"G"の為に面倒なやつをグッチャグチャにしようとしている殺人鬼と、殺人鬼をぐちゃぐちゃ()にしたい女の子の物語   作:虚憂

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おかげで屠殺はお手のもの

 エロゲーって罪深いよな。

 たった1人の主人公に沢山のヒロインが群がるのを、他の男は指を咥えて見ているかやられるしか出来ないんだ。

 そういうもんとはいえ、随分と悲しいじゃあねぇか。

 

 

    だから、せめてもの抗いとして大暴れしてやろうかなって。

 そういうくだらねーのがきっかけだったわな。

 

 

 

 

 

「ぐひっ!お、鬼ごっこも、もういいのかいお嬢ちゃん」

 

「……」

 

 

 夜の王都、せまい路地裏にて。

 面は良さそうだが身汚さが全てを台無しにしていそうなガキと、脂だらけの面の小綺麗なブタが相対していた。

 

 

「ひ、ひひ……やっと手に入れ、たんだ。お嬢ちゃん、を逃す訳がない、だろ〜ぅ?」

 

「……」

 

 

 ガキはスッとブタを眺めていて、ブタはどろっと舐め回すように見ていた。

 ここまでくっきりと対比されると面白おかしいじゃねぇか、もっとやれ。

 

 

「……」

 

「ああやっぱり、美しいよ僕のエンジェル……ふひひ、おまけに、レアスキルま、で持ち合わせて……僕の為に生まぶひぃっ!?」

 

「やっぱダメだ、聞いてらんねー」

 

「!?」

 

 

 聞くに耐えねえブタの妄言を物理的に遮ってやった、ベトベトじゃねぇか。

 

 

「ほごごっ!?おごごごがぁっ!」

 

「ヒャハハハ!何言ってんのかわかんねーぜぇブタさん……よぉ!」

 

「おぎゅうっ!?」

 

 

 石壁に叩き付けるが……いい声で鳴くじゃあねぇかぁっ!

 やっぱり人の皮被ったブタだな。

 

 

「あ、がぁ……」

 

「おえ、きったね。何してたらこんな汚くなんだよ」

 

 

 ブンブンと手ぇ振る。

 唾液だけじゃなくて血も混じってんなぁ、勢い余り過ぎたかぁ?

 

 

「お、お、お前ぇっ!?僕はチョリアス、家のむしゅこだぞぉっ!?こん、こんな事して許されるとでもおみょってるのかぁ!」

 

「ハハハ知らねー……ん?トリアスぅ?」

 

 

 ブタ野郎にありがちな、己の家門を誇示するムーブ来たな。

 チャリアスじゃなくてトリアスだろ言いてぇのは。

 んでトリアスってぇとトリ公のとこ。

 ……ああ!

 

 

「お前ぇ!」

 

「はひゅっ!?」

 

 

 ()()()()、ついに。

 その喜びにかまけてブタ野郎に顔を近付ける、くっせ。

 

 

「トリ公んとこのブタ野郎かよ!通りでブタ以外のイメージが湧かねぇんだなぁっ!」

 

「は、はぁっ!?」

 

「ヒヒャハハハッ!ますます都合がいいじゃねぇか、おい!」

 

 

 ブタブタと俺自身驚く程にブタのイメージしか湧かなかったが、そりゃあそうだ!

 知ってるキャラならそん時のイメージに引っ張られらるわなぁ?

 

 

「ちょ、ちょにかく、わかったの、にゃら早く土下座……」

 

「……あぁ?」

 

「ひひゅうっ!?」

 

 

 若干潰れた顔面……ではなく、その横を蹴り抉る。

 このブタ、まだ状況がわかっちゃいないのか、変わんねぇなぁ?

 

 

「テメェは今から屠殺場行きだぁ、ピーチクパーチクうっせぇんだよ」

 

「あ、い、ひ……」

 

 

 ハ、ちぃっと睨み付けたら黙り込みやがったぜ。

 そうだよなぁ、原作でも最後まで自分の欲求だけに素直なブタさんだもんなぁ。

 そりゃあ自分の、今の立場なんて知らねぇよ。

 ……昔を思い出してむかついて来たなさっさとバラすか。

 

 

「おい、右の腕上げろ」

 

「は、はひっ?」

 

「いいから上げろ死にてぇのか?」

 

「はひゃい、あげましゅあげましゅ!」

 

 

 そっちは左だろうが何やってんだ。

 ……まぁいい、左がいいんなら左からやってやんよ。

 

 

「じゃまぁーずは……っと、左のスネェ!」

 

「あぎぃっ!?」

 

 

 左腕をぶった斬る、脆いなぁおい。

 こいつの左腕……ん?そういや俺から見た左ってこいつの右腕か、悪い悪い。

 ごめんなぁ切れ味悪くて、こいつで切断しようとするとめちゃくちゃ痛いよなぁ。

 

 でもやめねー。

 

 

「あ、ご、ごめんにゃしゃい、許してくりゃさい!ほ、欲しいもの、何でもあげるからぁっ!」

 

「あん?そうだなぁ……」

 

 

 もう根を上げるブタ野郎、たかだかスネ一本で大袈裟だなぁ。

 しかし欲しいものか、考えるフリくらいはしてやるさ。

 

 

「いたい……」

 

「あ?」

 

 

 不意に背後からガキの声……って、居たなぁお前なぁ。

 どうやら俺の飛ばしたブタのスネが直撃したらしい、頭をさすっている。

 

 

「……!お、おい!ぼきゅを助けりょおっ!?」

 

 

 おいおいまじかこのブタ。

 ガキがどんなスキル持ってんのか知らねえけど、手のひらくるっくるじゃねぇか。

 

 

「ハハハ!だってよ、どうする?」

 

「……」

 

「お、おい!言うことを聞けぇっ!?」

 

 

 ガキの反応は、無視。

 ただただブタの方を見つめている。

 

 

「お、お、おみゃえなんてこの契約の指輪がありぇばぁっ!?」

 

「ない」

 

「……え?」

 

「指輪、もうないよ」

 

「指輪ってのは、ガキの足元に転がってるスネの飾りのことかぁ?」

 

 

 貴族の指輪ってのも用途は様々だが……今回のは奴隷契約の指輪か、そんな重要な方の手ぇ上げるって、弩級のバカじゃねぇかこいつ。

 

 

「……ぁ、あっ、ぁ……」

 

「きったねぇなぁ」

 

 

 ブタは粗相までし始めた、じわじわと死の恐怖に侵され始めたらしい。

 

 

「おいガキ、テメェも混ざるか?」

 

「……それは、どっち」

 

「ああ?」

 

「される方か、する方」

 

「あー……する方だよ」

 

「なら、いい」

 

「……そうかよ、つまんねぇ」

 

 

 怨みつらみを込めた復讐が見れると思ったんだが……期待はずれだなぁおい。

 ま、こいつが死ぬのに変わりはねぇ。

 

 

「お願いしましゅった、たしゅけてぇっ!?」

 

「ハッハハハッ!冗談だろ?」

 

 

 テメェも己の為に他者を使い潰すタイプの人種だ、ならわかるだろ?

 

 

「テメェは俺のおもちゃだよ、な?」

 

「ひゅ、ひぃぃぃ……!」

 

 

 

 

 

「ありがとう」

 

「あぁ?」

 

 

 ブタが物言わぬ肉塊に成り果てた頃、未だに残っていたガキに礼を言われる。

 肝が据わってるガキだな。

 

 

「テメェに興味はねぇ、失せろ」

 

「……殺さないの?」

 

「ハ?」

 

 

 俺がこんなガキを?

 

 

「テメェみてえなすました面してる奴バラして何が面白いんだ?」

 

「?」

 

「ブタをバラしても怖がりゃしねぇ、おまけにそのきったねえ足」

 

「……」

 

 

 逃げる時に尖ったもん踏みまくったのか、泥だらけ血だらけのボロッボロ。

 お陰で血の後を追いやすかったぜ。

 

 

「そんな状態で走りまくれるようなガキ、俺の趣味じゃねぇんだよ。失せろ」

 

「嫌」

 

「ハ?」

 

「居場所がない」

 

「それが承知で逃げたんじゃねぇのかよ」

 

「そこまで、考えなかった」

 

「ハ、無我夢中ってか、見えねー」

 

 

 変わらねえ表情に死んだ様な目、どこから見りゃあ必死に逃げて来たガキに見えるんだよ。

 

 

「苦しみから逃げることに、理由がいるの」

 

「……」

 

「逃げなきゃ行けなかったから、逃げたんじゃ、だめなの」

 

 

 奇妙なガキだ。

 ブタんとこから逃げようって思った癖に、俺に殺されるってのは律儀に待っていやがったのか。

 

 

「あなたは、殺してくれるよね」

 

「どう言う意味だ」

 

「バッサリ、私の首を切る」

 

「キッショ」

 

「ひどい」

 

 

 支離滅裂過ぎてキモい、なんだ俺なんかよりよっぽど狂ってんのがいるじゃねぇかモブにもよぉ。

 隅っこまでボリュームたっぷりな構築は嫌いじゃないが。

 

 

「そんなに死にたきゃ他所で死ね。俺にゃ関係ねぇ」

 

「じゃあ、あなたのことを手伝わせて」

 

「意味不明だっつってんだろ」

 

 

 面倒なのに絡まれたなこりゃあ。

 ただの逃げた奴隷と追っかけのブタかと思いきや、殺してくれと言ったり手伝わせろと言ったり。

 あのブタに粉でも嗅がされたか?

 

 ……まあ、無視でいいか。

 

 

「じゃあな。苦しみたくなきゃどこかで野垂れ死んどけ」

 

「……」

 

 

 歩く。

 背後からジャリザリと音がする。

 

 

「いやいや、着いて来んなよ」

 

「殺してくれる?」

 

「めんどくせぇ」

 

「じゃあ、あなたのこと手伝わせて」

 

「必要ねぇよ、どっか行け」

 

「……」

 

 

 しっしっ、と追い払うジェスチャーも加えてみるが効果はない。

 ああもう、面倒だなぁ!

 

 

「おらよっ!」

 

「わっ」

 

 

 埒が明かないからとりあえずガキを俵抱きにする。

 

 

「運んでくれるの?」

 

「どっかで捨ててもいいが……おめーその足で着いてくる気だろ?」

 

「?」

 

「足跡でバレるってぇの!」

 

 

 あのな、俺ってば今貴族のブタ息子殺した極悪人になる訳よ。

 この先俺が練り歩く為にも証拠とか残してらんねぇんだわ。

 

 

「だからお前の血だらけの足で付き纏われたら不味いんだ、理解したか?」

 

「そっか」

 

「分かったんなら、暴れねぇで俵みてぇに担がれてろ」

 

「そうしたら、殺してくれる?」

 

「めんどくせぇって何度言えば理解すんだよその頭は?」

 

 

 あーあ、厄介なイカれ女に目ェ付けられたもんだ!

 あれもこれも昔の不満も、全部ブタ野郎の所為に違いない。




自分じゃどうにもできないから敵として大暴れしてやろうと悪い方向に吹っ切れてしまった転生者のお話です
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