から解放されるなと少しだけ安堵を覚えたのは内緒だ。

 

 

 

 

「……まずは、この場の口封じだ。いいか、レオナード少尉はテロリストの凶弾に倒れた。敵はストフリを奪おうとしたが、ジュール中佐、お前がそれを阻止し、撃破・回収した。……現場にいた人員をすべて集めろ。この真実は、墓まで持っていってもらう。それができない奴は、今すぐ拘束するしかない」

 

 

 

  もうなりふり構ってられん。副総裁としての権限を、なりふり構わず使い倒してやる…!

 

 

 

 

 平和の幻想が崩れ去った今、俺に残されたのは、ドロドロとした謀略の渦中で、それでも「破滅」を先送りにするための悪あがきだけだ……あぁ、ならちょっと今から出掛けるか。

 

 

 

 ぜっっったい関わりがあるであろう!!あの種無し浮気チンポ野郎の所になぁ!!!

 

 

 





・マブラブオルタ
 名作エロゲとして今もなお語り継がれる作品。外伝も含めて世界観の詰みっぷりと人類の愚かさや尊厳を踏み躙る行為が国家単位で行われてる事も珍しくなく、洗脳シチュだけでも複数は当てはまるレベルであり。ユウナも「ナチュラル軽視」な男がブルーコスモスに協力してる様にしか見えない行動をとると知り真っ先に思い浮かべた。

・ファウンデーション
 本来であればズタボロになった基地を飛び出してくるストライクフリーダムを撃退するためにスタンバっているのだが、あまりにも早期に事態が収束した為「なんで…?」と困惑中。実はシュラが基地を離れず残っていればストライクフリーダムがどう処理されたのか?やユウナを直接始末しに行くことも可能であったが、ユウナがさっさと高速艇でプラントに向かう準備を始める+本人も後は同僚に任せりゃいいだろヨシ!とドヤ顔で行方を絡ませている為に顛末に気づけない。この辺りの優れた能力ゆえに勝利を確信してしまう融通の効かなさもアコードの欠点と言えるでしょう。もっとも、気付いた所でユウナはさっさと強引にプラントに向かう為、どうしようもないのですが。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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