"G"の為に面倒なやつをグッチャグチャにしようとしている殺人鬼と、殺人鬼をぐちゃぐちゃ()にしたい女の子の物語   作:虚憂

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スラム・クライム

 エロゲというのはちょっと倫理観がトんでいるくらいがちょうどいい、というのは俺の友人の論だったか。

 

 例えば……なんだ、ああそうだ。

 胸だけ異様にでかい女とかな、あんなんバランス悪過ぎ肉千切れるだろと何回思ったかな俺。

 まあこれは極端な例だが、こんな感じで『冷静に考えるとおかしいな』ってなるくらいがゲームとして楽しめるからってのが友人の言い分だった。

 

 この世界もそう言ったゲームあるあるを多数抱えているのだが。

 そのゆるゆる倫理観の代償か、この世界学校以外が物騒過ぎると言う事態に発展してしまっているんだな、これが。

 

 本編でも分かりやすいのはブタ野郎、親の権力と金とブタ自身の小賢しさの才能からゲームじゃあバレバレなのに中々尻尾を掴ませないクソデブと化していた。

 マジでな、なまじ妹が優しい所為でボス格の中でも露悪さが際立ってんだよなあいつ。

 

 そう言った分かりやすい殺伐・グロテスクさを見るならばスラム街の奥の方がおすすめだ。

 これがあの学校エロゲと同じ世界か? なんかグロくしたパラレルとかじゃないんか? って思えるからな、ギャップで頭壊れるぞ。

 俺は壊れた。

 

 

「綺麗な通り、だね」

 

「ここはな」

 

 

 スラムと呼べど街は街、浅いところだったら普通に人は住んでるし平凡な営みだって行われてる。

 目的の家は確か、中間くらいだったかな。

 

 

「どこまで行くの」

 

「もう少し先までだな、帰るか?」

 

「ううん、でも……ちょっと、見られてるから」

 

「へぇ」

 

 

 意外と視線には敏感らしい。

 こんだけみすぼらしい奴隷の、しかも女のガキなんてのはスラムじゃ格好の獲物。

 慎重な奴はこの辺りからもう狙いを付けて機会を伺うもんなのさ。

 

 

「奴隷か、それ以下の待遇に戻りたくなきゃ俺の側から離れんなよ」

 

「うん」

 

「……と、おっさん。林檎2つ」

 

 

 素早く俺の近くに寄ってくるレイを傍目に、林檎のおっさんへと話しかける。

 偶に見かけるおっさんだ、見た目は中々厳つい。

 

 

(あん)ちゃん、そっちは妹かい?」

 

「みてぇなもん、付き纏われて厄介だぜ」

 

「ははは! ……気を付けな、ほらよ!」

 

「ああ」

 

 

 2つ分の代金を渡して……あん?

 

 

「1個多いぜ、もうボケたのかよあんた」

 

「じゃかあしい! おまけだおまけ、そっちの嬢ちゃんはもっと食わなきゃだからな!」

 

「ハ、そうかよ」

 

 

 ならこいつはガキのだな。

 

 

「ほら、お前んだとよ」

 

「わ……ありがとう、おじさん」

 

「がはは! 何か困ったことあったらいつでも言いなよ嬢ちゃん! そっちの兄ちゃんよか優しく対応してやんぜ!」

 

 

 うっせぇわ。

 ストーカーのガキへの対応なんかこんなもんだろうが。

 

 

「ううん、私はヴェン……お兄ちゃんがいいから」

 

「げっ」

 

「……そうかそうか! 妹は大切にしろよ!」

 

 

 なんてこと言いやがるかこのガキ。

 

 

「レイ」

 

「この界隈なら間違いじゃない、でしょ?」

 

「……」

 

 

 確かにスラムじゃ身寄りのないガキが集まって擬似家族みたいになることはあるがよ。

 お前と俺はそんな信頼関係で結ばれてねぇんだよなぁ。

 

 おかげで妹趣味が俺にはねぇことは分かったが。

 ゾワっとしたぞ今の言葉。

 

 

「ひどい」

 

「お前がお前と同い年くらいの見ず知らずのガキにお姉ちゃん、なんて呼ばれたらどう思う」

 

「……ちょっと怖い?」

 

「そういうこった」

 

「……」

 

 

 

 

 

「ここだな」

 

「……」

 

 

 目的の民家に着いたが。

 ……思ってたよりまともな家だな。

 

 

「外にまで、血が」

 

「ああ」

 

 

 ガキの言う通りちょいちょい血の跡が残ってる。

 変な残り方してるのを見るに、相当野次馬が来たのか。

 

 

「入るぞ、お前に合う服がある筈だからな」

 

「ここに?」

 

「ああ、お前とおんなじ背丈のガキが居たらしいぞ」

 

「……そっか」

 

 

 それを聞いて半分納得した様な感じのガキ。

 ……まあ盗ることに慣れろとは言わねぇけどよ。

 

 

「ヴェンが殺したの」

 

「ハ? 何でこんなよくわからん場所の人間を殺さなきゃならん」

 

「違うんだ」

 

「どの口で言うのかって話だろうが、俺だって相手は選んでるんだよ」

 

 

 目立たない奴を狙う理由なんてねぇ、画面の向こうで映らん訳だし。

 ブタみたいな奴とかその下っ端でもないとな。

 

 

「そう、なんだ」

 

「入るぞ」

 

 

 ま、ガキの服くらいは残ってんだろ。

 こんなとこに来る奴が服装をまともに気にするとも思えん。

 

 

「邪魔するぜ」

 

「……おじゃまします」

 

 

 うわ。

 

 

「平気か、レイ」

 

「うん」

 

「ハ、上出来だ」

 

 

 視界に入って来たのは。

 壁はもちろん天井にまで飛び散った、黒い赤と無数の傷。

 

 

「よくやる」

 

 

 入ってすぐこの廊下だということは、中々派手に遊んでいたと見える。

 

 

「……」

 

「んだよ、俺が言うのかって?」

 

「ううん、ヴェンは違うって言ってた」

 

「じゃあ何だ」

 

「ここまでする理由、考えてた」

 

「へぇ?」

 

 

 可哀想とかじゃなくて、犯人の動機を初手で考えんのかこいつ。

 分かってたつもりだが大概イカれてるなぁ。

 

 

「で、何か考え付くのかよ」

 

「……」

 

「間違ってようが構わねぇ、これの犯人に興味ねぇからな」

 

「恨みとか楽しい……とか」

 

「ハハハ、まあ序盤じゃそんなもんだろうなぁ」

 

 

 そう言うのは状況やら証言やらをかき集めた憲兵やら探偵なんかがすることだ。

 空き巣しに来たチンピラの役目じゃねぇのさ。

 

 

「むぅ」

 

「とは言え楽しかったのは確かだろうぜ」

 

「え?」

 

「ほら行くぞ」

 

 

 いつまでも突っ立ってるガキを急かす。

 こんなとこに長く居座ったって面倒ごとが増えるだけ、ブツ盗ってずらかるのが正しい選択よ。

 

 

「なんで」

 

「ガキの部屋は……ま、しらみ潰しに探すっきゃねぇか」

 

 

 そこそこの大きさの家、おそらく親と子で部屋が分かれている筈。

 こいつは大人びてる部類だろうが、似た歳のガキなら1人部屋をもらってたっておかしくはない。

 

 

「お、当たり」

 

「まって、ヴェン」

 

「ん、どうしたよ」

 

「なんで、楽しんでるって」

 

「あ?」

 

 

 歩くスピードが速かったのか少し息を荒げているレイ。

 動機が気になってるのか?

 

 

「簡単だよそんなもん、ほらこっちから廊下見てみろよ」

 

「……ん」

 

 

 2人して血が飛び散っている廊下を見る。

 

 

「不思議だろ明らかに」

 

「ん……んん?」

 

「あー……」

 

 

 俺の感性がおかしいと言わんばかりに?マークを浮かべてそうだな。

 ……まあ殺る側の感性かぁ、仕方ない。

 

 

「物盗り目的の殺害なら何で天井にまで血が飛ぶ」

 

「……あ」

 

「偶発的に殺したんならどうしてあんなに傷が付く?」

 

 

 手っ取り早く首を掻っ切るにしたって飛ぶ方向は壁の方、その後は被害者側が反射的に傷に手を当てるとかもろもろで天井まで飛ぶことはないだろう。

 口論になってつい、とかにしては壁についた傷跡が多いんだわ。

 

 

「そんだけ」

 

「すごい」

 

「アホか、俺の推測なんて外れて当たり前とでも思っとけ」

 

「え」

 

 

 今までのこれ、目的があって屠殺解体とかいう楽しくもないも……血飛沫大量切り傷量産殺人鬼の経験から来ているものなだけであって、アテになるもんではない。

 ほんとに楽しんでたかどうかなんて俺には1番遠い感情だわ。

 

 

「……」

 

「さっさと済ませて帰んぞ」

 

 

 ちなみに、ガキに合う服は見つかった。

 男ものな気がしなくもないが、まあまだどっちの服着てたって変わらないだろうよ。

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