破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第二十四話 大地の子供達

 

 

 

「例のテロリストによるストライクフリーダム強奪未遂……あの騒ぎの事後処理でプラントへ寄った時だ。どさくさに紛れて、コンパスの協力組織である『ターミナル』から接触を受けてね。彼らは前大戦の末期、輸送中だったこの機体を混乱に乗じて確保していたらしい。だが、確保した直後に終戦を迎えてしまい、処遇に困り果てていた。そこで、今のオーブ……いや、コンパス副総裁である俺ならどうにかしてくれるだろうと、押し付けられたわけだ」

 

 

 

 嘘ではない。だが、その裏にデュランダルとの密約やアコードへの対策が隠されていることは、今のシンにはまだ話せない。

 

 

 

 

 この機体には、実の所、対アコード用の秘策をいくつも施している。オーブの量産機開発におけるテストベッドがセイバーであるならば、このガイアは「対アコード戦術」を確立するための極秘検証機といえるだろう。

 

 

 

 

 同時に色々と、プラント側の要望も合わせて期待を背負いまくっているんだけどな。正直な話、スパロボの様にインパルスをそのままシンに渡す事も考えたが、データ収集も兼ねてとなると蓄積されたデータが少ないガイアの方が好ましい。

 

 

 

 なんせバクゥはケルベロスウィザードこそ作られてるが後継機の開発は難航しているんだ。現状でも素晴らしい機体であるからこその贅沢な悩みと言えるかもしれん。

 

 

 ジャガンナートは俺達の事を目の敵にしているが、コンパスもちゃんとスポンサーへの還元も忘れてはいない。大西洋連邦にだって引き渡されたヴォーテクスの運用データは送っている辺り、ある意味C.E.世界におけるモルモット隊が、俺達コンパスなのかもしれないな。

 

 

 

 

 俺はシンの隣に立ち、改修されたガイアの力強い脚部を見上げた。史実ではバルトフェルドが搭乗したこともあったが、この世界では違う。次世代機用のテスト機として、そして対アコード戦を見据えた兵器として改修されたんだ。

 

 

 

 果たして、シンは今どんな気持ちでこの「黒い獣」を見ているのだろうか。

 

 

 

「本来なら解体して歴史の闇に葬るべき代物かもしれない。だがな、シン。俺にはどうしても、この機体の力を必要とする予感があってね。だから、エリカ主任に無理を言って今のオーブの、コンパスの技術を注ぎ込ませた」

 

 

 俺は一呼吸置き、彼の瞳をまっすぐに見つめた。

 

 

 

「これはもう、連合の兵器でも、ザフトの遺産でもない。君がこれから立ち向かう『闇』を払い去るための、新しい翼だ」

 

 

「……俺の、ですか?」

 

 

 

 戸惑うシンに、俺は頷いて理由を並べ立てる。

 

 

 

「パイロット候補としてはハイネ、ヒルダ、そして君の三人が挙がっていた。だが、ハイネは現在開発中のジャスティスをベースとした量産試作機に載せる予定だ。ヒルダは今はグフに乗っているが、君がガイアに乗り換えるなら、君のゲルググを彼女に渡せばより戦果を挙げてくれるはずだ。……何より、この機体に最も因縁があり、誰よりも乗りこなせるのは君しかいない」

 

 

 

 

 言葉を紡ぎながら、俺の胃の奥は焼けるような不快感に満ちていた。

 

 

 俺は知っている。ステラを守りきれなかったシンの絶望を。そして、他ならぬ俺自身が、あの日、カナードに命じて、彼女の肉体ごとデストロイを消し飛ばさせたんだ。

 

 

(……嫌がらせどころか、煽りにしか聞こえないよな。彼女を殺すよう命じた張本人が、わざわざ修復したその遺品を『お前にやる』なんて、客観的に見れば悪趣味なカス野郎じゃねぇか…)

 

 

 もしシンがここでブチギレて俺を殴り飛ばし、ザフトへ帰ると言い出しても、俺はそれを受け入れるつもりだった。むしろ、それが「スジを通す」ということだ。

 

 

 彼に何も告げず、影でこっそりこの機体を極秘任務中のアスラン辺りに渡すことだってできた。だが、それは俺自身のプライドが許さなかった。

 

 

 傷口を抉るような真似だと分かっていても、俺はこの少年に声をかけるべきだと思ったのだ。彼が背負った悲劇を、俺もまた背負う覚悟で……なんてカッコ付ける訳じゃなくて、ただの自己満足な贖罪だなこれは。

 

 

 

「…………嫌なら拒絶してくれて構わない。ただ、今の君にこそ、この力が必要だと……俺は確信している」

 

 

 

 

 静寂が地下格納庫の冷たい空気と共に、俺たちを包み込んだ。シンは動かず、ただじっと目の前の黒い獣を見つめている。

 

 

 時間が止まったかのような錯覚。覚悟していた罵声も、拳も飛んでこない。

 

 

やがて、シンは静かに、深く、頭を下げた。

 

 

 

「……乗ります。乗りこなしてみせます。この機体は、俺が」

 

 

 

「……いいのか?」

 

 

 

 拍子抜けしたような俺の声に、シンは顔を上げた。その表情には、俺が予想していたような憎悪の色はなかった。

 

 

 

「セイラン副総裁……すごい顔をしてますよ」

 

 

 

「……何?」

 

 

 

 思わず自分の頬に手をやる。俺としたことが、政治家として、副総裁として、感情を殺す訓練は嫌というほど積んできたはずなのに。

 

 

 

 

「そんなにか?」

 

 

 

「はい。……まるで、今すぐにでも俺に殴ってほしいって顔です。そうされて当たり前だ、そうしてくれなきゃ救われないって……そう言ってるみたいに見えます」

 

 

 シンにそう指摘され、俺は乾いた笑いを漏らした。アコードへの読心対策の機体をつくっておきながら、シンを相手に感情を隠せてないってもう色々と終わってるじゃないか。

 

 

 シンを懐柔する為に模擬戦を組んだかと思えばシンは原作より強化される羽目になって、シンの生存率を上げる為に装備をミネルバに融通したかと思えばハイネに最後の最後に殺されかける。

 

 

 最早ぐちゃぐちゃになってシナリオは崩壊しているとはいえ、プロットはそのままというか。世界の修正力的な意思を感じる。悪役である俺は主人公であるシンとある意味相性が悪いのかもしれないな。色々な意味で。

 

 

 

「……失格だな。俺はどんな時でも感情を表に出さないのが仕事だっていうのに。これじゃ、ただの独りよがりな贖罪だ」

 

 

 

 

 いや振り返ると定期的に叫びまくって生の感情むき出しにしまくってるけどさ。シロッコ辺りなら品性下劣と言われる可能性は高いだろう。

 

 

 

 だが、シンは首を振った。その瞳は驚くほど澄んでいた。

 

 

 

「副総裁のことは、理解しているつもりです。あの時、ブリュッセルを焼き払ったデストロイがパリに迫っていた。……副総裁が、あの場で命令を下さなければ、パリは焼かれて、もっと多くの人が死んでいました」

 

 

 

 カナードの狙撃によって多くの命は救われた。しかし、それによってもっとも傷ついたのはシンだろう。

 

 

 

 一時期は廃人同然となってルナマリアが支える事により原作以上に深い関係になったと知ったが決して割り切れるはずなんてないだろうに。

 

 

 

 シンは言葉を切り、再びガイアを見上げた。かつて何度も敵対し、恋愛感情以上に別の感情を。恐らく妹であるマユと、普通に生きる事を許されなかったステラを重ねた上で。ガイアに色々と思う所もあるんだろうか。

 

 

「ステラを……デストロイを撃てと命じたあなたの決断が、どれほど重くて、どれほど正しかったか。今の俺なら分かります。それを恨むのは……筋違いだ。あなたはオーブの、世界の責任者として、やるべきことをやっただけだ」

 

 シンの言葉は、俺の胸の奥に澱んでいたドロドロとした罪悪感に、一筋の光を差し込む。

 

  かつては「アンタって人はー!」と叫んで、感情のままに剣を振るっていた少年が、今、責任という重圧を知る一人の大人として俺と対峙している。対して俺はと言えば、彼に殴られても仕方ないと「子供扱い」して頬を差し出すことで、安寧を得ようとしていた。

 

 

 情けねぇ……。これではどっちが大人か分からねぇじゃねぇか。これが妻帯者にして一児の父になる男との差か。前世の記憶があろうとなかろうと、腹の据わり方が違いすぎる。

 

 

「……このガイアも、ステラの一部だと思って、俺が守ります。そして、こいつでみんなを守ります。それが、俺にできる唯一のことだと思うから」

 

 

 

 俺は、込み上げてくる感情を抑えるために、一度だけ短く息を吐く。

 

 

 このガイアは様々な陣営が欲と期待を重ねた機体。しかし、シンにとってはステラの忘形見であり、最も憎む戦争を終わらせる為の新たなる剣なんだろう。

 

 

「わかった。……頼むぞ、シン・ホーク。こいつは、今日から君の翼だ」

 

 

 

 俺は気恥ずかしさを誤魔化すように、手元のタブレット端末を操作してガイア改のスペック表を表示させた。

 

 

「さて、それじゃあ中身の説明といこうか。このガイアは見た目以上に中身は強烈だぞ」

 

 

 俺は機体の各部を指し示した。プラントから引き取った時は殆ど修復前と変わらなかったが、モルゲンレーテで引き取って密かに改修を重ねた結果、その機体性能は最早別物だ。

 

 

 セカンドシリーズとしての長所を活かしつつ、短所を補うのではなく特化する。通常運用でもボレロを使用する事で空中戦闘も可能となったが、武装面は最早別物だ。

 

 

「内蔵武装は徹底して接近特化に偏らせてある。脚部と前足の『高周波振動爪』、そして背部に装備された二振りの大型高周波ブレード――名称は『チドリ』だ。これはストライクに装備されていたアーマーシュナイダーの技術をデカくして改良発展させたものだ。高周波振動によって対象の分子結合を分断する。フェイズシフト装甲だろうが何だろうが、触れればバターのように切れるぞ」

 

 

 実際の所、アーマーシュナイダーというよりは俺が目指したものは「メタルギアシリーズ」に登場する「高周波ブレード」そのものだ。

 

 振動による切断力の強化だけでなく、高周波電磁パルスを流す事で原子間結合を強化。対象の原子間結合力を弱体化させる事でどんなものだってスパスパと爽快に切れる様になったんだ。

 

 その上で副次効果としてこの電磁パルスはMS戦に置いては相手の内蔵OSなども破壊、麻痺、エラーさせる効果まであって予想外だったが嬉しい誤算だ。つまり、この機体はブレードで相手を切り裂く事で、フェイズシフト装甲だろうが確実に仕留める事を目指しつつ、腕や手足だけを切り裂くだけでも内部のOSまでイカれかせる。まさに「当たれば勝つ」を体現した機体と言えるだろう。

 

 

 なお、造形として参考にしたのは「ゾイドジェネシス」の「ムゲンライガー」だ。そのお陰で本来の実質固定兵装だった旧ガイアの対艦刀「グリフォン2」と比べてある程度の稼働の自由度の高さを得る事に成功した。

 

 

 余談だがこの世界にはゾイドシリーズは存在しない。

 

 

 なので面白半分でハインラインに多種多様な武装をドレスの様に着込んで戦うライガーゼロや、獣脚類のバーサークフューラーの万能武装であるバスタークロー。果てはこの世界に存在しない芋虫型ゾイドモルガによる多種多様な汎用性に最後の方は外骨格に流体金属を流し込む事で作られるバイオゾイドなんかを話した所……うん、これ以上はやめよう。

 

 

 一つ言えることは、新型リビルドシリーズにその内、芋虫型MAである『モルガ』がマジで加わりそうな事だ。あの時のエリカさんとハインラインの目はマジで怖かった…。

 

 

 

 

「ビーム兵装は……ないんですか?」

 

 

 

 

 そんな記憶に一瞬目が死につつ、ついでにとチドリについて色々と語ろうとしたところ、シンが怪訝そうに尋ねてくる。

 

 

 最新鋭機と言えば強力なビームライフルや大型砲が定番だ。なんならガイアの父と言えるバクゥもビームサーベルをちゃんと内蔵している。それ削ぎ落とした構成の違和感にパイロットとしての直感が反応したのだろう。

 

 

「ああ、一切ない。今はドッズショックの影響でドッズライフルばかりが注目されているが、あれはエネルギー消費も激しいし、何より音が五月蝿すぎる。……この機体の主兵装は、この『ドッズ・サプレッサー・レールガン』だ」

 

 

 

 ……実際、ドッズライフルの研究開発には相当なリソースを割いたからな。ようやく『ガンダムAGE』でクランシェが使っていたような、二枚板バレルの砲身が完成し、コンパスの次世代標準武装として配備が始まっている。

 

 

 だが、既存のライフルを無理やり改造した初期型と違って、一から最適化されたドッズライフルを造ってみて判明した最大の欠点が……あの凄まじい発射音だ。

 

 

 

 脳内で、あの「ズキュゥゥン!」という独特の螺旋状ビームが放つ爆音を思い出す。この世界でも見事に再現されてしまったあの音は、威力こそ絶大だが、隠密性という意味では文字通り「最悪」だった。

 

 

 

「いいか、シン。ドッズライフルは派手でいいが、あれは自分の居場所を全世界に喧伝しているようなもんだ。このガイアは『獣』だ。暗闇から音もなく忍び寄り、獲物の喉笛を食い千切るのが本来の仕事だろう?」

 

 

 元々のコンセプトのガイアは悪い機体では無い。人型形態と四足獣形態の両立というスタイルは、プラントをはじめとしたコロニー内部という限定空間内においては無類の戦闘能力を発揮する。スパロボで例えるなら獣形態が地上適応S、宇宙では人型形態メインで適応Aと自在に戦う場所を選ぶ事ができるのがガイアの強みだ。

 

 

 だが、他の機体と比べると人型形態のガイアは特に尖った所の無い汎用機。故にその辺りをどうにか出来ないか?と模索した結果が、人型での狙撃と獣型での接近戦と用途をそれぞれに特化させる事だった。

 

 

 そこで問題となったのが前述のドッズライフルマジでうるさ過ぎ問題と言う訳だ。

 

 

「レールガンも本来はかなりの音が出る兵装だが、こいつは違う。ドッズ技術……つまり弾丸に従来以上の超速度回転を加えて貫通力を高める機構を実弾に応用しつつ、専用の大型サプレッサーを幾重にも噛ませてある。火薬を使わない電磁加速とこの消音機構のおかげで、発射音はドッズライフルに比べれば驚くほど小さい。夜戦や不意打ちなら、敵は弾が着弾するまで攻撃にすら気づかないはずだ」

 

 

 シンは納得したように、その漆黒の銃身を見つめた。改修されたガイアのこの無骨な武装は、派手なビームの輝きを捨ててまで手に入れた、静かなる殺意を込めてある。

 

 

 

「……なるほど。単に威力を追い求めるんじゃなくて、射程外からの一撃に特化した選択なんですね」

 

 

「そうだ。そして、この『チドリ』……。MS形態でも扱えるぞ。二本繋げれば対艦刀の様にリーチで敵を圧倒できるし、バラせば二刀流でこの機体の機動力を活かした超高速の格闘戦が可能になる。勿論獣形態では更にスパスパっと敵を切り裂ける訳で……シン、お前の反射神経なら、瞬く間にその首を刎ね飛ばせるはずだ」

 

 

 

 

 俺はそこまで言って、少しだけ表情を崩した。対ファウンデーション対策に他にも色々と積んではいるがそれよりもこの機体に込められた切実なる願いはあまりにも重い。

 

 

 そう、狙撃と白兵戦を両立したこの機体の開発にはもう一つだけある重要な目的がある。俺は勿論エリカさんやハインラインですら気づかなかったドッズライフルの盲点を。

 

 

 

 

「……まあ、実戦的な理由は今言った通りなんだが。実はこれを実弾と静音性に特化させたのには、もう一つ、極めて頭の痛い理由があってね」

 

 

「理由、ですか?」

 

 

 

「ああ。最近カガリ……アスハ代表のところに、市民団体からクレームが殺到してる。『軍事基地周辺の騒音が耐え難い』と。……主にドッズライフルのせいなんだが」

 

 

 

 俺は内心で深くため息をついた。ドッズライフルの研究に研究を重ね、ついにあの『AGE』で見慣れた二枚板バレルの砲身が完成した時は、俺も前世の記憶が疼いて「これだよこれ!」と歓喜したもんだ。

 

 

 

 だが、いざ運用を始めてみれば、あの「ズキュゥゥン!」という独特の螺旋状ビームが放つ音は、想像を絶する爆音だった。

 

 

 

 ……いや、マジで煩いんだよ。前世でも軍事基地や空港の騒音問題はよく耳にしたが、あんな次元の歪むような音を毎日演習場で鳴らされたら、そりゃ苦情も出る。ロマンと近隣住民の安眠は両立しないってことか。

 

 

 カナードは上空からの狙撃+即撤退を行ったお陰でデストロイを撃破した後も問題はなく、オーブの防衛戦でドッズスナイパーライフルを使用した時も騒音問題なんて考える必要はなかった。

 

 

 そして、戦後に改めて検証とクレームの結果生まれたこの問題を解決する為にガイアは利用されたんだ。

 

 

 

 

「新型ドッズライフルが配備されてからというもの、基地近隣の皆様から『窓が割れそう』だの『心臓に悪い』だのと言われてね。カガリも毎日その対応で半泣きだ。だからこの機体は、ビーム兵器にかまけて実弾の研究を疎かにしないためのテスト機であると同時に……」

 

 

 

 俺は真顔で、しかしどこか自虐的に続ける。住民の皆様には本当に申し訳ない。

 

 

 考えてみて欲しい。『あの』オーブ国民がだ。アスハ万歳!カガリ様万歳!と手を挙げて支持してる熱狂的なオーブ国民ですらクレームをせざる得ない辺りどれだけ根深い問題であるのかはわかりやすいだろう。

 

 

 

 

「近隣住民の皆様にご迷惑をおかけしない、環境に配慮した次世代MSでもあるんだ。……笑いたければ笑ってくれ。戦場に持ち込む殺戮兵器が『ご近所付き合い』を気にしてるなんて、馬鹿みたいな話だよな」

 

 

 

 シンは驚いたように目を見開き、それから「……アスハ代表も、大変なんですね」と、どこか遠い目をして呟いた。

 

 

 キラに懐き、オーブの一員として馴染み始めた彼にとって、国家元首の「世俗的な苦労」は意外な親近感を与えたらしい。

 

 

 

「ああ、全くだ。……だがなシン、馬鹿みたいな理由でも、結果として出来上がったのは最高の『隠密機』だ。静かに近づき、静かに殺す。それができるのは、今この格納庫にいるお前とガイアだけだぞ」

 

 

 

 俺はさらに、機体背部の追加ユニットを指し示した。とはいっても、正確にはまだ何も積んでないウエポンラッチだ。

 

 

 この辺りはカナードのドレッドノートイータのデータが相当役に立った。あちらは状況に合わせて追加装備を使い分けているらしいが、こちらはほぼ同じものを詰め込まれる予定だ。

 

 

 有事の際にはリビルドやホスピタルの様に色々詰め込むのも面白いか……この辺りはエリカさんやハインラインにまた伝えておくか。

 

 

 

「今後の換装で、広範囲へのスモークユニットも装備させる予定だ。基本の戦い方としては、平時はこの静音レールガンを人型形態で乱射して敵を混乱させつつ、隙を見て人型と獣型を使い分け、高周波ブレード『チドリ』で敵の喉笛を確実に掻き切る。エース級や大型MAが相手なら、煙をバラ撒いて視界を奪い、死角から一気に懐に飛び込め」

 

 

 

「……徹底的に、相手に何もさせない戦い方ですね」

 

 

 

 

「そうだ。サプレッサー付きのレールガンは狙撃だけじゃなくて通常戦闘にも向いているからな。今度、お前の訓練シミュレーションに狙撃メニューも追加しておく。改修の結果、ある程度空戦も可能になったが、空中からの狙撃も含めて、忘れずに叩き込んでおいてくれよ」

 

 

 

 俺の説明を一通り聞き終えたシンは、改めて目の前の「黒い獣」を見上げた。その瞳には、かつての機体への複雑な感情を超えて、新しい「相棒」を信頼しようとする光が宿っている。

 

 

 

「……わかりました。この機体、もう俺が知っている『ガイア』とは別物なんですね」

 

 

 

「ああ。中身は完全に別物だ。便宜上、今は『ガイア改』だの『ガイアspec2』だのと呼んでいるが……。どうだ、シン。どうせならお前の手で、こいつに新しい名前を付けてやってくれないか?」

 

 

 

 俺がそう振ると、シンは少し意外そうな顔をした後、腕を組んで真剣に悩み始めた。

 

 

 しばらくの間、地下格納庫に機械の駆動音だけが静かに響く。やがて、彼は何かを思い出したように顔を上げた。

 

 

 

「……『ガイアティターンズ』、っていうのはどうでしょうか」

 

 

 

「ティターンズ?」

 

 

 

「はい。確か昔の本で読んだんですけど、大地母神ガイアから名付けられたのがこの機体なら、その子供たちは『ティターン』と呼ばれていましたよね? だから、ガイアの後継機として、その子供として……『ガイアティターンズ』」

 

 

 

 シンは少し照れくさそうに、だが自分の出した答えに納得したような顔でそう言った。

 

 

 

「いい名前だな。……ガイアティターンズか。よし、正式にそう登録させよう」

 

 

 

 

(……いや、いい名前だよ!? 神話的には完璧に筋が通ってるし、シンの読書趣味が活かされた素晴らしいネーミングだ! だけどな……!)

 

 

 まぁ内心それどころじゃねぇけどなぁ!!冷や汗と同時に俺の脳裏には、前世の知識が濁流のように押し寄せている。

 

 

 民間人相手コロニー内に毒ガスをばら撒き、外伝で被害者遺族が隕石落としテロまで起こそうとする騒ぎのきっかけになるわ、民間人とか知るかと月面にコロニーを落とそうとするわ。他にも議会への攻撃やら、コロニーレーザーで民間人を焼き払ったりと暴走は続いてキレたパイロットが投降するわ。

 

 

 挙句の果てに身内から反逆者を生み出して内ゲバした挙句最後の最後は無様に滅んだ、あの宇宙世紀屈指の悪名高いクソ組織と同じ名前じゃねぇか!!

 

 

(シン、おま……知識があるのはいいことだけど、よりによってその単語を選んじゃうか!? いや、この世界に宇宙世紀なんてないんだから、俺が勝手に戦慄してるだけなんだけどさぁ!!)

 

 

 

 内心で冷や汗を流しながらも、俺は副総裁としてのポーカーフェイスを維持する。シンが頑張って名付けた名前を否定する理由はない。本当は、本当は全力で否定したいけど!!そんなクソみたいない名前マジでやめろと叫び倒したいけど!!!認めるしかねぇわなぁ!?

 

 

 

「……ああ、本当にいい名前だな。うん、気に入ったよ。これからよろしく頼むぞ、ガイアティターンズのパイロット君っ!」

 

 

 

 俺はシンの肩を叩きながら、心の中で「頼むから将来的にコンパスがティターンズみたいに暴走したりしないでくれよ……」と、あらぬ方向へ向けた祈りを捧げていたのであった。

 

 





・ガイアティターンズ
この機体のコンセプトは徹底的にビーム兵器に頼らない、ドッズショックと真逆の道を歩むというもの。ドッズライフルの影響でビームをドリルの様に回すのであれば、そのデータを得た上で、専用の回す事を前提とした弾頭を使用する事でレールガンの火力を高められないか?と検証の為に試作レールガンが。そして、ビームサーベルとはまた別の近距離武器として大型高周波ブレードのテストも兼ねており、袋小路に陥ったバクゥの新たな可能性の模索も含めプラント系の技術者も多く開発に参加しました。

 とはいえ前提技術は既にC.E.世界に存在しており、高周波ブレードは「アーマーシュナイダー系列」。電磁パルスを流し込むのは「スレイヤーウィップ」。レールガンはそもそもメビウスの時代からC.E.ではメジャーな武装であった為。数ヶ月程度の改修でほぼ完成し、シンの新たなる剣となるのでした。

 なおそれ以外にもスモークによる撹乱や、狙撃による不意打ち。妨害兵装を使用する事による連携崩しなどアコード対策と思われる概念も複数取られており、他にもいくつかの対アコード対策を内部に秘めているそうな。ちなみに獣形態での空中戦闘は本来想定してませんが、シンなら普通にやりそうだな…。

・騒音被害
 ドッズライフルが普及していく事で判明した数少ないデメリット。それは余りにも発射音がクソうるさく、複数の機体がドッズ兵装を乱射すると周辺住民やお休み中の兵士の安眠の妨害になりかねないという問題でした。ドッズライフルを消音化する技術も開発中ですが、そうなると火力や射程が現状短くなり。その結果、ドッズライフル以外の武装として試作されたのがガイアティターンズの実弾兵器「ドッズサプレッサーレールガン」。つまりこのレールガンは狙撃によって一方的に痛ぶられる恐怖を敵兵に味合わせるだけではなく、兵士や市民の不安や安眠を妨害しないという役割もあったり。

 また海賊達はそのせいで爆音のなるドッズライフルは隠密行動が難しいとの事で、通常のビームライフルや実弾兵装を使う様になったなんて裏設定も。結果的にドッズライフルは正規軍限定装備としての地位を固めそうですね。


・モルガ
 ゾイドシリーズに登場する芋虫型ゾイド。C.E.世界では昆虫型の機体の開発はあまり進んでおらず、他のどのゾイドの例よりもハインラインやエリカを驚愕させるのでした。なんせ昆虫の中でも非力な芋虫が歩兵戦闘車やキャリアー。陸路による悪路の輸送や支援用兵装による砲撃などなど高い汎用性による可能性を秘めているのですから……結果として現在オーブ及びプラントでは純粋な機械としてですが、モルガをマジで開発どころかテスト運用しており、今後の支援や復興用のリビルドシリーズのバリエーションに加わる事になるでしょう。その内要望があるのでしたらやろうかなモルガパート…。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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